製品データ管理に関する事実 PDM の価値とアクセス性に関する事実

Tech-Clarity の見解
製品データ管理に関する事実
ホワイトペーパー
PDM の価値とアクセス性に
関する真実
© Tech-Clarity, Inc. 2015
目次
概要 ...................................................................................................................... 3
効果的なデータ管理の利点 ................................................................................... 4
設計の課題と影響 ................................................................................................. 5
優良企業の特定.................................................................................................... 7
データ管理アプローチの評価 ................................................................................. 8
企業が必ずしも PDM を利用しない理由 .............................................................. 10
「3D を利用しない」における誤解 ......................................................................... 11
PDM の時間とコストに関する誤解 ....................................................................... 13
「PDM を導入するには会社が小さすぎる」という誤解 ........................................... 14
「限定的な導入では意味がない」という誤解 ......................................................... 15
「PDM は CAD ファイルの管理でのみ利用される」という誤解............................... 17
PDM は「設計ツール」 ......................................................................................... 18
結論 .................................................................................................................... 19
推奨事項 ............................................................................................................ 20
著者について ...................................................................................................... 20
調査について ...................................................................................................... 21
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概要
製品データ管理(PDM)は、企業が製品開発に関連する重要なファイルや情報を管理、アクセス、
共有するための方法を改善するのに役立ちます。しかし実際には、PDM の機能ではなく、その
成果が重要と言えるでしょう。Tech-Clarity のレポート『The Business Value of Product Data
Management(ビジネスにおける製品データ管理の価値)』では、PDM により戦略的なビジネス
上の利点が得られることが説明されています。こうした利点には、市場投入までの時間の短縮、
製品の品質改善、イノベーションの促進、開発効率の改善、製品コストの削減等があります。ま
た、当社の『Best Practices for Managing Design Data(設計データ管理におけるベスト プラク
ティス)』調査では、業務における PDM の運用が「製品収益と業績に改善をもたらす」と結論付
けられています。
PDM に価値があることは、疑いようもありません。しかし、すべての人がデータを管理しているわ
けではありません。その理由は様々ですが、一般的に考えられているものとは異なります。企業が
PDM を必要としないわけではなく、実際に調査結果では、PDM を利用していない企業のうち、
その理由を「データ管理には問題がないから」とした割合はわずか 8% でした(図 6)。
