目 次 目 次 合理的な安全保障 本書の構成 Ⅰ 東アジアにおける 藤 ⒡⒢戦後五棚年村山談話と戦後七棚年安倍総理訪米 ⋮⋮⋮⋮浅野豊美 章 歴史問題と安全保障・連環の系譜 1 シリーズの刊行にあたって パラドックスに満ちた東アジア 東アジア安全保障の過去と現在 はじめに 序論 アジアン・パラドックスと日本パラドックス ⋮⋮⋮⋮⋮木宮正史 第 はじめに ⒡⒢現代史の起源としての一九九棚年代 国家的和解と国民的和解、そして村山談話 ⒡⒢宮沢内閣と河野談話 15 17 1 自民党による歴史を踏まえた国際交流の推進 vii 2 8 7 3 23 15 1 1 2 3 4 1 2 viii 自民党と社会党の歴史認識をめぐる政策的接近 村山内閣の戦争責任政策に対する融合と反発 安倍首相訪米と戦後七棚年談話 おわりに ⒡⒢若干の政策提言を交えて 章 領土問題の再構成 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮古川浩司 近代以降の日本の領土の変遷 はじめに 日本の領域 主 (張と現実 ) 考 察 おわりに 歴史的前提 はじめに 戦後の初期条件 45 27 朝鮮半島冷戦の﹁変容﹂と新たな安全保障政策の模索 77 冷戦の終焉と北朝鮮核問題の登場 84 81 76 ⒡⒢安全保障における非対称性 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮木宮正史 章 日本の安全保障と朝鮮半島 Ⅱ 歴史的交錯の中の日本と朝鮮半島 46 2 3 第 第 51 45 63 65 75 75 33 35 28 3 4 5 1 2 3 1 2 3 4 目 次 米中﹁大国間関係﹂下の日本と南北朝鮮 おわりに 章 韓国にとっての安全保障 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮西野純也 89 国家生存への意思と大国間政治への不信 はじめに 北朝鮮の脅威とどう向き合うか 経済的繁栄の実現とその活用 章 北朝鮮における安全保障 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮朴 正 鎮 おわりに 108 117 100 はじめに 安全保障政策といわゆる﹁北朝鮮の脅威ⅶ 核問題と﹁新しい平和保障体系﹂の論理 おわりに 章 北朝鮮の軍事・国防政策 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮宮 本 悟 Ⅲ 朝鮮半島有事をめぐって 129 138 第 第 第 はじめに ix 121 127 145 153 99 5 1 2 3 1 2 127 153 93 99 4 5 6 ⅵ朝鮮半島有事﹂と﹁急変事態﹂に関する米韓の対備計画 はじめに 朝鮮半島有事への日本の対応 日本の安全保障戦略における韓国の 位置づけと日韓安全保障協力の将来 Ⅳ 広域東アジアの安全保障構想 ⒡⒢東アジアの﹁現実﹂と日韓市民社会の取り組みを中心に ⋮磯崎典世 章 市民社会から組み立てる安全保障 はじめに 217 東アジアの冷戦と日韓の市民社会 グローバルな冷戦の終焉と不安定化する東アジア 世論調査にみる日韓社会の対外認識の乖離 グローバルな問題提起とリージョナルな現実 223 229 211 179 x 軍事・国防政策と朝鮮半島統一政策 北朝鮮の核兵器と弾道ミサイル開発 北朝鮮の対外軍事協力 おわりに 東 清彦 章 朝鮮半島有事と日本の対応 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮道下徳成 168 162 155 201 190 181 7 8 第 第 173 179 209 209 1 2 3 1 2 3 1 2 3 4 目 次 第 章 東アジアをめぐる安全保障秩序構想 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮佐 橋 亮 243 おわりに 章 地域の中のロシア要因 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮下斗米伸夫 はじめに ソ連と東アジア・二極システムから 多極システムへ 一(九四五 九一年 ) ソ連崩壊後のロシアと東アジア 多極化するアジアとロシアの東アジア観 おわりに 協力 ⒡⒢安全保障分野に着目して ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮大庭三枝 章 東アジア地域秩序の変容と日 はじめに 今後の展望 277 協調的安全保障と非伝統的安全保障 協力の変容 二棚棚棚年代における海洋安全保障協力の展開 中国の台頭と日 280 ⅵ平和と安定のためのパートナー﹂を目指して A S E A N 293 286 271 269 299 第 第 はじめに xi 246 A S E A N 265 259 252 1 2 3 1 2 3 4 5 269 299 235 243 9 10 11 秩序の理念型 おわりに 319 競合するデザイン 1 2 301 309 xii 序論 アジアン・パラドックスと日本パラドックス 序論 アジアン・パラドックスと日本パラドックス はじめに 木宮正史 本書は、日本の安全保障にとって死活的に重要であり、かつ東アジアの安全保障の焦眉の一つである 朝鮮半島に焦点を当て、東アジアにおいて日本の安全保障政策がどのような﹁脅威認識﹂に基づいて形 成され、どのような﹁課題﹂に取り組んできたのか、さらに、日本の安全保障政策が東アジア地域にど のような影響を及ぼしたのかを考察する。そして、東アジアの安全保障環境とその中での日本の位相と 役割に関して、その歴史的な展開を踏まえながら、狭義の軍事的な国家安全保障のみならず、市民社会 を担い手とする人間の安全保障の観点を導入し、さらに、極東ロシア、東南アジアまでを射程に入れた 地域的な広がりを持つ地域的国際安全保障として考察する。 1 1 東アジア安全保障の過去と現在 東アジア世界の近現代史は、戦争が頻発し平和な時期がそれほど持続しなかった。アヘン戦争を皮切 りに、欧米列強によるアジア諸国に対する帝国主義的侵略戦争が続いた。さらに、日清戦争、日露戦争 という日本の帝国主義的拡張が他の列強との間で招いた戦争もあった。二度にわたる世界大戦はヨーロ ッパのみならず、アジア、特に東アジアにおいても展開された。またアジアは、第二次世界大戦後にも、 朝鮮戦争、ベトナム戦争という﹁冷戦の熱戦化﹂が最も本格的に現れた地域でもあった。 戦後日本は平和主義を掲げ自らの軍事的役割を自制し、さらに経済援助などを通して開発途上国の経 済発展を促進することによって、貧困を削減して平和を実現するために貢献してきた。但し、朝鮮戦争 に対しては、占領下でもあり、日本は国連軍として参戦した米軍の﹁出撃基地﹂となり、実質的には戦 争に﹁巻き込まれる﹂ことになったのであるが、朝鮮戦争は日本経済にとっては﹁朝鮮特需﹂を提供し、 戦後復興の起爆剤になったように﹁対岸の火事﹂であった。同様にベトナム戦争も日本にとっては﹁対 岸の火事﹂であり、戦争に起因した特需を享受した。このように日本は経済援助によって﹁アジアの平 和﹂に貢献しながらも、他方で、﹁アジアの戦争﹂によって経済的利益を享受したことになる。 こうしたアジアを強力に制約した冷戦体制が終焉することによって、﹁アジアの平和﹂と﹁日本の平 和﹂とが両立する条件が整うように思われた。しかし、現実はそうした﹁期待﹂を裏切った。一方で冷 戦の終焉が東アジア、朝鮮半島にも﹁平和の配当﹂をもたらす局面も存在した。韓国と中ソとの国交が 2 序論 アジアン・パラドックスと日本パラドックス 正常化されるだけでなく、北朝鮮と日本との国交正常化交渉も開始され、米朝交渉が行われた。また、 そうした国際政治の変容を、韓国の民主化、日本の政権交代など国内政治の変化が支えた。さらに、冷 戦の終焉は、冷戦によって事実上分断されていた東アジア地域の国際組織を、脱冷戦に適応するような であったが、そうした動きは A S E A ゛3のように、東南アジアという地域的枠組みを超えて展 新たな形態へと転換させた。その動きを主導したのが 自体の変容を伴うだけでなく、 開された。 A S E A N ﹂という言葉がある。一方で、東アジアは世界において経済の (Asian Paradox) 相互依存が進み経済発展が最もダイナミックに展開され、繁栄を謳歌する地域である。他方で、北朝鮮 ﹁アジアン・パラドックス 東アジアの安全保障環境を一言で表現すると﹁パラドックスに満ちている﹂と言えるのではないか。 2 パラドックスに満ちた東アジア 北朝鮮の核危機は、中国の大国化とともに、日本の安全保障環境を大きく変えることになる。 立を打開する﹁切り札﹂として核ミサイル開発に本格的に取り組むようになったことである。