ビルオーナー通信 賃料上昇の動きが弱いオフィスビル市況

平成ビルディング
ビルオーナー通信
賃料上昇の動きが弱いオフィスビル市況
2015 年 秋
東京都心 5 区のオフィスビルの空室率は 2012 年 6 月をピークに低下が続いていますが、 賃料上昇の動
きは弱いのが現状です。 本稿では、 その要因について考察しました。
空室率の低下は続くが、賃料上昇の動きが弱い東京のオフィスビル
東京都心5区 *1 の賃貸オフィスビル (基準階面積 100 坪以上) の平均空室率は、 世界金融危機後では
2012 年 6 月がピークで、 以降は低下傾向で推移し、 2015 年 8 月は 4.72%まで改善しました。 一方、 平
均募集賃料は 2013 年 12 月をボトムに上昇に転じ、 2015 年 8 月は 17,490 円 / 坪となりましたが、 いわゆる
2003 年問題といわれたオフィスビル大量供給後最も賃料が下落した 2004 年 10 月の水準 (17,526 円 / 坪)
にやっと到達しつつあるのが現状です [ 図表 1]。
東京 23 区のオフィスビルの平均成約賃料 *2 (後方 4 四半期移動平均) は、 2012 年Ⅳ期を底に反転
し、 2013 年Ⅳ期には 15,810 円 / 坪まで上昇しました。 しかし、 その後再び下落し、 2014 年に入ってか
らは 15,000 円 / 坪前後で推移しています。 規模別では、 大規模ビル *3 は 2013 年に大きく上昇しました
が、 2014 年に入って下落、 直近は再び上昇傾向で推移しています。 大型ビル *3 は 2014 年に大きく上昇、
2015 年に入ってから下落傾向にあるものの、 2003 年問題後の最低となった 2005 年Ⅰ期を上回っています。
中小型ビル *3 は、 2012 年Ⅱ期を底にわずかながら上昇し、 その後横ばい傾向で推移しています [ 図表 2]。
*1 : 千代田区、 中央区、 港区、 新宿区、 渋谷区
*2 : 各期に成約した賃料の平均値であり、 同一物件の成約事例を継続して調査したものではない。
*3 : 基準階面積 「大規模ビル」 200 坪以上、 「大型ビル」 100 坪以上 200 坪未満、 「中小型ビル」 100 坪未満
オフィスビルの賃料上昇力が弱い要因
オフィスビルの賃料上昇力が弱い主な要因として、 次のようなことが考えられます。
○空室率が 5%を下回ったとはいえ空室が 34 万坪あり、 ビルの貸手はテナント誘致を優先するため、 高
めの賃料条件提示には慎重な態度である。
○大規模 ・ 高スペックビルの供給増加により希少性が低下したため、 差別化による競争力が弱まっている。
○高額賃料をけん引するテナント業種が不在である。
○今後、 大規模オフィスビルの供給が見込まれるため、 ビルの貸手は強気な賃料設定が行いにくい。
[ 図表 2] 東京 23 区オフィスビルの規模別
平均成約賃料(後方 4 四半期移動平均)
[ 図表 1] 東京都心 5 区賃貸オフィスビルの
空室率と平均募集賃料 平均募集賃料
(円/坪)
空室率
12%
24,000
(円/坪)
30,000
平均募集賃料
空室率
全体
22,000
10%
2004年10月
17,526円/坪
▼
大規模
25,000
大型
20,000
2015年8月
17,490円/坪
▼ 18,000
8%
中小型
20,000
15,000
6%
16,000
↑
需給均衡の目安:5%
4%
10,000
14,000
5,000
2%
12,000
0
2002.1
2002.7
2003.1
2003.7
2004.1
2004.7
2005.1
2005.7
2006.1
2006.7
2007.1
2007.7
2008.1
2008.7
2009.1
2009.7
2010.1
2010.7
2011.1
2011.7
2012.1
2012.7
2013.1
2013.7
2014.1
2014.7
2015.1
2015.7
0%
※基準階面積100坪以上
※平均募集賃料は、原則共益費を含まない。
データ出所:三鬼商事
10,000
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(年.月)
