透析液測定用常用参照標準物質 - 一般社団法人 検査医学標準物質

MRC6-151
透析液測定用常用参照標準物質
JCCRM 300-3
認証書
■適用範囲
本透析液測定用常用参照標準物質 JCCRM 300-3 は、酢酸系の JCCRM 300A-3、クエン酸系の JCCRM 300C-3
(各々2 濃度)より構成される液状品で、透析液の pH、pCO2、HCO3-、Na および K を測定する装置の精確さの校正、また
は、確認ならびに評価に用いる。
■使用方法
本透析液測定用常用参照標準物質は、ガスバリア袋に CO2 ガス(窒素希釈)と共に密封されてあり、袋を開封せずに冷蔵
(2~8℃)で保存する。なお、到着後凍結していた場合は使用できない。また、冷凍保存もできない。使用方法を以下に示
す。
(1) 冷蔵庫から本透析液測定用常用参照標準物質を取り出し、外袋を開け、測定に使用する標準物質をガスバリア袋に入れた
まま約 30 分間常温に静置する。(使用しない標準物質は、ガスバリア袋ごと冷蔵庫で保管する。)
(2) ガスバリア袋からバイアルを取り出し、こぼさないように蓋を開け、速やかにバイアル内の液を、マイクロシリンジ又はピペットを用いて、
液の中層から適量を採取し、装置に注入する。
なお、測定装置のサンプリング様式が吸引方式(キャピラリーなど)の場合は、ピペットなどでバイアル液の上層部を 200 μL 程
度取って捨てたのち、直ちに装置の吸引部(キャピラリーなど)を下層まで差し入れ、液を吸引する。
また、測定装置に透析液モードがある場合はそのモードで測定する。
(3) バイアルの蓋を開けると CO2 ガスが急速に逸散するので、1バイアルからの試料採取は1回のみとする。
■使用上の注意
(1)本透析液測定用常用参照標準物質には、防腐剤が入っていない。 また、γ 線減菌もしていない。
従って、一旦バイアルの蓋を開けて一部を使用すると、残りの液は再使用できない。
また、有効期限は、精確性の確保から短く設定されているので、有効期限の確認を必ず行い、期限切れのものは使用しない。
(2)ガスバリア袋を開封すると、ガスが変化するので、開封の当日内に使用とする。
(3)pH の認証値は、参照電極内部液(液絡部を含む)に飽和 KCl を用いて得られた測定によっている。校正が適用できる装置
は、飽和 KCl を用いたのみとする。飽和 KCl 以外を内部液とする pH 電極の測定値のバイアスを補正することはできない。
(4)白金電極とシリコンゴムを CO2 透過膜に用いる pCO2 電極については、本透析液測定用常用標準物質を用いてバイアスを補
正することができる。
■保存方法及び有効期限
本透析液測定用常用参照標準物質は、ガスバリア袋に入れた状態で冷蔵庫(2~8℃)で保存のこと。
有効期限は出荷日より 7 日である。 *冷蔵庫保管の際、冷気の吹き出し口付近には置かないこと。
■仕様
【品名】
透析液測定用常用参照標準物質 JCCRM 300-3
【測定項目】
測定項目の pH、 pCO2 、 HCO3- 、 Na 、K と種類の組み合わせは、以下のごとくである。
【形態・セット内容】
JCCRM 300A-3M 酢酸系
JCCRM 300A-3H 酢酸系
中濃度: Na、K、pH、pCO2、HCO3高濃度: Na、K
JCCRM 300C-3M クエン酸系
JCCRM 300C-3H クエン酸系
中濃度: Na、K、HCO3高濃度: Na、K
液状品
ガラスバイアル, スクリューキャップ
容量 2 mL 入/本(計 5 本)*ガスバリア袋入り
JCCRM 300A-3M 酢酸系 中濃度 2 本
JCCRM 300A-3H 酢酸系 高濃度 1 本
計 3 本、ガスバリア袋に封入
JCCRM 300C-3M クエン酸系 中濃度 1 本
JCCRM 300C-3H クエン酸系 高濃度 1 本
計 2 本、ガスバリア袋に封入
■認証日
2015 年7月 15 日
■認証機関及び認証責任者
一般社団法人 検査医学標準物質機構
基準分析責任者 梅本雅夫
発行機関の事前の承認なしに、この認証書あるいは一部分のみを複製して用いることは禁じられている。
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■認証値および拡張不確かさ
