一升枡には一升しか入らない 不易流行 (経営支援機関の

2015.7.22 (vol.23)
経営発達支援計画の認定条件
http://www.c3c3.jp
e-mail:[email protected]
発行:有限会社 C3
不易流行
(経営支援機関の役割と責務)
TE:077-524-7755
文責:田中義郎
第1回経営発達支援計画の認定商工会・商工会議所が去る7月15日に発表された。
認定された商工会・商工会議所(以下、商工会・会議所)が70件(83単会)に止まった。
全国約 2000 の商工会・会議所の申請率を1/3と見積もると、認定率(申請数に対する
認定数の割合)は、12~13%前後に止まる。認定率は低い方が良いと考えていたの
で、まずまずの結果だったと私は評価している。
第1回の認定商工会・会議所で最も気になるのは、実施期間である。平成27年から
のプランになっていることだ。果たして今年度から実施できる「土台」を整備した上での
申請か、また、申請計画が本年度事業として総会で決議されているか。この二点が曖昧
なままの状態で認定を受けても、その実現は困難を極める。大樹も根(土台)が脆弱であ
れば風が吹けば倒れる。自然の法則には逆らえないからだ。
一升枡には一升しか入らない
昭和56年、商工会法が改正され地域振興事業がスタートしたが、職員数に変化がな
かった。当然の結果として、経営支援比率が大幅にダウンした。最近になって漸く回復
の兆しが見えるようであるが、まだまだ地に着いた動きには至っていない。会議所もほ
とんど同様の状況であることは想像に難くない。(ただし、東京 23 区、政令指定都市の
会議所を除く)
引き続き第2回の申請受付行われるようであるが、大切なことは「如何に認定を受け
るか」ではなく、「如何に認定を受けるに足りる商工会・会議所を実現するか」にある。
認定を受けても茨の道が続く。毎年、国のチェックが入ると思われるからだ。計画通
り進んでいないと当然厳しい見直しを迫られるだろう。
かつて、企業で経営計画作成業務に携わっていた自らの拙い経験から申し上げるなら、
作成より実行が数倍困難であった。実行には多数の協力者が必要である。さまざまな反
対意見や勢力もクリアしなければならない。特に、その実現には、初年度の取り組み如
何で成否が決まる。初年度に最終年度までの道筋をつけられるか否か。さらに、企業と
商工会・会議所とでは、トップマネジメントの構造に大きな違いがある。トップのリー
ダーシップの限界も考慮しておかなければならない。また、単なる「願望計画」では、人
は動かない。画餅に終わる。一升枡には一升しか入らない。これも自然の法則なのだ。
経営発達支援計画申請の時期については前号(vol.22、3月 22 日配信)で述べた。平
成27年度は体制を整え土台を固めることに全精力を傾けるべきだ、と。土台を固めて
から申請する。順序を間違えると取り返しのつかないことにもなりかねない。大きな禍
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「流行」は時の経過とともに「不易」になり、不易は次の流行(流れ)を生み
だす礎になる。両者は対立概念ではなく「表裏一体」の概念である。
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根を残すことになる、とも述べた。
手段と目的を混同してはならない
古い話で恐縮だが、商工会合併がスタートしたとき、合併は目的ではなく手段だと訴
え続けた。しかし、現実は「目的」に終始し、合併による劇的な成果はほとんど見られず、
組織も事業も職員(敬称略)の意識も旧態依然の姿から脱皮できなかった。目先の摩擦を
避け、合併というイベントで終わった。
経営発達支援計画の申請も、認定を受けることが目的になっていないか非常に気がか
りである。如何にすれば認定を受けやすい申請書を作成するか。土台づくりを放置した
ままで申請書作成に関心が集まる。このような事態になれば、たとえ認定を受けられた
としても、新しい道は拓けない。
業務のあり方については、「地方創生と経営支援機関の果たすべき役割」の第3回(不
易流行【番外編】3)で述べた。圧倒的多数の商工会・会議所は「組織力②」の状態にあ
る。総会議案書を見れば一目瞭然である。土台を上回る業務の遂行は短期的に可能でも、
どこかに歪が出る。目先の仕事をこなすのが精一杯で、常に仕事の「量」が優先され、「質」
が後回しになる。この現状にメスを入れないと、経営発達支援計画も掛け声だけで終わ
ってしまうだろう。
(資料 23-1) 組織力のパターン
成 果
組織力①=
成 果
> 1
土 台
組織力②=
≦ 1
土 台
もう1つ気になることがある。
今回の措置により、商工会・会議所の経営支援の実態が明らかになることだ。
商工会・会議所は今日まで、小規模事業者に対する経営支援機関としてインフラ的な
役割を果たしてきたはずである。が、平成24年、中小企業経営力強化支援法の施行で、
経営支援機関として「独占の座」を失った。また、補助金は「小規模企業経営支援事業費
補助金」だ。人件費に対する補助金ではない。今日まで、経営支援能力などに格差が存
在することは認識されていたと思われるが、その実態は不明であり、一律に性善説で交
付されてきたという印象も受ける。
経営発達支援計画は国が認定し評価する。いずれ全国レベルでランクがつけられ、応
分の措置が採られる可能性も残している。
今、最優先すべきことは、経営発達支援計画の認定を受けることではない。「土台」を
固め、認定を受けるに足りる組織を早急に創り上げることに尽きると思うのだが。
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「流行」は時の経過とともに「不易」になり、不易は次の流行(流れ)を生み
だす礎になる。両者は対立概念ではなく「表裏一体」の概念である。