センサデータからのセンサ種類推定手法の検討

センサデータからのセンサ種類推定手法の検討
Examination of a Sensor Type Estimation Method using the Sensor Data
リアルタイムシステム学講座 0312010026 梅田 樹
指導教員: 今井信太郎 新井義和 猪股俊光
1.
はじめに
調することで効率の良いデータ処理を実現してい
る.この手法では Contract Net Protocol(CNP)
近年,環境観測システムや警備システムなど,セ
ンサを利用した様々なシステムが提案されている.
しかし,このようなシステムの増加に伴いセンサ
を用いて中間ホストがセンサノードの取得してい
るデータの種類やスペックを把握している.しか
し,センサノードには CNP に対することのできな
ノードが増加した場合,これらのサービスはネット
いノードも存在しており,清水らは表 1 のように
ワークに大きく負荷を与えることになるため,デー
センサノードを分類している.CNP に対応できな
タ処理を効率よく行う必要がある.この問題に対
いのはパターン 4 のノードであり,中間ホストはセ
し,清水らはセンサノードやコンピュータが協調動
ンサノードから送られてくるデータに基づき必要な
作することにより,環境に適応してデータ処理を行
情報を生成しシステムに提供することが出来るかど
う手法を提案している 1) .さらに,清水らはこの研
うかを判断する必要がある.
究において,近傍のノードを用いて,手法に対応す
ることができない処理能力の低いセンサノードをシ
センサ種類推定手法
3.
ステムに取り込む提案を行っている.現状,多くの
3.1.
センサノードは特定のセンサシステムと紐づけられ
ており,対応するシステム以外にはデータの提供を
概要と対象とするセンサの種類
本研究では,書籍
2)
で挙げられていたセンサの
行わない.しかし,今後増え続けるセンサシステム
うち,汎用的に利用されるセンサであると考えられ
に対し,それぞれが個別のノードを用いることは非
る,加速度センサ,圧力センサ,光センサ,温度セ
効率であり,清水らの提案の重要性は高いと考えら
ンサ,ジャイロセンサ,音センサ,脈拍センサの 7
れるが,具体的にどのように非対応のセンサノード
種類を推定の対象とする.これらのセンサが搭載さ
をシステムに取り込むかは明らかにされていない.
れたセンサノードは,一定間隔でセンサデータを取
以上の背景から,本研究では,センサノードをシ
得,送信しているものとし,提案手法が搭載されて
ステムに取り込むために,センサノードから送られ
いる端末はそのデータを受信できるものとする.
てくるデータに基づき,そのノードに搭載されてい
これらのセンサについて,本提案手法では,以下
るセンサの種類を判別する手法を提案する.また,
の項目を用いてセンサの種類を推定する.
実際に 4 種類のセンサを判別するシステムの実装と
• 一定時間での測定値の変化量
評価実験を行い,提案手法を評価する.
2.
• センサの出力数
3.2.
先行研究
清水らの先行研究
1)
一定時間での測定値の変化量による推定
センサの種類によって,一定時間での測定値の変
は,センサノードの近傍に
化量は異なると考えられる.例を挙げると,加速度
存在するホスト(中間ホスト)がセンサノードと協
表 1 センサノードの CNP に対する返信パターン 1)
センサノードの種類
返信パターン
CNP 対応
データ提供
データ処理
入札
データ
スペック情報
パターン 1
○
○
○
○
○
○
パターン 2
○
○
×
○
○
×
パターン 3
○
○
×
×
×
×
パターン 4
×
○
×
△
○
×
表 2 対象のセンサの一覧と推定項目の関係
種別
変化量 出力数
加速度
大
3
光
中
1
温度
小
1
距離
大
1
ジャイロ
中
3
圧力
小
1
脈拍
中
1
表 3 評価実験で用いたセンサ
図 1 実装したセンサノード
4.2.
実装したシステム
加速度センサ
Kionix KXR94-2050
距離センサ
SparkFun Electronics
3 節で述べた 2 種類の判別方法を実装したシステ
ムを作成した.システムはセンサの出力を 0.2 秒間
GP2Y0A02YK0F
隔で 60 秒間測定する.このため,データの取得回
セイコーインスツル S-8110C
数は 600 回となる.測定中は,以下の式で変化量の
温度センサ
光センサ
Macron International Group Ltd.
判別の測定値の差分値の合計 t を測定をする.
MI527
t=
300
∑
|di − di−1 |
i=2
センサの値は,装置自体を大きく動かすことなどに
よって短時間に大きく上下する可能性がある.対し
測定が終了した後に,0 以外の値を取得したポート
て温度センサの値は,加速度センサほど短時間に大
の数に基づき,センサの出力数を測定する.その後,
きく数値が変動することは考えにくい.よって,一
システムはセンサの種類を推定する.
定時間でどの程度測定値が変化したかをセンサ種類
4.3.
の推定に使用する.
3.3.
センサの出力数による推定
実験結果
加速度センサと温度センサの推定は 100 %成功
した.しかし,光センサの推定の成功率は 70 %程
センサの種類によって出力の個数が異なる場合が
度となった.光センサの測定値の変化量にばらつき
ある.例えば,加速度センサやジャイロセンサは3
が大きく,変化量が大きくなったとき距離センサと
軸のものが多く,出力が 3 系統まで存在することに
誤推定しためである.距離センサが光センサと推定
対して,温度センサは出力が通常 1 系統のみであ
されることはなかった.
る.このような出力の違いをセンサ種類の推定に使
用する.
3.4.
対象とするセンサの推定
3.1 節で述べた本研究で対象とするセンサと,3.2
節と 3.3 節で述べた項目の関係を表 2 に示す.
5.
おわりに
本研究では,センサネットワークの CNP に非対
応のセンサノードを取り込むことを目的とし,セ
ンサノードから送られてくるデータに基づき,その
ノードに搭載されているセンサの種類を推定する手
4.
4.1.
評価実験
実験環境
法の提案と実験を行った.今後の課題として,より
高精度の判別のための推定条件などを検討する必要
がある.
実験には,3.1 節で述べたセンサのうち,加速度
センサ,距離センサ,温度センサ,光センサを使用
した.使用したセンサを表 3 に示す.また,センサ
と PC 間の通信には,ZigBee 用の通信モジュール
である XBee を用いた.実装で作成したセンサノー
ドを図 1 に示す.図 1 は,距離センサを搭載したセ
ンサノードである.
参考文献
1)清水遥他:知識処理を外部に委託可能なセンサ
ノードを用いたシステムの検討,情報処理学会
研究報告,Vol. 2014-DPS-160, No. 7, pp. 1–6,
(2014).
2) Robelt Fuldi,小林茂,水原文:XBee で作るワイ
ヤレスセンサーネットワーク,オーム社,(2011).