information 日本では従来より「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」などによりホルムアルデヒド、ディルドリン、有機水 銀化合物などについて規制・基準が設けられています。 諸外国でも安心・安全についての関心の高まりがあり、法規制により規制対象となっている化学物質があります。 その中の一つがアゾ染料・顔料です。正確には、アゾ染料・顔料中のアゾ基が還元分解されて発がん性のある芳香族ア ミン(「特定芳香族アミン類」)を生成する可能性がある、一部のアゾ染料・顔料が規制対象になっています。 EU 諸国や中国、韓国、台湾では既に法規制されており、アジア諸国にも規制化の動きが出始めています。 《 アゾ染料 とは? 》 化学構造式で【− N = N −】と表記される構造をアゾ基と呼びます。化学記号で「N」は窒素を表し、 「−」 「=」は結合の 本数を表します。アゾ基は窒素「N」が二重結合で結ばれた構造を有しています。 したがいまして、化学構造式に【− N = N −】を有する染料のことを「アゾ染料」と称します。 《 特定芳香族アミンとは? 》 アゾ染料のアゾ基が還元分解されて生成される芳香族アミンの内、検出対象となる発がん性が指摘されている芳香族ア ミンを指します。 一般に「特定芳香族アミン」と称されているのは、裏面に記載の24種類です。 《 アゾ基の還元分解とは? 》 化学的には正確な表現ではありませんが、 還元分解とは水素と結合することによる多重結合(ここではアゾ基の二重結合) の開裂を表します。言葉で表現すると難しく聞こえますので、一例を図で表します。 Congo Red (C.I. Direct Red 28) (CAS No. 573-58-0) 㑏ඖࡼࡿศゎ 特定芳香族アミン Benzidine (CAS No. 92-87-5) この例では、アゾ染料「Congo Red」を還元することにより、2ヶ所のアゾ基の結合が還元分解して特定芳香族アミン 「Bendizine」と別の芳香族アミンが生成されています。 一般財団法人 カケンテストセンター information 特定芳香族アミン一覧表(下記名称は一例であり、別の名称で表現されることがありますので、CAS No.でご確認願います) 項番 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 CAS No. 92-67-1 92-87-5 95-69-2 91-59-8 97-56-3 99-55-8 106-47-8 615-05-4 101-77-9 91-94-1 119-90-4 119-93-7 838-88-0 120-71-8 101-14-4 101-80-4 139-65-1 95-53-4 95-80-7 137-17-7 90-04-0 60-09-3 95-68-1 87-62-7 英語名称 4-aminobiphenyl;biphenyl-4-ylamine benzidine 4-chloro-o-toluidine 2-naphthylamine ο -aminoazotoluene 2-amino-4-nitrotoluene;5-nitro- ο -toluidine p-chloroaniline;4-chloroaniline 2,4-diaminoanisole;4-methoxy-m-phenylenediamine 4,4'-diaminodiphenylmethane 3,3'-dichlorobenzidine 3,3'-dimethoxybenzidine 3,3'-dimethylbenzidine 3,3'-dimethyl-4,4'-diaminobiphenylmethane 4,4'-methylenedi- ο -toluidine p-cresidine;6-methoxy-m-toluidine 4,4'-methylene-bis-(2-chloroaniline) 4,4'-oxydianiline 4,4'-thiodianiline ο -toluidine 2,4-toluylenediamine;4-methyl-m-phenylenediamine 2,4,5-trimethylaniline ο -anisidine 4-aminoazobenzene 2,4-xylidine 2,6-xylidine 日本語名称 4- アミノビフェニル ;ビフェニル -4- イルアミン ベンジジン 4- クロロ - ο -トルイジン 2- ナフチルアミン ο - アミノアゾトルエン 2- アミノ-4- ニトロトルエン ;5- ニトロ - ο -トルイジン p- クロロアニリン ;4- クロロアニリン 2,4- ジアミノアニソール ;4-メトキシ -m-フェニレンジアミン 4,4'- ジアミノジフェニルメタン 3,3'- ジクロロベンジジン 3,3'- ジメトキシベンジジン 3,3'- ジメチルベンジジン 3,3'- ジメチル -4,4'- ジアミノビフェニルメタン 4,4'-メチレンジ - ο -トルイジン p- クレシジン ;6-メトキシ -m-トルイジン 4,4'-メチレン - ビス -(2- クロロアニリン ) 4,4'- オキシジアニリン 4,4'- チオジアニリン ο -トルイジン 2,4-トルイレンジアミン ;4-メチル -m-フェニレンジアミン 2,4,5-トリメチルアニリン ο - アニシジン 4- アミノアゾベンゼン 2,4- キシリジン 2,6- キシリジン 【補足説明】 色素を表す「C.I.」は「カラーインデックス」 といい、 英国染料染色学会(The Society of Dyers and Colourists:SDC) と米国繊維化学技術・ 染色技術協会(The American Association of Textile Chemists and Colorists:AATCC)が共同で管理している、色素・着色剤(染 料と顔料)及び関連化合物について分類したデータベース(6,000 種類以上)に登録されている名称です。 化学物質を表す 「CAS No.」 は 「キャスナンバー」 といい、 化学物質に付けられた固有の識別番号です。CAS(Chemical Abstract Service) は、 米国化学会の一部門で、化学情報の最大にして、最も包括的なデータベースを作成しています。 《 特定芳香族アミンの分析方法は? 》 規制・基準によって試験方法は異なりますが、基本的な原理は同じです。 ISO 24362-1,-3(JIS L1940-1,-3)、EN 14362-1,-3、ISO 17234-1,-3、GB/T 17592、GB/T 23344、 GB/T 19942 等の試験方法があります。 一例として EN 14362-1( 天然繊維、分散染料不使用 ) の手順についてごく簡単に説明します。 【サンプリング】 糸、生地あるいは製品から試料の裁断 ᴾ ẅẅẅḶ 【 還 元 分 解 】 試料をクエン酸緩衝液中、70℃で還元剤(ハイドロサルファイト)処理 ᴾ ẅẅẅḶ 【 ᴾ 精 製 】 水酸化ナトリウム溶液を添加し、遊離したアミンを珪藻土カラムと t-Butyl Methyl Ether を用いて液 - 液抽出 ẅẅẅḶ 【 測 定 】 抽出液を濃縮後、残渣を適当な溶媒に転溶して、ガスクロマトグラフー質量分析計・高速液体クロマトグラフを用いてアミンを定量 カケンでは、特定芳香族アミン類についての分析を実施しております。 試験方法 EN 14362、ISO 24362(JIS L1940)、ISO 17234 納 期 4 ∼ 7 営業日 必要試料 約 10g 試験に関するお問い合わせは、 東京事業所 分析テストラボ (TEL : 048-258-3279) 大阪事業所 分析テストラボ (TEL : 06-6441-6752) 上海科懇検験服務有限公司 SHANGHAI KAKON (TEL : +86-21-6406-1138)まで。 試験のご依頼は、最寄りの事業所・検査所にて受付しております。 一般財団法人 カケンテストセンター 2014.12
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