⚫ 作品賞:匿名希望 (40代・長野県・送る相手 南阿蘇とそこにいたひとへ) 春に菜の花の揺れる南阿蘇よ。 過ぎ去りし日の三年間、私はあなたの元で過ごした。 小さな看板を立て、子どもたちを集めた。 休日は牧草地に行き、大の字になった。 覚えていますか?そんな私のことを。 私はあなたを愛した。 あなたの元を静かに去ったその後も。 夏に彼岸花の揺れる南阿蘇よ。 夢を追い求めた三年間、私はいつも懸命だった。 食べていくのに精一杯で、不思議とそれが心地良かった。 疲れたら露天につかり、山の向こうに目を凝らした。 覚えていますか?私がそこにいたことを。 あなたは私を愛してくれた。 私が荷作りをした、その日まで。 秋に群すすきの揺れる南阿蘇よ。 遠く離れた街で、私はやっぱり生きています。 小さな看板を立て、子どもたちを集めて。 ときおりふと、あなたのことを思い出します。 覚えていますか?私が誰だかわかりますか? あなたは・・・あの頃の全てだった。 私たちが大げんかしたその夜も。 • • • 冬でも陽の長い南阿蘇よ。 かけがえのない三年間だった、あなたよ。 あなたは私の南阿蘇であり、私の南阿蘇はあなただった。 二人の思い出の場所を、もう訪れることもない。 覚えていますか?私を許してくれますか? 私は今でもあなたのことを。 遠く離れた、灯の下で。 • • • ⚫ 作品賞:なおみん(ペンネーム)(40代・千葉県・送る相手 旦那様) 大阪で生まれ育って大分の伯母さんの家で暮らしていたあなたと、千葉で生まれ育っ た私が、南阿蘇のぺンションで運命の出 いをしたのは、7年前。偶然のような必 然で、あなたは私の隣に座ってくれました。それがなかったら、きっと私達は言葉 を交わす事はなかったでしょうね。初めて会ったのに、前から知ってたような、不 思議な感覚。 数ヶ月に一度、私が阿蘇に来た時だけしかデートはできなくて、会えない時間は不 安だったけど、自然体で隣にあなたが座ってくれている場所が、とても居心地が良 かった。 遠距離恋愛を乗り越えて、私達が阿蘇神社で結婚式を挙げたあの日。早朝、南阿蘇 村役場で入籍をして、私たちが出会ったあのペンションで花婿と花嫁姿になり、み んなに祝福してもらったね。 何年経っても、あの感動は忘れられない。 あの1日のことは、昨日の事のように覚えてます。きっとあなたもそうだよね。 阿蘇は私達を結んでくれた、心の故郷。 帰って来るたびに温かくなる場所です。 この場所で、あなたに出 えて本当によかった。 けんちゃん。 あの日、私の隣の席に座ってくれて、ありがとう。私を見つけてくれて、ありがと う。 そして、私と結婚してくれて、ありがとう。 結婚してからもう6年。 楽しいことも辛いことも、いつも一緒に乗り越えてきたね。嫌な事があって家に帰っ ても、あなたの顔を見たら、どっかにいっちゃうくらい、元気をもらってます。優 しいあなたの隣にいられる時が、私は一番幸せです。毎日毎日、幸せをいっぱいも らってます。本当にありがとう。 私は同じくらい幸せをあげられていますか? これからも、ずっとあなたの傍にいます。 生まれ変わっても、また私を見つけてね。 愛してます。 ⚫ 作品賞:スヌーピース(ペンネーム) (30代・熊本県・送る相手 お父さん) お父さんへ お父さんは覚えていますか? 私が23歳のころ、仕事から帰宅して自宅の駐車場が満車の時は離れにあるお 店の駐車場に車をとめていました。 だけど翌朝には決まって自宅の駐車場に戻っているのです。 最初は気づかずにそのまま出勤していました。2、3回目にしてやっと、“あ れ、おかしいな?昨日自分で戻したかな?”と思い、お母さんに話したら“お 父さんじゃないと?”と言われてようやくお父さんに聞きにいきました。 お礼を言っても“おぉ”と一言だけでした。 お父さんは夜駐車場が空くと、朝が早い私の為にそっと移動してくれていま したね。わかった後も一度も“戻しとったよ”とは言わず続けてくれました。 私はこれまでにも気づいていないことが多々あったのだろう、という申し訳 ない気持ちと、これが無償の愛ということなのか、となんともいえない心の 底から温かくなるようなとても幸せな気持ちになったのを今でも覚えていま す。 