重層的受注システムと人的資源管理 ― トヨタ系列取引の研究 ― The inter tier reception system and Human Resource Management ― A study of the Toyota KEIRETU― 1 • 本研究の目的 階層的分業構造における柔軟な生産対応、調整のプロセス とそれを支える職場管理をHRMの視点から体系的に解明。 (研究の対象と留意点) トヨタグループの生産分業構造を支える2次仕入れ先3社を 対象とする。 また研究の体系性を高めるためにあえて対象製品領域を拡 げず、納入先を共通とするプレス関係仕入れ先に絞る。 「労働組合」の有無に囚われず、 未組織化職場における実質的な労使関係を素直に観察。 2 • 先行研究 戸塚・兵藤編(1991)、日本労働研究機構(1992)および植田 (1992、1993) いずれも研究の対象が労働組合組織化企業に限られ、 その多くは労働組合の組織化されていない2次仕入れ先 に焦点をあて生産対応のフレキシビリティーと労務管理 の体系的理解をめざすものではない。 またそうした体系的な先行研究は見あたらない。 3 • 対象系列の概要 本研究の対象系列は、トヨタの1次仕入れ先にあたるV社 とその仕入れ先プレス3社(トヨタ2次)から構成される。 (V社の概要) 主要製品:駆動系部品,車体部品 売上高(経常利益):2兆7,004億円 1,863億円(2008年 3月連結決算) 従業員数:73,500名(連結) 4 ・ アプローチの方法 トヨタ生産システムの中で開発された生産調整手法の適応 実態を明かにし、中堅・中小ならではの工夫とその必然性を 分析する。 その上で、そうした生産調整に対応する要員調整システムを 明らかにするとともに、 中小・中堅企業ならではの柔軟な働き方とフレキシビリティー を支える職場の人事労務管理を解明することに分析の主眼 が置かれる。 5 実態調査結果 • 研究対象としたV社グループ3社の主要製品は、いずれも プレス部品であるが、生産工程の特徴は若干だが異なる。 • A社はロール成形 • B社はワイヤー・ケーブル、ロッド加工 • C社は精密プレス 6 A社のケース ・1960年に創業 従業員数は2007年末現在352名 (国内グループ5社で515名、2005年現在) 納入先はトヨタグループを含む国内メーカー4社にも広がるが、 主要な納入先はV社グループ。 トヨタから見て分業構造上は2次仕入先に位置づけられる。 ・主要製品は自動車のドア周り部品 ロールフォーミング技術を活かし、高い・技術水準を実現。 「ドアフレームの立柱」は、世界1位を争う生産量を誇る。 「ディビジョンバー」も同様に世界シェアを争う主要商品。 7 柔軟な受註のための生産工程の工夫 ・15年ほど前から本格的にトヨタ生産システム導入に取り組む。 「技術員室」を設置。 15年に亘りトップ経営者と一体になって若手技術員を中心に推進。 ① 段取時間短縮、ロットサイズ縮小 ② トヨタ生産システムの基本実践 ↓ 1日8回の「引き取りかんばん」による多回納入を実現。 8 • 受註管理システム (V社からの発注) 各月下旬; 翌月計画と、N+1, N+2ヶ月内示の計3か月の部品品番別 発注量が示される。 月末; 翌月確定計画が旬別に示され、併せてN+1, N+2ヶ月内示 が行なわれる。 月内; 以降カンバンによる納入指示を介した日程ベースでの管理に移行する。 そして下旬には翌月計画と、N+1, N+2ヶ月内示が行なわれる。 こうしたパターンで計画がローリングされていく。 A社によれば、ここ十数年、上記月度内示の精度が大幅に上り、 現時点での変動幅は10%以内に留まっていることから、無理なく 生産変動に対応できるということである。 9 (発注情報の活かし方) ー 長期 ー • 各社の内示を参考にしながらA社独自に2010年までの設備 投資計画を設定。転用による投資の削減と併せて負荷低減 のための必要な新規投資を実施。 • 5年ほどのスパンで、例えば生産車種の切り替えによる生産 量の変化を織り込んで部品生産場所を集約し、併せてサイ クル・タイムを見直すことによって設備の最も効率的な活用 を実現。 ↓ 固定費の抑制に向け,A社独自に取組みを推進。 