PDM を利用していない企業のうち、
その理由を「データ管理には問題がないから」とした割合はわずか 8%
では、これほど重要なツールの導入を阻んでいるものは何でしょうか?多くの場合、PDM は十
分に理解されていません。たとえば、この調査では、PDM を利用していない回答者の約 4 分の
1 が PDM の利点を理解していない(24%)か、PDM が何であるか知らない(21%) と答えました。
誤解は他にもあります。たとえば、2D CAD や Office 文書を主に利用する企業は PDM の利
点が得られないと考える人がいますが、これは正しくありません。
どのようなユーザが PDM を導入すべきか、また導入がどれほど困難か、といった点についても
誤った情報があります。PDM の導入には多くの時間と費用がかかることもありますが、必ずしも
そうとは限りません。PDM の利点を得られるのは大企業のみである、または技術部門でのみ価
値があると考える人もいます。事実に反する多くの誤解があるのは明らかです。
ビジネス改革のためには、PDM の都市伝説を信じるのではなく事実を理解すべき
Tech-Clarity は、真実を知り、実践的な議論を促すことを目指し、2,500 社を超える企業を対象
にデータ管理に関する調査を行いました。ビジネス改革のために、企業は、PDM に対する根
拠のない都市伝説を信じることをやめて事実を理解すべきなのです。結局のところ、PDM を利
用しないのであれば、データの管理を行わないか、手動で管理することになります。これは非効
率的であるだけでなく、リスクを抱えることにすらなりかねません。『The Basics of Managing
CAD(CAD の管理における基礎)』にも「手動によるデータ管理アプローチの欠点やリスクは一
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部で認識されているものの、その他の企業では困難な方法を学ぶまでには至っていない」と記
載されています。
効果的なデータ管理の利点
PDM に関する誤解を検討する前に、その利点を考えてみたいと思います。Tech-Clarity の
PDM フレームワーク(図 1)では、PDM の主な機能として以下の 3 つの要素が挙げられていま
す。



製品に関連するデータの管理と保護
情報を迅速に特定し、再利用する能力の向上
製品に関連する知識の共有と他部門との連携
図 1: Tech-Clarity の PDM フレームワーク
こうした機能は、最終的に製品のイノベーション、設計、開発の改善をもたらします。データ管理
の改善は、純粋に価値のある取り組みであると言えます。こうした価値は、『The Business
Value of PDM(ビジネスにおける PDM の価値)』でも「PDM は、効率と品質の改善、コスト削
減、市場投入までの時間の大幅な短縮など、企業がビジネスの利点を実現する上で役立つ」と
示されるように多方面かつ戦略的なものです。
世界的なメーカーでは、PDM または PLM を利用する割合が 30% 高く、
非生産的なデータ管理作業に費やす時間は 25% 少ない
製品データ管理におけるベスト プラクティス
『Best Practices for Managing Design Data(設計データ管理におけるベスト プラクティス)』で
は、優れたデータ管理と業績には直接的な関係があることが指摘されており、「効果的なデータ
管理と世界クラスの製品開発能力には高い相関性がある」とされています。またこの調査で、世
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界的な製造企業では、PDM または PLM を利用する割合が 30% 高く、非生産的なデータ管
理作業に費やす時間が 25% 少ないことがわかりました。
また、このレポートの調査回答者は、PDM から得た重要なビジネスの利点として以下を挙げま
した。



「PDM により、製品の設計データ管理が可能になり、設計データの共有と再利用が簡
単になりました。」
「当社の技術部門では、3D CAD と PDM を統合することにより、プロジェクトの時間が
15% 減少しました。」
「当社ではおそらく、現在や過去の文書を探す時間が 20~25% 減りました。」
回答者が挙げるその他の利点として、「効率の改善」、「時間と労力の無駄の削減」等がありまし
た。
設計の課題と影響
ここで一度、設計に固有の基本的な課題と、PDM による業績の改善について理解を深めたい
と思います(図 2)。調査に回答した企業の約半数が、他の関係者との情報共有が設計の最大
の課題であると答えました。必要な情報を見つけるための労力が設計活動を阻害していると答
えた回答者も同程度の割合に達しました。3 分の 1 を超える回答者が、データの内容の誤りを
指摘しています。生産性を阻害する大きな要因が存在しますが、これらはデータの管理、アクセ
ス、共有という PDM の基本的な機能で簡単に対処することができます。PDM は、変更管理や
設計プロジェクトの管理に関連する高度な課題にも対応できます。
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図 2: データ管理に関する設計上の主要な課題
上記の課題がもたらす業務に対する影響はきわめて大きく、おそらく課題そのものよりも重要と
