デザイン史とはなにか 近代デザイン史 = 「美」と「合理性」の歴史 一般的に、近代デザイン史は、産業革命がもたらした工業化社会の中で、機械生産に適した合理的な形の中で、い かに「美」を定位するかを模索する歴史であると定義付けられる。 しかしながら、デザインという言葉が非常に多義的で曖昧なことと同様に、デザインの歴史も非常に多様であり、 近代デザイン史を語る上で、何を切り口・価値基準と定めるかによってその解釈には大きな幅が存在する。 ■「美」と「合理性」その兆し:近代以前 - マルク・アントワーヌ・ロージエ『建築試論』(第 2 版、1755)→近代以前の新古典主義時代 - ジャン・ニコラ・ルイ デュラン『建築講義要録』(1802-09)第 2 部の「建築要素の統合」 ■近代デザインにおける「美しさ」とは。 - 20世紀初頭、ヘルマン・ムテジウスやルイス・サリヴァン、 アドルフ・ロースなどが、機能性・合理性、非装飾 性などの言説を展開し、その後の価値基準に大きな影響を与えた しかし合理的美の行き着く先とは? 工業化社会がデザインに合理的美を求めたのに対して、それに対局するデザイン思想も数多く生まれた。アーツク ラフト運動、ポストモダニズムなど。これらは、その時代の文化的背景に沿った形で、表現され、デザイン史において あらゆる豊かさをもたらしている。 近代デザイン的「美」の隆盛 ■グッドデザイン 『20 世紀デザインとデザイナーのエンサイクロペディア』(199 でガイ・ジユリアーは「〈グッド・デザイン〉は北 ヨーロッパ諸国とアメリカで第 2 次大戦直後にあらわれたコンセプトである」 とのべている。 デザイン・ミュージアム 20世紀後半に入り、近代デザインが成熟期に入ると、デザイン・ミュージアムなどの20世紀を代表するデザイ ンを集めた美術館が設立されるようになった。それまで歴史体系として取りまとめられていなかった「デザイン」が、 体系的に整理されていき、デザイン史なるものが現出し始めた。 ブランディング・広告 デザインの力が、美しい製品を生み出すということ以外に、消費や企業の社会的イメージに対しても影響を持つこ とが知られるようになってからは、デザイナーの仕事は、より多岐にわたるようになる。今日において最もデザイナー 的職能が、社会にとって必要とされている分野の一つに、広告やブランディングがある。消費社会が完全に成熟した今 日おいて、広告やブランディングは、良い製品を作ることよりも重要なこととみなさており、デザイン的価値は製品的 価値よりもイメージ的価値つまりは、普遍的なものよりは、より強く早く伝達できるという流動的な価値観にシフトし ているといえる。 デザイン史概説 #02 デザイン史とは
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