それはギブ&テイクではなく見返りを求めない無条件のギブ&ギブの愛。 その時私は周りの皆に対してこういう愛し方をしたいなって強く思いました。 あれから十数年が経ち、ようやく結婚が決まってお父さんはとても喜んでく れましたね。 彼はとても真面目で優しくて物静かですが、たまに頑固なところもありどこ かお父さんに似ているなって思います。 若いころはお父さんみたいな人はいやだなぁ、なんて生意気なことも言って いたけど、本当はどこかでお父さんのような人を探していたのかもしれませ んね。だから時間がかかったよ、なんて下手な言い訳でもさせてください。 お父さんとお母さんのような素敵な夫婦になれるようにお互いを尊重し、励 ましあって思いやりを忘れずにこれから頑張って幸せになります。 お父さん、あの時とても素敵な愛し方に気づかせてくれて本当に有難う。 これからはそっと遠くから見守っていてください。 ⚫ 作品賞:ヤクルト命(ペンネーム) (3歳・鹿児島県・送る相手 サンタさん) サンタさんへ この前は、お菓子を有難とう サンタさんが頑張って買ってくれた ハイチューは美味しかったよ。 サンタさんは、じいちゃんだから腰が痛くなったら横になってネ。 シップ置いておくからネ。 トナカイさんにも、ちゃんと水とご飯あるからネ。 お弁当いる時は、早く電話してネ。 美味しいウィンナー入れとくから。。。。 お仕事頑張ってネ 翔大 ⚫ 作品賞:あんみつ(ペンネーム) (20代・熊本県・送る相手 片思いの彼へ) くっしゃくしゃにはにかむ笑顔。 あなたの笑顔を見ていると不思議とほっこりなれるんだよね。 だからかなぁー。 いつからかその笑顔が私の元気の源になってたよ。 そしていつからかその笑顔を誰よりも一番近くで見ていたいと思っ たよ。 私って欲張りかなぁー。 そんな素敵な笑顔を独り占めしたいだなんて・・・。 私を欲張りにするくっしゃくしゃにはにかむあなたの笑顔。 何よりも大好きな笑顔です。 あなたの笑顔が絶えないよう、私もまた素敵な笑顔でこたえます。 だから、ずっとあなたの隣にいさせてくれませんか? 大好きだよ。 ⚫ 作品賞:かのん(ペンネーム) (20代・東京都・送る相手 母) 東京に来て2年と半年が経とうとしています。3年目にして、やっと 自炊やお弁当づくりが習慣になってきました。そんな最近、お母さんに は本当に、食べ物に関してたくさんのありがとうを伝えたいと思うので す。 命さえ危険なほど酷いアレルギーだった私を、元気に育ててくれてあ りがとう。お母さんは、自分の体重が極限状態になるまで、除去食を尽 くしてくれたんだよね。私を守ってくれたこと、生きろと力をくれたこ と、すべてあの日々があったから今がありあます。本当に本当に、あり がとう。 そして少しずつ食べられるものが増えてきてからも、無農薬のもの、 有機のものと、安心できるものを食べさせてくれましたね。幼稚園から 高校まで15年間、毎朝早起きしてお弁当を作ってくれました。小学校 低学年の頃は『300円分のおやつ』のかわりに蒸しパンを作ってくれ たよね。アルミホイルに包まれたあれが大好きで、皆と違っても、何を まわりから言われようと、「自分のおやつが一番だもの!」と迷うこと なく喜んでいたのを今でもすぐに思い出すことができます。日々のお弁 当もそう。友達は給食を食べていても、自分のお弁当が最高に美味しい とわかっていたから、その時間が楽しみでした。それを1日も欠けるこ となく持たせてくれて、本当にお母さんは偉大です。簡単に出来ること じゃないと、今になって痛いほどわかります。食べることは生きること だと教えてくれたお母さんのお弁当が、本当に大好きです。温かい食 が、毎日を明るく照らしてくれました。遅くなってしまったけれど、1 5年間本当にごちそうさまでした。 自炊をしていると不思議なことに、あっお母さんの味だと感じること があります。その度に凄く嬉しくて、東京と熊本でも台所はつながって いるのかもしれない、と思ったりします。そんな日々を重ねて、お母さ んに近づくことが出来たらいいなあ。今日も、その願いを胸に台所に立 つことにします。