10 (発注情報の活かし方) ー 短期 ー (1) 翌月生産計画とN+1,N+2ヶ月内示に従い、 所定労働時間に占める設備稼働率と要員数を算定。 A社の特徴 品番別の工場単価と日当たり売上高を表示。 併せてライン別の稼働率目標を併記。 → 経営の視点から主任、班長を中心に 職場単位での主体的な取組みを促す。 11 (2) 横断的要員調整 次に、設備効率と業務負荷適正化の視点からさらに2つの チェックが加えられる。 ① ライン別に上記生産品番毎の必要数を生産する上で 設備能力(日当実力稼働レベル)と設備稼働率の両面から 無理やバラツキが無いかどうか。 ② 要員配置について各ライン別に大きなバラツキが無くかつ 2直(16時間)稼働に収まるか。 この視点から、応援・受援を含む要員数の横断的な調整 が行なわれ、その上で、具体的に各作業者の配置が決定 される。 この計画は翌月確定時点で微調整が加えられ、 一層の調整精度向上が図られる。 12 (3) 工程別月次要員数の算定 当月の生産計画については、V社からの翌月計画に従って ライン毎に各品番別直当たり生産必要数を求め、適正在庫 と段取り回数を最も少なくする最適な品番別生産順序、直当 たり段取り回数を設定。 (「ロット形成」と呼ばれる) ↓ この生産条件をもとに算定された「必要時間(総作業時間)」 を充たす要員数が工程別に算定される。 13 (4) 生産調整面での工夫 超多種少量生産の下で、トヨタ生産方式の理想=引き取り かんばん数に従った「リアルタイム」のロット形成は困難。 ↓ 量産品番(数点)を定常的に流しながら適宜段取りを 替え極少量生産品番をロットで組み、メーカーからの 引き取り要請に対応。 + その中で、段取り替え時間を短縮、「最小の在庫を目指し、 売れスピードで生産」できる加工順序・ロット計画を設定。 目標効果: 月々の実行ベースでの業務負荷軽減 基準在庫水準の低減 かんばん・サイクル改善。(売れスピード化) 14 (5) 個別要員調整の仕組みと運用 (職制) 役職体系は班長、主任、係長、課長の4層。 ー実質的に第1線の管理を担当するのは「主任」)ー (個別要員配置の実態) 主任、班長は、月次要員計画を基本に各職場・個人の 事情を織り込んだきめ細かな調整を行なったうえで、 工程別に人員配置を決定。 ↓ 工程別配置を鳥瞰「見える化」 「技能表」で適正配置を確認 15 (基礎となる「技能」育成) 人材育成の仕組み 基本はOJT +「自己完結型人材育成」活動。 経営者の育成のために「リーダー塾」を編成。 全員を「言われたことをする集団から、チャレンジする 集団に生まれ変わらせる」。 そのために、 自分の役割からチャレンジすべき項目を決め、 自分で目標を立てて自分で完結する運動を推進。 → 社長役員にコミット、中間・最終チェック。 16 ・ 労務管理 (1) 職場への理解活動とコミュニケーション ① 職制により、「職場の問題は職場で解決」される。 + 工場長が毎月、職場全員に方針や生産対応などを説明。 ② ブラジル人社員とのコラボレーション 優秀なブラジル出身者を積極的に昇格。 (「主任」以上の管理職の半分近くがブラジル出身者)) ↓ 優秀な主任クラス職制の努力が、上記施策と相俟って 現場第1線における相互理解・信頼の深化をもたらし、 現場のフレキシビリティーを相乗的に高め変動に耐え うる強い「現場力」を支える。 17 (2)国境を越えた融和政策 「直接雇用」し従って派遣・請負会社を通していない 「自分の会社」意識を持ってもらいながら大切に育成 「昔のよき日本型のチームワーク」づくりをめざす ↓ 国民性や言葉の違いを超えた一体感醸成の要因と分析 18 (3)労働組合の関わり トップとのコミュニケーション、情報交換 「アットホームな家族的な風土」が醸成 → 「労働組合」組織化の必要性についての意識希薄 ↑ 1次仕入れ先による労務リスク回避機能 人事・労務、雇用管理の適正化に向けた指導 = 全トヨタ労連の政策を間接的に反映 19 B社のケース ・ 1947年創業 従業員数は2007年末現在230名 (国内に3工場を有する) 主要な納入先はV社グループ。 トヨタから見て分業構造上は2次仕入先に位置づけられる。 ・主要製品は小物精密プレス部品とワーヤー・コントロール・ケーブル 試作売上が18%を占めるなど高い技術力を有する。 また、金型の内製化、主要生産ライン設備の内製化を推進。 (1991年には試作工場を新設) 20 柔軟な受注のための生産工程の工夫 ・ V社からB社への納入指示は全てかんばん。 ワイヤー・ケーブルのかんばんサイクルは1-2-2、安全在庫 レベルは1.5。(かつて1-2-1に挑戦) ・ 現状は樹脂成形ラインを除き工程内物流は「不定期不定量」、 将来的には全てロット単位にて生産運搬する体制をめざす。 「定量不定時運搬」をめざすトヨタ生産システムの文脈の中で あえてB社がこうした方針をとった背景は、 製品種類の多さ1品番当りの生産規模の寡少さによるところ大。 避け難い組み付け不良の低減、 頻繁な段取りを含むそうした作業に関わる働く者の負担を軽減 (現場の実態を踏まえた適切な「逸脱」) ・ 検査工程前に、手直し在庫積み上げ 不良の「見える化」による意識啓蒙を狙う。 21 • 受註管理システム (A社と同様) (V社からの発注) 各月下旬; 翌月計画と、N+1, N+2ヶ月内示の計3か月の部品品番別 発注量が示される。 月末; 翌月確定計画が旬別に示され、併せてN+1, N+2ヶ月内示 が行なわれる。 月内; 以降カンバンによる納入指示を介した日程ベースでの管理 理に移行する。 そして下旬には翌月計画と、N+1, N+2ヶ月内示が行なわれる。 こうしたパターンで計画がローリングされていく。 22 (発注情報の活かし方) (1)A社の特徴 N+1,N+2ヶ月内示は、材料手配のみに活用。 超多種少量生産ため、材料種類に対応するため 仕入れ先が2ヶ月内示を要求 素材メーカー優位→流用などきめ細かな工夫・苦労 翌月生産計画に従い、 所定労働時間に占める設備稼働率と要員数を算定。 個別品番別には内示はかなりのバラツキ ↑ 当月内示からの変動は、設備可動調整や残業等で吸収 23 (2) 横断的要員調整 (A社と同様) 部品品番毎の日当り必要数をもとに、 ロット形成と最適段取り回数を算定 ↓ 課別要員数の調整を実施 24 (3) 個別要員調整の仕組みと運用 (職制) 役職体系は班長、係長、課長の3層。 ー実質的に第1線の管理を担当するのは「課長」)ー 臨機応変に、係長が課長を代行 (個別要員配置の実態) 課長(係長は、月次要員計画を基本に各職場・個人の 事情を織り込んだきめ細かな調整を行なったうえで、 工程別に人員配置を決定。 ↓ 工程別配置を鳥瞰「見える化」 「技能表」で適正配置を確認 ー 以上はA社と大きくは変らず ー 25 • (B社の特徴) 原則:「引き取りかんばん」による生産変動は、現場で吸収 生産現場の柔軟性・対応力に期待 (チームワークと職制の苦労) ↑ 重要職場のミーティングに役員が参加 トップと現場との普段のコミュニケーション + 基本方針説明会&役員現場点検(2回/月) 狙い:第1線職制のモチベーションアップ 現場主義の徹底、問題意識の共有化 “現場の力によって吸収できないほどの変動はこれまで無かった” 26 (基礎となる「技能」育成) 人材育成の仕組み 基本はOJT+「階層別教育」 B社の特徴 毎年、個人の技能レベル目標を設定、 職場で育成にむけた取り組みを計画的に推進。 正規社員、パート等の差を設けず。 ↓ 成果を作業者教育マップに「見える化」。 生産の多くを非正規に依存する労務構成を前提に 雇用形態の別なく、職場全体の技能水準向上を追求。 27 ・ 労務管理 (1) 職制により、「職場の問題は職場で解決」される。 (A社と同様) (2) 労働組合の関わり トップとのコミュニケーション、情報交換 → 「労働組合」組織化の必要性についてネガティブ ↓ 1次仕入れ先による労務リスク回避機能に期待 労働組合に関わる動き あるいはトヨタグループ全体としての労使関係に関わる事項は V社の指導を仰ぎたいとの意向 = 全トヨタ労連の政策を間接的に反映 28 C社のケース ・1954年に創業 従業員数は2007年末現在167名 (特徴)生産部門100人中正社員が84名と非常に高い 納入先はほぼ全量V社グループ。(依存度 97%) トヨタから見て分業構造上は2次仕入先に位置づけられる。 ・主要製品は自動車、電子機器等の精密小物プレス部品 従来鋳鍛造と切削加工に依存してきた精密部品をプレス加工で実現、 とくにステンレスの深絞り技術、ブランキング技術で、非常に高い品質 評価と信頼を得ている。 (精密加工機械に加えて、特徴的なのは各種精密計測機器を導入) 29 柔軟な受註のための生産工程の工夫 ・ プレス型の内製化と併せて2001年よりTPM(生産保全)を 導入 TPM推進室を社長直轄組織として位置づけ、 人材育成と技能伝承 + 生産工程およびシステムの改善を推進 ↓ 一部の得意先へは出荷準備時間の短縮などの努力により 1-1-1の納入サイクルを実現。 30 • 受註管理システム (V社からの発注) = A社と同様 各月下旬; 翌月計画と、N+1, N+2ヶ月内示の計3か月の部品品番別 発注量が示される。 月末; 翌月確定計画が旬別に示され、併せてN+1, N+2ヶ月内示 が行なわれる。 月内; 以降カンバンによる納入指示を介した日程ベースでの管理に移行する。 そして下旬には翌月計画と、N+1, N+2ヶ月内示が行なわれる。 こうしたパターンで計画がローリングされていく。 C社もA社と同様に、ここ十数年、上記内示の精度が大幅に上り、 現時点での変動幅は10%以内に留まっていることから、無理なく 生産変動に対応できるとする。 31 (発注情報の活かし方) • ー 長期 ー V社から示される6ヶ月内示に基づき ライン能力を規定する主要設備4基について、 1直および2直定時ベースでの設備能力を確認 ↓ 固定費抑制 + 負荷の適正化の視点 &実勢ベースでの受注状況 ↓ 効果的な能力増強の検討 設備移管による負荷の適正化調整を実施。 32 (発注情報の活かし方) ー 短期 ー (1) 各月の下旬にV社より受け取る翌々月(N+1月)内示に基づき N+1月製造・調達計画を決定。 内製要員数(工数)手配と仕入先への材料手配を行なう。 ↓ 1ヶ月後翌月計画が確定した段階で、 製造および調達計画の「追加/取り消し処理」が行なわれる。 (B社同様、素材メーカーに譲歩せざるを得ない事情) C社の特徴① (内示情報の活用=A,B社との相違) 品番別内示変動の程度により、内示活用範囲を選択 品番別適正在庫水準を設定、必要数と収容数(ロットサイズ)から 翌月と翌々月の2ヶ月の期間で生産順序および生産日程を設定。 =N+1ヶ月先行する形でローリング、 結果的生産変動が移動平均化され変動を緩和。 33 C社の特徴② 「日数」による標準在庫管理。 意義:適正水準の「見える化」 =ロットサイズ縮小への第一歩。 例 1-1-1納入サイクル 残された課題 基準在庫日数の低減。 最優先課題は、「売れに応じた最適な少量品番のロット形成と 段取り替えの効率化によって採算性の向上を図る」。 高い外注依存の是正 安全在庫の水準を押し上げている大きな要因。 内外製区分見直しも視野に入れた取組みが必要。 34 (2) 要員管理の仕組み 設備効率と業務負荷適正化の視点から 月度の受注数量とSPM(Strokes Per Minute)をもとに 日当たりプレス可動時間を算定。 ↓ 現実の設備可動状況と設備特性を考慮、無理のない要員計画。 (働く者の負担を軽減) 第1線職制に対して担当グループ単位での設備・工程改善に向けた 主体的改善を期待する経営の工夫。 (定員制による管理) 35 (3) 個別要員調整と運用 (職制) 役職体系は班長、係長、課長の4層。 ー実質的に第1線の管理を担当するのは「係長」)ー (個別要員配置の実態) 主任、班長は、月次要員計画を基本に各職場・個人の 事情を織り込んだきめ細かな調整を行なったうえで、 工程別に人員配置を決定。 ↓ 工程別配置を鳥瞰「見える化」 「技能表」で適正配置を確認 ー このシステムは、各社とも同様 ー 36 (基礎となる「技能」育成) 人材育成の仕組み 正規社員を核に技能レベルの向上を計画的に推進 目標: 全員に段取り担当レベルの技能を要求 ・ 入社教育の一環として計画的なキャリアコースを設定 ・ 配属後、内部キャリアコースを設定し計画的に人材を育成 ・ 係毎に改善テーマを設定、進捗状況を年2回社長が点検・ 指導 → グループ単位での主体的な研鑽 + 生産調整への柔軟性とモチベーションの基盤は現場の 一体感 職制を中心にした日常的労務管理 親睦旅行など様々なリクリエーション 37 ・ 労務管理 (1) 職場への理解活動とコミュニケーション 職制により、「職場の問題は職場で解決」される。 ー 各社とも同様 ー (2) 労働組合の必要性についての意識は希薄。 