パームヤシ油由来の界面活性剤の環境実態調査および生態

第46回 日本水環境学会年会
パームヤシ油由来の界面活性剤の環境実態調査および生態リスク評価
パームの実
P-J05
ライオン㈱ ○吉田浩介、臼井秀人、小高明人、
高橋健治、原田房枝(環境・安全性評価センター)
パームヤシ油由来の界面活性剤について
生態リスク評価プロセス
●アルファスルホ脂肪酸エステル塩(MES)の構造
脂肪酸メチルエステル
O
国内の淡水域を対象
O CH3
環境暴露評価
スルホン酸塩
C
環境有害性評価
生態毒性評価
(OECDテストガイドライン準拠)
・環境中運命の確認
+
SO3 M
①分解性ポテンシャル
②下水処理除去性
③河川半減期
●メチルエステルエトキシレート(MEE)の構造
①魚類に対する急性毒性試験
②ミジンコに対する急性・慢性毒性試験
③藻類に対する急性・慢性毒性試験
・河川水中濃度の推定
①単純希釈モデル(E-FAST)
②河川モニタリング
③水系暴露評価モデル(AIST-SHANEL)
国際的に用いられる評価係数を
用いた無影響濃度算出
予測無影響濃度
(PNEC)
予測環境濃度
(PEC)
・衣料用の粉末、液体洗剤の主成分として使用
・使用後、全量が生活排水と共に環境水系へ放出
目的:水環境中における生態リスク評価を実施
分解指標
MES
MESの生態毒性値まとめ1)
生分解性ポテンシャル
下水処理性
河川半減期
OECD 301C
OECD
303A
OECD
309
生物種
間接分析
直接分析
直接分析
直接分析
魚類
BOD分解度
(HPLC)
(LC/MS)
(LC/MS)
(Oryzias latipes)
86~92%1)
100%1)
99.9%以上2)
-
無脊椎動物
71~89%3)
100%3)
・MESの全国109河川水系でのPECは、1河川を除き
全てPNECを下回っていた。
99.9%以上3)
試験法
0.59~1.5
OECD
203
ー
ー
0.25~
1.24
OECD
202
0.23~
0.24
OECD
211
(Pseudokirchneriella
subcapitata)
1)SIDS Initial Assessment Report for SIAM 16,Hexadecanoic Acid,2-Sulfo-,1-Methyl Ester Sodium Salt(2003),社内データ
2)吉田浩介ら、(2008)MESの活性汚泥処理における除去性,第43回日本水環境学会年会
3)吉田浩介ら、(2011)MEEの生態リスク評価,第45回日本水環境学会年会
4)社内データ
慢性毒性
LC(E)C50
藻類
0.02日4)
>0.8~
>10
L(E)C50:半数致死(影響)濃度
MEEの生態毒性値まとめ2)
mg/L
急性毒性
(Daphnia magna)
MEE
・水系暴露評価モデルによる計算値と河川モニタリング
による実測値の比較を行なった結果、MESは概ね再現
されたが、MEEの再現性は低かった。
環境有害性評価の概要
生分解性、下水処理性及び河川半減期の確認結果
試験法
・MES、MEEは分解性が良好であり、下水処理施設
で効率的に除去されることから、河川水中濃度は低く
保たれると考えられた。
・数理モデル、河川モニタリングより算出したMES、
MEEの予測環境濃度(PEC)は、水生生物に対する予測
無影響濃度(PNEC)より低く、生態リスクは小さいと
考えられた。
国内の淡水域を対象とした生態リスク評価
環境運命の確認
項目
結論:生態リスク評価まとめ
OECD
201
NOEC
>0.8~
>10
試験法
NOEC
試験法
13.4~
52.4
10.3~
35.6
OECD
203
ー
ー
2.4
OECD
211
0.60
OECD
201
(Oryzias latipes)
無脊椎動物
(Daphnia magna)
藻類
OECD
201
OECD
202
OECD
201
12.1
(Pseudokirchneriella
subcapitata)
NOEC: 無影響濃度
慢性毒性
LC(E)C50
魚類
L(E)C50:半数致死(影響)濃度
1)吉田浩介ら、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩(MES)の水圏環境濃度の現状および生態リスク評価,オレオサイエンス(投稿中)
MES、MEEとも分解性良好、
MES、MEEとも分解性良好、
下水処理施設で効率的に除去される
下水処理施設で効率的に除去される
急性毒性
生物種
試験法
mg/L
NOEC: 無影響濃度
2)吉田浩介ら、(2011)MEEの生態リスク評価,第45回日本水環境学会年会
MESのPNEC:4.8μg/L
MESのPNEC:4.8μg/L
MEEのPNEC:12μg/L
MEEのPNEC:12μg/L
環境暴露評価の概要(家庭から排出される用途における河川水中濃度の推定方法)
①単純希釈モデル(E-FAST1))による推定
②河川モニタリング(実測)
1)Exposure and Fate Assessment Screening Tool
<家庭用途シナリオのモデル計算式>
家庭からの排水による河川水中濃度=
家庭からの全国総排出量*
年間日数×水使用量×国内総人口
1
×(1-下水処理除去率 )×
希釈率
*生産量を1万トンとして計算した場合
<計算に使用したパラメータ>
項目
総人口(人)
パラメータ
出典
127,817,000
総務省統計局(2011)
生活用水使用量(L/人/日)