ではまたね。 ⚫ 作品賞: 引間 賀津恵 (年齢60代・埼玉県・送る相手 熊本に嫁いだ娘へ) 「結婚のお許しをいただきに来ました。」と彼が来て、そちらに行 ってから、もう四ヶ月たちましたね、過ぎてしまえば早いもので す。遠くへ嫁ぐ不安に迷っているあなたに無責任に「大丈夫よ。」 と勇気づけることもできず、ただ見守ることしかできませんでし た。私も不安と心配とで何か言ってあげたくても言葉になりません でした。阿蘇山が噴火したらどうしよう。台風もすごいだろう。埼 玉と熊本では遠くてすぐに行けない。何もしてあげられない。そん なことばかり考えていました。大きなものを奪われるようで悲しく て仕方ありませんでした。けれど三年余りの遠距離恋愛でも、彼は 毎月、熊本からやって来て、あなたの心も少しずつ変わっていきま したね。気持ちは充分伝わり不安も迷いも払拭してくれましたね。 2人の情熱に反対する理由などありません。あなたたちには、ない だ海のきらめきと物静かな優しさがあり、気づかぬうちに人を幸福 な気分にしてくれる不思議な魅力があります。同じ方向に流れる2 つの川が自然に合流し、ゆったりと流れていくようです。阿蘇の雄 大な自然に育くまれた彼の素朴で誠実な優しさが、お父さんもお母 さんも大好きです。そんな彼に愛されたあなたは本当に幸福です ね。どっしりと熊本城が見守る街で、いつまでも幸福で暮らせるよ う願っています。 ⚫ 作品賞:みかみか(ペンネーム)(30代・神奈川県・送る相手 母) 天国のお母さんへ お母さん、あなたが亡くなってしばらく経ちますが、天国でもいつも笑顔で 過ごしているのでしょうね。 あなたが亡くなってから、色々なことが起こりました。いいことも悪いこと も。 きっと全てを天国から見ているとは思いますが、私はずっとひとりぼっちで した。 一親等がいないことがこんなに寂しいことだったとは・・・一人なって初め てわかりました。 一人になってから色んな事がありましたが、その度にあなたのことを思い出 し、感謝するばかりです。 生前にどれだけのことを教えてくれたか、今になって改めて痛感するばかり です。 あなたという形はこの世にはもうないけれど、あなたが残してくれた愛のお かげで私は元気に生きて行けてます。 ありがとう。 そして今回は報告したいことがあります。 私と家族になってくれる人が現れました。 一生懸命私を支えて助けてくれようとしてくれている、本当に心の優しい人 です。 私もその人のことをずっと応援していきます。 あなたが一番心配していた『ひとりぼっちの私』はもうすぐ卒業します。 これからは愛 れる家庭を築き、あなたが私に注いでくれたように、私も家 族に愛情を注いでいきたいと思っています。 報告は以上です。 きっと全てを天国から見ていると思っていますが、この場を借りて手紙とい う形で報告させていただきました。 まだまだ若輩者なので、これからも天国から見守っていてくださいね、お母 さん。 ⚫ 作品賞:キャプテン(ペンネーム) (40代・大阪府・送る相手 副キャプテン) パソコンの写真を整理していて見つけました。 5年前の貴女の写真です。 真っ暗な中、お月さまをバックに、貴女の美しい身体が隠れていま した。 あの日、旅先のペンションの窓から見えたあまりにも綺麗なお月さ まに2人で感激しましたね。 思い付いて「ヌードでも撮ってあげようか?」と私が言うと「うん、 撮って」貴女が無邪気に答えました。 5つ歳上の貴女ではありますが、いつも妹のようで、私を信頼し きっているのがよくわかりました。 当時の携帯電話は暗闇での撮影がうまくできませんでしたね。でも、 電気をつけるとお月さまが撮影できないし。ちゃんと写ってるのか なんなのかわからないまま、貴女はポーズを取りました。 せっかく撮影したものの、画面は真っ暗。でも、いちおう貴女にメー ルで送り、私はこの秘密の写真をパソコンの中に仕舞いました。 たまたま整理していて見つけたあの時の写真。やはり真っ暗で何が なんだかわからない。そうだ。今の携帯電話で修正したら見えるか も? 貴女の美しい身体が浮かび上がりました。5年前。