特許訴訟 クライアント・アップデート 連邦巡回控訴

特許訴訟
クライアント・アップデート
2015 年 9 月 29 日
連邦巡回控訴裁判所は、特許事件における差止命令の認可基準を
緩和する
Federal Circuit Loosens Standard for Getting Injunctions in Patent Cases
弁護士
ジョセフ・サルティール
2006 年以来、特許事件で終局的差止命令が認められるためには、特許権者は、1) 差止命令が出されなけれ
ば、回復不能な損害を被ること、2) 損害賠償金などの法的救済が当該損害の救済手段として不十分であること、3)
差止命令の認可または否認が原告と被告各当事者に与える影響を比較し、その不利益の比較衡量(balance of
hardships)が原告が請求した差止命令を支持すること、および 4) 差止命令が公共の利益に影響を及ぼさないこと
を証明しなければならない。回復不能な損害について証明するには、特許権者は、損害と特許侵害との間に事実
的な関連性があることを証明しなければならない。
従来、裁判所は、損害と侵害の直接的な関連性について証明することを義務づけた。たとえば、特許権者は、売
上の喪失が生じた主なまたは唯一の原因は、特許取得済み技術の侵害者が同技術を使用したことであると証明し
なければいけない。しかし、アップル対サムスン事件(Apple v. Samsung, Case No. 2014-1802 (Fed. Cir. 2015))
では、連邦巡回控訴裁判所は、侵害と損害との間の事実的な関連性を認めるために柔軟なアプローチを用いた。
アップルは、数え切れないほど多種の機能を備えたサムソンのスマートフォンがアップルの特許を侵害したと主
張した。連邦巡回控訴裁判所は、それら多種機能のうち、どの機能によって当該製品の需要をかき立てていたの
か判断するのはほぼ不可能であると認識した。したがって、特許権者であるアップルに対して、数千もの機能のうち
のほんの数個にしか相当しない侵害機能が、消費者がサムソンの携帯電話を購入した唯一の理由または大きな理
由であることを証明させようとした地方裁判所の指示は誤りであった。代わりに、アップルは、当該特許機能が、消
費者が侵害されたとされる装置を購入する際の決断において影響を及ぼしたことを証明しなければならなかった。
本事件では、サムソンが問題の機能を模倣して使用したこと、特定のサムソン携帯製品の当該機能が不十分で
あることについて消費者が非難していたこと、および消費者にとって当該特許機能が有益なものであることが証拠
づけられた。連邦巡回控訴裁判所は、それが回復不能な損害を証明するに足る十分な証拠であると判示した。さら
に、他の 3 つの要因も差止命令の認可を支持するものであったため、連邦巡回控訴裁判所は、地方裁判所が終
局的差止命令を認めるべきであったと述べた。
革新者としての特許権者の評判が疑われたり、または、競合相手が特許を侵害する場合には、特許権者の特許
における独占的実施権を侵害しているということを理由として、さらに緩和された回復不能な損害の認定のための
基準を述べる同意意見もあった。このような意見により、特許権者が競合相手に対して請求する差止命令が認めら
れやすくなるであろう。しかし、特許不実施主体(NPE)や非競合相手に対して特許権を主張する会社は、相手方が
主張する特許権に対して請求する差止命令が認められるまでにはやはり困難が伴うであろう。
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