300
国土交通省(2010)
10
河川流量に基づく統計値2)
生活排水の河川希釈率
160
推定値3)
下水処理除去率
0.99
当社実験値4)
下水道放流水の河川希釈率
<調査時期>
調査
年度
MES
MEE
2004,05,
08~11年
2010,11年
<モニタリング対象河川>
1)national institute of Advanced Industrial Science and Technology
- Standardized Hydrology-based AssessmeNt tool for chemical Exposure Load
•魚類が生息・・・A,B,C類型水域(BOD 5mg/L以下)
•上水道の水源を含む
•都市近郊の家庭排水が流入する地点
(B)
調査
地点数
4河川7地点
調査
回数
2回/年 or 4回/年
6月,9月(豊水/常温期)
3月,12月(渇水/低水温期)
独立行政法人産業技術総合研究所が開発した
日本における河川流域の化学物質の水系暴露解析モデル
対象化学物質の
物理化学的性状パラメータ
排出量パラメータ
総検
体数
112点
●計算に用いた物理化学的性状パラメータ
(A)
(C)
56点
(B)
(B)
高速液体クロマトグラフ-質量分析法
(LC-ESI-MS)
定量
下限値
(B) (C→B)
MEE
0.02μg/L
0.005μg/L
留意点
・外部機関への委託分析による 客観性確保
・一般項目(BODなど)の分析による水質の把握
未処理人口
:13.1%
下水処理場未普及地域
4.5μg/L
下水処理普及地域
0.71μg/L
MEE
PEC
河川
水系暴露
モニタリング* 評価モデル*
0.42
0.003
2.6
4.9
5.04×10-8
MPBPWIN(Ver.1.43)
分子量
372.5
875.16
-
水溶解度(g/L)
17*
73**
*SIDS,**社内データ
有機炭素水分配係数(L/kg)
1274
7.455
KOCWIN(Ver.2.00)
土壌液相半減期(日)
14*
8.6**
土壌固相半減期(日)
14*
8.6**
河川底泥液相半減期(日)
22*
8.6**
河川底泥固相半減期(日)
22*
8.6**
河川半減期(日)
0.75*
0.027**
*LASデータ,**社内データ
下水処理除去率
0.99
0.99
社内データ
*アニオン界面活性剤(LAS)
の値を代用
**ノニオン界面活性剤(AE)
の値を代用
●計算に用いた排出量パラメータ
MEE検出濃度
(μg/L)
羽村堰
A
<0.02-0.05
<0.005
多摩川原橋
B
<0.02-0.17
<0.005
田園調布堰
B
<0.02-0.52
<0.005
治水橋
B
<0.02-0.77
<0.005
笹目橋
C
<0.02-0.68
江戸川
金町
A
淀川
枚方大橋
B
計算値とモニタリングデータの比較による検証
(計算値/モニタリングデータ)
MES
MEE
1
0
多摩川原橋
15
7
<0.005
田園調布堰
6
0
<0.02-0.27
<0.005
治水橋
15
339
<0.02-0.19
<0.005
笹目橋
7
57
全地点幾何平均値
0.04
0.003
金町
8
6
全地点95パーセンタイル値*
0.42
0.003
最大値
0.77
ー
16
4
荒川
・MESのPEC:0.42
・MESのPEC:0.42 μg/L
μg/L
・MEEのPEC:0.003μg/L
・MEEのPEC:0.003μg/L
検証地点
羽村堰
多摩川水系
利根川水系
淀川水系
枚方大橋
・MES:モデル計算値と実測値の比は1~16倍以内
・MES:モデル計算値と実測値の比は1~16倍以内
・MEE:モデル計算値が過大評価になっている地点あり
・MEE:モデル計算値が過大評価になっている地点あり
AIST-SHANELによる計算結果および考察
MES,MEEの生態リスクにおけるPEC及びPNEC μg/L
0.71~
4.5
*定量下限値以下は、半分の値として算出
MES検出濃度
(μg/L)
生態リスク判定
MES
0.017
③水系暴露評価モデルの検討
類
型
*平成22年度末の汚水処理人口普及率
単純希釈
モデル
蒸気圧(Pa)
AIST-SHANELの再現性確認
地点
河川
多摩川
汚水処理人口
普及率:86.9%*
出典
県別の「公共用水域への排出量」、「下水道への移動量」をパラメータとして入力
②河川モニタリング調査の結果
<未処理シナリオ>
MEE
<分析方法>
4河川7地点での検出濃度範囲
<下水処理経由シナリオ>
MES
(A)
河川水中濃度の推定結果
①単純希釈モデルによる計算結果
全国109河川水系における
月別の河川水中濃度を
1kmメッシュで推算
AISTSHANEL
* 独立行政法人産業技術総合研究所安全科学研究部門(2010)AIST-SHANELホームページhttp://www.aist-riss.jp/projects/AIST-SHANEL/(2012年3月時点)
MES
2)みずほ情報総合研究所(2007)化学物質の暴露評価に資する河川等の希釈率等に関連する調査報告書
3)(独)産業技術総合研究所、㈱日水コン(2011)未処理水と放流水の河川希釈率に関する検討
4)吉田浩介ら、(2008),第43回日本水環境学会年会, (2011),第45回日本水環境学会年会
③水系暴露評価モデル(AIST-SHANEL ver.2.01))による推定
全国109河川水系ごとのMES濃度の推定値
No.
