視覚誘発電位と視力、中心フリッカー値との関連

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視覚誘発電位と視力、中心フリッカー値との関連
◎坂本 恵子 1)、山崎 澄枝 1)、濱松 文美 1)
財団法人平成紫川会 小倉記念病院 1)
【はじめに】視覚誘発電位(VEP:visual evoked potential )は
P100 潜時と矯正視力では相関は認めなかったが、矯正視力
網膜から大脳皮質に至る視覚伝導路の代表的な検査であり、
の低い人ほど P100 潜時が延長する傾向は見られ、P100 が
潜在性の視覚異常を鋭敏に検出すると言われている。今回、
誘発されない時の矯正視力は著しく低下していた。矯正視
当院で行った VEP と眼科的検査(視力検査、中心フリッカ
力 1.0 以上の正常例 55%で P100 潜時の延長が見られた。矯
ー試験)との関連について検討を行った。
正視力と CFF には相関が認められた(P<0.01)。
【対象】2011 年 1 月から 2015 年 5 月までに VEP を行った
【考察】今回の検討では視力の低下を認めない場合であっ
57 名のうち視力検査、中心フリッカー試験の検査を受けた
ても P100 潜時が延長している症例が半数以上みられた。こ
30 名 98 件(男性 5 名、女性 25 名、年齢 13 歳~83 歳)を対
のことから、VEP は視覚伝導路の鋭敏な評価が可能である
象とした。多発性硬化症 19 名(疑い 5 名を含む)、球後視神
ことが確認できた。CFF 異常、P100 潜時正常の例があった
経炎 5 名(同 1 名)、視神経脊髄炎 4 名、鞍結節部髄膜腫、
が、この症例では認知機能の低下があり、CFF に影響を与
神経ベーチェット病 1 名であった。
えた可能性がある。
【方法】VEP は日本光電製 Neuropack を用いて検査した。
VEP は視覚機能の客観的な評価が可能であり、眼科的検査
パターン反転刺激で中心後頭部(MO)より誘発された
と併せて行うことにより診断、治療方針の決定に有用な検
P100 の潜時(ms)を測定し、矯正視力、中心フリッカー値
査であると考えられた。
(CFF:critical flicker frequency(Hz))との関係について調べた。
(連絡先:093-511-2190)
【結果】98 件で検討し P100 潜時は 59 件(60.2%)、CFF は
38 件(38.8%)、矯正視力は 18 件(18.4%)で異常を認めた。
P100 潜時と CFF には相関関係が認められた(P<0.01)。