なります(図 3)。データの特定と共有が困難であることを考えると、データ管理の課題による設計
の非効率性に悩む企業が半数を超えるのも不思議ではありません。設計者は、データの特定
や他の関係者とのデータ共有で多くの時間を費やしています。Tech-Clarity のレポートである
『Reducing Non-Value Added Work in Engineering(付加価値を生み出さない技術活動の削
減)』では、これが大きな問題として指摘されており、「技術者は、付加価値を生み出さない活動
に(平均で) 3 分の 1 の時間を費やしている」とされています。
データ管理の課題による設計の非効率性に悩んでいると答えた企業が半数を超える
企業は、時間、品質、プロジェクト予算の目標が達成できないとも指摘しています。上記の課題
と同様、このような問題は、PDM の管理、アクセス、共有機能で簡単に対処することができま
す。
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図 3: データ管理の課題が設計・開発に与える重要な影響
優良企業の特定
Tech-Clarity による前回の調査では、データ管理と業績の強い相関性が明らかにされましたが、
このレポートではこの点についてさらに考察します。今回のレポートでは、製品設計で優れた成
果を上げている企業を明らかにし、どのような点が他の企業とは異なるのかについて分析します。
他の企業はこのような事例を学ぶことで、業績を改善することができます。
これを実現するために、われわれは 4 つの指標を分析し、製品開発において最もすぐれた成果
を上げている企業を明らかにしました。今回の調査では、以下の能力に関して自社の実績を競
合企業と比較し、評価することを各参加者に求めました。



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製品開発の効率性
高品質の製品の設計
迅速な製品開発
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
設計プロジェクト/プログラムのコスト目標の達成
これらのカテゴリにおける回答をもとに、上位の回答者を「優良企業」として分類し、その他すべ
ての回答者を「その他の企業」として分類しました。能力に関する回答を論理的に分類することに
より、上位 23% を優良企業としました。この 2 つの「能力クラス」を比較した結果、優れた成果を
上げている企業に共通するプロセス、ツール、組織の各アプローチが明らかになりました。
2 つの「能力クラス」を比較した結果、優れた成果を上げている企業に
共通するプロセス、ツール、組織の各アプローチが明らかに
優良企業では、上記の重要な影響を受ける割合が少なくなっています。たとえば、優良企業で
は設計の非効率性が 17%、期限の未達は 32% 少なくなっています。こうした優れた能力は、
競合企業よりも優れているという優良企業の自己評価を裏付けています。優良企業の優れた能
力は、重要な製品開発目標の達成能力においても明らかになっています。特に、優良企業は
設計の期限、品質目標、プロジェクト/プログラム予算に関して、計画を上回る結果を残す割合
が約 2 倍となっています(図 4)。また、計画を下回る企業では、3 つの指標すべてにおいて計画
に近い結果となっています。
指標
設計の期限
品質目標
プロジェクト/プログラム予算
目標を上回る優良企
業の割合
目標を上回るその
他の企業の割合
27%
26%
19%
13%
12%
10%
図 4: 能力クラスごとの設計開発目標を満たす能力
優良企業では、製品開発目標を達成できる割合がはるかに高いことが明確に示されています。
レポートの以下の部分では、こうした優良企業に特有の活動を明らかにし、成果が劣る企業に
対して推奨事項を提供します。
優良企業では、製品開発目標を達成できる割合が
はるかに高いことが示されている。
データ管理アプローチの評価
今回の調査のテーマでは、「その他の企業と比べた場合、優良企業は設計データをどのように
管理しているか」という疑問が当然出てきます(図 5)。データでは、優良企業が PDM を利用す
る割合が 37% 高いことが示されています。こうした企業では、PLM を利用する割合も 2 倍を超
えています。前回の調査では、体系的なデータ管理アプローチにより製品開発の能力が向上
することが明らかとなりましたが、上記の結果は、こうした事実を強力に裏付けています。
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優良企業では、PDM を利用する割合が 37% 高い
図 5: 製品データの管理・共有で使用している主要システム(能力クラス別)
優良企業とその他の企業の双方において何らかのツールが利用されていますが、その割合は
それほど変わりがありません。こうしたツールには、ポータル、Web ベースのファイル共有システ
ム(Box.net、Dropbox、Google ドライブ等)、一般的な文書管理システムがあります。これらの
ツールが利用者に与える実質的な違いは存在しないようです。
能力クラス間で次に大きな差別化要因となったのは、優良企業が行っていないことによるもので
あり、非常に興味深い結果となっています。たとえば、優良企業がネットワーク/共有ドライブを主