確かに貴女はそ こにいた。 最期まで私を信頼してくれてありがとう。生まれ変わったら私を甘 えさせてね。 ⚫ 作品賞:なみ(ペンネーム) (30代・熊本県・送る相手 お母さん) 結婚して10年。この家に来て10年。 日々は、感謝と喜びを中心に流れている。 「同居してるの?偉いね」 なんて言われると 「偉いのはお母さんだよ」という言葉を飲み込めず、呟く。 私は三姉妹の長女。 密かに憧れたお姉さんという存在を、お母さんに重ねる。 映画や本を共有したり、美味しいものを一緒に食べたり、誕生日に プレゼントを贈ったり、密かに愚痴ったり。 だけど、一人っ子だったお母さんはベタベタしない。クールでドラ イ。仕事や家事、育児には口を出さない。その距離感が心地よい。 「ありがとうございます」と、言わない日は無い。 10年、こうして穏やかに過ごせた事。幸せすぎる毎日。出来る事な ら伝えたい想い。 でも「感謝」では足りない。もっともっと、強くて大きな言葉を探 す、探す。 見つけた言葉は感謝とは、全く意味が違うようだけど「大好き」。 照れ臭くて言えないから、ラブレターにひっそりとしたためる。 お母さんが生きている間に言えるとは思えない。それでも良い。 大好きです。ありがとうございます。 毎日ひっそりと呟ければ。 ⚫ 作品賞 : 野田成治(60代・熊本県・送る相手 妻) いつも心にバラードを お金には不遇な日々だった 今日は朝からいい天気 みんなわが輩の甲斐性のなさだ 妻が朝食の支度をしている 妻は愚痴をいわなかった 僕は掃除を手伝う 今朝も何か鼻歌をうたっている 妻が何か鼻歌をうたっている ふんふんふん いつも思う 不満がないはずはない あれは何の歌なんだろう ふんふんふんと いたことはない 眠れない夜もあったはず 要するに「うた」なんだと 切ない思いもあったはず 思うことにした 今朝も妻の笑い声だ 僕は笑わない 僕らはそれをBGM 妻はよく笑う のように聴いてきた 我が家の笑い声は いつも妻の笑い声だ 貧乏が好きな奴はいない 僕らはそれをBGM 好きな奴はいないけど のように聴いてきた 貧乏に好かれる奴はいる 結婚したてからそうだった 喜びも悲しみも全部 妻が朝食の支度をしている ひっくるめての人生だった それも欠かすことがない 人生はままならない 今朝も何か鼻歌をうたっている そんな悲哀を噛みしめた奴は ふんふんふん バラードが好きになる 雨が降っても風が吹いても 妻のあの歌はバラードだった ふんふんふんと 僕らはあかるいバラードを 子育ての時だって 聴いて育った 母との介護の日々も 我が家の笑い声は だから今僕は妻に贈ろう いつも妻の笑い声だ エルトン・ジョンの 僕らはそれをBGM 悲しみのバラードを のように聴いてきた ⚫ 作品賞 :ソルト(ペンネーム) (40代・長崎県・送る相手 主人) 2人で 過ごす 初めての夏 綺麗な景色を見つけに カメラ持って 阿蘇にドライブに行ったね。 気まぐれな夏山の どんより空 ぱらぱらとちいさな雨粒 時折雲間から差す天使の梯子 一喜一憂しながらシャッターをきった 隣に立つあなたもよく見えないほど霧で真っ白な草千里 ガッカリしてた私に「これもまた思い出。」ってやさしく笑う あなたの横顔をみて (ずっとずっとこの人と一緒にいたい)と心から願った。 あなたと同じ名字になって再び訪れた 眩し過ぎるほど夏の日差し を浴びて きらきらと輝く草千里 流れる汗もそのまま夢中でシャッターをきってるあなたの横顔に あの頃と同じ気持ちで願う (ずっとずっと一緒にいられますように。) カメラ持ってでかけよう 綺麗なものを見つけに これからもずっと あなたと・・・。 ⚫ 作品賞:ハチミーツくまモン(ペンネーム) (40代・大阪府・送る相手 本人) おーい! 伊東英八!! お前と付き合って、かれこれ43年になる。お前のことは何でも知っている ぞー。お前は本当にどうしよもない奴だ。気が弱く、細々したことが大好き で、ラッキーに助けられ、生きてきた。 覚えているか?小学校に入る前のこと。近所には女の子が多く、男の子はやん ちゃなタイプが数名。気が弱いお前は、いつも女の子に囲まれて、ママゴトし たり、ゴム跳びしたりしていたなー。