花井杯(11/10) 演題「我が国を守るには」 法学部一年 高野馨太

花井杯(11/10)
演題「我が国を守るには」
法学部一年
高野馨太
私は、陸上自衛隊員です。予備自衛官になるべく、学業の合間に、訓練に励んでおりま
す。私は、訓練に参加していたある時、
「自衛隊員の心構え」なる文章を読み、真にその通
りだと、感服したのであります。
曰く、
『われわれは、日本の国土、および、国民に、誇りを持ち、愛着を感じる。この国を守
ることは、われわれの、当然の義務であり、これに、われわれの努力の成果を加えて、次
の世代に送るのでなければ、その任務を果たし得た、ということはできない』
われわれとは、自衛隊員に限らない。この国を守っていくのは、我が国国民である。我
が国への脅威は、迫りつつある。国民全体が、危機感を持ってこの国を守っていかねばな
りません。
本弁論の目的は、尖閣問題に象徴される、緊迫する、我が国の安全保障環境を鑑み、我
が国の、防衛政策の在り方を、提言することにある。
我が国の位置するアジア地域には、アセアン、インド、中国と、経済発展が著しい、新
興国が連なっている。アジア域内における経済成長に伴って、軍事費の増加も顕著である。
アジア地域は、軍備拡張の時代を迎えている。
その中で、我が国が真っ先に着目せねばならないのは、中国である。なぜなら、中国は、
我が国と近接する国々の中で、最も、軍事力の増強が顕著であり、合わせて、近年、中国
による、尖閣諸島の領有権主張の勢いが、増してきているからである。
私の問題意識は、中国の軍事力増大によって、我が国が侵される恐れが、高まっている
ことである。
中国の、台頭。
中国は近年、著しい経済成長を遂げてきた。GDP は、10 年間で 2 倍を超え、我が国を抜
き去り、世界第二位の経済大国となったことも記憶に新しい。軍備拡張にも、非常に積極
的である。中国は、10 年間で軍事費が 3 倍以上にまで膨れ上がった。現在の中国の軍事費
は、日本円に直すと、8 兆円を超す。
一方、我が国の防衛予算は、5 兆円に満たず、その上、縮減の傾向にある。過去 10 年間
で、我が国の防衛予算は、1500 億円減少した。財政赤字が深刻化し、経済成長が頭打ちと
なり、また、少子高齢化が進む社会情勢下において、軍事費の増額は、極めて困難である。
日中両国の軍事費の差は、今後も増大していかざるを得ない。
そして、中国の増大する軍事費は、海軍を中心とする戦力に投入されている。中国は、
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1990 年代半ばの、台湾海峡危機以来、優先して海軍力の拡充を図ってきた。中国の安全保
障上の脅威は、海から来ると確信し、また、海洋進出によって、国運の興隆を図っている。
中国は、より遠くの海に軍隊を派遣し、作戦を展開できるようになっている。中国軍の、
作戦が可能な領域が増大するということは、東シナ海を経て隣り合い、中国と尖閣諸島を
巡り、争う、我が国への脅威が、増しつつあるということである。近年、中国による、我
が国領海への侵犯行為が絶えない。我が国の、中国に対する抑止は、ほころびを見せてい
る。
我が国はいま、早急に対策をしなければならない。
それでは、我が国の、中国に対する抑止が、ほころびを見せている原因は、何であろう
か。
それは、中国の「外洋展開能力」の向上に対して、我が国の「接近拒否能力」が、不足
していることである。
「外洋展開能力」とは、自国から、遠く離れて活動する能力のことで
あり、
「接近拒否能力」とは、自国の周辺に、敵国部隊を侵入させない能力のことである。
中国は近年、
「外洋展開能力」を向上させている。その主力たるのが、空母である。中国
は、空母艦隊の建造、配備を今後も進めていく方針である。空母は、より広い海域や空域
をコントロールする能力を持つ。中国の空母艦隊の整備によって、我が国周辺海域への、
安全が侵される危険性が高まりつつある。
そして、それら、
「外洋展開能力」に対抗するのが、
「接近拒否能力」である。
「接近拒否能力」は、潜水艦、ミサイル戦力が、その主力をなす。現代軍事技術におい
てさえ、潜水艦や、ミサイル戦力は、迎え討つことが、極めて困難な兵器である。ゆえに、
その標的となる、空母をはじめとする、「外洋展開能力」にとっては、非常に脅威であり、
