「マイナンバーへの準備」を怠るな!

平成 27 年 5 月 8 日発行
武蔵経営からのお知らせ(№270)
「マイナンバーへの準備」を怠るな!
~すでに始まっているマイナンバー~
税理士法人 武蔵経営(熊谷 048-522-0064・大宮 048-631-2271)
1.マイナンバーは誰が付番するのか?
マイナンバー制度がいよいよ始まります。今年の 10 月からすべ
ての国民と法人に、マイナンバーが記載された紙のカードが届き
折を繰り返してきました。国税庁は、30 年以上前から全国民を一
元管理できる納税者番号制度を実現しようとしてきました。全国民
一元番号管理は国税庁の積年の悲願なのです。
ます。そのカードには個人であれば 12 桁、法人であれば 13 桁の
特に経済がグローバル化し、取引が複雑化している現代にお
「マイナンバー」が記載されています。個人番号(12 桁)は住民票
いて、「金融資産をいかに補足するか」というテーマこそ徴税サイ
を管理する市町村から通知され、法人番号(13 桁)は国税庁から
ドにとって最大の課題なのです。トマ・ピケティがいうように、先進
通知されることになっています。
諸国においては、資本の収益率が労働の生産性の増加率を上
しかしマイナンバーは、すべての国民に漏れなくそして重複す
回っている(r>g)ため格差が拡大しています。「資本に対する累
ることなく付番しなければならない番号ですから、国の機関でな
進課税」を実現するためには、国民を一元管理できる番号による
ければ責任をもって付番することはできないはずです。したがっ
財産の管理は不可欠です。
て住民票を管理する市町村は、個人番号を付番する機関として
マイナンバーの最大の目的は「徴税」です。
疑問が残ります。
この「マイナンバー制度」は、民主党が「社会保障・税一体番号
<内閣官房の HP>
制度」として推進していた制度です。民主党の社会保障・税一体
改革プランにおいて、国税庁と社会保険庁を合体して「歳入庁」
を設置し、この歳入庁が番号を管理することになっていました。と
ころが、平成 25 年 5 月 31 日に成立したマイナンバー法案による
と、個人番号は市町村が、その管理している住民票データを変換
してマイナンバーを組成することになっています。
法人番号は、国税庁が付番することが明確になっていますから、
その責任の所在も明確です。それに対して個人番号は市町村が
住民票データに基づいて、全国一律のマイナンバーに変換する
というのですから、二重付番や付番漏れの可能性があります。コ
ンピューターシステムで、二重付番が生じないようにするのでしょ
うが、付番や管理を市町村に任せていたのでは、その管理責任
3.マイナンバー導入の準備は既に始まっている
が曖昧になりかねないし、効率的でないためコストの削減が不十
全国民を一元管理できる番号制度の導入には、様々な問題点
分です。
個人番号も法人番号と同じく国税庁が付番するということにす
れば、重複の可能性が低下します。個人番号こそ重要なのです
から、付番やメンテナンスの責任の所在を明らかにすべきです。
があります。最大の問題は、「番号を付番すべき対象者の全てに
番号を付番し、番号を付番すべきでない対象には付番しない」と
いうことです。
世の中には誰のものであるか明確でない財産がたくさんありま
す。たとえば相続登記をしていないため、誰の所有かわからない
2.マイナンバー制度導入の真の目的
不動産、既に存在していない人の名義の金融資産等があります
マイナンバーは社会保障や税の分野について、行政の効率化
が、これらの財産に対する固定資産税や利息に対する税金をど
と国民の利便性を高めるために導入されるものであると政府は説
のような番号で管理するのでしょうか。また、同窓会や交流会等の
明しています。政府のキャッチコピーは以下のようになっていま
人格なき社団の付番はどうするのでしょうか?
す。
今年の税制改正で、金融機関は「マイナンバーで検索できるよ
うに情報を管理」することが義務付けられています。マイナンバー
の導入に向かって、各金融機関においては既に死亡している者
の名義のままになっている預貯金や同じ人なのに住所が異なる
ため 2 重に付番している者の預貯金等の整理が行われているは
ずです。
マイナンバー制度を導入すれば、行政の効率化と国民の利便
それぞれの市町村やそれぞれの金融機関で独自の番号を付
性が高まるという側面はあります。しかしこの制度導入の最大の目
番して管理すればよかった時代から、全国でただ一つしかない
的は、徴税しやすい環境を整備して「税収を UP すること」です。
マイナンバーを使って管理する時代になります。それは様々な分
政府は過去に何度も全国民を一元管理できる番号制度を導入
しようとして、その度に「国民総背番号制」であるとして反対され挫
野に影響を及ぼします。マイナンバーを甘く見てはなりません。
(文責 龍前 篤司)