住宅メーカーが投入する ゼロエネルギー住宅(ZEH)

住宅&住宅設備トレンドウォッチ
住宅関連 制度・マーケット情報
住宅メーカーが投入する
ゼロエネルギー住宅(ZEH)
INDEX
2015 /1 1 /20号
1 ZEHで業界をリードする積水ハウスの取組み
1
2
2 実邸調査で家電含むZEH化率を公表∼積水化学工業
3
3 2018年までに100%ZEH化を目指す∼パナホーム
経済産業省は 8 月末、2016 年度の予算概算要求を発表しました。この中で住宅に関連するものに「住宅・ビルの革新的省エネルギー技
術導入促進事業費補助金」として 190 億円が計上されています。
前年は 2015 年度補正予算で 150 億円が成立していますが、来年度はこれを上回る予算要求が提出されており、年々拡大の傾向にあります。
また今年 9 月には、ZEH 普及に関するロードマップ案を提示しています。
①これまであいまいだった ZEH の定義を今年度中に確定させる
②ZEH に準ずる「Nearly ZEH(仮称)
」を設定する
といった項目が盛り込まれていて、現状 2 つ存在する ZEH の定義を確定させることで、混乱をなくそうという狙いと見られます。
住宅分野での省エネ化を目標に、2010 年から構想がスタートした ZEH ですが、いよいよ本格的に普及を目指そうという段階に差し掛かっ
ています。今回はハウスメーカー各社の ZEH への取り組みについてご紹介します。
1 ZEH で業界をリードする積水ハウスの取組み
住宅メーカーの中でも ZEH に対して積極的な取り組みを見せているのが積水ハ
ウスです。同社では、2014 年度の請負住宅の内 59%で ZEH を達成しており、
ZEH 市場シェアの 48%と約半数は同社が供給した物件だと推計しています。
積水ハウスの ZEH 商品である「グリーンファーストゼロ」のポイントは、標準
地域よりも高いハイグレード断熱仕様(東北北部レベル)を採用している点と、
各種の省エネ、創エネ設備が充実している点です。
太陽光発電は既に住宅メーカーが供給する住宅の半数以上に搭載されています
が、他社との大きな違いはエネファームの採用率が高いということです。2014
年度の同社のエネファーム採用率は 49%と半数近くの住宅で採用されており、
これが年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロになる ZEH の基準を満たす、
ZEH 達成邸の増加につながっているものと見られます。
これまで高い導入目標を掲げて取り組んできたことで、省エネ・創エネ設備の集中購買によるコスト低減をアピール。グリーンファース
トゼロの販売価格は同社の通常の住宅の 1.2 倍程度に収まっているとしています。
ZEH とすることで建築コストは上がるものの、光熱費の大幅削減と、今までにない快適性が得られるとして、コストアップに見合う価値
を訴求している点が、同社で ZEH 達成率が高い理由と見られます。
積水ハウスの事例からも分かるように、ZEH の普及のポイントとなっているのが、エネファームです。東京ガスが供給しているエネファー
ムでは、災害などで停電が発生した際(※)にも、照明や通信機能など必要最低限の電力が確保される仕組みとなっています。
また、エネルギーの分散化によって、ZEH 達成や地球環境保全に加えて、災害時の安心にもつながる点が大きな特徴で、これから標準的
な住宅での達成を目指す際のキーアイテムだと言えそうです。
※停電時にエネファームを発電させるための都市ガスと水道が供給状態であることが必要。
2 実邸調査で家電含む ZEH 化率を公表∼積水化学工業
省エネや住宅内の光熱費削減に力を入れている積水化学工業では、
・2011 年
「スマートハイム」
・2012 年
「進・スマートハイム」
・2013 年
「ミライクラス」
∼大容量太陽光発電に HEMS を標準搭載
∼スマートハイムに大容量蓄電池を搭載
∼高断熱仕様を搭載し ZEH を標準化
「スマートパワーステーション」
∼ 10kW 以上の太陽光発電を搭載
・2014 年
「V to heim」
・2015 年
「V to heim(対応車種拡大)
」
∼電気自動車とソーラー住宅の連携
∼プラグインハイブリッド自動車に対応
というように、次々に新しい商品を投入することで需要を喚起してきました。
また、同社はスマートハウス投入前から、太陽光発電システムの普及を会社の戦略として注力しており、入居者へのアンケート等による、
光熱費削減効果などのアピールを得意としています。
例えば、今年 2 月の「太陽光発電システム搭載住宅の電力収支実態調査(2014)」では、2014 年の ZEH 達成邸は 66%だったと発表してい
ます。この内、2014 年度 ZEH 補助金要件(家電抜き)が 49%、今後目標とされる家電込の ZEH についても 17%が達成したと発表しました。
さらに、ZEH(家電込み)邸での年間光熱費収支は約 11 万 5 千円のプラスになったとし、家計にも優しい住宅であることを訴求しています。
このように、新商品の開発・投入と、入居者データを活用した訴求により、2020 年には家電も含めた ZEH の標準化を目指していく構えです。
3 2018 年までに 100%ZEH 化を目指す∼パナホーム
積水ハウス、積水化学に並んで、ZEH の普及に力を入れているのがパナホーム
です。同社では、2014 年 4 月に住宅の ZEH 化を進化させエネルギー収支ゼロを
超えるエコ性能を備えた「ゼロエコ」仕様を新しく設定しました。
・「太陽光+蓄電システム」
・「家まるごと断熱」+「エコナビ搭載換気システム HEPA プラス」
・「スマート HEMS」
+
「プライベート・ビエラ」
という装備により ZEH 化を目指すものです。
ゼロエネルギーを達成するだけでなく、太陽光発電システム「HIT」による効率的な発電、「エコナビ機能搭載」の換気システムによる健
康への配慮、HEMS と持ち運び可能なテレビ「プライベート・ビエラ」との連動といったように、パナソニックの技術を応用した快適な住
まいをアピールしています。
パナホームは、パナソニック創業 100 周年記念の年である 2018 年には、戸建て全商品の 100%ZEH 化を目指すということを掲げています
ので、今後の動向にも注目です。
このように政府が補助金やロードマップを整備し、住宅メーカーが業界を先導する形で取り組むことで ZEH の普及は進んでいくと見られ
ますので、今後も業界の動向に注意が必要だと言えそうです。
(テキスト/株式会社住宅産業研究所 関 和則さん)
ぜひ
ブックマーク
してください
東京ガス 住宅関連企業さま向けホームページ OPEN!
biz.tokyo-gas.co.jp