よくわかる南海トラフ巨大地震への備え方報告書 2015 年 10 月 7 日

よくわかる南海トラフ巨大地震への備え方報告書
日程:10 月 2 日(金) 13:30~16:40
2015 年 10 月 7 日
管理部 遠藤麻里
場所:三井住友海上 大阪淀屋橋ビル 16 階大ホール 大阪市中央区北浜 4-3-1
参加:川崎係長代理、遠藤
<講演プログラム>
Ⅰ基調講演「阪神・淡路、東日本の教訓を南海トラフの巨大地震・津波対策へ」
講師 関西大学 社会安全研究科・社会安全学部 准教授 越山 健治氏
Ⅱ企業の取組発表「大規模災害への備えとしての当社の取り組みについて」
株式会社竹中工務店 総務室 総務部長 岡林 宏一氏
Ⅲ企業に求められる震災対策と BCP
株式会社インターリスク総研 大阪支店 災害・事業 RM グループ長 砂川直樹氏
Ⅰ「阪神・淡路、東日本の教訓を南海トラフの巨大地震・津波対策へ」
巨大災害の特徴
・被害が広域である(どの企業も何らかの被害は出る可能性が高い。)
・いつおわるかわからない
(東北地震でも発生 1 ヶ月後に大きい地震や来たり余震が続いていた。)
・被害が多様である 誘因…大雨・強風・地震など外力
土地素因…地形・地盤条件など
社会素因…人口・居住状況など 他、災害履歴
単独的、連鎖的に起こるなど様々
・日本の資源で対応できるのか?
(南海トラフでは人的・物的資源の不足、取合になる可能性も)
・経済被害の立て直しは可能か?
(立直し方によっては日本の先進国という地位を維持出来ないかも)
災害時に繰り返されることとは、
「こんな災害が自分のところで起こるとは思わなかった」
→東日本で大きな地震が起こった。次は西日本に必ず来る!と思っておく。
被害推定・被害予測:何が社会に起きるかを可能性のあるものについて想定しておく。
被害想定の正しい見方
・被害が発生するのは確実…量は不確定、複数起こることによる混乱は避けられない
・小さな災害の対応を巨大化する、では対策出来ない
…どこに戦略を置くかで対策が変わる
・被害量を最小化するだけでなく、対応・復興の最適解を社会全体で共有する必要性
…「防ぐ」だけでなく、
「やりすごす」
「もどす」
(日本は防災は対策出来ても災害対策は苦手)
災害対策の 2 つの考え方
・経験を積み上げ、対象を大きくしていく(日常的) 想定→対策→対応マニュアル
・大きく構えて、発想を変えて対策する(非日常的) 危機事象→回避策→戦略策定
被害想定に基づく対応計画の限界
・何が起こるかはわからない
・危機である事柄は究極的には組織・人によって様々
・
「できるようにしておく」対策だけでは「できなかったとき」が発生する
→「できなかったとき」をやるしくみ→「想定外」に対応
Ⅱ企業の取組発表「大規模災害への備えとしての当社の取り組みについて」
震災対応における基本的考え方(全体構成)
施設
・主要事業所施設の強靭化(大空間天井耐震化、津波対策、災害対策本
部等)
インフラ整備
訓練
通信・設備 ・緊急地震速報装置の設置 ・PHS 備蓄キットの配備(役員、本部)
・帰宅支援ハンドブックの配付
例規
関連する例規・マニュアル
事業継続計画書
マニュアル等
・危機管理規定
・首都直下地震
・危機管理委員会規定
・東海地震
・震災対応規定
・東南海、南海地震
実働訓練・各本・支店主体で実施する個別訓練
災害シミュレーション訓練
・合同震災訓練(全社連携)
東京・名古屋・大阪の
・安否報告訓練
各本・支店で開催
その他 ・エマージェンシーコール(安否報告、伝言サービス)
・備蓄品の整備
・バックアップオフィスの設定・整備
災害シミュレーション訓練…「実働訓練」を補完する意味で、
地震発生時における情報の取扱いを体感し、初動時の適切な情報収集・
整理・判断・報告・指示等が出来るかを検証する。(より現実的な訓練)
参加対象者:災害対策本部要員(昨年より実施、2015 年度 102 名参加)
