「 牛 若 丸 」

ホウレンソウ
10
わか
まる
ひろ のぶ
出荷調製作業に時間がかかるホウレ
ンソウでは、時間当たりにどれだけの
束数ができるかが、出荷量を決める重
要な要因となります。そのため、品種
には収量性はもちろんのこと、収穫作
業性についても一層のレベルアップが
求められます。
一方産地では、パートの雇用などに
よる栽培面積拡大にともない、大面積
上位の抵抗性品種の育成を進めてきま
み、重要病害であるべと病には、より
兼ね備えた多収型品種の育成に取り組
タキイ種苗では、在圃性と、作業性を
む声も聞かれます。これらを踏まえて、
の栽培に適した在圃性の高い品種を望
ほ
「牛若丸」の適作型
■「牛若丸」適期表
ハウス
ハウス
冷涼地
ハウス
中間地
トンネル
暖
地
べと病レース1~ に抵抗性をもち、
草勢は比較的強く、作りやすい品種で
林 宏信
した。主力産地で試作の結果、収量性、
収穫・調製作業性が目標に達している
て新発表する運びとなりました。
「牛若丸」
とし
ことが確認できたため、
品種特性
❶べと病に強く、栽培容易な
秋冬どり種
中間地:播種9月中旬~3月
収穫10月中旬~5月上旬
冷涼地:播種9月
2月中旬~3月
収穫10~12月上旬
4~5月中旬
るため、束ね作業がはかどります。
張りがよく、少ない株数で1束ができ
葉柄はしなやかで折れにくく、収穫
・調製作業が容易です。そのうえ、株
調製作業も容易
❹葉柄は折れにくく、
いことも特長です。
くく、在圃性があり、収穫適期幅が広
仕上がります。草丈が急に長くなりに
比較的葉柄が短いため、葉身と葉柄
のバランスがよく、がっちりした株に
❸在圃性があり、収穫適期が長い
収量性の高い品種です。
みを帯びた形状でボリュームがあり、
葉柄は太く、株張りがすぐれている
ことが特長です。葉は肉厚で、やや丸
❷株張りがよく、収量性がすぐれる
どりの栽培に適します。
地の年内~早春どり、冷涼地の秋、春
す。中間地や暖地の年内~春どり、暖
10
タキイ長沼研究農場
はやし
べと病レース1~ 抵抗性、葉柄が太く、株張りがよい年内~冬どり種
うし
「牛若丸」
新発表
3
2015 タキイ最前線 秋号 ←
べと病レース10に抵抗
性をもち、赤根で葉柄
が太く株張りがよい。
→
在圃性があり、秋か
ら春の幅広い作型で
栽培できる。
栽 培 の ポ イ ン ト
本葉4枚ごろに追肥を行い、株張りを
促します。
す。あまり早くからトンネルを掛ける
と、
株の徒長の原因となるので、
12月以
降気温を見ながらトンネル被覆を進め
過湿条件下では、葉の黄化症状の発
③適切な株間での栽培
ます。2月中旬以降はトンネル内の温
生が懸念されるため、水はけの悪い圃
「牛若丸」
では栽植密度が薄いと株が
度が高くなりやすいため、換気を強め
場では高畝栽培とし、排水できるよう
めい きょ
太くなりすぎて、やや開帳気味になり、 に行うことが良品出荷のポイントです。
にあらかじめ明渠などを設置しておき
たい ひ
作業性が低下する場合があります。特
ます。また、堆肥などの有機質を施用
⑤総合的なべと病防除の実施
に露地栽培の10月20日~11月15日ごろ
し、保水と排水性のよい土づくりを心
に播種するものは、薄まきにならない
べと病はレース分化の起こりやすい
掛けます。
ように注意してください。株間は3~
病害です。その対策は抵抗性品種の使
②肥切れしない施肥設計
用のみではなく、登録農薬での予防的
4㎝が目安です。その他の作型では株
な防除を併用し、総合的な防除を心掛
間5~6㎝が目安となります。
秋冬どりはほかの作型に比べて栽培
けてください。
期間が長いので、収穫時期まで肥効が
④低温期は被覆資材を活用
べと病は多湿条件や軟弱生長した場
切れない施肥設計が色ツヤのよい良品
暖地を除き、冬どりではトンネル被
合に発生しやすいため、過剰な多肥栽
出荷には重要です。施肥は元肥でチッ
覆あるいは
「テクテク」
のベタがけで生
培やトンネル、ハウスでの蒸し込みな
ソ成分10a当たり20〜25㎏程度が目安
ひ よく
どにも注意が必要です。
で、土壌の肥沃度に応じて施用します。 育適温を確保することをおすすめしま
①排水のよい圃場準備
ホウレンソウ「 牛 若 丸 」栽 培 特 性メモ
べん てん まる
「弁天丸」
との使い分け
「弁天丸」は立性の草姿で作業性を重視した品種、
「牛若丸」は株張りがよく、収量性を重視した品種で
す。経営体系にあわせてお選びください。
最適播種期
(産地レベル)
10月∼2月(一般地)
適播種期
(菜園レベル)
9月中旬∼3月(一般地)
耐病性
べと病レース1∼10抵抗性
収穫時期が温暖な10月および12月~2月の播種で
は「牛若丸」の方が株張りが安定します。厳寒期の伸
基本の施肥量
(10a当たり)
び、耐寒性は「弁天丸」の方がすぐれているため、比
較的気温の低い中間地の栽培では1~2月上旬どり
は「 弁 天 丸 」を 中 心 と し、その前後で「牛若丸」
を作
播種基準
(畝幅・条数・株間)
付けすることをおすすめします。
元肥
秋、春どりN:P:K すべて15㎏
年内どり N:P:K すべて20㎏
冬どり N:P:K すべて25㎏
追肥
本葉4枚期にチッソ成分で3㎏
秋、春どり 条間15∼20㎝ 株間5∼6㎝
年内∼冬どり 条間15∼20㎝ 株間3∼4㎝
ホウレンソウ特 性 表
品種名
適作型
生育速度 草 姿 株張り 葉 色 根 色 葉 形 抽苔性
牛若丸
弁天丸
ニューアンナR4
エリナ
4 2015 タキイ最前線 秋号
秋冬∼初春まき 中早生
立
大
極立
中大
立
中大
極立
中大
◎
◎
耐暑性 耐寒性 べと病抵抗性
濃
中晩
○
淡
中
○
濃
中晩
◎
◎
R1∼4
濃
中
○
◎
R1∼7
◎
R1∼10
R1∼10