子供たちが学校行事を作り上げた!! ~初の試み International day を通して~ 港区立笄小学校 西尾真記子 はじめに この新しい学校行事 International day! は、教員、児童の力だけでは決して成功し得ません。協力してくだ さった、多くの保護者、近隣大学、各種団体、友人に感謝申し上げます。 <たがやし」の1学期 ~したい!と沸き上がる思い> 初の取り組み、インターナショナルデーを作っていくに あたり、その第一歩として、子供達への「たがやし」が必 要だと考えた。7月17日、パキスタンにで学校を作って いる友人を講師に呼び、現地の子供達の生活について講演 をしていただいた。 「1日1食1個のパンを人数分で分けて 食べる、生計を立てる為に働く、外に出歩くと常に危険と 隣り合わせの生活。そんな生活の中でも、パキスタンの子 供達は、学校へ行けることの喜び、もっと勉強したい!と いう思いを持って生きている。 」 わずか15分の話だったが、 子供達はどんどん話に引き込まれ夢中になっていった。そ の時、体育館の独特の空気感を感じ児童の心が耕されたと 感じた。生の声の重みを感じた。 講演終了後、 「先生、私、パキスタンの子とお友達になり たい。どうしたらいい?」と一人の女子がやって来る。や っぱり子供はすごい!感じた心に素直に行動する力をもっ ている。終業式2日前の講演会だったが、わずか2日間で “英語の絵本、使わなくなった英語のワーク、宝物にして いた人形、お手紙、メッセージカード、アイデア・・・” 等々、様々な思いの詰まった“わたしたちにできること・ したいこと” が集まり、 パキスタンの友達に届けて貰った。 この耕しが、後の活動に大きな役割を担っていく。 <実行委員会立ち上げ> 2学期に入り、インターナショナルデーを作っていきたいメンバーを高学年から募集した。 「今回は、先生が計画して行う進め方をしない。自分たちのアイデアをもとにゼロから作ってみることに興味が あれば、一緒に作ってみないか。 」と呼びかけた。教員が行えばもっと手早く短期間で出来るが、子供中心の企画 に懸けたかった。 「自分たちにも出来た!」という自信をもち、自らの力をプラスの力に変えてほしいという思い があったからだ。当初23名の児童が立候補し、最終的に19名が残った。 <サンタクロース大作戦!発案> 実行委員会メンバーが考えた「やりたい!」活動は、1学期 のたがやしの効果からか、 「学校に行けない子供達への支援活動」 だった。色々な案の中から、インターナショナルデー開催日が 12月21日とクリスマスに近いことから、 「サンタクロース大 作戦!!」に決定した。サンタクロース大作戦とは、笄小のみ んながサンタになり、集めた支援物資を外国の友達にクリスマ スプレゼントとして贈ろう!という取り組みだ。 < 様々な課題を解決しながら・・・ > ここで、課題が挙がった。集まったプレゼントは、どうやって 現地に送るのか?インターネットで調べてみると、輸送費は1 箱なんと5万円。 「じゃあ、輸送費は募金で集めたら?」という メンバーの声から、早速行動が始まった。募金活動である。 また 1 つ課題が出てきた。決まった取り組み「サンタクロース 大作戦」の募金や物資集めを、いつ、誰に、どのように伝える のか?話し合いの結果、情報担当者が「ワールドリンク通信」 を書いて伝えることになった。必要なポイントを落とさずに、 児童、保護者どの相手にも分かるように文章を書く事に苦戦し つつ、見事な通信が出来上がった。 <募金活動・目標金額5万円!> ボランティア委員の児童が、自分の委員会で募金活動を行い たい!と手を挙げた。ボランティア委員の児童が朝校門に立っ て3日間募金活動を行った。3日間で集まった募金額は、目標 の5万を超え思わずガッツポーズ!これまで一番活動に力を入 れて頑張ってきた児童達は、とても嬉しそうだった。 <サンタクロースプレゼント集め> プレゼント回収は、朝の時間を利用 して、実行委員が各教室を回った。