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年)
※Ⅰ期(1~3月)Ⅱ期(4~6月)Ⅲ期(7~9月)Ⅳ期(10~12月)
※共益費は含まない
データ出所:都市未来総合研究所「Office Market Research」
ビルの貸手はテナント誘致を優先
都心 5 区の基準階面積 100 坪以上の賃貸ビルの貸室面積は、 2015 年 8 月時点で賃貸面積が約 719 万
坪となり、 2000 年以降で約 151 万坪増加しました。 空室率は 5%を下回る水準まで改善しましたが、 空室
面積は依然約 34 万坪存在しています。 ビルの貸手は、 新規テナントの誘致や既存テナントの貸室面積拡
張を優先するため、 賃料条件の設定には慎重な態度をとらざるを得ないことが多いことから、 平均賃料が上
がりにくいと考えられます。
大規模・高スペックビルの希少性が低下
都心 5 区の大規模プロジェクト (延床面積 3 万㎡以上) の延床面積は、 2000 年~ 2014 年の間に合計
で 476 万坪 (延床面積、 複合ビルや自社用オフィスビルも含む) 増加しました [ 図表 3]。
大規模プロジェクトの供給に伴い、 大規模 ・ 高スペックビルの希少性が低下し、 差別化による競争力が弱
まるとともに市場のスペック標準が上方移動することから、 スペックの劣るビルにおいては賃料下落の圧力が
強まると考えられます。 この結果、 大規模 ・ 高スペックビルの増加は、 高スペックビルの賃料上昇を鈍らせ
るとともに、 既存ビルの賃料下落を誘引していると考えられます。
高額賃料をけん引するテナントが不在
都心 5 区の最高成約賃料は、 世界金融危機後に低下、 2012 年頃から横ばい傾向で推移しています。
区別では、 日本の代表的なビジネスゾーンである大手町 ・ 丸の内エリアを擁する千代田区が、 最も高い水
準を維持しています [ 図表 4]。 2007 年頃の賃料上昇をけん引した外資系金融機関は、 世界金融危機後人
員が大幅に減少し、 オフィス需要は縮小しました。 現在、 企業業績の良い製造業は品川エリアなどに立地
する事例が多くみられ、 IT関連企業 (インターネット広告、 スマホ用ゲームアプリ制作など) も立地は渋谷
が中心であり、 現在、 大手町・丸の内エリアでは高額賃料をけん引するテナント不在の状況が続いています。
大規模オフィスビルの新規供給が増加
都心 5 区の大規模プロジェクト ( 延床面積 3 万㎡以上 ) による新規供給面積は、 2015 ~ 2019 年の間に
210 万坪と見込まれます [ 図表 3]。
今後、 大規模オフィスビルの新規供給増加が見込まれること、 またオリンピック後のオフィスマーケットが不
透明であることなどから、 ビルの貸手は強気な賃料設定が行いにくい状況にあるとみられます。 大幅な景気
拡大や外資系等の新たなテナント属性の大量導入などがない限り、 オフィスビルの賃料相場が大きく上昇す
る可能性は低いと考えられます。
[ 図表 4] 東京都心 5 区区別最高成約賃料
(後方 4 四半期移動平均)
[ 図表 3] 東京都心 5 区大規模プロジェクト
による供給延床面積 (万坪)
250 200
70,000
渋谷区
新宿区
港区
中央区
千代田区
(円/坪)
千代田区
60,000
港区
50,000
中央区
150
40,000
30,000
100
20,000
50
10,000
0
0
2000~
2005~
2010~
2015~
2020年以
2004年
2009年
2014年
2019年
降
渋谷区
新宿区
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00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 1415
(年)
図表 3、4 のデータ出所:都市未来総合研究所「Office Market Research」
(発行:2015 年 10 月)
本資料は参考情報の提供を目的とするものです。 本資料は信頼できると思われる情報に基いて作成していますが、 その正確性と完全性、 客観性については当社は責任を負いません。
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