大工業地帯

京浜工業地帯の地域システム-東京巨大都市化の基盤
江戸を支えた在来・伝統工業
①下町の職人町
②埼玉・北関東の地場産業の町
近代工業地域の叢生
化学
水辺・川沿いを志向
紡績
赤羽工
作分局
カネボウ
千住製絨所
1929
1909
近代雑貨,
食品,繊維
石川島
造船所
電信寮
品川ガラス
電気
機械
東芝
造船,素材
東京の工業発展の条件
①官営工場の払い下げ
②政府需要の増大
③機械工業の勃興
④近代雑貨工業の増加
近代雑貨工業
・東京の伝統工業の
大半は城東地区に
(後に川崎・横浜
の臨海部へ)
・生活スタイルの洋風化とともに,近代雑貨工業が叢生。
・日本橋~浅草の問屋が主導して,城東各区に展開。
・問屋制が特徴
1
メリヤス工業
・問屋街と墨田川を挟んで東に展開。
・そのさらに東に染色業が展開。
城北地区
・軍需・官営工場群が原点。・赤羽・板橋の台地上の火薬・機械工場,
・荒川・新河岸川沿いには製紙(王子,十条),ソーダ(印刷局),千住製絨所
荒 川
新河岸川
板橋台地
赤羽台地
十条
王子
石神井川
墨田川
花王
化学工業・自転車
・これらから,日用化学工業品
(薬品, 石鹸, 化粧品, インク, ゴム
etc.)が派生
・荒川,新河岸川,石神井川の
沿岸に集積
・台地上の軍需機械工場の下
請け工場群からは,様々な機
械工場が派生。
・特に,軍用の双眼鏡は,戦後
一大産業となる。
・さらに自転車,鉛筆,医療機
器が集中
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時代に合わせた業種転換
郊外進出
双眼鏡
・多摩川沿い … 広い敷地と水の便を
求めて,多様な新参の近代工業が集積
・味の素,明治製菓など,今も存続してい
る工場も多い。
顕微鏡
カメラ
・目黒川沿い
・起点は,品川ガラス,品川練炭
・光学機器の最大の集積地は板橋。陸軍向
け双眼鏡が出発点。 組み立て工場を中心
に,部品製造を分担する町工場が集中。
・水の便を求めて,川沿いに電機,
金属,薬品,化学,専売公社,国
鉄工場など,雑多な工業が集積。
ゴム工業の集積が特色。
・戦後は,対米輸出で繁盛したが,1970年
代から衰退。現在は,研究開発部門,試作
品部門を残す。
からくり
王・田中
久重
電気機械工業地域の形成
高付加価値
機械工業の
集積
創業地は銀座
・先駆者は江戸のからくり王。
・1881,芝浦へ移転。
・1899,電灯会社を合併して,
家電製造に参入。
・川崎に製造拠点を展開。
城南がその
核心地域に
多摩川と都心の間に関連・下請工場
が集積 ⇒ 「城南」工業地区
1963
1963
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時代の変化にあわせて 品川の電球製造(2)
機械・金属工業
の連関システム
← 戦後の推移
・1970年頃から,労賃・コストの
上昇で,台湾・香港・韓国産に
太刀打ちできず,地方へ移転。
★これらを分担してい
るのが,熟練工を擁す
る町工場群
⇒ 産業地域社会
品川の電球製造業
品川歴史館HPより(http://www.city.shinagawa.tokyo.jp/)
・1878,日本に最初の電灯が導入。最初は電池式のアーク灯
・1883,東京電灯創業,以後各地に電灯会社誕生
・1890,白熱舎(京橋)が電球製造を開始。1895,社名を東京電気(株)に変更。
・少数残った業者は,超小型
電球, LED, 航空機用など,
特殊電球に転換。 ⇒
工業の周辺拡散
・高度経済成長期,東京・京浜の
工業は,用地と労働力を求めて
周辺に拡散
1898
・1898,品川に電球のガラス球製造拠点を設置。
・1907,大井町に電球工場を建設し大量生産へ。
・品川,大井,大崎に,少ない
設備投資で製造可能なマメ電
球の町工場が多数誕生。
・欧州向け懐中電灯,アメリカ向
けクリスマス電球として輸出。
・戦災後,アメリカ向けクリスマス
電球の製造が急速に復興。
品川おもしろ学HP ⇒
・この過程で,北関東へは低付加価値部門を,
中央線沿線には知識部門を移転。
(http://www1.cts.ne.jp/~yamase/lamp.html)
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近年の地域連関システムの変化
IT・コンテンツ産業の集積
コンテンツ産業
近年の体系
京浜内陸部にR&D拠点
IT産業
知識集約型
産業部門の
集積
中央線沿線に展開
①新宿・渋谷 … 郊外からの私鉄線が集中
②赤坂・六本木,③神田・秋葉原 … 需要に近接
半澤誠司,2001,東京におけるアニメーション産業集積の構造と変容.経済地理学年報,47,288~302
山本健太,2007,東京におけるアニメーション産業の集積メカニズム.地理学評論,80,442~458
京浜工業の連関システム
【文献】
<書籍>
竹内淳彦 2004 「日本経済地理読本 第7版」 東洋経済新報社
※1967年の初版から改訂を重ねるロングセラー
板倉勝高・井出策夫・竹内淳彦 1970 「東京の地場産業」 大明堂
板倉勝高 1972 「都市の工業と村落の工業」 大明堂
板倉・井出・竹内 1973 「大都市零細工業の構造」 新評論
竹内淳彦 1978 「工業地域構造論」 大明堂
辻本芳郎編 1981 「工業化の地域的展開」 大明堂
竹内淳彦 1983 「技術集団と産業地域社会」 大明堂
竹内淳彦 1988 「技術革新と工業地域」 大明堂
村田喜代治 1988 「産業母都市 東京」 東洋経済新報社
佐藤正之1988 「京浜メガテクノポリスの形成」 日本評論社
笹生 仁 1991 「工業の変革と立地」 大明堂
石井実・井出・竹内 2002 「写真・工業地理学入門」 大明堂
<論文>
鹿嶋洋,1995,京浜地域外縁部における大手電機メーカーの連関構造-T社青梅工場の外注利用を事例,地理学評論,Ser.A,68,423~446
★東京を離れ
られない理由
研究・開発・先端技術部門の分厚い集積をベースに …
小田宏信,1997,ME技術革新下における大都市機械工業の変容 -京浜のプラスチック金型製造業を事例に,地理学評論 Ser.A,70,555~576
・複雑なデザイン,激しい需要や流行の変化,短期間・小ロットの対応
竹内淳彦・森秀雄・八久保厚志,1997,東京城東外周部における工業集団の変動;葛飾区を中心として,経済地理学年報,43,100~113
⇒近隣に多様な技術の職人や町工場が集積していることが必須
・その中心的担い手が,城東(雑貨),城南(電機)を中心とする町工場群
竹内淳彦・森秀雄・八久保厚志,2002,大田区における機械工業集団の機能変化,地理学評論 Ser.A,75,1,20~40
丸山美沙子,2007,大都市機械工業地域における新規取引連関の形成過程--板橋区の中小企業を事例として,地理学評論, 80,121~137
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