要なデータ管理システムとして利用する割合は 15% 少なく、ローカルのハード ディスク ドライブ/
フォルダを使用する割合は 32% 少なくなっています。電子メールやネットワーク ドライブなどの非
管理的アプローチを使用する企業はどちらの能力クラスにも存在するものの、優良企業では主要
システムとして利用される割合が低くなっています。
PDM および体系的なデータ管理ソリューションは業績を改善し、
非管理/手動アプローチでは成果が劣る。
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こうした結果では、PDM および体系的なデータ管理ソリューションは業績を改善し、非管理/手
動アプローチでは成果が劣ることが示唆されています。
企業が必ずしも PDM を利用しない理由
PDM やその他の体系的なデータ管理アプローチには明確な利点がありますが、「企業が必ず
しも PDM を利用しないのはなぜか」という疑問が当然出てきます。われわれは、PDM、または
PLM システムの PDM 機能を利用していないと答えた企業に対して、この点を尋ねました(図 6)。
データ管理に関して問題を抱えていないと答えた割合はわずか 8% であり、これが最も予想外
の結果となりました。こうした企業は PDM を使用していませんが、不要というわけではないよう
です。
「企業が必ずしも PDM を利用しないのはなぜか」という疑問が当然出てくる。
PDM を利用しない主な理由として企業が指摘したのは、「コストが高すぎる」でした。そのほか
の理由としては、IT リソースがあまりにも不足していること、導入が難しすぎることが挙げられて
います。PDM やその利点に対する理解の不足をはじめとして、指摘された理由は他にも数多く
あります。コストがきわめて重視されていることから、われわれは調査活動の一環として、PDM
の導入には多大なコストがかかるという想定(およびその他いくつかの考え)を検証することにしま
した。
PDM を利用しない主な理由として企業が指摘したのは、
「コストが高すぎる」であった。
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図 6: 企業が PDM を利用しない理由
「3D を利用しない」における誤解
データ管理ソフトウェアに関する一般的な誤解として、3D CAD を主要設計ツールとして使用する
場合にのみ必要となるという考え方があります。これを正確に言うならば、「3D CAD ではデータ
管理が必須となる」という発想です。しかし、データ管理は、2D CAD、Office 文書、スキャン文書、
そしてあらゆる形の成果物において大きな価値をもたらします。
3D CAD ではデータ管理が必須となるが、
データ管理は 2D CAD、Office 文書、スキャン文書、
そしてあらゆる形の成果物において 大きな価値をもたらす。
こうした混乱が生まれているのは、3D CAD で設計を行う多くの人が複雑なファイル関係により
PDM の使用を「余儀なくされている」と感じており、実際の状況も同じであるためです。3D の複
雑なファイル関係を PDM なしで管理するならば、ファイル関係が破損し、アセンブリを出力でき
ないといった問題が発生する可能性が高くなります。こうした企業では、PDM を利用する上での
苦痛も大きくなります。しかし、データ管理の価値が明らかになれば、文書、図面、テンプレート、
規格をはじめとして、3D をはるかに超える領域が管理できるようになるのが一般的です。
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PDM は、3D を主要設計ツールとして利用する企業だけのものではありません。3D への移行
にもかかわらず、多くの企業(42%)が 2D を主要設計ツールとして利用していると答えています。
データ共有とコラボレーションに関する一部の例外的な領域を除けば、2D と 3D の課題は比較
的似ています。これはおそらく、独自のフォーマット、ファイル サイズ、そして既に指摘したファイ
ル関係により 3D データの共有が難しいためです。
図 7: 製品データの管理・共有で利用される主要システム(設計ツール別)
2D の利用者は、同じ課題を多く抱えているものの、非公式のデータ管理手法を利用する割合
がはるかに高くなっており、PDM や PLM を利用する割合ははるかに低くなっています(図 7)。
繰り返しになりますが、これは問題が少ないという意味ではありません。主要設計ツールとして
2D CAD を利用し、かつ PDM を利用しない企業のうち、その理由として設計データに関する
問題がないと答えた割合はわずか 5% です。実際、2D の利用者では、更新されていないデー
タでの作業が課題となっていると答えた割合が若干高くなっています。2D の利用者では、
PDM を認識していない割合が 3D の利用者より高くなっており、これがコストとリソースにより非
管理データを利用している最大の理由となっています。
2D を主要設計ツールとして利用している場合にも
PDM により大きな価値が得られるが、
その選択肢がすぐに利用できることを認識できていない場合がある。
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2D を主要設計ツールとして利用している場合でも PDM により大きな価値が得られるものの、