→参加者のほぼ全員に好評とのこと。この訓練により BCP マニュアルも調整。
今後の取組み事項
・通信手段の多重化(災害 BCP ポータル)…災害時 SNS の提供、クラウド型の情報集約・共有
・マニュアルの整備…マニュアル利用者の視点で作成
アクションシート・アクションカードで即実施可能とする。
Ⅲ企業に求められる震災対策と BCP
訓練の目的
・策定した BCP の実効性を評価すること
・各従業員の BCP に対する理解を深め、その活動に対して積極的に取り組むとともに、
緊急事態発生時での各自の役割を明確に認識させること
・訓練によって計画を実際に行ってみることにより、BCP の不備や欠陥等の
改正すべき点を明らかにして、それらを改定すること
・従業員間での連携・協力を促すこと等
実働訓練と図上訓練の違い
【実働訓練】(例:避難訓練、消火訓練)
想定した状況に対して実際の行動を伴う訓練。また、通信機器の操作など、
緊急時に適切に行動できるかどうかを検証することが出来る。
→頭と体で覚えることが望ましい事項について向いている。
【図上訓練】
想定した状況に対する対応内容を文書(あるいは口頭)出回答する、実際の行動を伴わない訓
練。適切な情報収集・判断・指示等ができるか検証することが出来る。
→被害が広範囲、長時間に及ぶ災害に関しては、備えておくべき対応項目が多岐にわたる。
短時間で多くの項目について網羅的に検証を行う場合、状況を自由に設定できる。
<所感>
関西大学講師の方の話によると、過去約 100 年周期起きた西日本の巨大地震の記録から
おおよそ 2000 年~2100 年の間に東南海・南海地震は来ると言われています。東北地震と
は人の集積が違うため、南海トラフ地震は政府が被害想定して対策を進めているほど被害
が大きくなる可能性のある地震であるそうです。こういった話を聞いた後や震災ニュース
を見た時は、いつか地震が来るからちゃんと備えておかなければ、と強く感じるのですが、
日常の生活に戻ってしまえば災害への意識も薄らぎ自分の地域は大丈夫だと思い込んでし
まっています。こういった意識が対策の遅れに繋がってしまうと改めて感じました。
また、
「何が起きてもなんとかする、やりすごしていく」という対策・考え方が日本では
遅れているともおっしゃっていました。当社では今後 BCP 訓練で災害時の対応などについ
て営業所で話し合ってもらいます。今は話し合ってもらう中で今後地震は起こる、という
意識を持ってもらうのが大事なのかな、と考えます。訓練を重ねていく中で、予想しない
ような事態も考えていくのが理想的だと感じました。震災時は情報が取れないことが一番
怖いと講師の方はおっしゃっていましたが、そのような可能性も大いにあるので、携帯は
繋がらないものと思うぐらい想定してもよいとのことでした。
株式会社竹中工務店総務部長様のお話では、東北地震の際携帯は繋がりにくかった、衛
星機も使えなかった代わりに PHS・ショートメールを使用したとおっしゃっていました。
通信手段だけでなく、輸送手段では海上船・自転車・バイク・救援車を利用(阪神淡路震災
時)、社員家族への食事・入浴の提供等、不足の事態でも臨機応変に対応されている印象で
した。また東北震災当時、独立事業部の下役割を明確化し、情報共有の方法として朝礼で
伝達→会議後本社との連携をとって共有されていたとのことでした。
株式会社インターリスク総研様のお話では、計画を立てて作った訓練を作りっぱなしに
せず、きちんと評価するために実行するように、訓練そのものを目的化・ルーティン化さ
せないようにと強調されていました。実働訓練・図上訓練の違いを学んだので、今後の訓
練で上手く取り入れられるように考えていきたいと思います。
今回は貴重なセミナーに参加させて頂きありがとうございます。この場で学んだことを
今後に生かしていきたいと思います。