バ イ オ マ ス 事業断念と裁判

課題 Case1
◉住民訴訟
原告/住民 118 人 被告/御船町長
内容/御船町の執行機関である町長に対
して、個人としての町長に約 3 億
円の損害賠償請求をするよう求め
た裁判
裁判/▽平成 23(2011)年 9 月~平成
26(2014)年 11 月 ▽口頭弁論
(全 16 回) ▽判決で山本町長に
約1億円を負担するよう命じる ▽判決不服として福岡高裁へ控訴
◉ヤスジマ訴訟
原告/㈱ヤスジマ 被告/御船町外 4 人
内容/御船町外事業会社の役員 4 人に対
して、連帯して約 3 億 1,500 万円
を支払うよう求めた裁判
裁判/▽平成 23(2011)年 12 月~平
成 27(2015)年 1 月 ▽口頭弁
論(全 10 回) ▽平成 27 年 3 月
23 日に判決
◉交付金返還請求訴訟
原告/御船町 被告/御船竹資源開発㈱
内容/事業会社である御船竹資源開発㈱
に対して、御船町が交付した補助
金約 3 億円を返還するよう求めた
裁判
裁判/▽平成 23(2011)年 2 月~ 4 月
▽判決で御船竹資源開発㈱に対し
て約3億円を町に支払うよ う命じる
◉不当利得返還請求訴訟
原告/御船町
被告/御船竹資源開発㈱の元代表取締役
内容/事業会社である御船竹資源開発㈱
の元代表取締役に対して、御船町
から交付した補助金のうち目的外
に利用した 1,463 万円について 支払うよう求めた裁判 裁判/▽平成 25(2013)年 5 月~ 9 月
▽口頭弁論(全 2 回)
▽判決で
御船竹資源開発㈱の元代表取締役
に対して 1,463 万円を町に支払う
よう命じる
◉不当利得返還請求訴訟
原告/御船町 被告/熊電施設㈱
内容/事業会社への出資金 2,400 万円を
不当に払い戻しを受けた熊電施設
㈱に対して、2,400 万円を御船町
に支払うよう求めた裁判 裁判/▽平成 25(2013)年 11 月~
▽口頭弁論(全 2 回)
▽平成 27
年 3 月 23 日に判決
裁判の流れ
竹
バ イ オ マ ス
事業断念と裁判
放置竹林による里山の荒廃防止と再生を目指した竹バイオマス事業。しかし、事業会社の資金
調達が滞り、事業継続を断念しました。現在、約 3 億円の負債を巡る裁判へと発展しています。
竹バイオマス事業を検証しながら、裁判の現状を整理してお伝えします。
里山の荒廃防止と再生
本町は、県内有数の竹林面積を
災害対策と森林保全▽中山間地域
事業」を計画して、本格的な事業
▽竹材を活用した製品市場への需
町は判決内容に不服として、平
竹資源開発㈱の動産や預貯金など
活性化の雇用対策と定住促進―の
が現実化しました。
要と継続性▽事業会社の体力と事
成 26 年 11 月に福岡高等裁判所
の債権差押えを行い、約 61 万円
業規模―などが懸念され、再三の
へ控訴しました。第 1 回口頭弁
を回収しています。今後も、債権
説明と協議を重ねた結果、融資を
論は、平成 27 年 3 月 23 日に予
回収に努めていく方針です。
断られます。事業会社は、資金提
定されています。
このほか、御船町が原告となり、
竹バイオマス事業は、平成 20、
供の協力者を求めて事業継続を進
次にヤスジマ訴訟は平成 23 年
熊電施設㈱に対し事業会社への出
必要性を考えていきました。
有し、竹材を活用した産業やタケ
ノコの産地で、最盛期には缶詰工
場が操業するなど、竹林産業が地
バイオマスタウン構想
事業断念と 3 億円返還
域経済の一躍を担っていました。
平成 19 年 12 月、本町にある
21 年度の 2 カ年で計画しました。
めましたが、平成 22 年 2 月に補
12 月、㈱ヤスジマ(金沢市)が
資金 2,400 万円を不当に払い戻
しかし、時代の流れは石油製品
バイオマスを有効活用し循環型社
内容は、▽工場建築▽突板と竹綿
助事業継続を断念しました。
原告となり、御船町外事業会社
しを受けたとして支払いを求めた
へと変わり、竹製品の需要低迷や
会の形成を目的に「御船町バイオ
生産設備▽エネルギー設備▽竹林
町は会社へ補助金返還を再三請
の役員 4 人に対し、連帯して約 3
裁判は、訴訟中です。
中国から安価な竹製品の輸入が増
マスタウン構想」を作成しました。
管理と収集運搬設備―など、総額
求する一方で、国と返還の協議を
億 1,500 万円を支払うよう求め
こ の 裁 判 は、 平 成 27 年 3 月
え、
国内の竹産業は失墜しました。
平成 20 年 1 月、学識経験者や
約 20 億 5 千万円の事業です。事
重ねました。平成 23 年 1 月、加
て、金沢地方裁判所に提起しまし
23 日に判決が言い渡される予定
また、町土の約8割を占める中
地場農林産業、住民代表者で組織
業費の半分を国からの交付金とし
算金が付かないことを第一に考
た。この裁判は、事業会社の御船
となっています。
山間地では高齢化が進行。地形は
する「バイオマスタウン構想検討
