プログラムの工夫

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男性ご利用者の活動・参加を促す
実施の流れ
①打ち合わせ → ②準備 → ③実施(次回への打ち合わせ)→ ④準備(前回の課題の改善)
プログラムの工夫
工夫①
介護老人保健施設 大宮フロイデハイム 大宮デイケアセンター
通所・サテライト科長
木戸田 真
管理者
小口 英司
別空間、こだわりのユニフォームで実施
「男の料理教室」の実施場所は施設から100m
ほど離れたところにある当法人のコミュニティー
カフェです。男性高齢者は、料理への興味はあっ
ても、作ること自体に恥ずかしさを感じるとい
う方もいるため、施設から離れた別空間を会場に
大宮フロイデハイムでは、多職種協働のもと
定員
入所80名、通所80名
「心身機能向上はもとより、精神機能の向上は欠
提供時間
8:00~18:00
職員配置
理学療法士、作業療法士、言語
聴覚士、看護師、介護士、歯科
衛生士、マッサージ師、管理栄
養士、社会福祉士
かせない」をテーマに、生きがい作りや自立支援
に向けたさまざまなアプローチを試みています。
男
することで、周りの目を気にせず、仲間内だけの
アットホームな環境をつくりました。
また、参加者同士で話し合い「料理は格好か
ら」と、参加者は全員おそろいのバンダナと腰巻
きエプロンを装着し、雰囲気を演出しています。
ユニフォームは、バンダナと腰巻きエプロンです
工夫②
の料理教室への参加を通して、さまざまな活動を改善する
打ち合わせ・準備、すべてを参加者同士で決定する
男の料理教室は基本的に、すべての工程を利用
と時間を設けることで、楽しみを感じられるよう
当事業所の利用者は男女比がほぼ同率で、女性
が主体的に参加できるアクティビティ強化が課題
者が行います。メニューを決定する会議(打ち合
になり、メニューも「自分たちが食べたいものを
利用者は比較的いろいろな活動を自発的に行って
でした。そこで、男性利用者の活動として「男の
わせ)は、料理が出来上がった後、実食しながら
作る」~「人に食べさせてみたい」に変化してい
いますが、男性利用者はリハビリ以外の時間は特
料理教室」を実施し、その過程でさまざまな工夫
行い、調理工程や道具、材料についても参加者か
ます。料理がうまくできなかったときも「男の料
に何の活動へも参加しない方が非常に多く、男性
を行いました。
らの発案を中心にしています。当初は職員が提案
理だから、形が悪い方が男らしい!」と、前向き
したものを黙々と作っていましたが、作ることで
に楽しく取り組めています。
の達成感や自分たちが作りたいものを話し合う場
実
施の流れ
男の料理教室は、男性利用者限定で毎週金曜日
工夫③
男性利用者の割合
に14時~15時の1時間程度実施しています。実施
〜64歳
65〜74歳 75〜84歳
85歳〜
料理の実施過程で出てくる課題を利用者同士で解決できるようサポート
参加者は車イスの方や片麻痺の方など、さまざ
していただきます。利用者同士の考えを優先する
まな障がいを持っています。
ため、選択した方法だと大変な手間が掛かること
時間は料理をするだけでなく、メニュー決めや準
要支援1
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そのため、一見シンプルなホットケーキを1枚
もありましたが、やる気をもって主体的に取り組
備物の買い物も行うため、手の込んだ料理をする
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作る工程の中でも課題が必ず出てきます。出てき
むことが一番重要だと考えています。今では、手
場合や、こだわりの材料を使う場合は打ち合わせ
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た課題については、まず利用者同士が協力し合っ
間がかかったときなどは、次回の料理教室のとき
や買い物も含めると完成までに3ヶ月かかること
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て解決方法を考えます。
