地上重力波検出器を用いた 中性子星連星合体後の重力

 地上重力波検出器を用いた
中性子星連星合体後の重力波解析
講演番号 : 27pSK-13
2015年9月27日
日本物理学会 2015年秋季大会 @大阪市立大学
譲原浩貴, 仏坂健太^A^, 久徳浩太郎^B^, 田越秀行, 柴田大^C^, 神田展行
阪市大理, Hebrew University of Jerusalem^A^, 理研iTHES^B^, 京大基研^C^
1/19
コンパクト連星合体について
・コンパクト連星合体(中性子星, ブラックホール)は
最も検出が期待される重力波源のひとつ
・次世代地上重力波検出器で検出が期待される中性子連星合体の
イベントレート(advanced LIGO)
0.4 ∼ 400 [イベント/年]
[Abadie et al., Class. Quant. Grav.27:173001 (2010)]
2
中性子星連星合体から放出される重力波
数値相対論シミュレーション : 仏坂, 久徳, 柴田 [in preparation]
H4_140
状態方程式 H4
h(t) [arb.]
0.15
0.1
1.4
1.4M
inspiral
merger
0.05
0
-0.05
-0.1
-0.15
0.03 0.035 0.04 0.045 0.05 0.055 0.06 0.065 0.07
time [s]
inspiral : さまざまな近似を用いて波形が予測 post-merger : 中性子星連星の合体時には
されている。予測された波形を用いて
Hyper Massive Neutron Starが形成される可能
matched filter手法により重力波を探索する
性があり、重力波波形は状態方程式に強く依存
する。波形計算には数値相対論を用いたシミュ
レーションが必要
3
inspiral / post-merger 重力波を検出できる最大距離
・matched filterを用いて探索した場合
・ 信号のみを解析, ノイズスペクトルはKAGRA VRSEB, 最適な入射方向を仮定
典型的には
状態方程式
質量[太陽質量]
239~254Mpc 9~17Mpc
検出レンジ[Mpc]
inspiralのみ(SNR=8)
1.2-1.50
APR
post-mergerのみ
(SNR=5)
9.8
1.3-1.3
239
9.5
1.35-1.35
246
9.7
1.2-1.50
H4
検出レンジ[Mpc]
14
1.3-1.3
239
15
1.35-1.35
246
17
1.4-1.4
254
15
4
s(f) [arb.]
motivation
post-merger重力波の周波数は
inspiralと比べるとSNRが小さい(15∼30倍)
peak
3200~3300Hz
(状態方程式 APR)
fpeak = 3200 ⇠ 3300[Hz]
地上重力波検出器では感度が悪い周波数帯域
SNRが小さいpost-merger(遠方のイベント)でも検出することはできないか?
・数値相対論シミュレーションにより、
inspiral ∼ post-mergerの重力波波形は計算されている
あるpost-merger波形をテンプレート化(fitting formula)、解析に用いる
・どの中性子星でも状態方程式は同じはず
・SNRが小さい異なるイベントでも、データをコヒーレントに足し合わせる
ことでSNRを得できないか? まずはシンプルな状況で、可能性を調べた
5
数値相対論シミュレーション
数値相対論波形(連星合体からの重力波) 仏坂, 久徳, 柴田 [in preparation]
状態方程式 : APR4, H4の2種類
中性子星質量[太陽質量] : 1.20-1.50, 1.30-1.30,
1.35-1.35, 1.40-1.40
合計 7種類の重力波波形 h(t)
※天頂方向からの入射を仮定 h(t) = h+ (t)
6
inspiral期とpost-merger期の決定方法
h(t) [arb.] 0.2
0.15
[合体付近を拡大]
APR_1215
0.1
0.05
0
-0.05
-0.1
-0.15
-0.2
0.059
0.06
0.061
0.062
0.063
0.064
0.065
time [s]
thmax
① |h(t)|の最大値となる時刻 を特定する
7
inspiral期とpost-merger期の決定方法
h(t) [arb.] 0.2
0.15
thmax
[合体付近を拡大]
APR_1215
0.1
0.05
0
-0.05
-0.1
-0.15
-0.2
0.059
0.06
0.061
0.062
0.063
0.064
0.065
time [s]
t > thmax
h(t) = となる最初の時刻を
0
② かつ
t0
post-mergerの開始時刻 とする
(例外あり)
t < t0 をinspiral波形, t t0 をpost-merger波形と今回は呼ぶ
③ 8
inspiral期とpost-merger期の決定
(2番目のzero点)
(2番目のzero点)
赤線 : inspiral 重力波
緑線 : post-merger重力波
青線 : 最大振幅の時刻
( -1 x h(t))
thmax
橙点 : post-mergerの開始時刻 t0
9
h(t)h(t)
[arb.]
