定住促進プロジェクトについて 合併 10 周年を迎える今年、市町村建設計画を振り返ってみますと、第 1 次産業を核と した定住促進プロジェクトとして①第 1 次産業の活性化、②緑の雇用事業等による就労支 援、③UJIターン情報の発信、④地域受け入れ体制の整備が積極的に進められてきまし た。 合併当初 82,000 人あった人口は、今年 2 月末現在で 78,000 人になっています。山間 部での人口減少率、高齢化率は特に著しく、高校を卒業して大学・短大・専門学校等へ進 学する90%が県外へ流出するという若い世代の減少も和歌山県の大きな問題となってい ます。 何とかこれを食い止める方策として移住、定住促進を進めるしかないと考えます。 一方、都会においては、田舎でのスローライフに憧れる人が、年々増えています。以前 は退職後の終の棲家として田舎暮らしを始める人が多かったようですが、今は若い夫婦が 喧噪の都会で子育てをするよりも田舎でゆったりとした人間らしい生活したいとやって来 る人が多くなっています。 私はこの定住促進についてこれまで何回も質問してきましたが、県の移住・定住促進施 策の充実によってかなり実績が上がっているように見受けられます。 特に、移住者の多い龍神村や中辺路町における I ターンの方々の活躍は目覚ましく、 様々な分野で地元の活性化に繋がっています。 このようなことから、合併から 10 年の間の定住促進プロジェクトの実績や自己評価を どのようにお考えでしょうか、お伺いいたします。 2 つ目に、移住の実績についてふるさと回帰支援センターが行う「田舎暮らし移住先人 気ランキング 3 は、大変気になるところでございます。 2012 年のランキングでは、和歌山県が 10 位に入っていましたが、2014 年では、20 位に転落しました。 1 位、2 位は、長野県と山梨県が定席でありますが、岡山県は震災以降の 2013 年に 3 位に急浮上してきました。 岡山県は、県全体では転出超過になっていますが、岡山市や倉敷市など県南部の自治体 では転入超過が続いています。特にファミリー層に人気が高く「移住するなら岡山県」と いうブームがきているそうです。 その理由として、原子力災害のリスクが少ない、土地価格の下落傾向が続いていて、移 住後に居を構えるのにもあまりお金がかからない、岡山県南部には空港があり、鉄道網や 高速道路網が整備されているので交通の利便性もよく、国内の移動にも適している、市街 中心部にマンションが多く存在することで、車がなくとも安全に暮らしていける「セカン ドライフ」の場所としても人気が高い、全国的に名が知られている総合病院が岡山県南部 に多いことも「セカンドライフ」を考えている高齢者の移住希望者には魅力的です。市街 地を離れると田園風景が広がり、「田舎暮らし」を希望する都会の住人にとっては、「都 会的な暮らし」と「田舎暮らし」のいいとこどりができると評判になっています。 また、先輩移住者が自らの経験を活かして後進の支援を行って、かゆいところに手が届 くアドバイスが得られるということも移住先として人気を高める要因になっているようで す。 このような移住先人気ランキングの上位となる自治体の取り組みに学ぶことは大いにあ ると思います。 今上げた人気の理由は、和歌山県、特に田辺市は、白浜空港まで約30分で行けるとい う事からも、ほとんどクリアできていると云えます。 田辺市は自然の豊かさに加え、温暖な気候で、海の幸・山の幸に恵まれたおいしい食べ 物、温泉や世界遺産のまちとしてどこにも負けない資源を有していると自負しています。 その和歌山県田辺市の魅力を発信して行くことこそが、人口減少の歯止めとなると考え ます。 ということから、和歌山県が田舎暮らし希望地域ランキングで下落した原因をどのよう に考えておられるかお聞かせください。 4 番目に、定住促進プロジェクトの地域の受け入れ体制の整備についてですが、このこ とは、前回平成 24 年 3 月議会で空き家の状況についてお伺いいたしました。 その時も空き家があるが、貸してもらえる物件が大変少ないため、供給を満たせないと いうことでした。 その後、空き家登録数は増えたのでしょうか。 それぞれの地域で聞いてみましても、空き家はあるのになかなか貸してもらえないとい う声は依然として多くあります。 受け入れ体制として市営住宅については、本宮町 24 戸、龍神村 50 戸、中辺路町 127 戸、旧大塔村 176 戸、旧田辺市 1018 戸という状況です。 旧大塔村時代に建設した住宅が多いことから、大塔地域は高齢化率も 33.5%と旧田辺に ついで低い数値となっています。 