表解 注射薬の 配合変化

表 解 注 射 薬の配 合 変 化
ダミー
改訂
10版
表解
注射薬の
配合変化
The Change in Combination
of Injection Medicine
監修
井関 健
編集
宮本 剛典
久保田康生
改訂
10版
北海道大学病院薬剤部長・
北海道大学大学院薬学研究院医療薬学部門臨床薬剤学 教授
北海道大学病院薬剤部
北海道大学病院薬剤部
井関 健
監修
宮本 剛典
久保田康生
編集
1)
従来法
−
−
−
2)
Tandem
Piggy back
ゴム管
−
I. V. Push
両頭針
その他
IVH バッグ
図 1:混注方法 1)
(1)の方法は一般に多品目の注射薬を混合する場合には手間がかかるが,輸液により最初
から希釈されるため配合変化は生じにくい。しかし何回も輸液のゴム栓を穿刺することから
不溶性異物の混入および外界からの微生物汚染の危険が大きくなる。
(2)の方法は医療現場では一般に行われている方法である。この方法は比較的手間がかか
らないが,注射薬が希釈されずに注射筒内で相互に濃い状態で混合されることから配合変化
が生じやすい。したがってこの方法(2)では混合順序を工夫する必要がある場合もある。
エフオーワイ注(ガベキサートメシル酸塩)は他剤との配合で外観変化を生ずる場合も多い
が,輸液などで希釈した場合には,その多くは外観変化がみられなくなる場合が多い。そこ
で混合時にガベキサートメシル酸塩注射液を直接輸液に注入するなどの配慮が必要である。
この方法では混濁・沈殿などの外観変化を避けられる場合もある。
(3)の方法は事前に点滴静注液と管注する注射液間で配合変化が生じないことを確認して
おく必要がある。例えばジアゼパム注射液は管注すると白濁し,また血管痛を伴い,ときに
は血栓性静脈炎を引き起こすともいわれている。
(4)の方法は抗生剤の大量投与などに用いられ,他の点滴静注液と配合することなく使用
するため,力価低下のおそれも少ない。また注入速度をコントロールできるので便利である。
(5)の方法は,長時間大量の輸液類を点滴静注する際に用いられる。このタンデム方式の
場合に輸液の比重がそれぞれ異なる場合,あるいはエアー管の有無でその輸液の連結方法に
よって輸液がボトル中で均一に混合せず,点滴注入中に浸透圧が変化する場合があることが
知られている 3,19)。この場合エアー管の有無によって次の組み合わせで行うのが良いといわ
れている 3)。
(a)エアー管のある場合・比重が小さい輸液を点滴瓶とし,エアー管を通じて比重の大き
い輸液を混合し投与する。
(b)エアー管のない場合・比重の大きい輸液を点滴瓶とし,比重の小さい輸液を連結管
を用いて混合し投与する。
iv
抗悪性腫瘍剤
ジフルカン静注液
3.2
3.2
101.1
100.5
フロリード F注
3.6
3.6
99.7
99.3
ゾビラックス点滴静注用
9.1
9.1
100.5
101.0
デノシン点滴静注用* 2
3.8
3.8
-
-
アラセナ-A点滴静注用
3.4
3.4
100.7
99.3
オーツカ MV注
3.2
3.3
101.4
100.6
アミノトリパ 1号輸液* 3
5.4
5.4
-
-
ピーエヌツイン-2号輸液
5.0
5.0
-
-
ユニカリック L輸液
4.3
4.3
97.2
96.8
*3
* 1:混合直後は澄明であったものの 6 時間後から結晶の析出を観察したため,定量法の試験を中止した。
* 2:混合直後から沈殿または結晶を生じたため,定量法は実施しなかった。
* 3:混合薬剤によるゲムシタビンピークへの妨害があったため,定量法は実施しなかった。
548
ビノレルビン酒石酸塩
ビノレルビン酒石酸塩 Vinorelbine ditartrate
配合表
ナベルビン注 10・40(協和発酵キリン)
pH:3.3~3.8 浸透圧比:約 0.1 組成:ビノレルビン酒石酸塩
配合薬品名
可否
配合変化
文献
フトラフール注 400mg/10mL + Sal. 100mL
否
直後白濁
IF
フトラフール注 400mg/10mL + 5% Glu. 100mL
〃
〃
IF
フトラフール注 400mg/10mL + ソリタ-T3 号輸液 500mL
〃
〃
IF
スルペラゾン静注用 0.5g + Sal. 100mL
〃
直後微白濁
IF
スルペラゾン静注用 0.5g + 5% Glu. 100mL
〃
直後白濁
IF
直後混濁
ベストコール静注用 1g + 5% Glu. 100mL
〃
ソル・メドロール静注用 500mg + D.W. 8mL + Sal. 100mL
〃
直後白濁
IF
メイロン静注 8.4% 250mL + Sal. 100mL
〃
1 時間後白色浮遊物
IF
メイロン静注 8.4% 250mL + 5% Glu. 100mL
〃
〃
IF
5-FU 注 750mg/15mL + Sal. 500mL
〃
直後微粒子
IF
24 時間後沈殿
IF
D.W.:注射用水,Sal.:生理食塩液,5% Glu.:5%ブドウ糖液
資 料
構造式
分子式
分子量
pKa1’
pKa2’
略 号
C45H54N4O8・2C4H6O6
1079.11
5.8
8.2[IF]
VNB
性 状
ビノレルビン酒石酸塩は白色~微黄白色の粉末で,においはない。水,メタノール,無水エタ
