戦後 70 年にあたっての私たちの声明戦後 50 年と 60 年の節目に、日本政府は第二次大戦における日本の侵略戦争の反省と新時代への決意を語ってきた。それらは十分なものとはいえないとしても、大枠で国際合意を踏まえ、日本が国際社会の一構成員として過去に真摯に向き合い、相互信頼にもとづく関係をつくろうとする意思を表明したものであった。だが、戦後 70 年に当たる今年の政治環境は大きく異なっている。現政府はアジア諸国への侵略や戦争犯罪の事実を無視し、逆に軍事大国を再建して戦後の秩序に挑戦しようとしている。このことは、ポツダム宣言を受け入れ、日本国民が平和を願って制定した日本国憲法に反する戦争参加法を多くの国民の意思に反して強行制定しようとしている動き、その環境づくりのために特定秘密保護法など各種の反民主主義法を制定し、情報操作に「御用」メディアを動員し、大学などの研究・教育機関や新聞社などの言論機関への介入・統制・弾圧を隠然、公然に行う態度などが、如実に物語っている。こうした反民主主義、反憲法の態度に鑑みると、私たちは現政府による戦後 70 年の談話がどのような内容のものであっても、それを発信する権力の正当性そのものに疑問符を付さざるをえない。このことから私たちは戦後 70 年の区切りの時期に、政府に代わり、主権者として、また日本に在住する市民の資格で意思を表明する必要性を感じている。私たちは日本国憲法の積極原理である平和、民主主義、社会権をふくむ人権の尊重などの諸価値を踏まえ、とくに学術研究、教育に携わる者の視点から次のことを決意し、ここに表明する。戦後 70 年に立って、まず私たちは過去の日本の戦争が植民地とその権益を「生命線」とする侵略主義に基づくものであったことを改めて確認する。その戦争によって数千万に及ぶアジアの人々が犠牲となり、軍事支配によっていっそう多くの人々が筆舌に尽くしがたい苦難を強いられ、今日にいたってもその傷を癒せない事態が放置されていることを深く反省し、再び同様の惨禍を繰り返さないために、私たちは政府にたいして犠牲者にはっきりとした謝罪と哀悼の意を表明するよう要求し、事実を歪曲する様々な策動に反対して手立てを尽くす。私たちは、その過程でとくにアジア諸国との学術・教育交流を進め、歴史の共通理解をめざす討議に取り組み、平和と友好のネットワークを広げる。さらに、私たちは日本の戦争が民主主義を徹底弾圧する軍事体制のもとで遂行され、結果として数百万人の命が奪われ、さらに多数の人々が物的、精神的苦難を背負わされてきたことを正視する。今日の復興と繁栄は、この歴史への反省から国の再建を目指してきた私たちが、内外の人々とともに平和と民主主義、基本的人権の尊重を謳う日本国憲法に則り、再び惨禍を繰り返さない努力を行ってきた賜物である。私たちは、この民主主義の戦後史を自由な討論とともに堅持し、その成果を引き続き平和で豊かな未来の創造のために生かしていく。そのためにも私たちは憲法を基礎として民主主義を育て、国家権力を主権者の意思に基づくものに制限する努力を継続する。それゆえ私たちはつねに良識をもって、歴史と現状を慎重に精査、批評し、暴力や不公正な権力行使にたいして内外の人々とともにたたかう。私たちの携わる学術研究・教育は、過去の歴史と現在を踏まえながら、つねに人類の未来に向けて新たな価値を創出するものである。私たちはこの活動に自主、民主、公開の諸原則を貫き、しかも人類および国内外の人々の福祉に合致する真理の探求として取り組む。この理由から、軍事研究に加担し、一部の経済権益を人々の生命・生活に優先させ、自然環境を破壊し、また私利・名声を自己目的とする「学術」を拒否してたたかう。私たちはこの姿勢を矜持として保持し、広く内外の学術研究・教育に携わる人々と交流し、平和と共生の輪を広げるものである。２０１５年８月１５日平和と民主主義のための研究団体連絡会議代表委員北村実（日本科学者会議）白鳥晃司（歴史教育者協議会）横山壽一（日本医療総合研究所）後藤仁敏（地学団体研究会）事務局長松井安俊（日本科学者会議）平和と民主主義のための研究団体連絡会参加団体（* 幹事団体）学校体育研究同志会，新日本医師協会，新日本医師協会東京支部，全国養護教諭サークル協議会， * 地学団体研究会，東京唯物論研究会，東京歴史科学研究会， * 日本科学者会議，日本文学教育連盟，日本民間教育研究団体連絡会，文学教育研究者集団，文化財保存全国協議会， * 民主主義科学者協会法律部会，唯物論研究協会， * 歴史学研究会，歴史教育者協議会，歴史科学協議会，日本医療総合研究所，新薬学研究者技術者集団，日本科学者会議東京支部，久保医療文化研究所，民主教育研究所，全国老人福祉問題研究会／オブザーバー公害地球環境問題懇談会平和と民主主義のための研究団体連絡会 (略称・平民研連) 〒113-0034 東京都文京区湯島 1-9-15 茶州ビル９階日本科学者会議気付