こうした えたのは、南北朝鮮の体制競争の﹁敗北﹂に起因して外交的孤立を余儀なくされた北朝鮮が、劣勢や孤 で噴出し、国家間の緊張が従来以上に高まった。そして、何よりも東アジア地域の安全保障に衝撃を与 しかし、他方で、冷戦体制によって﹁封じ込められていた﹂歴史問題、領土問題が日本と中韓との間 A S E A N の核ミサイル開発に伴う核危機で緊張が持続し、日中間には尖閣列島をめぐる領土問題に起因した軍事 3 N 的衝突の危険も付きまとう。さらに、過去の歴史に対する異なる評価に起因する歴史摩擦が日本と中韓 などとの間で存在する。実際に国家間の戦争や内戦が起こっているわけではないが、国家間の緊張や摩 擦が色濃く存在し平和であるとは言い難い地域でもある。一方でアジアの繁栄を持続するためには平和 が必要であるわけで、経済的相互依存を地域の平和につなげることが要請される。しかし、現実には、 そうした経済的繁栄は、各国のナショナリズムを高揚させることで、国家間の対立を激化させることに もつながる。 日本の安全保障政策にも、別の意味で重大なパラドックスがあるように思われる。日本の安全保障に おける最も重要な問題が、中国の大国化にどのように対応するのかという点にあることは、ほぼ合意が 形成されている。そうした中国と日本との間に存在するのが朝鮮半島である。したがって、南北朝鮮が、 日中関係にどのように対応するのかは日本の安全保障にとって本来重要な問題であり、日本は、それを 念頭に置いて対朝鮮半島政策を構築するべきである。にもかかわらず、最近の日本の安全保障政策、特 に対朝鮮半島政策に関しては、﹁地政学的に韓国、北朝鮮は元来ⅷ親中的ⅸだと決めつけることで、日 本がどんなにアプローチしたところでどうしようもないとⅷ諦めてⅸしまっている﹂ように思われる。 安全保障政策において﹁諦める﹂ということは何を意味するのか。特に日韓の間の懸案が歴史問題で あるということを考えると、結局、﹁歴史問題を優先して安全保障を犠牲にする﹂ことを意味するのか。 も し く は 、﹁ 日 本 は 以 前 の よ う な 大 陸 と の 関 係 を 重 視 す る ⅷ 東 北 ア ジ ア ⅸ 国 家 で は な く 海 洋 を 向 い た ⅷアジア太平洋ⅸ国家に変わったのだから、朝鮮半島との関係をそれほど重視する必要はない﹂という ことになるのだろうか。 4 序論 アジアン・パラドックスと日本パラドックス つい数年前まで、日本には﹁中国の大国化に対して、米国との同盟関係を共有する日韓が協力して牽 制、対抗するべき﹂であり、そのためには﹁日韓も同盟関係の締結を考慮する必要がある﹂という議論 が存在したように思うが、今や、そうした議論はほとんど姿を消した。さらに、日中関係をある程度管 理しておきさえすれば、韓国は﹁右往左往﹂して、そのうち日本に妥協を求めてくるはずだというよう な議論も見られる。一方で中国の大国化を日本の安全保障の最重要問題と位置付ける議論、他方で韓国、 さらには北朝鮮を含めた朝鮮半島との関係に配慮する必要はないという議論、この二つの議論を日本は 何とか両立させようとする。 韓国が日米という﹁海洋勢力﹂と同陣営にあったのは冷戦という非常に特殊な環境下にあったからで あり、次第に朝鮮半島は地政学的には中国に付属するという元来の位置に戻らざるを得ないという見方 があるのかもしれない。冷戦下、南北分断体制下の体制競争において韓国が北朝鮮に﹁勝利﹂したにも かかわらず、地政学的には逆に朝鮮半島が中国に取り込まれたということになるのだろうか。そうであ るとすると、何とも皮肉な結果ということになる。 ただし、日本の安全保障だけがパラドックスを抱えているのかというと、そうではない。韓国も同様 なパラドックスを抱える。これはむしろディレンマと言い換えた方がよいかもしれない。韓国は﹁安全 保障は米国、経済は中国、対北朝鮮は米中﹂というスタンスで、生存、繁栄と韓国優位の統一を実現し ようとする。そのためには、米中関係が良好な関係でなければ困る。韓国にとって最悪のシナリオは、 米中対立が深刻化し、米中どちらかを選択しなければならない状況に追い込まれることである。したが って、米中対立の深刻化を韓国は何としても防がなければならない。にもかかわらず、最近の韓国外交 5 は、米国が主導する ア ( ジ アインフ ラ投資 銀行 ミサイル 終( 末高高度防衛ミサイル の韓国配 備問題 や中国 主導の sile) 6 Terminal High Altitude Area Defense mis- へ Asian Infrastructure Investment Bank) 藤の最大 あり、したがって経済建設に必要な経済協力や外資導入を獲得することも困難である。