総評ポスターは、絵や文字を使って、あることを人に伝えたり、知らせたり、みちびくものです。何を、どのように伝えるかを考えなくてはいけません。今年は、物を貼り付けたり、絵の具の塗り方を工夫したり、標語をアレンジしたりして、自分が伝えたいと思う火災予防をしっかりと考え、ていねいに描きあげられた力作が多く見られました。取り上げられたテーマでは、コンセントのほこりから起こるトラッキング火災やたこ足配線を取り上げた作品が増え、電気火災の予防意識が家庭に広がっていると感じました。また、マッチをテーマにした作品が増えました。これは、火遊び防止のためにライターが使いにくくなったことから、お年寄りを中心にマッチを使う人が増えているとされ、家庭内でマッチを見かける機会が増えているからではないかと考えられます。今回から中学生の部と小学生の部に分けられ、それぞれに特別賞が設けられました。すばらしい作品が多く選考に苦労しましたが、しっかりとメッセージを伝えていること、ていねいな制作、工夫、独創性などに優れた作品１４点が受賞しました。審査員豊岡市美術協会、但馬芸術文化会議会員岸本喜朗平成 27 年度防火ポスター審査評小学生の部市長賞市立新田小学校植村蓮紀こどもに注意される、お父さんの姿が目に浮かびます。しっかりと描かれた文字の配色も良く、左側に描かれた３本のたばこが画面のバランスを整えています。炎の口の中にたばこで描かれた「火」の文字などの工夫もありポスター性に優れた作品です。豊岡市議会議長賞市立五荘小学校猪師大暉迫力満点の燃えさかる家が、火災の怖さをストレートに伝えています。こうならないように「はなれる前にもう一度！」の文字が、赤の反対色の緑色で描かれていることで緊張感をいっそう高めています。豊岡市消防本部消防長賞市立新田小学校赤松奈旺黄と赤、そこに黒で大きく描かれた「たこあし注意！」が、ひときわ目を引きます。タコが、燃える家とたこ足配線されたタップを抱える表現によって、画面がすっきりとまとまっています。素直でかわいらしい絵柄が印象的な秀作です。豊岡消防署長賞市立港西小学校大坪和泉色使いと炎や家、人の描き方が、あわてた感じを良くあらわしています。ごちゃごちゃしているようですが、「１１９」の文字がちゃんと見えます。一生懸命に取り組んだことが伝わる秀作です。豊岡市危険物安全協会長賞市立清滝小学校北村光希今人気のお笑い芸人のギャグを引用して、住宅用火災警報器が付いていると安心だということ、「安心」は明るい家庭につながることを伝えています。色合いも鮮やかで、見る者を元気にしてくれる秀作です。豊岡市豊岡消防保安協会長賞市立五荘小学校北野夏帆シンプルですが、「なんだろう？」と目を引く作品です。そして文字を読むと、「わが家はどうだろう・・」と考えさせられます。余白の分量がちょうど良く、ポスター性の高い秀作です。城崎防火協会長賞市立城崎小学校船谷諭志綿で表現されたたばこの煙が本物に見えます。「火」の文字や虫めがねを、和紙を使って浮き出させるなど工夫をこらし、配色にも気を配っています。ていねいな製作に感心する秀作です。中学生の部市長賞市立豊岡北中学校田中敏幹炎と燃える家の写実的な表現力が群を抜いています。対して、消防車と肩を寄せ合う人はデザイン的に描かれていますが、その表現力も秀でています。特に、人は線だけの表現ながら悲しさや悔しさが見事に表現され「火災の恐ろしさ」を伝える秀作です。豊岡市議会議長賞市立港中学校佐藤遵奈計算された画面構成が、ポスター性を高めています。特に、小さな炎を少し下よりに配置することで強調できています。独特な手の表現は、冷静な火の取り扱いを感じさせ、ていねいに描かれた文字も、しっかりとメッセージを伝えています。豊岡市消防本部消防長賞市立豊岡南中学校和田愛斗炎の色と黒色の面積バランスが良く、紫色のグラデーションで描かれた「再確認！」が目を引きポスター性を高めています。炎の描き方も「街の空を照らす大火」を的確に表現できています。豊岡消防署長賞市立出石中学校中務そら吹きこぼれる鍋とやかん、特に泡の表現がすばらしく、「確かめて火」というキーワードをしっかりと目立たせています。マス目を切って描かれた文字のレタリングも的確で、隅々までていねいに取り組まれている姿勢に脱帽です。豊岡市危険物安全協会長賞市立日高東中学校川本千聖炎のグラデーションをバックに黒のシルエットで描かれた家と火災原因のコントラストが目を引きます。花火、マッチ、アイロン、たばこ、電気プラグのシルエット表現も的確で、心に残る秀作です。豊岡市豊岡消防保安協会長賞市立豊岡南中学校香川竜佑物陰に追いやられがちな消火器に、スポットライトが当たっています。いざというときに役に立てず悲しむ消火器の思いを、卓越した画面構成と大きな文字でしっかりと伝えています。ドキッとした大人たちも多いのではないでしょうか？城崎防火協会長賞市立竹野中学校藤井芽衣炎の赤と建物の灰色、バックの黒の分量がちょうど良く、炎のアーチが画面に動きを与えています。ブラシ技法によってていねいに散りばめられた火の粉が、作品の完成度を上げています。