ここに抑止力が働くのである。
だが、我が国は、専守防衛の原則を受けて、ミサイル戦力を保有していない。ミサイル
戦力は、攻撃兵器とみなされて、我が国は保有することができなかった。我が国は、最も
強大な「接近拒否能力」である、ミサイル戦力の開発、配備を行っていないのである。こ
れでは、増大する中国の「外洋展開能力」に対抗することはできない。
我が国にとって、目下、脅威となっているのは、「中国の外洋展開能力の増強」である。
中国の、増大する「外洋展開能力」に対抗するには、我が国に、強力な「接近拒否能力」
が必要なのである。
以下、政策論に移る。
「接近拒否能力の拡充のために、ミサイル戦力の開発、配備を提言する。
」
具体的には、弾道ミサイルならびに巡航ミサイルである。我が国は、これらミサイル戦
力を保有していない。早急に、両ミサイル兵器の開発をはじめ、部隊配備をする必要があ
る。これらミサイル戦力を用いて、海から迫りくる、敵国部隊の外洋展開を、迎え撃つこ
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とができる。抑止力の維持に必要な、最低限の運用数量は、それぞれ二個中隊、すなわち、
ミサイル 70 基程度だと見込まれる。それらの開発、建造には、6000 億円の費用がかかる。
そして、我が国がミサイル戦力を保有するために、以下二つの政策を打つ。
一つ、制度上の問題に対して。
専守防衛の原則の解釈を変更する。
我が国の防衛力整備は、平和憲法に合致するとされた「専守防衛の原則」に縛られてい
る。攻撃能力を有するミサイル戦力を、我が国は持つことができなかったのである。
解釈変更の内容については、あくまで、敵国から攻撃を受け、軍事行動を開始する、専
守防衛の骨子は残し、武器の取得には、制限を設けないこととする。解釈の変更に際して
は、内閣閣僚の閣議において、決定することで達成される。
二つ、財源に対して。
財源は、我が国の防衛力整備の、内実を変更することによって、解決される。
財源確保のための政策は、二つである。
一つ、我が国の、外洋展開能力を抑制する。
我が国の防衛力整備は、
「外洋展開能力」の拡充に向かっている。海上自衛隊史上、最大
規模となる、艦艇の建造がはじまっている。この艦艇は、大規模な、海上における輸送能
力を有し、我が国の外洋展開能力を、大いに高める。だが、我が国が、真に備えるべきは、
中国の「外洋展開能力」の向上であり、それにあたっては、我が国の、
「接近拒否能力」の
向上を、まず図らねばならない。これら艦艇の建造計画を取りやめることで、当座計画さ
れていた、1200 億円の予算が、確保される。
一つ、ミサイル防衛システムを廃棄する。
ミサイル防衛システムとは、
「接近拒否能力」の主力たる、ミサイル戦力を迎撃するシス
テムである。日本、ならびにアメリカのミサイル迎撃実験においては、ミサイルの迎撃成
功率は、概ね8割程度にとどまっている。実戦においては、高度かつ、複雑な状況下にお
いて対処しなければならず、その成功率は、さらに低くなる。ミサイル防衛とは、実戦に
おいて、有効性が、はなはだ疑問視されるシステムなのである。ミサイル防衛システムに
は、毎年、1200 億円もの、巨額の予算が計上されている。ここから、安定的な財源として、
1200 億円が確保される。
以上から、来年度においては 2400 億円の予算が確保され、4 年間で 6000 億円の財源が確
保できる。これによって、両ミサイル兵器の保有に必要な、6000 億円の確保が可能となる。
我が国にとって、いま最も何が脅威か。それは、中国の軍事力の拡大、とりわけ、「外洋
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展開能力」の拡充であります。我が国を守るために、いま最も何が必要か。それは、中国
の「外洋展開能力」に対する、
「接近拒否能力」の拡充であります。接近拒否能力の拡充に
よって、我が国の安全を保障することができる。我が国の防衛政策の採るべき道は、
「接近
拒否能力の拡充」にこそあるのです。ご清聴ありがとうございました。
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