これを前提とす ると考えるのかもしれない。しかし、北朝鮮が核保有を放棄しない限り、日米との国交正常化は困難で て国防を堅固にすることで、限定された資源を経済建設に振り向けることができるという点で両立しう ると考えているとすると、これもまたパラドックスである。確かに、北朝鮮からすると、核保有によっ 核兵力建設と経済建設という両立し難い目標を掲げる北朝鮮の﹁並進路線﹂も、本当にこれが両立す 想するのに歴史が制約になっている。 えられないので、そうした選択肢は元来排除されるのか。いずれにしても、安全保障政策を合理的に構 ということになるのか。もしくは、韓国の安全保障は日本による植民地支配という歴史と切り離して考 の問題が歴史問題であるとすると、韓国もまた日本と同様に、安全保障よりも歴史の方を優先している 言わざるを得ない。そこで、なぜ日本との協力可能性を考えようとはしないのか。日韓間の る最も重要な条件を﹁他力本願﹂にすがるというのは、いかにも﹁無責任﹂であり﹁戦略の欠如﹂だと ないのだから、﹁他力本願﹂でいくしかないと腹を括っているのかもしれないが、韓国外交が必要とす のだが、韓国外交にはそうした問題意識が希薄だ。米中関係を韓国が﹁操縦する﹂ことはそもそもでき しいということであれば、利害を共有する国と協力することで、それを実現しなければならないはずな 問題は、韓国が、そうした良好な米中関係を自力で構築することができないことである。独力では難 の加盟問題をめぐって、米中の間を﹁右往左往﹂する状況に追い込まれている。 A I I B T H A A D 序論 アジアン・パラドックスと日本パラドックス ると、この﹁並進路線﹂は解きがたい矛盾を抱えたままの突破口の見えない選択だと言わざるを得ない。 また、中国にしても、歴史問題によって日韓の間に楔を打ち込むことが、﹁分割統治﹂によって中国 藤は秩序の安定を確保するにはむしろ 主導の東アジア秩序を構築するためには一見好都合だと考えているように思われるが、果たして、それ は中国自身にとってよいことなのか。歴史問題に関する日韓の マイナスになる可能性もあるし、そもそも、中国自身の対日外交や対韓外交における柔軟な対応を制約 することにもなりかねない。 以上のように、東アジアの安全保障には、いろいろなパラドックスやディレンマが重層的に積み重な っている。安全保障政策を合理的に構想するためには、それを一つ一つ解いていかなければならないの だが、それは容易ではない。 3 合理的な安全保障 パラドックスを超えて安全保障を合理的に構想するためには何が必要なのか。第一に、知的な﹁諦 め﹂はするべきではない。死活的に重要であり、かつ慎重さが要求される安全保障のような問題に取り 組むにしては、﹁どうせ、中国の正体は、韓国の正体は、北朝鮮の正体は、○○○だ。変わらない﹂﹁ど うせ、日本は、○○○だ。変わりようがない﹂というような、あまりにも乱暴な議論が、少なからぬ影 響を及ぼしている。﹁だから、何をする必要もない。何をやったところでだめだ﹂という知的な﹁諦め﹂ が日本、東アジアに蔓延しているようにも思うが、これは私だけの錯覚だろうか。いろいろな立場の違 7 いはあるかもしれないが、本書の論文に共通するのは、こうした知的な放棄だけは行っていないことで ある。換言すれば、東アジアの安全保障環境が可変的なものであることを前提として、それを変えてい くためにはどのような選択が必要なのかを、知的に追求しているということである。 ⅫⅫⅫ 第二に、相対化された視点を持つことの重要性である。安全保障問題は日本の安全保障というように、 国家安全保障として自国の視点だけに立脚する傾向がある。日本の安全をいかに守るのかという視点だ けを設定するのではなく、日本の安全保障政策が相手にどのように見られるのかという、相手側の視点 で再検討することも重要である。中国にとっても同様であるが、特に南北朝鮮にとって日本は﹁侵略 者﹂であり、一九世紀末から二棚世紀前半にかけて日本の安全保障政策の直接の犠牲者であったわけで ある。そうした相手側に日本の安全保障政策がどのように映るのか、そして、それが相手国の安全保障 政策にどのように反映されるのか、さらに、それが日本の安全保障政策にどのような対応を迫るのか、 以上のような視点が必要である。