透析液測定用常用参照標準物質 JCCRM 300-3 の、酢酸系(JCCRM 300A-3)およびクエン酸系(JCCRM 300C-3)
の認証値および拡張不確かさ 1)は次のとおりである。
表1. 酢酸系 JCCRM 300A-3
(測定 37℃)
認証値および拡張不確かさ
種類
pH
pCO2
HCO3
Na
-
K
JCCRM300A-3M(中濃度)
認証値
拡張不確かさ
7.30
0.03
56.0
1.5
JCCRM300A-3H(高濃度)
認証値
拡張不確かさ
単位
―
―
―
―
―
mmHg
28.0
1.5
―
―
mmol/L
140.9
0.9
161.0
0.9
mmol/L
1.99
0.01
4.00
0.02
mmol/L
1)拡張不確かさは ISO の指針(GUM:計測における不確かさの表現ガイド、参考文献 1)に従って、測定の不確かさ、均質性及び保存安定性の
それぞれの標準不確かさを全て合成した総合的な拡張不確かさ(95%信頼水準、包含係数 k=2)として示した。(参考文献 1)
また、pH 値の不確かさにおいては、飽和 KCl 参照電極を用いても機差として 0.02 あることが実験的にわかっているので、それを加味した。
表 2. クエン酸系 JCCRM 300C-3
(測定 37℃)
認証値および拡張不確かさ
種類
HCO3Na
K
JCCRM300C-3M(中濃度)
認証値
拡張不確かさ
32.0
1.5
140.7
0.7
1.98
JCCRM300C-3H(高濃度)
認証値
拡張不確かさ
―
―
160.9
0.8
0.01
3.96
0.02
単位
mmol/L
mmol/L
mmol/L
1)拡張不確かさは ISO の指針(GUM:計測における不確かさの表現ガイド、参考文献 1)に従って、測定の不確かさ、均質性及び保存安定性の
それぞれの標準不確かさを全て合成した総合的な拡張不確かさ(95%信頼水準、包含係数 k=2)として示した。
■製造方法
本透析液測定用常用参照標準物質は、日常診療で用いている一般的な酢酸系透析液およびクエン酸系透析液の成分組
成の理論値(参考文献 7,8)を参考にして調製を行った。標準物質を調製後、均質とした後、2 mL バイアルに一杯となるよう
に分注した。また、調合時に CO2 ガスの逸散が生じるので、その分を補うように最終的に CO2 ガスを微量混入し、酢酸系は pH
7.25、pCO2 65 mmHg、クエン酸系は、pH 7.6、pCO2 32 mmHg をそれぞれ目標として調製した。(製造者:斎藤英夫)
■測定方法
本透析液測定用常用参照標準物質の認証値は、pH、pCO2、HCO3-、Na、K について、検査医学標準物質機構で以下の
方法に基いて測定して決定した。(測定者:斎藤英夫、梅本博仁)
(1) pH
飽和 KCl 溶液を参照電極の内部液とするガラス電極を、NIST の pH 標準物質 SRM 186g (186-Ⅰ-g,186-Ⅱ-g)をそ
れぞれ用いて校正(37℃)し、次に透析液測定用常用参照標準物質の pH を測定した(参考文献 2)。
(2) pCO2
二酸化炭素標準ガス(窒素希釈)1 級 4.033 %および、 8.569 %(JCSS 証明書付)を用いて標準トノメトリー法(参
考文献 3)を行い、血液ガス分析装置の CO2 を校正した。 次に、透析液測定用常用参照標準物質の pCO2 を測定した。
(3) HCO3JCCRM 300A-3M(酢酸系中濃度)は、Hendersen-Hasselbalch の式(参考文献 4)により算出した値と、ホスホエノー
ルピルビン酸カルボキシラーゼ-りんご酸デヒドロゲナーゼ酵素法(参考文献 5)による HCO3-測定法の値との差が、±1 mM
以下の場合、両者の平均値を認証値とした。JCCRM 300C-3M(クエン酸系中濃度)は、ホスホエノールピルビン酸カルボキ
シラーゼ-りんご酸デヒドロゲナーゼ酵素法による測定値を認証値とした。
(4) Na, K
フレーム光度法(参考文献 6)を用いて測定した。 校正には、Na は NIST SRM 919b、K は NIST SRM 918b から調製
した標準液をそれぞれ用いた。
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参 考
表 成分濃度の仕込み濃度
