切除不能な肝細胞癌患者のソラフェニブ治療において、初期投与 量が標準量か半分量かによる転帰の比較:傾向スコアマッチング 解析 Comparison of standard‐dose and half‑dose sorafenib therapy on clinical outcome in patients with unresectable hepatocellular carcinoma in field practice: A propensity score matching analysis. Int J Oncol. 2014 ;45:2295‐302. 【はじめに】 本研究の目的は、切除不能な肝細胞癌患者のソラフェニブ治療 において、初期投与量を 400 mg /日(半量)に減量した場合に、 800 mg /日(標準量)と同等の治療効果、安全性、生存期間の延 長が得られるか、多施設の大規模な研究で検証することである。 【方法】 患者選択の偏りを減らすため、傾向スコアマッチング解析を使 用して、標準量群と半量群の臨床転帰を比較した。 2008 年から 2013 年にかけて、日本赤十字肝研究会に所属する 14 病院の肝細胞癌患者、合計 465 名を登録して、ソラフェニブを 投与した。傾向スコアマッチングによって患者を 139 名ずつの 2 群に分けて分析した。両群においてレトロスペクティブに、ソラ フェニブによる全生存期間(OS) 、無増悪生存期間(PFS)、治療 効果、重篤な有害事象を比較した。 【結果】 全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS) 、治療効果に有意差は なかった(OS 中央値:標準量群 9.2 カ月、半量群 9.7 カ月、 P=0.350)、(PFS 中央値:標準量群 3.4 ヶ月、半量群 3.2 カ月、 P=0.729)、(治療効果;奏効率 P=0.416、疾患制御率 P=0.719) 。 グレード 3 以上の重篤な有害事象は、標準量群の 37 例 (26.6%)、半量群の 33 例(23.7%)に観察された(P=0.580)。 Child‐Pugh 分類とバルセロナクリニック肝癌ステージによるサブ グループ解析を施行したが、すべての項目において標準量群と半 量群の間に有意差はなかった。 【結論】 切除不能な肝細胞癌において、ソラフェニブの初期投与量を半 用にしても、標準の初期投与量で治療した場合と同等の予後であ った。 1 【解説】 肝細胞癌患者のソラフェニブ治療において、初期用量と臨床転 帰や安全性の間の関係を比較検討した研究はほとんどない。 日本で行われた肝細胞癌に対するソラフェニブ治療の臨床研究 の結果によると、標準初期用量 800 mg /日で治療を開始した患者 の 80%超が、後に減量を必要とした。 今回の傾向スコアマッチング解析、また傾向サブグループ解析 において、全生存期間、無増悪生存期間、治療効果、重篤な有害 事象の点で、標準量群と半量群の間に有意差は認められなかっ た。 今回の結果は、肝細胞癌においてソラフェニブの初期用量を半 分にすることが、一部の患者の選択肢になり得ることを示唆して いる。 今回の結果は世界規模で行われたソラフェニブの試験結果と異 なるが、人種、年齢、体重、肝疾患の重症度、および背景肝疾患 の特性が異なることが関係した可能性がある。 サブグループ解析において、Child‐Pugh B の OS 中央値は標準量 群よりも半量群の方が良い傾向にあった(標準量群 N = 21、4.2 ヶ 月、半量群 n = 14、5.1 ヶ月、P = 0.058)。またソラフェニブ治療期 間の中央値も、半量群の方が長い傾向にあった(標準量群 1.6 ヶ 月、半量群 3.3 ヶ月) 。 グレード 3 以上の重篤な有害事象は、標準用量 37 例(26.6%)、 半量群 33 例(23.7%)に認められた。 累積全生存率 標用量群(n=139) 半量群(n=139) ソラフェニブ投与開始後の月数 標準量群(n=139)と半量群(n=139)の、傾向スコアマッチング後の累積全生存期間(OS) OS 中央値は、標準量群 9.2 ヶ月(95%CI、7.3~11.0 カ月)、半量群 9.7 カ月(95%CI、7.8~11.7 ヶ月) (P=0.350) 。 2
© Copyright 2024 ExpyDoc