て、残りを日本政策金融公庫など
え、国から町に対して交付を受け
竹資源開発㈱が機械設備を発注し
急峻なため、竹林の管理は容易で
委員会」を設置。庁内専門部会も
から融資を受ける計画でした。
た約 3 億円の交付金をを自主返
て、一部の代金支払いを受けてい
なく、荒廃が急速に進んでいる状
立ち上げ、バイオマスの有効利活
平成 21 年 2 月、御船竹資源開
還する選択にいたりました。
ないとして、㈱ヤスジマが損害賠
況でした。
この課題に対して町は、
用に向けた検討を協議しました。
発㈱が事業を開始。町は、国から
里山の荒廃防止と再生を目的に事
平成 20 年 10 月、事業実施主
の補助金約 3 億円を 2 回にわた
業化を検討します。
体の御船竹資源開発㈱(熊本市)
り会社へ交付して、事業の成功を
事業内容は、▽竹林約 760㌶
が設立されると、本町の竹を住宅
後押ししました。
を資源とした利活用▽放置竹林の
床材や発電に使う「竹バイオマス
しかし、日本政策金融公庫から、
きゅうしゅん
事業の経緯
◉平成 20(2008)年 10 月
▽国へ事業計画書を提出
◉平成 20(2008)年 12 月
▽国から事業補助金交付決定を受理
◉平成 21(2009)年 1 月
▽御船竹資源開発㈱(=竹資源)が事業
開始▽国から町へ補助金約2億円が交付
◉平成 21(2009)年 2 月
▽町から竹資源へ国の約2億円を交付 ▽日本政策金融公庫から融資の断り
◉平成 21(2009)年 4 月
▽竹資源から町に事業報告書が提出▽町
は国へ事業報告書を提出▽国から町へ交
付金約 1 億円が交付
◉平成 21(2009)年 5 月
▽竹資源から町へ精算交付金約 1 億円が
請求▽町から竹資源へ交付金約 1 億円を
交付
◉平成 22(2010)年 1 月
▽竹資源の体制強化で出資協力者を募り
第三セクター方式で事業再生へ向けて議
会へ町の出資金 3 千万円を上程・可決
◉平成 22(2010)年 2 月
▽会社から事業断念と町からの補助金約
3 億円を 3 月末までに返還申し出を受理
▽町から国へ交付金事業中止の協議
◉平成 22(2010)年 3 月
▽町から会社へ補助金返還を通知。会社
から返還遅延願が提出
◉平成 22(2010)年 4 月
▽町から会社へ補助金返還を求め再通知
▽交付金返還へ向けて議会へ約 3 億円の
上程・否決▽議会で調査特別委員会「百
条委員会」が設置
◉平成 22(2010)年 11 月
▽国へ交付金を返還する予算と会社に返
還を求める訴訟の提訴案件を上程・可決
◉平成 23(2011)年 1 月
▽補助金約 3 億円を町財政調整基金から
国へ返還
控訴訴訟 441 万円を町負担
償請求訴訟したものです。
控訴の弁護士費用など 441 万
熊本地方裁判所に移送後、10
円を、町が負担することに賛否両
回の口頭弁論が開かれ、平成 27
論の意見があります。この取り扱
町は、竹バイオマス事業に関
年 3 月 23 日に判決が言い渡され
いは、平成 14 年 9 月に地方自治
連する裁判を 5 つ抱えています。
る予定です。
法の一部改正によるものです。
裁判は、▽住民訴訟▽ヤスジマ訴
また、御船町が原告となり、御
改正前は、個人として地方公共
訟▽交付金返還請求訴訟▽不当利
船竹資源開発㈱に対し御船町が交
団体の長や職員が被告となり、訴
得返還請求訴訟―があります。
付した補助金約 3 億円の返還を
訟費用も個人が負担していまし
住民訴訟は平成 23 年 9 月、町
求めた裁判と、御船竹資源開発㈱
た。しかし改正後は、地方公共団
民 118 人が原告となり、個人と
の元代表取締役に対し御船町から
体の執行機関などを被告として、
しての山本孝二町長に約 3 億円
交付した補助金のうち目的外利用
個人としての長や職員に対し、損
の損害賠償請求をするよう求め
した 1,463 万円の支払いを求め
害賠償などの請求を求める訴訟の
て、熊本地方裁判所に提起しまし
た裁判は、いずれも御船町の主張
形に再構成されました。つまり、
た。16 回の口頭弁論を経て平成
が認められた判決がでています。
訴訟費用も地方公共団体が負担す
26 年 10 月、裁判所は御船町長
町は、御船竹資源開発㈱や元代
ることに見直されています。
に対して、山本町長個人に対し約
表取締役に対して、再三にわたる
この法律をもとに、今回の住民
1 億円を請求するよう判決を命じ
請求を行っていますが、返還には
訴訟の控訴費用も、地方公共団体
ました。
至っていません。そのため、御船
の御船町が負担しています。
5 つの裁判と債権回収
問企画財政課 ☎ 096-282-1263
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まちづくり報告書 2011-2014
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