PNEC
4.8
12
*95パーセンタイル値
リスク判定
PEC
PEC << PNEC
PNEC
一般的河川におけるMES,MEEの生態リスクは小さい
一般的河川におけるMES,MEEの生態リスクは小さい
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
河川水濃度
河川水濃度
河川水濃度
河川水濃度
No. 水系名
No. 水系名
No. 水系名
(μg/L)
(μg/L)
(μg/L)
(μg/L)
天塩川
0.02
29 荒川
3.05
57 櫛田川
0.23
85 重信川
1.71
渚滑川
0.00
30 多摩川
0.38
58 宮川
0.42
86 肱川
0.47
湧別川
0.02
31 鶴見川
1.29
59 由良川
0.24
87 物部川
0.09
常呂川
0.04
32 相模川
0.46
60 淀川
1.31
88 仁淀川
0.64
網走川
0.02
33 荒川
0.28
61 大和川
4.52
89 四万十川
0.32
留萌川
0.01
34 阿賀野川
0.31
62 円山川
0.13
90 遠賀川
2.64
石狩川
0.11
35 信濃川
0.38
63 加古川
1.09
91 山国川
0.15
尻別川
0.02
36 関川
0.18
64 揖保川
0.32
92 筑後川
2.15
後志利別川
0.02
37 姫川
0.06
65 紀の川
1.87
93 矢部川
0.70
鵡川
0.01
38 黒部川
0.04
66 新宮川
0.06
94 松浦川
1.08
沙流川
0.01
39 常願寺川
0.02
67 九頭竜川
0.37
95 六角川
2.77
釧路川
0.02
40 神通川
0.10
68 北川
0.22
96 嘉瀬川
1.32
十勝川
0.06
41 庄川
0.13
69 千代川
0.25
97 本明川
2.24
岩木川
0.24
42 小矢部川
0.63
70 天神川
0.11
98 菊池川
2.46
高瀬川
0.88
43 手取川
0.03
71 日野川
0.23
99 白川
0.20
馬淵川
0.19
44 梯川
0.56
72 斐伊川
0.91
100 緑川
1.99
北上川
0.50
45 狩野川
1.64
73 江の川
0.29
101 球磨川
0.12
鳴瀬川
0.51
46 富士川
0.49
74 高津川
0.14
102 大分川
0.94
名取川
0.55
47 安倍川
0.23
75 吉井川
0.62
103 大野川
0.63
阿武隈川
0.60
48 大井川
0.16
76 旭川
0.99
104 番匠川
0.25
米代川
0.08
49 菊川
2.22
77 高梁川
0.57
105 五ケ瀬川
0.17
雄物川
0.27
50 天竜川
0.27
78 芦田川
1.47
106 小丸川
0.07
子吉川
0.06
51 豊川
0.52
79 太田川
0.36
107 大淀川
0.85
最上川
0.18
52 矢作川
1.96
80 小瀬川
0.56
108 川内川
0.48
赤川
0.18
53 庄内川
6.73
81 佐波川
0.25
109 肝属川
1.83
久慈川
0.95
54 木曽川
0.74
82 吉野川
0.92
PEC/PNEC > 1
那珂川
1.83
55 鈴鹿川
1.41
83 那賀川
0.70
1 > PEC/PNEC
利根川
3.21
56 雲出川
0.49
84 土器川
1.16
庄内川流域におけるMESが高濃度(95パーセンタイル値以上の濃度)の地点
水系名
高濃度地点は
五条川右岸流域に密集
五条川右岸流域における下水処理人口普及率
高濃度地点を 下水処理人口普及率
含む地域
(%)
処理区
(mg/m3)
6.76
0
10km
五条川右岸流域下水道
(五条川右岸処理区)
一宮市
犬山市
江南市
8.1
19.7
20.9
愛知の下水道(資料編)より
http://www.pref.aichi.jp/gesuido/database/siryouhen.html
・1河川においてのみ、PEC>PNECが確認された
・1河川においてのみ、PEC>PNECが確認された
・上記河川の高濃度地点は、下水道人口普及率の低い地域であり、
・上記河川の高濃度地点は、下水道人口普及率の低い地域であり、
PECが高くなると想定された。AIST-SHANELでの検討を継続する。
PECが高くなると想定された。AIST-SHANELでの検討を継続する。