また、朝鮮半島に関わる日本の安全保障を、日本と朝鮮半島との二者 藤﹂、第Ⅱ部﹁歴史的交錯の中の日本と朝鮮半島﹂、第Ⅲ部﹁朝鮮 間関係だけではなく、ロシアを含む極東、東南アジアという隣接地域を含めた多角的な視点の中に位置 づけ相対化することも必要だろう。 4 本書の構成 本書は第Ⅰ部﹁東アジアにおける 半島有事をめぐって﹂、第Ⅳ部﹁広域東アジアの安全保障構想﹂の四部構成である。 8 序論 アジアン・パラドックスと日本パラドックス 第Ⅰ部﹁東アジアにおける 藤﹂では、今日東アジアの安全保障における 藤原因を提供する歴史問 題と領土問題を考察対象とする。第一章﹁歴史問題と安全保障・連環の系譜ⅶ 浅(野豊美 は)、歴史問題に 焦点を当て、本来であれば歴史問題を解決するために表明された一九九五年の村山談話が、どのように 成立したのか、その過程を明らかにしたうえで、そうした﹁国家的和解﹂としての村山談話が問題を解 決するのに至らずに、新たな歴史摩擦が再生産されるに至ったのかを、﹁民衆的和解﹂の困難さに焦点 を当て明らかにする。第二章﹁領土問題の再構成ⅶ 古(川浩司 は)、領土問題に焦点を当て、日本の領土変 遷を確認し、陸域、海域、空域によって構成される領域に考察を加えることで、従来の領土問題とは異 なる﹁安全保障問題としての領土問題﹂を再構成することを試みる。 第Ⅱ部﹁歴史的交錯の中の日本と朝鮮半島﹂では、日本の安全保障にとって朝鮮半島がどのような意 味を持ったのか、逆に韓国や北朝鮮の安全保障にとって日本がどのような存在であったのかを歴史的な 考察を通して明らかにする。第三章﹁日本の安全保障と朝鮮半島ⅶ 木(宮正史 は)、日本の安全保障におけ る朝鮮半島の位置づけを一九世紀末の歴史的前提から解明し、特に安全保障をめぐる日本と南北朝鮮と の非対称性が一方で対称化されながらも、他方で残存することによって、三者が依然として安全保障に おける共存、協力関係に入ることができない状況を明らかにする。第四章﹁韓国にとっての安全保障ⅶ 西 ( 野純也 は ) 、対米同盟関係に基づいた北朝鮮の脅威への対応という点に焦点を当て、韓国にとって安 全保障とは何を意味するのかを明らかにしたうえで、それがどのように変容してきたのかを、韓国現代 史の展開の中から読み解こうとする。そして、その中での日本の位置づけを明らかにする。第五章﹁北 朝鮮における安全保障ⅶ 朴( 正鎮 は) 、北朝鮮にとっての安全保障が何を意味するのかを歴史的経緯も含 9 10 めて明らかにしたうえで、その中に日本がどのように位置づけられるのかを考察する。 第Ⅲ部﹁朝鮮半島有事をめぐって﹂では、東アジアにおける安全保障上の喫緊の課題である、北朝鮮 を取り巻く朝鮮半島有事に関して、その原因を提供する北朝鮮自体とそれへの日本を含めた周辺諸国の 対応に焦点を当てる。第六章﹁北朝鮮の軍事・国防政策ⅶ 宮( 本悟 は) 、北朝鮮の軍事・国防政策を北朝 鮮の統一政策の中に位置づけ、核ミサイル開発の目的を明らかにし、それまでベールに包まれていた対 外軍事協力の実態を明らかにすることで、北朝鮮の軍事・国防政策の全体像を明らかにする。第七章 ﹁朝鮮半島有事と日本の対応ⅶ 道(下徳成・東清彦 は)、北朝鮮の対南侵攻に起因する朝鮮半島有事と北朝鮮 内部の不安定化に起因する急変事態とに分け、それに対する日米韓を中心とする周辺国の対応計画を明 らかにしたうえで、それをめぐる日米韓の政治力学を考察する。さらに、中国の大国化に伴う安全保障 をめぐる日韓関係についても考察を加える。 第Ⅳ部﹁広域東アジアの安全保障構想﹂では、地域的な広がりという水平的関係の拡大、市民社会の 浸透という垂直的関係の拡大という二重の意味での変容を迫られる東アジアの安全保障環境の変容に関 して論じる。第八章﹁市民社会から組み立てる安全保障ⅶ 磯(崎典世 は)、民主化に伴う市民社会の成長が 東アジアの安全保障環境にどのような影響を及ぼしているのかを、特に韓国の民主化と冷戦の終焉を経 験した日韓の市民社会に焦点を当て考察する。さらに安全保障に対する市民運動の貢献の可能性につい ても具体例をまじえて論じる。第九章﹁地域の中のロシア要因ⅶ 下(斗米伸夫 は)、東アジア安全保障環境 協力ⅶ 大(庭三 におけるロシアの立場と役割を、狭義の軍事安全保障のみならず、エネルギー、食糧などの広義の安全 保障問題をも射程に入れて解明する。第一棚章﹁東アジア地域秩序の変容と日 A S E A N
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