パラグアイ内政・外交報告(8月分) 政治情勢 2015年9月作成 内政では,14日,カルテス大統領は就任から2年が経過したことを受け,国民向けのメッ セージを発出し,引き続きインフラ整備及び貧困対策に努めていく旨述べた。また,12日,自 身の秘書が不正に残業手当等を受け取っていた問題の責任を問われ,上院による弾劾裁判 にかけられていたルベン・ベラスケス会計検査院長が弾劾に関する採決を前に辞表を提出し 辞職した。右弾劾裁判を巡る動きは,連日メディアで大きく報じられた。 外交では,21日,バチェレ・チリ大統領が当国を訪問し,カルテス大統領との会談,両国首 脳間共同声明の署名等が行われ良好な両国関係が再確認された。29日,ロイサガ外相は, コロンビア・ベネズエラ国境紛争に関し,メルコスール議長国及び国連人権理事会副議長国 として,ベネズエラから国外退去を命じられたコロンビア人の人権が尊重されるとともに,近隣 諸国が本件を優先事項として取り扱うことを求める旨述べた。 1 内政 (1)カルテス政権発足2年経過に際する大統領メッセージ ●14日,カルテス大統領は就任から2年が経過したことを受け,国民向けのメッセージを発 出した。カルテス大統領は同メッセージの中で,パラグアイにおけるインフラ整備が遅れてい ることを認めた上で,インフラ需要を満たし,経済発展を促すためには,国内外の企業との官 民連携の下,公共事業を進めることが不可欠である旨述べるとともに,引き続きインフラ整備 及び貧困対策に努めていく旨述べた。 (2)世論調査結果 ●15日~19日付当地ウルティマ・オラ紙は,世論調査会社 Ibope CIES がアスンシオン市 及びセントラル県の18歳以上の400人を対象に行った世論調査の結果を掲載したところ, 同調査の概要は以下のとおり。なお,ウルティマ・オラ紙は,カルテス・グループ(カルテス大 統領のグループ企業)のライバル企業であるビエルシ・グループが所有する新聞社であるこ とから,その論調は反政府的になっている。 <カルテス大統領の政権運営に対する評価> -非常に良い 2% -良い 34% -悪い 23% -非常に悪い 41% <カルテス大統領の2013年大統領選における選挙公約の履行状況> -既に履行した 24% -未だ履行していない 73% -無回答 3% <2013年大統領選における選挙公約で未だ履行されていない分野> -雇用創出 23% -治安改善・犯罪撲滅 23% -保健システム改善 20% -貧困撲滅・景気改善 17% -教育システム改善 9% -EPP対策 4% -高齢者対策 2% -汚職対策 2% <カルテス政権閣僚の不支持率> -デ・バルガス内務相 83% -バリオス厚生相 59% -ラフエンテ教育文化相 28% -アベド司法相 21% -ヒメネス・ガオナ公共事業通信相 11% -ペーニャ蔵相 8% -レイテ商工相 6% -ガッティーニ農牧相 4% -ロイサガ外相 2% -バイアルディ女性相 1% <カルテス政権2年目における治安改善の評価> -悪化した 81% -変化なし 18% -改善した 1% <政府のEPP(パラグアイ人民軍)対策の評価> -非常に良い 0% -良い 11% -悪い 40% -非常に悪い 49% (3)ベラスケス会計検査院長の辞任 ●12日,自身の秘書が不正に残業手当等を受け取っていた問題の責任を問われ,上院に よる弾劾裁判にかけられていたルベン・ベラスケス会計検査院長は,弾劾に関する採決を前 に辞表を提出し辞職した。 ●28日,不正蓄財等の疑いで上院による弾劾裁判にかけられていたトレブランカ会計検査 副院長も弾劾裁判の終了を前に,辞表を提出した。 (4)パラグアイ政府による海外留学奨学金制度 ●20日,パラグアイ政府が創設した「カルロス・アントニオ・ロペス」研究奨学金制度の第一 回選考結果が発表され,89名への奨学金給付が決定した。ヨーロッパ(81%)への留学が 最も多く,ラ米(10%),米国(9%)と続き,89名のうち,47名が留学先としてスペインを選ん だ。また,本年9月には第二回目の募集を行われる予定である。 ●なお,本制度は,パラグアイ人学生の海外大学院への進学の促進を目的とし,今後5年間 で約1,500名を対象に留学費用の全額または一部を政府が負担するもの。 (5)EPPと見られる武装組織による誘拐事件 ●8日午後,サンペドロ県タクアティ市近郊に所在する牧場内において,メノー派プロテスタン ト移住者であるアブラハム・フェル氏等がEPP(自称パラグアイ人民軍)と見られる武装組織 に誘拐され,身代金として推定50万米ドルが要求される事件が発生した。 ●フェル氏は,5歳及び8歳の息子2人,並びに,他の牧場労働者2人と共にトウモロコシの 収穫作業を行っていた際,迷彩服を着用したEPPと見られる5人組の武装組織に襲われ誘 拐された。その後,息子2人と労働者のうち1人を解放されが,残る2名は解放査定内。