5.2 一般ボランティアとの連携体制整備の方向性

5.2 一般ボランティアとの連携体制整備の方向性
被災地内外から駆けつける一般ボランティア(団体・個人)を効果的に受入れ、災害後の
さまざまなニーズの処理が図れるようにするための体制整備の基本的な方向性としては、
次のように考えられる。
①受入れ手順の明確化(災害ボランティア・センターの立ち上げ)
今後大規模な災害が発生した場合、一般ボランティアが被災地外から多数支援に駆
けつけると予想される。一般ボランティアは被災地の実状(地理、地域性等)を熟知し
ているとは限らないこと、一般ボランティアの目的があくまで被災地支援にあることを
考えると、被災地となる地方公共団体においては、まず、駆けつける一般ボランティア
をどのように受入れるのかを明確にしておく必要がある。受入れシステムの検討にあ
たっては、地域内の社会福祉協議会や青年会議所、日本赤十字社都道府県支部等
の民間団体及びナホトカ号流出油災害で見られた一般ボランティア・コーディネート組
織(一般ボランティアの広域的な募集及びコーディネーションの実績とノウハウを持つ
災害ボランティア専門組織)との関係に留意する必要がある。
具体的には、まず、地元ボランティア関係組織(社会福祉協議会、日本赤十字社、青
年会議所、商工会議所、農業協同組合、漁業協同組合、生活協同組合等)の理解を
得て早期に災害ボランティア・センターを立ち上げ、運営を開始できる体制を整える必
要がある。さらに、一般ボランティア・コーディネート組織が駆けつける場合を想定して、
対応窓口の明確化等必要な情報交換や支援受入れの体制を整える必要がある。図 5.
2.1 にその立ち上げフローを示した。
②活動コーディネート体制の整備(災害ボランティア・センターの運営)
一般ボランティアを受入れた後、被災地のニーズとボランティアを効果的に結びつけ
るための活動コーディネート体制を明確化する必要がある。これがあいまいなままで
あると、せっかくの善意が空回りし、貴重な時間と労力をむだにすることになる。
具体的には、①で立ち上げた災害ボランティア・センターを円滑に運営できる体制を
整えていくことが必要である。以下、災害ボランティア・センターの機能等について示
す。
*災害ボランティア・センターの機能
災害ボランティア・センターは、災害発生時に被災地内外から駆けつける一般ボラ
ンティア(個人・団体)や後述する医療、保健、福祉等さまざまな分野の専門ボランテ
ィア組織・団体の活動を円滑化する機能を持つ。主な機能としては、以下の点が考
えられる。
・行政や地元団体との協議、調整
・ボランティア活動方針の決定
・活動拠点の確保
・一般ボランティアの受付
・ボランティア団体間の情報交換
図 5.2.1 災害ボランティア・センターの立ち上げフロー
・一般ボランティアの募集、調整
・被災地ニーズの把握
・被災地情報の発信(ホームページ等)
・一般ボランティアの配備、ローテーションの決定及び一般ボランテイアヘのオリエ
ンテーション
・活動に必要な資機材の確保、提供
・宿泊場所の情報提供
・ボランティアの健康管理・救護
・ボランティア活動の記録整理
・マスコミ対応
・災害ボランティア・センターの運営費の調達、管理
・その他一般ボランティア活動に関する庶務的な機能
*災害ボランティア・センターの運営主体及び組織形態
災害ボランティア・センターは、原則、地元ボランティア関係組織によって運営する
こととし、事前にその体制を整備しておく。ただし、発災時、災害の態様によって、地
元のみでは円滑な運営が困難な場合は、一般ボランティア・コーディネート組織等と
の連携により円滑な運営体制を確保する必要がある。その場合の組織形態につい
ては、効率的な運営が図れるよう、両者協議して定める必要がある。
なお、災害の態様によっては、行政が災害ボランティア・センターの運営主体とな
ることもあり得るが、行政機能の低下を招くことにつながるので、避けるべきである。
また、災害ボランティア・センターの設置にあたっては、災害ボランティア・センター
が行政と情報連絡が図れるよう、地方公共団体側の連絡調整窓口を明確化すべき
である。
③災害ボランティア・センターへの支援
一般ボランティアの活動のコーディネートが円滑に進むためには、災害ボランティア・
センターの運営に関して必要な範囲の支援を行政が行う必要がある。具体的な支援
内容としては、以下のものが考えられる。
・活動拠点(空間)の提供
・センター運営資機材の提供・あっせん(事務室、テント、プレハブ、電話、FAX、コピー
機、パソコン、用紙、文房具等)
・情報の提供
・その他の支援活動
なお、災害ボランティア・センターの運営にあたっては、上記の使用に伴う光熱水費
や通信費等の経費負担が伴うが、これについては、運営主体となっているボランティ
ア組織と負担方法等について検討する。
④一般ボランティア対応に伴う被災地地方公共団体の負荷増大に対処するための支援
体制の明確化
災害時に一般ボランティアが多数駆けつける事態では、ボランティアとのさまざまな
調整作業が地方公共団体において派生すると予想される。これは、行政とボランティ
アとの連携によるきめ細かな対応が図られている証拠であり期待すべき事象であるが、
一方で被災地の地方公共団体にとっては大きな負担となる。その負担を軽減するため
には、被災地都道府県から被災地市区町村へ、あるいは他都道府県、市区町村から
被災地都道府県、市区町村への支援体制を地域防災計画等で明確にしておく必要が
ある。
⑤広域災害時の災害ボランティア活動の調整体制の整備(都道府県単位の災害ボラン
ティア・センターの設置)
複数の市区町村、複数の都道府県が被災する広域災害が発生した場合、ボランティ
アの過不足の調整、資機材等の調整等がなされ、効率的な被災地支援がなされるこ
とが望まれる。そのためには、災害ボランティア・センター間の調整を図るための仕組
みを整備する必要がある。具体的には、災害発生時にこれを機能として持つ災害ボラ
ンティア・センターを都道府県単位で設置し、市町村間、都道府県間の調整を図ること
が考えられる。
⑥コーディネーターの育成及び広域的組織化
災害ボランティア・センターの円滑な運営のためには、運営をコーディネートできる人
材の育成を地域内で日常的に図っていく必要がある。そして、各地のコーディネーター
が、自らの地域が被災していない場合、被災地域のコーディネーターを支援できるよう
広域的な組織化を図っていく必要がある。
⑦地域内外のボランティア関係団体との平常時のコミュニケーションの維持とネットワー
ク化
これまで示してきた課題を平常時に的確に処理していくためには、地域内外のボラン
ティア関係団体等との間で、日頃からコミュニケーションの維持を図るとともに、5.1 で
記したようにこれら団体間のネットワーク化の支援を行っていく必要がある。
特に、ボランティア・センターを円滑に機能させるためには、地元ボランティア組織の
育成を図り、具体的な運営マニュアルなどの協議を行っていく必要がある。
⑧ボランティア意識の醸成
各地方公共団体は、一般ボランティア活動の活性化を図るため、住民への啓発を推
進するとともに、企業・労働組合との連携や学校教育の中でボランティア教育の実施
を積極的に進めていく必要がある。また、ボランティアリーダーの育成を図るため、地
元ボランティアが参加できる研修や訓練を実施すべきである。