なので、今になっても虫が苦手。大人に なった先日も、「夜中に歩いてたらカブトムシに襲われた」とか、訳のわか らんこと言ってたし。 覚えているか?中学生の頃のこと。技術家庭科の時間に作った本棚。細々した ことが大好きなお前は、チマチマチマチマと観音開きの扉を付けたり、凝り に凝ったデザインだった。よく言えば、繊細。それはよいけど、制作段階ですっ かり飽きて、野球しに行ってたやないかー。だから、「B型」とか言われるん やし。 覚えてるか?ラッキーな人生。 中学校では沢山の仲間に恵まれ、先生にも可愛がってもらった。なので、内 申点だけが異常によく、難なく志望校で野球をやらせてもらったラッキー。 大学受験の時は、直前に勉強した内容が試験に出たラッキー。公務員試験の 4択問題は、エイヤーの「3番」が当たったラッキー。そして、綺麗な奥さん、 可愛い娘にも恵まれたラッキー。 そんなお前はとても自分勝手。安定した生活を捨て、日本の社会を変えたい と言い出す。子ども達の未来に貢献したいと言い出す。はっきり言って意味不 明。まあ、これまでのお前は、気が弱く、細々したことが大好きで、慎重に 慎重に歩いて来てたけれど、なかなか面白い奴だと知ったよ。よし、わかっ た。これからも付いて行ってやろう。 ただし、家族を大切に、しっかり愛し、周りの人々への感謝の気持ちを忘れ るな。 おーい!伊東英八!! お前は、本当にどうしよもない奴だ。でも、俺はお前が大好きだ。 ⚫ 作品賞:kenさん(ペンネーム) (60代・京都府・送る相手 最愛の人) もうこの年になってラブレターなんて、笑われてしまうかも。でも どうしても貴女にありがとうの言葉を伝えたくて認めました。貴女 が突然の病で倒れたのは7年前の5月16日、それまで健康だった貴 女が目の前で苦しむ姿に、私は貴女の死を初めて自覚しました。入 院生活は3ヶ月にも及び、その後も今日に至るまで薬の服用は欠か せないものとなりましたね。私と貴女の歳の差は7歳、私にもしも の事があっても貴女は必ず私の看病も看取りもしてくれると信じて いました。でもそれは妄想でした。貴女の病気は私のこの妄想をう ち砕いたのです。その時から私は今を、今日を大事に生きることを 教えられました。貴女の笑顔を見れるのも、貴女と可愛い孫たちの 話をするのも、今日を限りと思うと心から大切にしたいと思う。そ れは同時に私の人生を尊ぶことにもなります。そんな尊い人生を歩 めるのは貴女がいてくれるおかげさま、心からのありがとうを贈り ます。 ⚫ 作品賞:はなまる(ペンネーム) (30代・熊本県・送る相手 世界で一番大好きな人) ねえ、くだらない話なんだけど、ちょっと聞いてくれるかな。 私ね、あなたのことを考えるときに、頭の中にポンって一輪の花が咲くの。 あなたみたいに強くて、大きくて、しっかりとした芯を持って、真っ直ぐ上を向い てる一輪の花。 そして、いつもその花で、花占いみたいなことしてる。 ポテトサラダをおいしそうに食べてるところが、すき。お酒を飲みすぎるところが、 きらい。 友達に会ったときの嬉しそうな声が、すき。私と話すときの興味なさそうな声が、 きらい。野球の話をするキラキラした目が、すき。キラキラした目で可愛い女の子 を見るのが、きらい。 仕事をしているあなたの背中が、すき。背を向けて寝ているあなたの背中が、きら い。 あなたといるときにつなぐ手が、すき。あなたと別れるときの握手が、きらい。 なんでもがんばるあなたが、すき。がんばりすぎて身体を壊すあなたが、きらい。 そして、こんな私を好きにならないあなたが、すき。最後はいつも決まってここ。 私のこと好きになってくれないあなたなんて、きらい。これで終われるようになっ たとき、ちぎった花びらが肥料になって、自分自身にあなたと同じような一輪の花 が咲くのだろう。あなたは私を好きにならない。それでも私はあなたと同じ花壇の 中で太陽の光を浴びて、風が吹いたら一緒に揺れて、雨が降ったら一緒に伸びて、 新しい芽を息吹かせて、ともに枯れていくことができたら、どんなに幸せだろうっ て、いつも思ってる。 