その選択肢がすぐに利用できることを認識できていない場合があります。こうした状況では、
PDM の時間とコストに関する誤解を解消することが重要となります。多くの 2D 利用者は、改善
の大きな機会を見逃しています。
PDM の時間とコストに関する誤解
導入が長期にわたり、かつ多大なコストが発生するという恐ろしい話があまりにも数多くあります。
企業は、こうした話を聞いて、生産性と収益性に関して実績のある PDM の採用に尻込みして
います。しかし現実には、PDM の導入に多大な時間と費用が発生するとは限りません。企業が
プロセスや組織を大幅に変える場合には当然その可能性はありますが、こうした問題は、PDM
というよりは製品ライフサイクル管理(PLM)によるものであることが多くなっています。また、「複
数」を目指す場合(複数の工場、会社、言語、通貨、部門、国)には労力が多くなります。このよう
なシナリオでは変化する部分が多くなりますが、一般的にはソフトウェアの導入がコストと労力の
主な要因となることはありません。
現実には、PDM の導入において多大な時間と費用が発生するとは限らない。
図 8: PDM の導入にかかる時間
導入プロジェクトには数年かかり、数百万ドルのコストがかかるという認識は正しくありません(図 8)。
PDM 導入期間の中央値は約 9 ヵ月です。また、以下のことが明らかになっています。


13
半数を超える企業が 1 年未満で PDM を導入している
4 分の 1 を超える企業が 3 ヵ月未満で PDM を導入している
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必ずしも長い時間を掛ける必要はありません。コストについても同じことが言えます(図 9)。PDM
の導入では、必ずしも多額の費用を必要としません。コストの中央値は約 7 万 5,000 ドルであり、
実際は以下のようになっています。


半数を超える企業が 10 万ドル未満のコストで PDM を導入している
約 3 分の 1 の企業ではコストが 2 万 5,000 ドル未満である
こうした事実では、限られた予算でも効率的に PDM を導入できることが示されています。
こうした事実では、限られた予算でも効率的に
PDM を導入できることが示されている。
図 9: PDM の導入コスト
「PDM を導入するには会社が小さすぎる」という誤解
もう 1 つの誤解として、大規模な組織でしか PDM を利用できないというものがあります。データ
管理に関する Tech-Clarity の調査では、PDM を利用して業績を向上させた中小企業が数多
く存在することが明らかになっています。中小企業が指摘する課題は、大企業の課題とそれほ
ど大きく変わりません。実際、「データ管理に関して問題はない」と答えた割合は中小企業と大
企業でほとんど同じです。『Best Practices for Managing Design Data(設計データ管理におけ
るベスト プラクティス)』では、「データ管理の課題となるのは、企業の規模ではなく、製品の複雑
さである」と説明されています。
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中小企業が指摘する課題は、大企業の課題とそれほど大きく変わらない。
中小企業がデータ管理に関して大企業と同じ課題を抱えているならば、PDM を導入しないの
はなぜでしょうか。最も一般的な理由は、当然ながらコストとリソースに関するものとなるでしょう。
中小企業にとって有利な点として、中小企業は大幅に少ない導入コストで大企業と同じ PDM
の利点を実現できることが挙げられます。調査では、PDM の導入コストが組織の技術者/設計
者の人数に大きく左右されることが示されています。技術者が 20 人以下の企業では、PDM の
コストの中央値が 2 万ドル未満となっています。ここで明らかとなるのは、中小企業は PDM によ
り大きな利点が得られ、しかも大企業よりはるかに少ない投資で導入できるということです。
中小企業は、大幅に少ない導入コストで大企業と同じ PDM の利点を実現できる。
「限定的な導入では意味がない」という誤解
PDM の導入は大規模に開始しなければ価値がないと考える人がいます。こうした人たちは、す
べてが管理できなければ、導入の取り組みが無駄になると考えています。これは、真実からかけ
離れた考えです。多くの企業が小規模な活動を開始し、その後拡大しています。PDM を導入
した企業の約半数が、限定された範囲で活動を開始しました(小規模な機能、ユーザ、拠点、プ
ロジェクト、部門に限定)。小規模な活動から始めても業績の障害とはなりません。範囲を限定し
て始めた割合は、優良企業とその他の企業でほとんど同じです(図 10)。結論としては、小規模
な活動から始めても問題ありません。
PDM を導入した企業の約半数が、限定された範囲で活動を開始した。
『The Business Value of PDM(ビジネスにおける PDM の価値)』では、企業は PDM の価値を
実現し、「さらに多くのプロセスでの導入、ERP との統合、利用者の取り込み、必要に応じた追
加機能の利用により、時間とともに価値を高める」とされています。PDM は、機能拡張に対応し
たソリューションであり、必要に応じてより広範な PLM 導入の土台とすることも可能です(図 11)。