予 想以上にたくさんのプレゼントが集ま った。集まったプレゼントは、サンタ クロースの袋に見立ててクラスごとにまとめ、当日、ステージいっぱいに並べられた。プレゼントはネパールの 子供たちに贈られることになった。 <各係の仕事> この頃になると、体育館の装飾担当、掲示担当、活動報告、プレゼント贈呈担当、セレモニー担当など、皆自 分の仕事で大詰めを迎え早朝を準備の時間に充てていた。 <インターナショナルデー当日> ① オープニング・クロージングセレモニー インターナショナルデーで最も大切にしたかったのは、実行委 員手作りのセレモニーだ。手作り感満載のオープニングセレモ ニーが行われた。 「オープニング」係は、早々に進行表を作って練習し、音楽を取り入れるなどの工夫をしていた。 「活動報告」係は、これまでの計画や準備の道のりを、全校児童や先生に伝えた。 「プレゼント」係は面白い演出で体育館を賑わせる贈呈式となっ た。プレゼントはネパールに届けられた。 <19のワークショップを開催> ①「学びたい!」国で学べる環境づくり(教師が準備) 自らの内から湧き上がる“学びたい!”という気持ちほど、学習効果 の高いものはない。そこで、なるべく多くのワークショップを準備計 画し、子供達が学びたい国のワークショップに行って学べる環境づく りを整えた。夏休み中、様々な団体や個人を地道に探して回り、多く の団体や個人、保護者の方に協力していただけることになった。 ②ワークショップ当日 ワークショップ当日は、19ブースどれもオリジナリティ ーに溢れていた。なんと言っても、現地を知っている人たち が語る生の声だからこそ、重みがあり、現実味があった。 <「来年も続けて欲しい!」という思い> 実行委員の6年生から「自分たちが卒業してもこの取り組み を続けて欲しい」という言葉が出てきた。この取り組みが彼ら の自信となっていた。子供の内からわき出た“やりたい!”と いう思いからスタートした活動だからこそ、この活動を大切に したいという思いが溢れてきたのだろう。これこそが、理想と する学びの場だと感じた。子供達同士で意志を継ぎ、子供から 子供へと継承され、主体的活動が継続していくなら、そんな嬉 しい事は無い。 <26年度 に継承> 2014年春、第2回インターナショナルデーの実行委員会を 高学年にもちかけたところ、昨年度の数を超える、43名の立候 補があり、1学期からスタートした。 「ワンコインスクールプロジ ェクトを試したい」 「募金を集めるなら、全校で何を目指すのか目 標を掲げた方がいい」という今年の子供達の「やりたい!」気持 ちから新たなアイデアも生まれ、学年関係なく各々が力を発揮し て自主的に活動を進めている。 更に、今年度は、昨年の支援活動で繋がったネパールをはじめ、講演会で知ったラオス・ベトナムの子供達と フレンドシップ協定を結び、総合の時間を活用して交流活動を継続的に行っていく取り組みへ発展している。 おわりに 今回初のイベントを通し、 「人は誰かの役に立つことで成長する」 という事を子供達の姿から学んだ。小学生のうちから世界に目を向 け、誰かに役立つ活動を自分たちの「やりたい!」気持ちに従って 体験し続けたとしたら、一体どんな大人に成長するのだろう。広い 視野で考える事が極当たり前になり、広い地球の中でどれほどの大 きさにも満たない日本の中の東京という限りなく小さな 空間の中で起こるいざこざがとてもちっぽけに思えてく るのだろうか。 子供達一人一人が自主的な活動を通して、 自信をもち、自分を大切にし、自己肯定感を高め、キラ キラと輝く大人に成長してくれることを想像すると、心 がワクワクしてしまう。 日本中の子供達が世界をもっと身近なものと捉え、日 本人としての誇りをもち続けながら、世界の人々と堂々と 渡り歩くことの出来る、器の大きな人間へと成長してくれ ることを、これからも願い続けている。
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