China por t Re Promotion & Campaign 3 2015中国シルクロード観光年 水の流れが紡ぐ江蘇の美 東西に長江、南北に大運河が走る 「東洋のベニス」と称される蘇州など、水が描く江蘇省の風土は美しい。 2014 年、世界文化遺産に登録された大運河に沿って多彩な観光スポットが生まれつつある。 麗しい水の都には、歴史に彩られた人々の暮らしの詩がある。 文/山野修(日本旅行作家協会会員) 、写真/江蘇省旅遊局、山野修 江蘇省を西から東へ流れる長江(揚 朱元璋(1368 ~ 1398)と皇后の眠る明 子江)。その流れに沿って、南京、鎮江、 孝陵がある。1413年完成、その広さは 揚州、常州、秦州、無錫、蘇州、南通、 周囲22.5km。03年に世界文化遺産に 8つの都市が連なる。大河の辺で繁栄し 登録された。見どころは陵墓へと続く た都市は、水をテーマとする新たな観 神道。長さ1.8km の参道で、道の両側 光スポットとして変身中。各地で長江 にラクダやゾウなど多数の石像が並ぶ。 る民俗博物館・甘家大院など、見どこ 川下り専用の港の建設も始まった。 街の南部、夫子廟と呼ばれる一角は ろは豊富。長江の畔、獅子山の頂に建 南京は江南の中心地。北京、西安、 賑やかな繁華街で土産物店も多い。目 てられた高さ52mの閲江楼は長江の絶 洛陽と並ぶ中国4大古都の1つだ。2010 抜き通りの貢院西街は歩行者天国。南 好の展望台だ。 年、高速鉄道の開通によって上海から 京名物「雨花石」 (メノウの一種)が旅 1時間余り、北京から約4時間で結ばれ の思い出に人気。雨花石は14年に行わ るようになった。 れた南京ユースオリンピック競技大会の 古より運河の辺に街が生まれ、人々 南京を代表する見どころは、明代に マスコットにもなった。 の暮らしが栄えた。世界文化遺産に登 創建された中華門。街を取り囲む全長 貢院東端に建つ江南貢院は南宋時代 録された大運河は全長1000㎞余り。そ 約36km の城壁の旧南門で、幅は東西 の科挙(官僚登用試験)の試験場跡で、 のうち江蘇省内の全長は約690㎞にも 118.5m、南北128m、高さ20.5m。威 現在は博物館になっている。貢院西街 及ぶ。 大運河に沿って北から徐州、 宿遷、 風堂々とした城門の姿に圧倒される。 を南に進むと秦准河に突き当たる。こ 淮安、揚州、鎮江、無錫、蘇州といっ 緑の都ともいわれる南京。プラタナス の辺りは日没後ライトアップされ、水 た街が連なる。水運としての大運河の の並木が美しい陵山路を登っていくと 面に映る夜景が美しい。遊覧船による 役割は時代と共に薄れつつあるが、古 中国革命の父・孫文の陵墓、中山陵へ。 ナイトクルーズが人気。幻想的な古都 代から続く歴史が色濃く残り、人々の コバルトブルーの屋根と白壁の祭堂に孫 の風情が味わえる。 暮らしが息づいている。その土地独自 文が眠っている。 そのほか、42万もの収蔵品を誇る南 の運河文化が育まれ、水の煌めきのよ 中山陵の南西には明朝の初代皇帝・ 京博物院、明清時代の生活文化を伝え うな輝きを発する。 孔子を祭る南京夫子廟 江蘇省を流れる690㎞の大運河 揚州では14年、世界運河名城博覧会 を開催した。世界52の運河のある都市 から代表が集まり、運河の活用と都市 の発展について活発な討議が行われた。 一方、江蘇省旅遊局は「大運河観光祭 り」を開催する予定だ。大運河を巡る 水上観光のさまざまな構想が熱く検討 されている。 古運河と共に歴史を歩んできた揚州の運河町 34 TRAVEL JOURNAL 2015.1.26 痩西湖の釣魚台と五亭橋(揚州) この5年間、大運河周辺の都市は数 鎮江ではどこからも見えるという金山塔 蘇州で必ず訪れたい庭園「拙政園」 常州にある春秋戦国時代の城跡 太湖から突き出た亀頭渚(無錫) 三国志にゆかりのある「北固山」 蘇州にある9つの庭園は世界遺産 水の都、泰州にある鳳城河の美しい風景 南通の启東園陀角風景区で蛤採りも体験 多くの歴史文化地区を復元した。