ステキなあなたのおかげでバカになってしまった私は、いつも大きな夢を見てしまっ てるんだ。 あなたはきっと最高にくだらないって言って、あきれて笑う。でもね、あきれてる 笑顔も、だいすき。 あなたにはいつも笑ってほしい。 元気にあなたが生きていることが、私のいちばんの栄養になるから。 この先、あなたと同じ場所にいれなくても、ずっと。 遠くにいるあなたへ ずっとあなたの側にいたいと夢みてる、わたしより ⚫ 作品賞:梶谷奈央(20代・大分県・送る相手 夫) 夜中、強い揺れを感じて目が覚め、私が地震だと気がついたと同時 に、隣で眠っていたあなたは私に覆い被さって守ってくれていたね。 揺れがおさまるまでずっと。 いつも目覚まし時計のアラームが鳴っても、朝、私が身支度をして いても起きないあなた。無意識なのかわからないけれど、さっきま で眠っていたはずのあなたのとっさの行動に、普段言葉にすること のない愛を感じました。そして、私はいつもこうしてあなたに守ら れているのだと。 愛してる なんて言葉は付き合っていた頃のように口にすることは お互いなくなったけれど、この地震のあった夜、あなたの愛を十分 に感じました。ありがとう。 これからは私もしっかりと、あなたを守り、支えることのできる強 い妻であろう、と結婚4年目の今、改めて決意しました。甘えたい 放題、言いたい放題、いつも困らせてごめんね。あなただから見せ られる、あなたにしか見せられない私の姿だけれど、これじゃあ到 底伝わらないよね。 これからは私もしっかりとあなたに愛を届けます。だからずっとそ ばでみててね。 ⚫ 作品賞:ひめちゃん(ペンネーム) (20代・熊本県・送る相手 2人の天国のおじいちゃん) 2人のおじいちゃんへ 元気ですか?天国はどんなところですか?麻美はママが結婚したのと同じ、 26歳になりました。 学(まなぶ)じいちゃん 私が2∼3歳の時にガンで天国に行ったと聞いています。ほとんど記憶はあ りませんが、私を自転車の後ろに乗せて、私の好きなヤクルトを持たせて、 保育園への送り迎えしたり、近所へ連れてまわってくれていたと聞いていま す。近所でも有名だったそうです。自転車をこいでいるおじいちゃんの背中 は、時々、夢に出てきます。思い出そうとすると、いつも自転車に乗ってい て、背中ばかり出てきます。不思議ですね、顔は覚えていなくても、おじい ちゃんの背中から、私をどれだけ大切にしてくれていたか、感じることがで きます。 どこかで会える日が来たら、また、自転車の後ろに乗せてください。 たまには、私が自転車こぐね。 保(たもつ)じいちゃん 私が小学校低学年の時、目の前で天国に行きましたね。ベットの周りで泣い ている家族がいる中、ただ、ぼーっと見つめるだけでした。初めて向き合っ た ”死”。自分が置かれた状況をようやく理解した時、別室で涙を流しまし た。焼酎とタバコが好きで、よくおばあちゃんから怒られていたけど、あま り人の話を聞いていませんでしたね(笑)。また、ニンニクが大の苦手で私 がラーメンを食べて帰った時、ニンニクくさいから近付くな!とも言われま した。そのマイペースで自分を貫く姿は、おじいちゃんゆずりかなと思いま す。周りの友達がこわがるほど大きな声で怒鳴っていましたね。その時は心 の中で文句を言っていたけど、今は、叱ってくれる人がいないと寂しい気が します。おじいちゃんが好きだった焼酎、飲める年になりました。 どこかで会える日が来たら、焼酎、一緒に飲んでください。締めにラーメン 食べるけど、許してね。 2人のおじいちゃん、私は今、幸せです。そして、ずっと大好きです。 麻美 ⚫ 作品賞: 桜庭知惠(ペンネーム) (30代・東京都・送る相手 父) お父さん。お酒も飲まないから、なかなか面と向かって話し合う事も少な いよね。だから敢えて手紙を書くことにするね。 戦争を経験してきた世代のお父さん達にとって、女の子の幸せは、結婚し て家族を持つののが一般的だというのは分かってるつもり。でもね、私は そんな人生を送る事は選べなかった。多分、当時にしては画期的なほど高 齢出産だった時点で、すでに、典型的な型にはまらない子どもやったんや と思うねん。 