住宅が多ければ入居する人も多くなり、高齢化率もある程度抑えられるということでは ないでしょうか。 高齢化率が最も高い本宮町では、新年度予算で訪問介護に従事することを希望するIU ターンの人への助成が今議会に計上されていますが、1つの期待の持てる施策であると思 います。 人口減少は、全国で例外なく起きていることですが、Uターンの方には仕事、Iターン の方には先ずは住む場所の確保が必要であり、選ばれるまちになるためには、受け入れ体 制の強化が求められるところです。 また、県でも新年度予算において移住・定住大作戦として年間 300 世帯の誘致を目指し て移住促進事業を強化しようとしています。 これまでも県の施策を活用して、定住促進を進めてきたとは思いますが、市としての受 け入れ体制は、需要に対して充分供給対応できているとお考えかどうか、お聞かせくださ い。 <回答> 議員ご質問 2 点目の、定住促進プロジェクトについて、(1)については私から、 (2)(3)については担当部局からお答えします。 (1)の合併 10 周年を迎え市町村建設計画における定住促進プロジェクトの評価につい てということですが、まず、本市においては、過疎化・高齢化が著しく進む山村地域にお いて地域の維持活性化を図ろうと、元気かい!集落応援プログラムによる集落支援を展開 してきました。その中で、平成 19 年度より、第 1 次産業を核とした定住や移住促進に取 り組んできましたが、当市の移住相談窓口を経た移住実績は、平成 19 年 4 月から今年 1 月までで 78 世帯 150 名となっており、このうち約 6 割の世帯が現在も田辺市に在住して います。 これまでの取り組みにおける自己評価ということについてですが、まず、この移住推進 につきましては、県を挙げて行っており、県の移住・交流推進事業に参画している移住推 進市町村は、現在、県下 30 市町村中 17 市町村に上っています。この 17 市町村の中で田 辺市は一番多く移住実績を上げておりますので、一定の評価はできるのではないかと考え ております。 但し、この移住実績の多さは、広い市域を有し、様々な移住ニーズに応えられる多様な 自然環境や生活環境があるということ。更には、世界遺産「熊野古道」に代表される歴史 や文化、また温泉など人々の心と体を癒す魅力的な地域資源を数多く有していることが大 きいと考えます。全国的に移住推進が図られている現在、今後更に田辺市の魅力を全国に 発信し、選択される市にしていかなければならないと考えておりますので、ご理解賜りま すようお願い申し上げます。 <再質問> ご答弁ありがとうございます。 私の今回の質問の趣旨は、空き家の掘り起しを今まで以上に進めることは、難しく なっているのではないかという懸念からです。 もう空き家だけに頼る定住促進は限界にきているように思われてなりません。 前回の質問で、定住促進としての短期滞在施設が、現在本宮町と龍神村にありますの で、新たに中辺路町と大塔地域への設置を計画しているとおっしゃられていましたが、計 画実施の進捗状況はいかがでしょうか。 特に移住希望者に人気が高いのは中辺路地域です。その中でも近野、温川、高原では Iターンの人たちが今大変元気で地域おこしの一翼を担っています。彼らが作った「紀南 の移住者たち」というサイトでは、若い世代の感覚にスルッと入って行くアプローチがな され、移住希望者がどんどん増えているそうです。 しかし、困ったことに彼らのニーズに応えられていないのが現状です。空き家探しだ けでない別の方法も考えているのか、再質問いたします。 <回答> 議員ご質問、定住促進プロジェクトについて、の(2)と(3)について私からお答え します。 まず(2)の田舎暮らし希望地域ランキングが下落した原因をどう考えるかということ ですが、ふるさと回帰支援センターが発表する移住希望地ランキングは、同センターの東 京事務所に来た相談者や移住セミナー参加者等へのアンケート調査によるもので、その結 果やはり上位は長野県や千葉県など関東周辺の県が多くを占めています。和歌山県は比較 的早い時期から同センター内で移住セミナー等を行っていた関係から、平成 22 年度まで 上位 20 位内にランクインする西日本地域としては数少ない県の一つでした。平成 24 年 は、東日本大震災の影響からか、それまで東日本地域の県が上位 20 県の殆どを占めてい ましたが、この年は上位 20 県中 13 県が西日本地域の県が占め、和歌山県は 10 位にラン クインしました。その後、首都圏での積極的な情報発信や、同センター内へ専属的な移住 相談員の配置など行った県については上位にランクインしておりますが、残念ながら和歌 山県はそれらの県に押されランク圏外となった模様です。 