27 なる関係が成立する。ここで、a , b は定数である。この関係をフェリー・ポータ則と 言う。図1.26 からも明らかであるが、CFF は刺激の強さ(平均輝度)の対数に比例す る。このことは、フィルム映画等において平均輝度を大きくできない理由である。 盲点 視標輝度 [cd/m2] CFF [Hz] CFF [Hz] 視標の大きさ 16° こめかみ側網膜 鼻側網膜 中心からの偏位角 [deg] 図 1.27 視野各部における CFF の変化 この CFF は網膜上の部位でも変化する。その関係を示したものが図 1.27 である。 網膜の中心部(偏位角=0° )からの偏位が大きくなると CFF が大きくなる傾向がある。 すなわち、大面積で画像を表示するシステムでは小面積の表示時より「ちらつき」 を感じやすいことを意味している。 3.8 動きの知覚 画像内の動きがどのように見えるのかということも重要な問題の 1 つである。デ ィジタル映像信号は時間軸方向で標本化し、動きを得ている。標本化される前の現 実の運動を実際運動と呼ぶ。この実際運動が知覚される最小の速度が速度閾である。 この値は輝度、呈示される時間などにより大きく異なる。また、速度が大きくなり すぎても運動は知覚されなくなる。この上限は速度頂と呼ばれている。眼を固定す ると、運動対象物の形が知覚される最大速度は 15°/sec までであり、50°/sec 以上で は光の帯のみが観察されるにすぎない。 実際運動に対してもう 1 つ、仮現運動と呼ばれている動き知覚がある。仮現運動 は狭義には「客観的に静止した刺激が単に呈示されたり、消失したりするだけで見 かけ上生じる運動」と定義され、β 運動といわれている。仮現運動で動きの印象に 34 ・色相対比 図 1.37(a)において、赤に囲まれた内部の小さな四角の色と黄に囲まれた内 部の小さな四角の色は同じであるが、赤に囲まれた色の方が黄色っぽく見え る。この現象が同時色対比である。これは、背景となる赤の色に対する感度 が低下し、反対色の緑の感度が上がり、小さな四角の部分に緑が加法される ことで生じる現象と考えられる。 ・明度対比 図 1.37(b)において、暗い色に囲まれた色の方が明るく見える現象。 ・彩度対比 図1.37(c)において、彩度の高い色に囲まれた色は彩度が低下する現象。明 度対比および彩度対比も色相対比の同様に背景に対して視覚が調整(順応) するために起きる現象と考えられる。 (a) 色相対比 (b) 図 1.37 明度対比 (c) 彩度対比 同時色対比 (2) 継時色対比 同時色対比は空間的に隣接する色の影響であったが、継時色対比はその時間バー ジョンと言える。図 1.38 に示す円の中央にある十字を 30 秒から 1 分程度見つめた 後に右の十字を見つめると、対応した領域には低彩度(薄い)反対色が見える。色残 像とも呼ばれる現象で、目を動かすとすぐに消えてしまう。この現象も後述する色 順応で説明できる。 低彩度の赤 低彩度の緑 図 1.38 継時色対比 低彩度の青 低彩度の黄 57 セル系の写像で評価すれば、L*a*b* 色空間の方が、等クロマ線はほぼ等間隔の同心 円であり、等ヒュー線は等角度直線となっていて、優れていることがわかる。 5.デバイス・装置の色域 5.1 色域 ディスプレイやプリンタなどのカラー画像表示・出力装置が再現できる色の範囲 を色域と呼ぶ。表示装置は加法混色、出力装置は減法混色の原理に基づき、複数の 原色の加重和によって色再現を行う。色域は、複数の原色の色度座標を頂点とする b* v* 多角形の周囲および内部の領域となる。まず、この原理を説明する。 オプティマル ・カラー オプティマル ・カラー a* b* v* u* u* (a) CIEL*u*v*色空間 図 2.28 a* (b) CIEL*a*b 色空間 均等色空間の評価(上図:色弁別楕円、下図:マンセル系の写像) 2 つの光源を合成した発光スペクトルの色度座標を考える。図 2.29 に示すように、 第1、第 2 の色度座標を(x1,y1)、(x2,y2) とする。さらに、これら光源の発光スペク トルをそれぞれ S1(λ)、S2(λ)とする。ただし、これらはピーク波長の強度で規格化 されているものとする。 この 2 つの光源から放射される光を加え合わせて合成される発光スペクトル Sm(λ)は、 77 (a) 原画像 (b) HE 法 図 3.12 (c) 濃度勾配 HE 法 濃度勾配 HE 法 (3) 分割ヒストグラム平坦化 分割 ヒストグラム平坦化法 ヒストグラム平坦化法 HE 法の欠点として、処理前後の平均階調値の変動が挙げられる。この問題点は 映像信号に適用する場合に致命的なものとなる。映像信号の場合、フレームごとに その平均階調値が変動すれば、ちらつき(フリッカー)現象が生じることになる。 平均階調値変動を抑える代表的な方法は分割 HE 法である。分割 HE 法はヒスト グラムを分割し、分割区間ごとに HE 法を適用する方法である。ヒストグラムの分 割方法は種々あり、最も簡単な方法は平均値やメジアン値を用いる方法である。画 像領域の分割と結びつける方法として、ヒストグラムの谷で分割する方法がある。 各分割区間で HE 法を適用するが、その際、各分割区間の HE 法前後で平均階調値 の変動を少なくする手段として、ヒストグラムのピーク(山)でヒストグラムを分割 91 ● BR セクター(240° ≤ H <360°) : H の定義を H=H-240°と変更し、RGB 各成分を以下の変換則で求める。 G = I (1 − S ) S cos H B = I 1 + cos( 60° − H ) R = 3 I − (G + B ) (4.6) この HSI 色空間は図 4.1 の形状とは異なり、輝度が大きくなると単調に彩度の取 り得る範囲が広がる。また、HSI 色空間の方が RGB 色空間より広く、HSI 色空間で 処理を行った後に RGB 色空間に逆変換を行った場合、その信号値が RGB 色空間か ら飛び出すことがある。 2.HSI HSI 色空間における感性に合致した画像処理手法 2.1 色空間形状を考慮した輝度信号の均等化 濃淡画像に対して豊富な処理アルゴリズムが明らかにされている。カラー信号に おいて輝度信号を取り出せば、その輝度成分に濃淡画像に対する処理アルゴリズム を適用できることになる。しかしながら、単純に濃淡画像に対する処理アルゴリズ ムをカラー画像の輝度に適用した時に良好な結果が得られるとは限らない。いま、 輝度信号を式(4.3)で求めて濃淡画像の HE を適用した場合がその一例となる。 (a) 原画像 (b) 輝度成分へ HE 法を適用 図 4.2 (c)色空間を考慮した均等化法 輝度成分への HE 法の適用 図 4.2(a)に原画像、図 4.2(b)に輝度に対して HE を適用した結果を示した。コン トラストは向上しているものの、色が薄く、硬い画像になっていることが分かる。 これは、式(4.3)で与えられる輝度は正規化された RGB 色空間においては(0,0,0)と (1,1,1)を結ぶ対角線上へ信号を射影することを意味する。RGB 色空間では,最小輝
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