ノールに極めて溶けやすく,アセトンに溶けやすく,エーテル,ヘキサンにはほとんど溶けな
い。また pH4 以下では極めて水に溶けやすいが,pH7 以上では急激な溶解度の低下が認められ
た[添]。
安定性
本品(40mg/4mL)を生理食塩液 500mL に希釈後,室温散光下に保存したところ,24 時間後に
おいても外観や pH に変化はみられず,残存率もほとんど変化がなく安定であった[添]。
配合性
本剤は pH 変動試験(pH2.3~6.4)の結果,アルカリ側(pH6.4)で白濁した。中性以上で溶解
度が低いため 552,553),アルカリ性の注射薬と混合した場合,混濁・沈殿を生じることがある。
適用上の注意
他の注射剤と配合した場合,ビノレルビンが析出するおそれがあるので,原則として他の注射
剤との同時混合投与を避けること[添]。
549
抗生物質製剤 セファマイシン系
表 2:セフメタゾールの安定性に及ぼす pH の影響 217)
pH
2.7
時間
(hr)
3.0
4.0
5.7
7.0
8.0
9.0
10.5
99.8**
100.0**
97.6**
97.3**
0
98.6 *
98.8
100.2
100.0
3
96.5
98.2
97.6
99.0
96.9
94.7
94.8
94.0
6
94.6
92.6
98.1
98.9
96.0
94.5
95.0
93.9
24
94.0
94.3
96.4
97.8
96.1
93.1
91.9
91.3
1)1g/10mL(注射用蒸留水)pH5.68
2)*白濁,6 時間後沈殿
3)**淡黄色その後変化なし
表 3:セフメタゾール注射液の配合変化 217)
pH 変化
配 合 薬 品 名
残存率(%)
0(hr)
6(hr)
6(hr)
24(hr)
5%ブドウ糖液
500mL
4.1
4.2
100.0
97.5
EL-3 号
500mL
5.3
5.2
99.6
98.4
エフオーワイ
5mL
5.1
4.9
95.2
84.1
ネオフィリン注
2mL
5.2
5.1
92.2
93.7
5.5
5.5
91.0
92.3
6.3
6.3
97.8
95.4
ビタメジン
10mL
VC
500mg2mL
ラクテック G
500mL
VC
500mg2mL
備 考
直後白濁
配合方法:CMZ1.0g(蒸留水 10mL)+ 配合薬品
表 4:セフメタゾン注射液の配合変化 226)
配 合 薬 品 名
薬品名・配合量
クリニット注
5-FU 注
フトラフール注
pH 変化
残存率(%)
配合方法
pH
0(hr)
8(hr)
8(hr)
24(hr)
5% 250mL
6.0
5.6
4.9
100.0
99.8
Ⅰ
5mL
8.6
8.3
8.2
100.9
94.7
Ⅱ
10mL
9.7
9.7
9.0
86.9
78.6
Ⅱ
配合方法:Ⅰ法 セフメタゾン 1g(注射用蒸留水 4mL)+ 配合薬品 250mL
Ⅱ法 セフメタゾン 1g(生理食塩液 250mL)+ 配合薬品 1 アンプル(または 1 バイアル)
〔注〕
:外観変化についてはマンニトール,マイトマイシン S,フトラフールの 3 薬剤を除いては変化な
し配合薬品名が乾燥注射剤の場合は所定の溶解液に溶解後混合する
616
ラタモキセフナトリウム
ラタモキセフナトリウム Latamoxef sodium
配合表
シオマリン静注用 1g(塩野義)
pH:5.0~7.0 浸透圧比:約 2 組成:ラタモキセフナトリウム(D-マンニトール)
配合薬品名
マンニトール
ネオフィリン
可否
否
〃
配合変化
6 時間後結晶析出
力価低下(表 3)
3 時間後結晶析出(表 6)
文献
287
287
5-FU 注
力価低下(表 6,7)
287
フトラフール
〃 ( 〃 )
287
メイロン
〃 (表 6)
287
アタラックス-P
白濁→振とう透明(表 3)
353
ビソルボン
〃 ( 〃 )
353
セファランチン
〃 ( 〃 )
353
エフオーワイ
否
白濁,3 時間後沈殿( 〃 )
353
ホリゾン
〃
黄濁,24 時間後沈殿( 〃 )
353
資 料
構造式
分子式 C20H18N6Na2O9S
分子量 564.44
pKa1 2.50(Δ3-オキサセフェム核の 2 位
カルボキシル基)
pKa2 3.60(ベンジル位のカルボキシル基)
[IF]
pKa3 9.98
(フェノール性水酸基)
略 号 LMOX
性 状
ラタモキセフナトリウムは白色~淡黄白色の粉末または塊である。水に極めて溶けやすく,メ
タノールに溶けやすく,エタノール(95)に溶けにくい[添]。
安定性
シオマリン静注用を溶解後保存する場合には,冷蔵庫保存で 72 時間以内,室温保存で 24 時間
以内に使用する[添]。また,LMOX(1g/10mL)水溶液は,5℃では 7 日間,20℃では 24 時間,
37℃では 6 時間力価の低下は認められなかったとの報告がある 368,370)。水溶液の安定性は pH に
依存し,特にアルカリ性で速やかに分解する 296,422)。
配合性
シオマリン静注用はアルカリ性注射剤との配合で,その力価の低下が知られている。
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