日本の国宝建造物の壮大な模型が東京へ里帰り 明治

プレスリリース
2015 年 2 月 5 日
日本の国宝建造物 の壮大な模型が東京へ里帰り
明治期の台徳院殿霊廟模型、日本初公開
東京の失われた国宝建造物の中でも重要な建築の一つに挙げられる台徳院霊廟の 1/10 スケール模型
が、100 年余ぶりに日本に戻りました。英国ロイヤル・コレクションの1つであるこの模型は、徳川家 2 代
将軍、徳川秀忠公(1579-1632)の墓所である台徳院霊廟を再現したものです。エリザベス 2 世女王陛下
のお許しで、日本の職人の手による 12 ヶ月にわたる丹念な修復作業を経て、当初霊廟が建造されてい
た東京(かつての江戸)の増上寺にて、長期公開されます。本模型は 徳川家初代将軍、家康公の没後
400 年を記念した展示(4 月 2 日より一般公開)の中核をなすものです。
台徳院殿霊廟は、1632 年、徳川家の菩提寺である増上寺の境内に建造され、その名は秀忠公の法名に
因んでいます。本霊廟はその後の霊廟建築におけるひな形の一つとなっており、特にさまざまな場所に施
された独特の装飾は大きな影響を与えましたが、1945 年、東京への戦時中の爆撃により焼失しました。
模型は 1910 年にロンドンで開催された日英博覧会のために東京市(当時)が発注したもので、より小型
の日本の歴史的建造物模型 13 点と共に展示されました。高名な彫刻家、高村光雲など東京美術学校
(現・東京芸術大学)の専門家による監修の下、当時トップクラスの大工、漆職人、彫刻家らによるチーム
が製作を担当。幅 3.6 メートル、奥行き 5.4 メートル、高さ 1.8 メートルで、同博覧会のために依頼された
大半の模型の 5 倍の大きさでした。
ほん でん
はいでん
あ い の ま
模型は、台徳院殿霊廟を構成する三棟、本殿、拝殿、相之間を内外にわたり、色彩豊かに細部に至るま
で再現しています。屋根は数千枚に及ぶ親指の爪サイズの銅瓦など、素材や技巧にも忠実です。
東京での修復作業は主に本殿部分で、屋根瓦や漆塗りの木の枠組みや扉、御簾、徳川家の家紋、金箔
しゅ み だ ん
らいごうばしら
を施した阿弥陀浄土図などの壁画の修理や洗浄などが行われました。須弥壇の両端に立つ来迎柱は特
すき べい
に注意深く修復され、霊廟を取り囲む巨大な透塀の洗浄と再構築もおこなわれました。
日英博覧会は 1910 年 5 月 14 日から 10 月 29 日までロンドンのホワイトシティで開催され、日本が参加
した国際博覧会としては最大規模のものでした。発展を遂げる日本国のイメージを英国に発信し、両国の
貿易関係を強化することを目的としていました。この博覧会では日本の工芸・音楽・スポーツ・娯楽のデモ
ンストレーションも行われ、英国王ジョージ 5 世やメアリー王妃も訪問、来場者は 800 万人超に達しました。
その後、霊廟の模型は国王に贈呈され、長年にわたり王立植物園(キューガーデン)にて一般公開されて
きました。
ロイヤル・コレクション・トラスト 総責任者 ジョナサン・マースデンより
「この類まれな模型の存在意義は、オリジナルの建物と敷地の消滅によってさらに高まっています。私は
エリザベス 2 世女王陛下の代理として、ロイヤル・コレクションの一つであるこの見事な作品の管理責任
を担っておりますが、ロイヤル・コレクション・トラストと増上寺の素晴らしい提携のおかげで、この模型が
最高の職人によって修復され、東京の皆さんに江戸時代の最高建築を十分にご堪能いただけることを嬉
しく思います。」
駐日英国大使 ティム・ヒッチンズより
「長い年月を経て、台徳院の模型が日本に戻ることを非常に喜ばしく思います。2008 年に皇太子殿下が
訪日された際、模型の来迎柱の一つを増上寺の副住職に贈りました。今回は模型全体が戻ります。英国
と日本が協力することで、歴史的にも政治的にも重要かつ非凡な職人技を広く一般に届けることができる