post-merger重力波の波形比較
0.15
0.1
0.05
0
-0.05
-0.1
-0.15
APR_1215
APR_130
APR_135
0
0.0005
0.001
0.0015
0.002
h(t)h(t)
[arb.]
time[s]
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
-0.02
-0.04
-0.06
-0.08
-0.1
-0.12
H4_1215
H4_130
H4_135
H4_140
0
0.0005
0.001
0.0015
0.002
time[s]
・同じ状態方程式ならば、異なる質量でも波形が似ているように見える
=> 定量的に評価する
10
post-merger重力波波形の一致度を定量的に評価
match = max(h1 |h2 )
tc
Z 1
h̃1 (f )h̃⇤2 (f, tc )
df
⌘ max 4<
tc
Sn (f )
0
Z 1
h̃1 (f )h̃⇤2 (f ; tc = 0)
= max 4<
e
tc
Sn (f )
0
・波形同士がどれくらい一致しているかの指標
2⇡if tc
df
1  match  1
1に近づくほど一致している 0に近づくほど一致していない
・それぞれのh(t) にpost-merger波形を入れ、データ同士のmatchを計算した
・時刻 tc はデータの開始時刻、時間方向にサンプル点をずらし、
最大値を求める ( 逆フーリエ変換を利用 )
● ● ● ●● ●
tc=2の場合の例
● ● ● ●● ●
|
t
t=0
●
●
● ● ●●
● ● ● ●● ●
| |
t
t=0 tc
11
post- merger重力波波形の一致度を定量的に評価
データ長 : T=10[ms]
match
データ2
データ1
12
・状態方程式 APRの組み合わせは比較的matchが高い
post- merger重力波波形の一致度を定量的に評価
APR130 - APR1215 の組み合わせ = 0.82
=> 重力波波形に工夫することで改善できないか?
match
データ2
・他の組み合わせは低いmatch
データ1
13
post-merger重力波波形への工夫
一方のデータ(この場合はAPR_1215) をA倍だけ時間スケールを変換する
0
h (t) = h(t/A)
h(t) [arb.]
Aは1.01, 1.02, ..1.10倍まで試みた
0.15
A倍だけ時間スケールを変換
0.1
0.05
0
-0.05
-0.1
-0.15
APR_1215
APR_130
0
0.001
0.002
0.003
0.004
0.005
time [s]
しかし、単純に時間ラベルを1/A倍すると、サンプリングレートが変わる
=> レート変換をする必要がある (今回はサンプル点同士を線形補間)
14
時間スケール変換なし
時間スケール変換なし
データ長 : T=10[ms]
時間スケール変換あり
match
時間スケール変換あり
・データの伸縮により最大で2.5倍、matchが改善
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重力波波形をコヒーレントに足し合わせることで、低SNRイベントを見る
SNRが小さいpost-merger(遠方のイベント)でも検出することはできないか?