飛行機が好きでなく、外国を毛嫌いするお父さん。一方、多い時は毎週2 往復以上の飛行機にも乗り、日本全国、世界各国を行き来する私。本当に お父さんの娘なのかなと疑うほど、正反対やね。でもね、自宅に帰ると、 ついついノンビリ、ゆっくりしてしまう自分を、定年後ノンビリ自宅で暮 らすお父さんの姿と重ねてしまいます。やっぱりお父さんの娘なんやろう ね。あ、でも私、テレビは嫌いやで。生魚は大好きだけどね。 そうそう、これからの事なんだけど、私にも1人くらい人生を共に歩める 人がいても良いかなと思ってるんだよね。だけど、彼と一緒に生きていく ということは、私はますます日本にいなくなるって事やねん。実は。その うち紹介するから、ビックリせんといてな。 お父さんに寂しい思いをさせたくないけど、私は色んな人に出会って、知 らない言葉をしゃべって、まだまだ世界の為に働きたいねん。お父さんが くれた大事なこの命だから、この地球の為に貢献していくつもりやで。 大好きなお父さん。いつもありがとう。長生きしてね。あと、毎日歩きに 行ってな。何万回も言うけど、足だけは変わってあげられへんから、頼む でー。ほんならね。 ⚫ 作品賞:無敵の日々(ペンネーム) (40代・熊本県・送る相手 恋してる人) お前と出会って、狂おしいという意味を初めて身をもって知った。 会えない時間が妙につらい。と言うか息苦しくさえある。 なかなか縮まらない距離を一生懸命お前目がけて走ってるのに走っては ひらく、 なにか、起きたら汗だくになってるきつい夢を見てるみたいだ。 いや、頭の片隅ではちょっとわかってる。俺の中のどんなモラルもお前 にあまり意味がないことを。 それでも、ふとした瞬間に俺の頭に思い浮かぶのは、 ちょっと不機嫌な横顔、おいしそうに酒を飲む顔、一緒に写真に写る時 の満面の笑み、 笑う時に口を隠す癖、どS発言。 その他、色々、もう全てだ全て。 それを「好きだ」という一言だけじゃ、なんだか俺のありったけの気持 ちが届かない気がして、 だから、 やっぱり、 俺はどうすればいいのか分からないから、とにかくお前に会いに行くよ。 俺の薄暗い人生を照らす光なんだ、お前は。 俺は導かれるようにその光をたどってるんだ。 いつものように太陽のような笑顔で俺を迎え入れてくれ。 全ての不安がなくなるその笑顔を見るのが本当に、 幸せなんだ。 ⚫ 作品賞:カジちゃん(ペンネーム)(30代・熊本県・送る相手 妻) 妻へ 10年前、僕たちが初めて会った日のことを覚えていますか。 友達に誘われて足を運んだ大学の食堂。そこで君と初めての挨拶を交わした時のこ とを。 その時の僕は、一目惚れのような熱情ではなかったけれど、どこか落ち着いた気持 ちで直感したんだよ。 「僕は将来この人と結婚するのだな」と。 あれから10年の月日が経ち、今では3人の息子たちに囲まれながら、お互いに慌 ただしい毎日を過ごしているね。 僕たちが出会って間もない頃、君に言いました。「僕が君を幸せにしてやるから付 いて来い」と。その言葉に偽りの気持ちは無かったけれど、正直、今では時々不安 になるのです。 仕事のストレスから、帰宅すると君に何度も辛く当たってしまった過去。 君が子育てに追われているにもかかわらず、家事を十分に手伝えていない今の自分。 何気ない毎日の一言の積み重ねが、時に君を傷つけているような気がする。 今、君は幸せですか。僕は君を幸せにしてあげられていますか。 ただ・・そう問いかけても、君は必ず「十分幸せだよ」と答えるだろう。 ならば僕は誓う。 君が100回笑ったら、僕が101回笑い返すこと。 君が泣いたら、いつもそばに居てあげること。 僕がこの人生を懸けて君を幸せにし続けることを。 理想の夫にはまだまだ足りない部分が多いけれど、いつの日か息子たちが親元を離 れ二人だけの人生を振り返ったときには、「いろいろ有ったけど楽しい人生だった ね」と笑い合えるよう、これからもずっとよろしくね。 今までずっと伝えられなかった言葉に、10年間の感謝と未来への希望を込めて。 夫より
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