南海トラフ巨大地震を想定した神社の立地特性及び 津波避難場所利用

A10
Research Abstracts on Spatial Information Science
CSIS DAYS 2015
南海トラフ巨大地震を想定した神社の立地特性及び
津波避難場所利用としての有効性に関する研究
板垣 早香 1,藤田 直子 2
1
九州大学大学院 芸術工学府,2 九州大学大学院 芸術工学研究院
Email: <[email protected]>, <[email protected]>
(1) 動機: 東日本大震災で発生した津浪による被害は
各地で多数報告されているが,その中に海岸線近
傍に祭られた神社が津波被害を免れたことを指摘
する事例もみられた.本研究の目的は,九州太平
洋沖に位置する神社の立地特性を明らかにし,一
時避難場所としての有効性を検討することとした.
(2) 方法: 本研究の対象地域は,宮崎県東臼杵郡門
川町である.この地域は東日本大震災でも津波被
害の大きかったリアス海岸を有している.本研究で
は ま ず , 現 地 調 査 に て GPS(Garmin eTrex 30 ,
Garmin Oregon 450TC)を用いた町内全神社の位置
情報・標高および現況を把握した(図 1).次に,GIS
を用いて,現地で取得したデータと,地形・植生・土
地利用等のレイヤーを重ね,地域特性と神社の分
布傾向の把握を試みた(図 2).最後に,内閣府の
南海トラフ巨大地震モデル検討会において検討さ
れた津波高のレイヤーを重ね,神社および町の指
定避難場所の浸水予想を把握した(図 3).今回は
「南海トラフ巨大地震」モデル全 11 ケースのうち,宮
崎県北部に最大の影響を及ぼすケース 11 を採用し
て分析を行った.
図 1: 神社の位置
(3) 結果: 山地・丘陵地より台地・低地部に 20 社中 15
社存在していること,急傾斜地を添うようにして神社
が立地することも確認できた.これは,避難の際利
点となりうるが,崩壊の危険や高齢者の避難が困
難等の問題もある.
内閣府の南海トラフ巨大地震予想津波高レイヤ
ーを重ねると,20 社中 5 社の神社,町内の指定避
難場所 13 か所中 3 か所が浸水域内にあることがわ
かった.指定避難場所周囲 1 ㎞(徒歩 30 分)円は
町内沿岸部全域をカバーするが,半径 400m(徒
歩 10 分)に狭めると,空白地帯が生まれる.沿岸部
非浸水域の高台に立地する神社を一時避難場所
として利用することで,徒歩 10 分圏の避難場所が 7
か所増える.
(4) 使用したデータ:
・ 「縮尺 20 万分の 1 土地保全図基本調査」国土交
通省
・ 「南海トラフ巨大地震の被害想定(浸水深/ケース
11_2 系_太平洋側)」ESRI ジャパン
(5) 謝辞: 本研究は,JSPS 科研費 26740047 の助成を
受けた.
図 2: 神社の位置と地形・地質
図 3: 南海トラフ津波浸水域と神社
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