に自分なりのやり方を新しく見つけ出す方や、う
もあります。実施場所やユニフォームなどにもこ
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難しい場合は、作業療法士、栄養士などの多職
まく道具が使えるよう作業療法士に事前に相談す
だわり、男性利用者が意欲的に活動できるようサ
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種にも意見をもらい、利用者には作業方法を複数
る利用者が増えてきています。
ポートしています。
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提案し、本人にとって一番やりやすい方法を選択
62 月刊デイ Vol.176
Vol.176 月刊デイ 63
特集 本人の可能性を生かす支援・活動のアプローチ
工夫④
「事業所で料理教室に参加」から「地域のお祭りに参加」へつなげる
男の料理教室に参加する皆さんの目的が「誰
員が一体となって屋台ブースでカリカリ揚げを販売
かに食べさせたい、振る舞いたい」に変わり、
し、自分たちで考えたオリジナル商品が完売した達
「作って食べる」から一歩進んだ次の目標を探し
成感と地域の人たちとの交流を楽しみ、励ましや
ていました。そんなとき地域の方々より、地域の
労いの言葉が何とも言えない充実感を生みました。
日曜大工クラブ
男の模型教室
他利用者からの要望を受け、現在は足台を制作
お城やゼロ戦などのプラモデルを制作していま
中です。昨年は地域の子どもたちへの貯金箱の制
す。お孫さんに喜ばれる物を作れるように奮闘中
作を指導しました。
です。
お祭り「あきない祭り」があることを教えてもら
い、参加できないか打診したところ、主催者側よ
り「ぜひ」と快諾をもらいました。
料理教室の会議で提案・発表したところ、満場一
致で「あきない祭り」への参加が決定し、新たな目
標として「あきない祭りで作った料理を完売する」
が決まり、社会参加の第一歩を踏み出しました。
「あきない祭り」は、地元商店街が主催するお祭り
なので、地域に施設の活動をアピールする良い機会
にもなりました。男の料理教室は、参加利用者と職
そ
「あきない祭り」は大成功でした
各クラブが活動を始めてから約1年が経過し、
と思います。職員が本気で取り組めば、利用者も
ほぼすべてのクラブ参加者が自主的に「やりたい
乗ってくる。利用者との信頼関係を築き上げるこ
当センターでは「本人が望む作業を見つけるサポートをすること」に重点を置き、料理教室のほかに、園
こと」を発案して活動しています。利用者が主体
と、絶えず利用者に「こんなこともできます」と
芸クラブ・カラオケ俱楽部・日曜大工クラブ・男の模型教室といった4つのクラブ活動を展開しています。
となって活動してきたことで、生活意欲やリハビ
アピールし、意味のある生きがい作りを粘り強く
リ意識が向上し、自立支援の第一歩を踏み出せた
提供し続け、活躍できる場の創出のきっかけ作り
と感じています。それぞれのクラブが立てている
をしていきたいです。
の他のクラブ活動
園芸クラブ
カラオケ倶楽部
屋上農園での野菜栽培を中心に活動。昨年は利
利用者主体で月1回開催している「素人演芸大
「野菜などを栽培して食べよう」から「地域の人
用者からの発案でプランターで蕎麦を栽培し、収
会」で、日々の歌の練習の成果を披露していま
穫後に蕎麦打ちも行いました。
す。また、カラオケBOXで歌いたいとの要望が
たちに食べて欲しい、振る舞いたい」に変わり、
あり実現しました。
大きな目標にも変化があります。園芸クラブでは
日曜大工クラブでは、最終目標として「夏祭りで
使うお神輿づくり」を計画しています。カラオケ
倶楽部では、「施設で歌を披露したい」から「一
般の場で歌いたい」に変わり、さらに「地域のカ
ラオケ大会出場」を目指しています。
今後も通所事業所におけるリハビリテーショ
ンの「活動」と「参加」を大事に考え、多職種
でのアセスメントを行い、利用者の生きがいを探
すために、丁寧かつ真剣に取り組むことが大切だ
64 月刊デイ Vol.176
次の目標は、地元のB級グルメに出店することです
Vol.176 月刊デイ 65