武装 組織からの手紙によれば,「フェル氏と労働者(残り1人の労働者)を釈放するための2万米ド ル(当初の推定金額)の要求,遺伝子組み換え大豆の栽培禁止,自然環境保護の徹底,及 び,これらに従わない場合は現在監禁している2人を殺害する」旨が記載されていたと見られ る。 2 外交 (1)バチェレ・チリ大統領の当国訪問 ●20日~21日,バチェレ・チリ大統領が当国を訪問し,21日,カルテス大統領との会談及 び各種文書への署名を行った。 <カルテス大統領との会談> ●21日,当国を訪問したバチェレ・チリ大統領は,大統領府において,カルテス大統領との会 談を行った。同会談後には,関係閣僚を含めた拡大会合が行われ,続いて,両国首脳間共同 声明の署名が行われた。 ●カルテス大統領は,共同声明署名後の共同記者発表において,パラグアイを含めた南米各 国にとって,チリは成功モデルである旨述べるとともに,引き続きチリとの協力関係を深化さ せて行きたい旨述べた。 ●これに対し,バチェレ・チリ大統領は,パラグアイが生産する余剰電力の購入に関心を有す る旨述べるとともに,両国間のアクセスの向上やエネルギー分野での協力につき,カルテス 大統領と協議を行った旨述べた。また,両国は大西洋と太平洋を結ぶ道路の建設に向けて 協働していく旨述べた。 <合意文書の署名> 今次バチェレ大統領訪問に際し,両国外相間で署名された合意文書は以下のとおり。 - エネルギー協力に関する二国間委員会設置のための覚書 - アントファガスタの保税地区の運用を開始するためのハイレベル委員会設置にかかる 覚書 - 領事協力のための合意文書 <共同声明の発出> 首脳会談後,両国大統領が署名した共同声明の主なポイントは以下のとおり。 - カルテス大統領は,官民連携制度に関するチリからの情報提供に対し謝意を表明。 - 太平洋同盟・メルコスール間の統合に向けた対話の促進についてコミットメントを表明。 - 内陸開発途上国に関するウィーン行動計画における優先事項・目的を尊重することを再 確認。 - 天然資源に対する主権行使を尊重しつつ,域内におけるエネルギー分野での協力促進 に向けたコミットメントを表明。 - パラグアイは,人権分野の勧告モニタリングシステム( Sistema de Monitoreo de Recomendaciones (SIMORE))にかかる経験をチリと共有する旨表明。 - 12月のベネズエラ国会議員選挙の実施を歓迎。 (2)伯軍のパラグアイ国境侵犯問題 ●7月28日,カニンデジュ県を流れる国際河川パラナ川において,ブラジル国軍が,密輸を 行っていたと見られる船舶を発見し,銃撃戦となり,パラグアイ側管轄水域まで侵入し,船舶 を拿捕した事件に関し,3日,フェリシオ当地ブラジル大使はロイサガ外相を往訪し,一刻も 早く事件の全貌を明らかにする旨のブラジル政府の書簡を手交した。また,同大使は,記者 団に対し,国境地域における組織犯罪,麻薬を含めた密輸などを取り締まるために,引き続 き,パラグアイ政府と協力する旨述べた。 (3)コロンビア・ベネズエラ国境紛争に関するロイサガ外相の発言 ●29日,ロイサガ外相は記者団に対し,パラグアイは,メルコスール議長国及び国連人権理 事会副議長国として,ベネズエラから国外退去を命じられたコロンビア人の人権が尊重され るとともに,近隣諸国が本件を優先事項として取り扱うことを求める旨述べた。また,ロイサガ 外相は,ベネズエラによるコロンビア人に対する国外退去命令が域内統合の流れに逆らうも のである旨述べるとともに,対話による解決を求めた。 (4)第1回日パラグアイ政策協議 ●12日,東京の外務省において,第1回日パラグアイ政策協議が開催され,日本からは髙 瀨中南米局長等,パラグアイからはオスカル・カベージョ筆頭外務次官等が出席した。これま で,日本とパラグアイは経済協力に特化した政策協議を毎年開催してきたが,政治経済分野 等を含めた包括的な政策協議の実施は今回が初めてとなった。 ●髙瀨中南米局長は同協議において,今次政策協議の実現に向けたパラグアイ側のイニシ アチブに感謝するとともに,政策協議のような対話は二国間関係の強化に資するものである 旨述べた。これに対し,カベージョ筆頭次官は,パラグアイ外務省を代表し,日本からパラグ アイに対する長年に亘る寛容な援助に感謝する旨述べた。なお,同政策協議においては,政 治,マルチ,経済,経済協力,領事,文化分野について,幅広く協議が行われた。 3 要人往来 (1)来訪 ●11日,リベロ・ブラジル科学技術相(ロイサガ外相との会談) ●19日,マンガベイラ・ブラジル国家戦略相(ロイサガ外相との会談) ●20日~21日,バチェレ・チリ大統領(カルテス大統領との会談) (2)往訪 ●6日~7日,デ・バルガス内相,ブラジル訪問(警察関係国際会議出席) ●24日,カルテス大統領等,ボリビア訪問(天然ガス分離プラント開所式出席)
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