PDM は成長の基礎であり、「限定的な導入では意味がない」という性質のものではありません。
小規模な活動から始めても業績の障害とはならないと思われる。範囲を限定して
始めた割合は、優良企業とその他の企業でほとんど同じである。
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図 10: PDM 導入アプローチ(機能数、規模別)
図 11: Tech-Clarity の PDM 成熟度フレームワーク
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「PDM は CAD ファイルの管理でのみ利用される」という誤解
その他の一般的な誤解として、PDM はファイル管理(特に CAD ファイル)でのみ利用されると
いうものがあります。こうした誤解はおそらく、本来の機能を知らないまま「PDM」の頭文字のみ
理解しようとすることが多いため発生しています。本来、PDM は、ファイルに依存する作業(図
面の印刷)からプロジェクト管理まで、数多くの設計関連活動を合理化・自動化します。PDM で
最も一般的な活動として、部品表(BOM)の管理、設計リリース、変更管理などがあります(図
12)。
PDM は数多くの設計関連活動を合理化・自動化する。
図 12: PDM で管理するタスク
優良企業では、コラボレーション機能と高度なデータ管理機能を
利用する割合がはるかに高い。
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興味深いことに、PDM で実行される基本タスクは、優良企業とその他の企業でほとんど同じで
す(図 12)。いずれのパフォーマンス クラスでも、チェック イン/チェック アウト、BOM、改訂、変
更、リリースの管理に PDM を利用しています。優良企業では、コラボレーション機能と高度な
データ管理機能を利用する割合がはるかに高いことが大きな違いとなっています(社内でのコラ
ボレーション(30% に対して 44%)、マルチ CAD 管理(22% に対して 44%))。PDM には、ファ
イル管理以上の優れた機能が数多くあります。
PDM は「設計ツール」
今回の調査における最後の誤解は、設計者のみが PDM を利用し、その恩恵を受けることがで
きるという考え方です。PDM の用途は CAD ファイルに限定されませんが、同じく設計者専用で
もありません。最初はそうであっても、他の人が保管された情報の価値を認識し、前のセクション
でも見たように、プロセスが部門横断的プロセスに拡大するのに伴い、利用が活発化するのが
一般的です。
図 13: PDM を利用する部門
PDM は設計者だけのものではなく、PDM を利用する人が増えれば
それだけ業績も向上する。
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実際の所、多くの人があらゆる部門で PDM を利用しています(図 13)。こうした状況は優良企
業で顕著に見られます。製品/設計技術部門で PDM を利用する企業は、能力クラスの双方で
4 分の 3 を超えています。ただし、優良企業では、調達、サービス、工場、その他の非技術部門
で PDM を利用する割合がはるかに高くなっています。これらの部門では、単に業務で情報を
利用するだけであったり、または製品設計部門に対して情報を提供し、設計の初期段階で下流
のニーズを説明している場合もあります。結論としては、PDM は設計者だけのものではなく、
PDM を利用する人が増えればそれだけ業績も向上します。
結論
企業は、製品データ管理(PDM)を利用し、市場投入までの時間の短縮、製品品質の改善、イノ
ベーションの促進、効率の改善、製品コストの削減等を図ることで業績を改善できます。PDM
は、企業での製品データの管理、アクセス、共有を可能にし、企業が売上と利益を改善するた
めの強力なツールとなります。
このレポートは、2,500 社を超える企業に対する前回の調査で得られた事実を紹介し、PDM に
関して企業を教育することを目的としています。このレポートは特に、業界内でよく聞く以下の一
連の風説について明確な答えを与えています。
誤解: PDM は 3D CAD でのみ利用するものだ。
事実: 事実は異なり、2D CAD を主に利用する場合でも PDM から大きな利点が得ら
れる。
誤解: PDM は限定的な導入では意味がない。
事実: 大半の企業が範囲を限定して始め、次第に拡大している。
誤解: 中小企業では PDM が不要、または利点が得られない。
事実: PDM の必要性は製品の複雑性に大きく依存し、中小企業にも大きな利点が
ある。
誤解: PDM は CAD ファイルの管理でのみ利用するものだ。
事実: PDM は、あらゆる種類のファイルを管理し、重要かつ製品中心のプロセスを自
動化・改善する。
誤解: PDM は設計ツールである。
事実: 優良企業を含む大半の企業は、部門間での利用へと拡大している。
誤解: PDM では大きなコストが発生する。
事実: 実際は異なるが、「全社的変革」の一貫として導入する場合は大きなコストが発
生する場合がある。
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誤解: PDM の導入には多くの時間がかかる。
事実: 現実では異なることが示されている。
