「”国立”病院の大変貌」、新潟市医師会報No.535に掲載

巻 頭 言
“国立”病院の大変貌
国立病院機構西新潟中央病院 院長 内山 政二
1.世界最大の病院チェーン、税金注入ゼロ
ます。社会的にも注目度の高い睡眠時無呼吸症
今年4月に亀山前院長の後任に任命されまし
候群は多数の患者を診ています。県内では当院
た。どうぞよろしくお願いいたします。さて、
のみが標榜している小児整形外科は、はまぐみ
結核患者の減少はよく知られていますが、結核
小児療育センターや新潟大学の応援を得ながら
医療の中心を担っていた国立病院がどうなった
展開しています。また、当院は市中病院では珍
かは、医療関係者にもあまり知られていませ
しく、独立した研究部門と治験管理室があり、
ん。全国の国立病院・療養所は国立病院機構と
新薬や医療機器の開発も行っています。
いう独立行政法人に再編されました。そして、
2)医療の安全保障
かつての結核病院は、結核患者の減少に合わせ
結核は減ったとはいえ、集団感染や医療従事
て診療内容を大きく変化させています。実はこ
者への感染は繰り返し起きております。不採算
の 国 立 病 院 機 構 は 病 院 数143、 総 ベ ッ ド 数
ですが、地域医療の安全保障というスタンス
55,000余りを擁し、世界最大級の病院チェーン
で、病床を常にスタンバイさせ、待ったなしの
です。国立=税金ジャブジャブとの誤解も残っ
入院に対応しています。救急医療では、地域医
ていますが、税金の注入は全く受けていませ
療支援病院として、内科、小児科、整形外科が
ん。独立採算で、かつ結核のような不採算部門
新潟市の救急二次輪番に参加しております。ま
を今も抱えながら、それでも全体として黒字化
た、院内に設置されている新潟県難病相談支援
を達成しています。
センターや、重度障害者の通所デイケア「あか
しあ」は多くの患者さん・ご家族の最後の砦に
2.当院もフルモデルチェンジ
なっております。東日本大震災では、DMAT
多くの先生方が持たれている当院のイメージ
の陰であまり注目されませんでしたが、原発の
は、
「松林の中の結核病院」かもしれません。
警戒区域に出動しました。自らの被曝の危険も
しかし、現在のベッド数400のうち、結核は30
ある中、線量計を見ながらの救援活動でした。
床のみであり、当院は以前とは全く別の病院と
3)サービス業だが商業に非ずの精神で
なって、専門医療を提供しています。
1)先端医療を世界に、地域に
海抜20m の丘に建ち、自家発電と大型の井
戸を備えた当院は、災害時の地域の避難所にも
病院全体として、呼吸器疾患とてんかんや
なっています。敷地内には医療系専門学校が開
パーキンソン病などの神経難病を中心に展開し
学準備中です。若い学生が増えることは、地域
ており、てんかんの手術では海外からも多数の
の活性化につながるものと思われます。今後も
患者が来院しています。呼吸器疾患ではがん診
病院の立ち位置や役割を考えた医療を展開して
療準拠点病院として、肺がんに力を入れてお
いきたいと考えております。もはや“国立”で
り、最新鋭の放射線治療装置が間もなく完成し
はない国立病院機構、どうぞご利用ください。
新潟市医師会報 №535 2015. 10
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