WHO:食の安全に関する10の事実

WHO:食の安全に関する10の事実
10 facts on food safety
February 2015
(仮訳)鹿児島大学名誉教授
岡本嘉六
大多数の人々は、自分の生活のある時点で食品や水が媒介する疾病を経験す
るだろう。このことは、我々が食べる食料が潜在的に有害な細菌、寄生虫、ウ
イルス、毒素あるいは化学物質で汚染されていないことを確実にすることの重
要性を強調している。
「食品の安全性:農場から食卓まで、食品を安全にする」は、世界保健デー
2015のテーマである。この日は、国際化した世界における食料供給網の全長に
沿って、生産と輸送から調理と消費まで食品の安全性の重要性を示すことに焦
点を当てる。
過去半世紀以上に亘って、農場から食卓までの食料を得る工程は劇的に変わ
ってしまった。一ヶ所で起きた食品汚染は地球の反対側に住んでいる消費者の
健康に影響を与える可能性がある。このことは、食料供給網に沿って全ての者
が、生産者から消費者まで、安全な食品の取扱い慣行に注意しなければならな
いことを意味している。
1.200種類以上の病気が食品を介して広がる
数百万の人々が、安全でない食品を食べた結果として毎年病気になり、多数
が死亡している。下痢性疾患だけでは毎年、推定150万もの子供を殺しており、
これらの病気のほとんどは汚染された食物や水の消費に起因している。適切な
食品の調理はほとんど食品媒介疾患を防ぐことができる。
2.汚染した食品は長期に亘る健康障害を引起し得る
食品媒介疾患の最も一般的な症状は、胃痛、嘔吐および下痢である。重金属
や自然毒で汚染された食品は、癌や神経障害を含む長期的な健康障害も引き起
こすことがある。
3.食品媒介疾患は脆弱な人々に他のグループよりも深刻に影響する
汚染された食料によって引き起こされる感染症は、貧困や脆弱な健康状態の
集団にはるかに重度の影響を与え、深刻な病気と死亡に簡単に繋がり得る。乳
児、妊娠女性、病人および高齢者にとって、食品媒介疾患の結果は、一般的に
より厳しく致命的になることがある。
4.食品汚染が起きる多くの機会がある
今日の食料供給は複雑であり、食料が消費者に達する前に、農場での生産、
屠殺や収穫、加工、貯蔵、輸送および流通を含む様々な段階の範囲が含まれる。
5.国際化は食品安全をより一層複雑化、不可欠にしている
食料生産と貿易の国際化は、食料供給網より長くし、緊急事態の場合に食品
媒介疾患の発生調査と製品リコールを複雑にしている。
6.食品安全は他部門に亘り学際的である
食品の安全性を向上させるため、多数の様々な専門家が協力し、利用可能な
最高の科学と技術を利用している。公衆衛生、農業、教育および貿易を網羅す
る様々な政府部門や機関が、相互に協力して情報交換し、消費者団体を含む市
民社会に向き合う必要がある。
7.食品汚染は全体として経済と社会にも影響する
食品汚染は公衆衛生上の直接的結果を超えて広範囲に亘って影響しており、
先進国と発展途上国の両方において、食料の輸出、観光、食品取扱者と経済発
展を損なっている。
8.一部の有害細菌が薬剤治療に抵抗性となりつつある
抗菌薬耐性は、地球規模の保健上の懸念に膨れ上がっている。ヒトの臨床使
用に加えて農業と畜産における抗菌薬の多用と誤用は、抗菌薬耐性の出現およ
び拡大をもたらす要因の一つである。動物における抗菌薬耐性菌は、食品を介
してヒトに伝播することがある。
9.全ての者が食品安全を維持する役割を持っている
食品の安全性は、政府、業界、生産者、学界および消費者の間で分け合う責
任である。全ての者が役割を持っている。食品の安全性の達成には、毒物学、
微生物学、寄生虫学、栄養学、保健経済学、および医学と獣医学などの様々な
分野の専門知識を必要とする多部門の活動による。地域社会、女性グループお
よび学校教育も重要な役割を担っている。
10.消費者は食品安全慣行に関して十分に知らされなければならない
人々は情報を知らされ、賢明な食品の選択を行い、適切な行動を取らなけれ
ばならない。一般的な食品の危害および食品を取扱う方法を知り、食品表示に
提供されている情報を活用しなければならない。