製品データをまだ管理していない企業においても、PDM の概念とその利用方法を明確に理解
し、実践的な議論を経て、PDM の利点が活用されることを願っています。
推奨事項
業界での経験と今回のレポートでの調査に基づき、Tech-Clarity は以下を推奨します。







このレポートで説明されている事実に基づき、PDM の導入に必要なコストと時間に関
する思い込みを再考する。
主要設計ツールとして 2D を利用する企業は、PDM の必要性と価値を認識する。
主要設計ツールとして 3D を利用する企業は、PDM には複雑なファイル関係の管理以
上の価値があることを認識する。
中小企業は、データ管理の課題では複雑性が重要な要素であり、規模はそれほど重要
でないことを認識する。ただし、PDM のコストは規模によっても左右されることを認識す
る必要がある。これにより、魅力的な ROI を備えた強力な改善機会が得られる。
PDM の導入は小規模な活動から始め、時間とともに価値を拡大することで、着手する
上での障壁とビジネスの利点に関する障害を減らせることを認識する。
PDM を利用していない場合は、まずは開始して長期的に価値を高める。
PDM を利用している場合は、PDM により成長の基礎が得られることを認識する。追加
機能を導入し、さらに多くの部門へと拡大することで価値を高める。
著者について
Jim Brown 氏は、ソフトウェア テクノロジーとサービスのビジネス バリューを分析することを専門と
する独立系の調査コンサルティング会社、Tech-Clarity の社長です。20 年以上にわたって製造
業界向けソフトウェアを扱っており、業界内でのさまざまな役職、経営コンサルタンティング、ソフ
トウェア業界といった幅広いバックグラウンドを持っています。調査対象は、PLM、ERP、品質管
理、サービス ライフサイクル 管理、製造、サプライ チェーン管理、その他さまざまなエンタープラ
イズ ソフトウェアにおよんでいます。ソフトウェア テクノロジーを使用して、製品イノベーション、製
品開発、エンジニアリング パフォーマンスを向上させることに注力しています。
調査、執筆、講演などでは豊富な活動経験があり、カンファレンスやその他のあらゆる場所で、
ソフトウェア テクノロジーによる企業業績の向上に情熱を傾ける人たちと語り合っています。
Jim の連絡先は [email protected] です。PLM ブログ(www.tech-clarity.com)で
は、その他の調査の閲覧、Tech-Clarity TV の視聴、Clarity への参加が可能です。また、
Twitter (@jim_techclarity)や Tech-Clarity の Facebook (TechClarity.inc.)でも Jim をフォ
ローできます。
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調査について
Tech-Clarity は、設計においてソフトウェアを多用する製品について Web ベースの調査を行
い、2,500 件の回答を収集・分析しました。この調査は、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、
日本語、韓国語、ポーランド語、簡体字中国語で行いました。調査への回答は、Tech-Clarity、
オートデスク、Engineering.com が直接の電子メール、ソーシャル メディア、インターネット上の
投稿により収集しました。
回答者は、約半数(54%)が一般個人で、3 分の 1(33%)がマネージャでした。残りの 12% は組
織のディレクター、VP、エグゼクティブでした。
回答者の会社規模はさまざまで、39% が中小企業(5,000 万ドル未満)、16% が 5,000 万~
1 億ドル、12% が 1 億~2 億 5,000 万ドル、16% が 2 億 5,000 万~10 億ドル、17% が
10 億ドルを超えていました。会社規模の金額はすべて、米ドルで換算しています。
また、技術者または設計者の数で見た場合の会社規模もさまざまであり、5 人未満は 28%、
6~20 人は 26%、21~100 人は 21%、101~500 人は 12%、500 人超は 13% でした。
回答企業は製造・設計業界を網羅的に代表する構成となっており、産業設備/機械(34%)、自
動車および輸送機器(22%)、建築設備・建材メーカー(17%)、ハイテクおよびエレクトロニクス
(15%)、その他、エネルギー/ユーティリティー、化学、消費財、ライフ サイエンス/医療機器等が
含まれています。一部の企業が複数の業種で活動していると答えているため、合計は 100% を
超えています。
回答者は、グローバルな事業活動を行っていると答えており、その事業領域は、アジア/環太平
洋地域で多数(60%)、北米が約 3 分の 1(35%)、西ヨーロッパが同じく 3 分の 1(31%)、東ヨー
ロッパ 12%、ラテン アメリカ 7% となりました。一部の企業が収益の 10% 超を複数の地域で得
ていると答えているため、合計は 100% を超えています。
回答者には、製造業者だけでなく、サービス企業およびソフトウェア企業も含まれていますが、
設計または製造に直接関与しないと判断された企業は本分析に含まれていません。
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