という、今後のあり方を象徴的する素晴らしい出来事です。この模型は、炎に消えて取り戻せないと思わ
れた建物を甦らせます。」
大本山増上寺 友田達祐 執事長より
「エリザベス 2 世女王陛下のご好意により、台徳院殿霊廟模型が 100 年ぶりに里帰りし、4 月 2 日から増
上寺において一般公開できますことを、心より喜んでおります。徳川将軍家の菩提寺として発展してきた
増上寺の、往時を偲ぶ貴重な資料でもあり、修復・展示実現のため、ご尽力いただきましたロイヤル・コレ
クション・トラスト、駐日英国大使館はじめ、関係皆様に感謝いたします。」
ロイヤル・コレクション・トラスト公式サイト: www.royalcollection.org.uk
増上寺公式サイト: www.zojoji.or.jp
関連画像の入手サイト:
https://www.dropbox.com/sh/pe758v7e4xrsc6v/AAD8oIcYy8r6zDCxJv_2Rotla?dl=0
報道関係者のお問い合わせ先:
ロイヤル・コレクション・トラスト プレス・オフィス +44 (0)20 7839 1377, [email protected]
増上寺 広報部 03 3432 1431, [email protected]
駐日英国大使館 広報部 03 5211 1309, [email protected]
報道・編集関係の方々へ
ロイヤル・コレクションは世界有数の大規模かつ貴重な美術品コレクションで、残存する数少ない王室コ
レクションでもあります。あらゆる種類の美術・装飾品で構成され、英国内の 13 の王宮や旧公邸にて展
示されており、定期的に一般公開されています。ロイヤル・コレクションは、王位継承者および国民に代わ
って英国君主エリザベス 2 世女王陛下により委託されており、陛下が一個人として所有するものではあり
ません。
コレクションにはさまざまな日本の芸術品が多数含まれ、特に磁器、漆器、武器や武具は英国内の全て
の王宮に展示されています。こうした作品の多くは 2016 年に刊行予定のカタログ・レゾネ(作品目録)に
収められます。コレクションについての情報はオンラインでもご覧いただけます。
www.royalcollection.org.uk/collection
ロイヤル・コレクション・トラスト は、英王室直属の一機関で、ロイヤル・コレクションの管理責任を担い、
王宮の一般公開の運営を行います。入場料および関連商業活動による収益は、登録慈善団体であるロ
イヤル・コレクション・トラストに直接寄付されます。トラストの目的は、ロイヤル・コレクションの管理・保存
を行うこと、ならびに展示会や刊行物、美術品の貸与、教育プログラムを通じてコレクションが身近で楽し
めるものであることを促進することです。ロイヤル・コレクション・トラストは公的資金をいっさい受けずに活
動しています。
増上寺は関東における浄土宗の正統念仏道場として明徳 4 年(1393)に創建。1590 年徳川家康の入府
を受け、江戸城拡張とともに 1598 年に現在地に移転。徳川幕府の設立後は、徳川家の菩提寺、浄土宗
の学制の総録所として、広さ 826,000 平方メートルの広大な敷地に 48 の塔頭寺院と 150 の学問所を有
し常時 3,000 名の僧侶が修学に励む寺院となりました。
徳川幕府が終わりを迎えた後は、明治時代に行われた廃仏毀釈、大火による本堂の焼失など、政治的•
社会的要因による影響を受けました。復興も試みられましたが、第二次世界大戦の空襲によって一部を
残して、諸堂宇をはじめ徳川家の御廟も焼失してしまいました。
しかし、その後の復興により本堂をはじめ諸堂宇が建立、浄土宗大本山の正統念仏道場として、また首
都東京を代表する壮大な仏教寺院として、今もなお人々の宗教や文化活動の拠点として親しまれていま
す。