酢酸系 300A-3
クエン酸系 300C-3
項目
単位
中濃度(M)
高濃度(H)
中濃度(M)
高濃度(H)
Na
mEq/L (mmol/L)
141.2
161.2
140.8
160.8
K
mEq/L (mmol/L)
2.0
4.0
2.0
4.0
Cl
mEq/L (mmol/L)
110
132
111
133
pH
(37℃)
7.30
7.30
7.60
7.60
pCO2
mmHg (kPa)
65 (8.67)
65 (8.67)
32 (4.27)
32 (4.27)
HCO3-
mEq/L (mmol/L)
30
30
35
35
GLU
mg/dL (mmol/L)
総 Ca
100 (5.55)
100 (5.55)
150 (8.325)
150 (8.325)
mg/dL (mEq/L)
6.0 (3.0)
6.0 (3.0)
6.0 (3.0)
6.0 (3.0)
(mmol/L)
(1.5)
(1.5)
(1.5)
(1.5)
mg/dL (mEq/L)
1.2 (1.0)
1.2 (1.0)
1.2 (1.0)
1.2 (1.0)
(mmol/L)
(0.5)
(0.5)
(0.5)
(0.5)
酢酸
mEq/L (mmol/L)
8.0
8.0
―
―
クエン酸
mEq/L (mmol/L)
-
-
2.0 (0.67)
2.0 (0.67)
総 Mg
■認証委員会
本透析液測定用常用参照標準物質の測定結果の解析及び認証値の決定は、認証委員会(桑 克彦 国立研究開発法人
産業技術総合研究所、清水 康 特定医療法人五仁会 元町 HD クリニック、梅本雅夫 一般社団法人 検査医学標準物質機
構)を組織して行った。
■参考文献
1) Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement, ISBN 92-67-10188-9, 1st Ed, ISO, Geneva, Switzerland (corrected
and reprinted, 1995
2) Approved IFCC methods. Reference method (1986) for pH measurement in blood. Clin Chim Acta 165:97-109(1987)
3) IFCC Method (1988) for tonometry of blood : Reference materials for PCO2 and PO2. J Clin Chem Clin Biochem
27:403-408(1989)
4) Ole Siggaard-Andersen:The acid-base status of the blood, Munksgaard, Copenhage, 1976.
5) Forrester RL, Wataji LJ, Silverman DA, Pierre KJ: Enzymatic method for determination of CO2 in serum. Clin Chem 22:243-245,
1976.
6)日本臨床化学会血液ガス・電解質専門委員会.イオン電極法による血液中ナトリウム、カリウム、塩素濃度測定の勧告法-標準血清
による正確さの校正方法:臨床化学、22: 279-290(1993)
7) 医薬品情報:人工腎臓用透析液 キンダリー透析剤 2E、同 3E、同 4E
8) 医薬品情報:人工腎臓用透析液 カーボスター透析剤・P
(本標準物質の認証機関及び、製造元)
一般社団法人
検査医学標準物質機構 (ReCCS)
http://www.reccs.or.jp/
〒213-0012
神奈川県川崎市高津区坂戸 3-2-1
かながわサイエンスパーク R&D A205
(注文・一般)TEL 045-530-9107 FAX 045-530-9036
(技術内容) TEL 044-850-3140 FAX 044-850-3141
一般社団法人
検査医学標準物質機構(ReCCS)
本機構は標準物質認証機関 ISO Guide34、臨床検査基準測定施設
ISO 15195 及び ISO/IEC 17025 として認定されています。
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