ただし、同センターの大阪事務所で行っているアンケート調査では、平成 22 年以降 のランキングは 1 位か 2 位ということで、関西地域では依然移住候補地として人気のある 県のようです。これらのランキングと移住実績には乖離があるようですが、県では再び首 都圏での認知度を上げるため、来年度から和歌山県専属の移住相談員をふるさと回帰支援 センターへ配置する予定と聞いております。 次に(3)の空き家活用など受け入れ体制の強化についてお答えいたします。 当市では平成 22 年度より空き家活用による移住者の住居確保に努めて参りましたが、 その結果、現在までの空き家登録数は 58 件で、内 26 件は賃貸及び売買契約済みとなっ ております。残り 32 件中 8 件は劣化が著しいなど扱い難い物件で、その他は殆ど売買希 望のため売れずに残っているという状況です。 移住者の多くは賃貸物件を希望しており、市といたしましても空き家情報を求めるチ ラシの配布や、集落支援員等による空き家の掘り起しを行っているところでありますが、 「盆正の帰省時の住宅として使用している。」 「賃貸によるトラブルが不安。」 「老朽化による建替えや改修する費用がない。」 「置いてある家財を整理するのが困難。」 「身内全員の承諾がとれない。」 等の理由により貸してくれる空き家が非常に少ないというのが現状です。 一方、一部空き家の掘り起しが進んでいる例としまして、今年度、中辺路町近野地域に おいて国の過疎集落等自立再生対策事業補助金を利用して、移住者を積極的に誘致してい くことを主体とした事業が実施されており、移住者を受け入れるにはまず住むところが必 要ということで、地域住民が直接家主に交渉しています。「何処に、誰の」空き家がある ということを良く知っている地域住民が動くことにより、家主にもコンタクトを取りやす く、且つ住民として信頼関係が築けていることで、貸しても良いという空き家が出てきて います。 また、秋津川地域では、I ターンで製炭士を希望する若者を地域に紹介したところ、や はり地域の方が貸してくれる空き家を探してくれました。 このように、空き家活用に関しましては地元の協力があれば比較的スムーズに進むとい うことも実証できておりますので、今後は地域とも協働しながら空き家の掘り起しを進め て参りたいと考えております。 また、県では、これまでの空き家改修支援補助金の他に、過疎地域の空き家を積極的に 利活用するため、貸主と借主がより容易に空き家の賃貸を行えるようにする和歌山県定住 支援住宅管理機構の設置、また、空き家バンクの開設や、家財整理をすることへの補助等、 更に空き家活用に力を入れていくことも聞いておりますので、市といたしましても今まで 同様、県と協力をしながら移住推進による空き家活用を実施して参りますので、ご理解賜 りますようお願い申し上げます。 <再登壇> 近露のシェアハウスは、古民家を改修して 5 人が入居できるようになったようですが、 このような取り組みを広げていく必要があると思います。 このシェアハウスも近露に移住して来た人たちが中心となっていますが、新たな移住者 が移住者を呼び、仕事も起していくという好循環を作ることが期待されるところです。 昨日上程されました追加議案では、県外からの移住者が空き家を利用する場合の改修費 を増額する提案がありました。 それも1つの方法ではありますが、今空き家登録に残っているのは住むに堪えない老朽 化した物件か売買希望の物件ということでした。 今後の空き家掘り起しも必要かも分かりませんが、それだけに頼ることなく、例えば近 野の市有地である旧国民宿舎の跡地に短期滞在施設や定住促進住宅を建設することや中辺 路郵便局の隣の雇用促進住宅の活用なども視野に入れて新たな方策を考えていただきたい と思います。 今回国で決まりました「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、基本目標として「地 方における安定した雇用を創出する」ことや「地方への新しいひとの流れをつくる」こと が挙げられています。 そのための施策として「地域産業の競争力強化」や「地方移住の推進」が5年間の総合 戦略の柱となっています。 どれも本県にとっては今更ながらの施策であり、特に当市も進めてきたことですから、 今後いかに効果的に結果を出していくかということです。 つまり、定住促進策として大胆な発想も加えながら、今後の課題解決に積極的に取り組 んでいただけますことを要望いたしまして私の質問は終わります。
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