従業員規模から まだ経営者が職場の顔を十分に見ることのできる段階 リーダーの育成状況も併せ考えれば将来課題か。 38 小活 生産調整に関わる人的資源管理のあり方 ー 系列基層(2次)における取組み ー 39 (1)自主経営努力 トヨタ生産システムの考え方を自社の生産条件、現場実態に 即して適応(改変) →超多種少量生産を分担。 生産設備、業務負荷からも無理なく受注に対応 ロット形成システム、生産順序など工夫 A社 TPS,TPMの基本実践、工程改善による負荷軽減 B社 工程間運搬を、不定期不定量からロットへ転換 C社 TPMを柱に工程改善、1-1-1パターンを実現 40 (1次仕入れ先の経営努力) 発注内示とその精度向上 3ヶ月内示とローリング 10%以内まで高められた内示精度 「引き取りかんばん」のフレ緩和 さらに、「e-かんばん」による効率的運用 ↓ 業務負荷の軽減 安全在庫の圧縮 41 (2)要員管理 ー 人と設備の「ムリ」を排除 ー ① 職場別の要員管理 =設備効率と業務負荷適正化の両立 (チェックポイント) ・生産品番毎の必要数を生産する上で無理や業務負荷の バラツキが無いか ・要員配置について各ライン別に大きなバラツキが無いか ・適正な労働時間内に収まるか ↓ 応援・受援を含めて工程別要員数の横断的な調整を実施 42 ② 個別要員調整 主任、班長は、月次要員計画を基本に各職場・個人の 事情を織り込んだきめ細かな調整を行なったうえで、 工程別に人員配置を決定。 年休取得状況や出勤率、 各従業員の負荷状況(時間外労働時間の水準) 応援受援の状況、非正規社員の構成 退社人員予測、長期欠勤・作業制限者 生産性向上の状況 なども見込んだ最適な配置検討 ↓ 工程別配置を鳥瞰「見える化」 「技能表」で適正配置を確認 43 ③ 要員管理の基盤 = 「技能水準」 ・技能水準の向上 基本はOJT 担い手は各社の製品、労務政策による A社: ブラジル人直接雇用従業員に重点 B社: 多くを非正規に依存,雇用形態の別なく 職場全体の技能水準を計画的に引き上げ C社: 内部キャリアコース設定、計画的に人材育成 ↓ 狙いは、 技能レベルに応じた適正配置による「ムリ」の排除 44 (3)労務環境の整備 ① 職場の人間関係 「職場の問題は職場で解決」を基本。 職制と連携、トップが率先して職場そして従業員一人ひとり との相互理解の深化に取り組む。 いずれも労働組合は組織化されていない。 経営者が上記のような努力を怠らなければ従業員一人ひと りの「顔は見える」。 ↓ 改めてボトムアップ機能を労働組合に託す必要も、 経営者が職場のモニターを労働組合に期待する必要も 45 高くはない。 ② 労働組合の役割 ・ V社の関与を通じて間接的に企業グループ労連の影響 V労働組合連合会の活動方針を踏まえ、 V社より全ての仕入先に対し適正な労務管理・運用を指導。 全トヨタ労働組合連合会も、系列全体の視点から雇用の確保 と適正な労務政策の実施を1次仕入れ先各社に要請。 *例:2008年末より「雇用不安の払拭および雇用安定に向け 取組みを強化。 2009年春の取組みに際して、 傘下労働組合から各社に対し適切な対応をフォロー。 46 まとめ ① 各社の主体的な経営努力と併せ,V社内示精度の向上や 「e-かんばん」導入により、生産のムラ排除が着実に進展。 ② 2次サプライヤーに「在庫を押しつけ」 、ムダな労働を強い ているという事実は存在しない。 ③ 要員管理、個別人員配置についても、技能水準を基本に 個人の事情も考慮、ムリな労働を強いている事実はない。 ↓ 「ムラ、ムダ、ムリ」の排除により、業務負荷は確実に低減。 求められる「持続的な経営努力」 47 ④ 健全な労働環境の醸成 ・ トップと現場第1線とのコミュニケーションの積極的な展開 を通して、職場末端の意見は確実に集約され経営施策に 反映。 → 職制の強化+トップの持続的関与が必要条件。 ・ グループ労連の影響力と役割 = 公正かつ適正な雇用労務管理の執行を間接的に担保 。 ↓ グループ労連には、未組織2次仕入先への影響も意識 した取組みが期待される。 48 ご静聴ありがとうございました。 南山大学 ビジネス研究科 願興寺ひろし 49
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