ちな っている。 に記念堂があり、内部に鑑真坐像が鎮 みに鎮江の西津古渡歴史文化地区、常 日本と中国の縁を感じさせる街だ。 座している。 州の運河五号創意地区、無錫の惠山古 潤州山路には米国の女流作家、パール・ 揚州には私家庭園の何園や个園や塩 鎮と清名橋古運河歴史文化地区、蘇州 S・バック(代表作『大地』。後にノー 商人の大邸宅「汪氏小苑」などがあり 七里山塘と平江路歴史文化地区および ベル文学賞を受賞)の旧居がある。彼 必見。揚州料理は宮廷料理に大きな影 盤門、淮安の河下古鎮、宿遷の項王故 女は宣教師の両親と共に中国に渡り、 響を与えた。揚州炒飯は美味だ。 里、揚州の東関古渡歴史文化地区など 18歳まで鎮江で暮らした。レンガと木 が挙げられる。 造の瀟洒な建物は清々しい。 大運河と長江の交差点 こえん 水のある風景との対話 鎮江からバス約1時間で揚州。詩情 江蘇省の南東、長江デルタ地帯の中 あふれる瑞々しい都が浮かび上がる。 心にある蘇州。西には太湖が豊かな水 南京から約60km にある鎮江。長江 「煙花三月 揚州に下る」。詩人・李白 を湛え、運河に囲まれた街は「水の都」 と大運河が交差する港街は唐代から水 の詠んだ詩の一説だ。花が一面に咲き と称えられ、江南水郷を代表する街だ。 運の中枢として栄えた。長江に沿って 誇り、霞たつように見える春爛漫の揚 しっとりとした独特の情感に溢れてい 延びる長江路の西側に1600年前に造ら 州の風情が伝わってくる。揚州は南北 る。唐代以降、町は発展を遂げ、明清 れた宋街(西津古渡歴史文化街区)が を結ぶ水運の拠点として繁栄を極めた。 代には国内有数の都市へと成長した。 残っている。約1㎞の石畳の路地には各 清の乾隆帝が好んだ痩西湖。湖には 富豪たちが競い合うように造った庭園 時代の建物が軒を連ねる。石段の真中 船着き場があり、 遊覧船に乗ってみよう。 のうちの9カ所(拙政園、留園、網師園、 には一輪車用の轍が残り、往時の港街 湖畔の両岸の随所に名勝古跡が姿を現 滄浪亭、環秀山荘、獅子林、耦園、芸 の活気が伝わってくる。近くに、清代 し、船上からの眺めは時々刻々移り変 圃、退思園)が、2013年、世界文化遺 に建てられた元英国領事館(現在は鎮 わる。五亭橋、二十四橋など、靄に浮 産に登録された。蘇州夜曲ゆかりの寒 江博物館)があり、レンガ造りの洋館 かぶ佇まいも素敵だ。 山寺や、レンガ造りの「東洋の斜塔」と が印象的だ。 湖の北端に大明寺がある。中国仏教 呼ばれる虎丘の雲岩寺塔など、この街 街の西側、海抜43.7mの山に金山寺 の律宗の寺。ここで律を講じていた鑑 の観光素材は尽きない。 がある。高さ30mで7層の慈寿塔の上 真のもとに、留学僧の栄叡と普照が訪 なかでも拙政園(面積5万2000㎡)は に登れば、長江と街の織りなす景観が ねてきた。2人から朝廷の「伝戒の師」 水の庭園として知られる。園内の7割を 一望のもと。室町時代の水墨画家・雪 としての招請を伝え聞き、鑑真は渡日 占めるのが池や堀で、自然の美しさを 舟がこの寺を訪れ、長江とこの塔を描 を決意。その後の12年間に5度の渡航 凝縮した作庭が素晴らしい。拙政園は いた。街の東側の北固山の頂にある甘 を試みたが失敗。753年、6度目で遂に 事前に予約をすれば、開園時間の1時 露寺は三国志の舞台として知られる。 来日を果たした。やがて律宗の開祖と 間前に入園することが可能だ。 山の東側に阿倍仲麻呂が望郷の想いを なった鑑真はその総本山として唐招提 江蘇省では観光客のニーズに応え、さ 詠った「天の原ふりさけ見れば春日なる 寺を建立し、仏教だけでなく幅広い知 まざまなサービスを提供していく考えだ。 三笠の山にいでし月かも」の歌碑が立 識を日本にもたらした。大明寺の一角 (取材協力:江蘇省旅遊局、中国観光局駐日代表処) TRAVEL JOURNAL 2015.1.26 35
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