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日本歯科医師会会長予備選挙立候補決意表明
2015/11/12
堀 憲郎
この度次期日本歯科医師会会長予備選挙に立候補することを決意いたし
ました堀憲郎です。
私は11年前の日歯連の闇献金事件等の不祥事で、歯科界への国民的不
信が吹き荒れた直後から、日本歯科医師会の会務に携わり、歯科界の信頼
回復に努めて参ったひとりです。今般、日歯連の問題とはいえ、同様の混
乱が生じ、再び歯科界全体が国民不信に晒されたことは誠に残念です。次
の世代が再度茨の道を歩くことを思うと胸塞がる思いですし、これまで歯
科界一丸となって培ってきた信頼回復への実績が、いとも脆く崩れてしま
ったことは慚愧に堪えません。
いうまでもなく公益社団法人とは国民の信頼があったはじめて成立する
組織です。4月の日歯連への強制捜査以来、一部の楽観的な意見とは裏腹
に、事態は深刻になるばかりであることに「人心一新を明確に内外に示す
ことは、公益社団法人の信頼回復へ向けて最低限必要なこと」と感じてお
りました。若い日歯代議員の皆様を中心に、同じような危機感が自然発生
的に増幅し、日歯会長選への出馬要請を多くの方々から頂くに至りました。
迷いに迷った上での決断でしたが、決意した以上、全力を傾注して参る所
存です。何卒ご支援の程、宜しくお願い申し上げます。
日本歯科医師会の会務の後半の 4 年余り、中医協(中央社会保険医療協
議会)をはじめとする外部の審議会に参画し、歯科界の外部の方々と真剣
勝負の議論をするようになりました。
そこでの議論を通じて、改めて知ったのは「歯科医療に関して周囲は想
像以上の無理解であること、無関心であること」と「医科や薬科と比べて
歯科は全く活力が無い」という二つのことでした。
中医協等では、基本的に歯科の議題自体が極端に少なく、その僅かな機
会に歯科から懸命に発言しても、当時、周囲の委員は雑談を始めたり、中
座したり、極端に言えば歯科発言の時間は「審議会の休憩時間」との印象
でした。そのような状態に途方に暮れ、どうやったら聞いてもらえるか、
悩み抜き、必死で医療制度全体を語る中で歯科医療のことを訴える理論構
築をし、どの言葉を使ったら聞いて貰えるか、準備に明け暮れた毎日でし
た。会議に参画して、半年近くしてから漸く「歯科の発言」を傾聴頂ける
ようになったと振り返ります。3期の任期はあっという間に過ぎ、今年6
月の中医協退任の時は、今回の混乱もあり、挨拶を辞退することも考えま
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した。意を決して挨拶を終え、中医協の場で頂いた、暖かい拍手は、歯科
界への理解が僅かであっても進んだ証と、ある意味達成感をもって受け止
めたところです。
もうひとつの「医科や薬科と比べて歯科界の活力が無いこと」について
は、例えば医科が医療政策の立案の段階で活発に提言をし、また新しい医
療技術や機器、材料の開発と保険収載が頻繁に行われるのに比べると、歯
科は「止まっている」に等しく、そこには歯科界に長く蔓延している無気
力と諦めがあることを強く感じました。
ごく簡単な一例を挙げれば、前回改定で歯科は CAD/CAM 冠が保険収
載されましたが、医科ではそのクラスの新しい技術が月平均4-5件のペ
ースで、中医協で保険収載を承認されます。歯科では長きに亘り1件もあ
りません。歯科では「改定の時期以外でそのような保険収載ができる仕組
み」すら知らない状況であり、愕然としつつ、歯科行政を巻き込んでその
議論に着手し、実を結んだのが「来年1月から保険請求が可能になったフ
ァイバーポスト」です。「改定時期以外に新しい歯科医療技術が請求でき
るようになる」等は、だれが想像されていたでしょうか?
議論を詰めるには、実は相当なエネルギーを必要としましたし、議論の
時間も2年以上要しました。これまでこのような議論が行われてこなかっ
たことが、歯科界の「諦めと無気力」を示す例と思います。
選挙だからといって、今の歯科界全体について「こうすれば歯科界の未
来は確実に明るくなる」と耳障りの良いことを申し上げるつもりはありま
せん。真剣に考えるほど、現在の混乱を別としても歯科界は気が遠くなる
ような危機的状況にあると感じます。高齢化に伴う医療の地域へのシフト
に我々は対応できているでしょうか?2025年問題、さらにはその先の
人口減少問題に対して対応の青写真は持てるでしょうか?
現在の歯科界の停滞から活性化に向けて船を転じるには、とてつもない
エネルギーと時間を要することも、先ほど申し上げた事例等を通じて、実
体験し、理解しています。
ただひとつ、とてつもないエネルギーと時間は掛かるが、その先に達成
感をもてる結果が存在することも、私は肌で感じて知っている数少ない人
間のひとりと思っています。まだまだ手つかずで可能性を秘めた議論が歯
科界には数多くあることも知っております。
今思い描くことが任期中に達成できるとは思っていません。5年、10
年、20年、或いは半世紀を要する道のりになるかもしれません。しかし、
少なくとも歯科界の歩むべき方向性を示し、その課題をしっかりと整理し、
議論の体制を作って次の世代に引き継ぐことは、我々の世代の責任と認識
しています。
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幸いにも今回の立候補にあたり、思いを同じくする全国の多くの仲間を
得ました。その仲間を核にひとりでも多くの賛同者を募り、全員でスクラ
ムを組んで歯科界の真の再生に向けて歩を進めたいと存じます。
次の世代の歯科医療に携わる者全てが、胸を張って日々の仕事ができる
歯科界を築き上げるために、皆様の理解とご支援をお願い申し上げ、立候
補の決意表明と致します。
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