N 個のpost-merger イベントのデータを信号部分がコヒーレントになるように、
時間スケール変換を適用し、合成波形のSNRを計算する
次のようなSNRを定義する (inspiral重力波を検出されたことを仮定)
(S/N )2tot
<
=
<
<
=
<
(⇢stot ) >2
(⇢ntot )2 >
⇣P
⇣P
(S/N )2tot =
(S/N )tot =
(x, y) = 4<
N
i=1 (si , hi )
⌘
N
i=1 (ni , hi )
⇣P
N
i (si , hi )
⇣P
N
p
N
⌘2
⌘2
N
i (si , hi )
>2
⌘
>
si
Z
1
0
x̃(f )ỹ ⇤ (f )
df
Sn (f )
: 重力波信号
hi : テンプレート
ni : ノイズデータ
N
X
⇢stot =
(si + ni , hi )
i=1
⇢ntot =
N
X
i=1
: 重力波ありのデータ
(ni , hi )
: 重力波なしのデータ
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重力波波形をコヒーレントに足し合わせることで、低SNRイベントを見る
具体的に考えてみる。一例として、
APR1.30の中性子星連星は [email protected] ~ 10Mpc で見ることができる
100MpcでSNR~0.5
APR 130
200MpcでSNR~0.25
先ほどの改善した波形をテンプレートとして用いると、
平均的に得られるSNRは91%
理想的な状況を考えると、
100Mpcでのイベント(post-merger SNR~0.5)をコヒーレントに足し合わせて、
SNR=5で見るために必要なイベント数は
5 = 0.5 ⇥ 0.91 ⇥
p
N => N ⇠ 121
200Mpcでのイベント(post-merger SNR~0.25)をコヒーレントに足し合わせて、
SNR=5で見るために必要なイベント数は
5 = 0.25 ⇥ 0.91 ⇥
p
N => N ⇠ 483
17
まとめ
■ 連星合体からの重力波は地上重力波検出器(KAGRA, LIGO, Virgo)において検出
が最も期待される重力波源のひとつである
■ 数値相対論シミュレーションから得られた重力波波形のうち、
post-merger波形同士のmatchを計算することにより、重力波波形の一致度を
調べた
■ matchを改善させる手法として、データの時間スケール変換を試みた
状態方程式APRのデータでは最大 1.5倍のmatchが改善
状態方程式H4のデータでは最大 2.6倍のmatchが改善
post-mergerイベントのデータをコヒーレントに足し合わせるという手法で、重
力波を検出するために必要なイベント数を見積もった。APR 130の場合、
@100Mpc N=121イベント
@200Mpc N=483イベント
18
今後の課題
■ データの時間スケール変換時に行ったサンプリングレート変換は非常に
単純 (サンプル点同士を線形補間)
サンプリングレート変換の行程
アップサンプラー
(サンプリングレートを上げるためにデータにL個ごとに0を埋める)
↓
ローパスフィルター
(ナイキスト周波数以上にimagingした高周波成分を落とす)
↓
ダウンサンプラー
(サンプル点をM個ずつずつ飛ばしてサンプルする)
■ post-merger重力波信号をシミュレーションノイズに、到来方向による検出
器応答を考慮してインジェクションし、解析を行う
■ matched filterだけではなく、burst重力波の解析手法についても検討する
19
20
解析に用いたノイズスペクトル
・KAGRA VRSEBを用いた
anplitude spectrum density
1e-20
VRSEB
VRSED
aLIGO
aVirgo
1e-21
1e-22
1e-23
1e-24
10
100
1000
frequency[Hz]
8000
21
first peak
first peak
second peak
600
8000
600
8000
anplitude spectrum density
1e-21
VRSEB
VRSED
aLIGO
aVirgo
1e-22
1e-23
1e-24
600
1000
frequency[Hz]
8000
22
post-merger重力波のpeak周波数の同定
状態方程式
APR
H4
質量[太陽質量]
first peak[Hz]
second peak[Hz]
1.215-1.5
3240
4409
1.3-1.3
3288
4587
1.35-1.35
3305
4012
1.215-1.5
2322
---
1.3-1.3
2369
---
1.35-1.35
2534
---
1.4-1.4
2658
---
状態方程式APRのデータでは2つのpeakがはっきりと特定できたが、
H4ではsecond peakが見えづらい
この特定した周波数をmatchの改善に活かせないか試みたが、今のところ
うまくいっていない
23
inspiral重力波探索からの質量の決定精度
[arXiv:1304.1775v4 (2013)]
[Phys. Rev. D 88, 062001 (2013)]
24
inspiral重力波 合体までの時間
25
inspiral重力波 合体までの時間
26
post- merger重力波のpeak周波数とshrink factorの関係
1.1
APR
H4
shrink factor A
1.08
1.06
1.04
1.02
1
1
1.02
1.04
1.06
1.08
f_2 / f_1
1.1
1.12
1.14
1.16
27
match(時間スケール変換なし、かつt_c最大化なし)
match
データ2
データ長 : T=10[ms]
データ1
28
match改善前(時間スケール変換なし)
match
データ2
データ長 : T=10[ms]
データ1
29
match改善後(時間スケール変換あり)
match
データ2
データ長 : T=10[ms]
データ130
matchが最大となったときにh(t) 重ね合わせ
・データの伸縮により2.56倍 matchが改善したケース(H4_130 - H4_140)
0.1
H4_140
shinked H4_130
0.05
h(t)
0
-0.05
-0.1
-0.15
0
0.002
0.004
0.006
time [s]
0.008
0.01
31
post-mergerの重力波波形(状態方程式 APR4)
32
post-mergerの重力波波形(状態方程式 H4)
33