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GGI-TCG ニュースレター (2015年5月)
フィリピンの政治経済動向と会社機関の構成について
今回は、フィリピンについて、GGI東京コンサルティンググループ・フィリピンと連携し、政治経済動向と会社
機関の構成について弁護士による解説を行います。
1.フィリピンの政治経済動向
汚職の撲滅を掲げクリーンな政治で知られるアキノ大統領(ベニグノ・アキノ3世)の任期満了(2016年6月)が
迫って参りました。今回はアキノ大統領退任後の影響について解説いたします。
1. 近年の政治動向
アキノ大統領は、2010年大統領選挙に勝利し、6月30日に大統領に就任しました。アキノ大統領の母コラソ
ン・アキノ元大統領の人気や前政権の汚職・腐敗体質を批判し、約70%という高い支持率を獲得していました。
中間選挙においても、高い支持率により与党が勝利しました。
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しかし、2013年の後半以降、アキノ大統領にとって以下のような逆風が吹きます。
・2013年9月 モロ民族解放戦線(MNLF)によるサンボアンガ市への侵攻
フィリピン国軍と警察との交戦において、死傷者を出し、避難民が発生しました。
・同年10月 中部ボホール州における大規模な地震
・同年11月 フィリピン中部を直撃した台風30号
レイテ島北部やサマール島南部を中心に高潮と暴風による甚大な被害をもたらしました。
・2014年 開発支援基金の不正流用による上院議員の逮捕
・同年7月 予算編成の違憲判決
行政枠を超えた予算を認めるプログラムに基づいた措置の一部に対し、最高裁は違憲判決を下しました。
以上のような事態から、アキノ大統領の支持率が2014年7月には53%に低下しましたが、国内外での評判は
非常に良いというのが現地の実感です。
2.次期大統領選挙と国内総生産(GDP)との関係
フィリピンでは法律で大統領の再選を禁じているため、2016年6月の大統領選において、次期6年間の大統
領が選任されます。フィリピンでは大統領選挙期間における経済活動の活発化により、GDPが成長する傾向が
あります。
一方で事業活動や投資家は、大統領選挙に付随する経済政策を吟味し、投資活動や事業拡大計画を一時
留保する傾向があるため、選挙はフィリピン国内外からの投資に大きな影響を与えます。
公正な選挙により選任された新大統領が国民に受け入れられ民主主義がより強固になれば、経済の安定も
より確実なものになると考えられます。
3.次期大統領候補者
最近の調査では、大統領選において以下4名より次期大統領が選任される可能性が高いとされています。
・Jejomar Binay氏
・Grace Poe氏
・Mar Roxas氏
・Rodrigo Duterte氏
大統領選挙までのフィリピン経済について、投資が一時期停滞する可能性はありますが、ご存じの通りOFW
(海外出稼ぎ労働者)の送金に支えられた旺盛な内需によりGDPでは堅実な成長を遂げると予想されます。
いずれの立候補者が次期大統領に就任されるにせよ、外国投資に対する今後の政策や既存の企業への税
制優遇政策には日系企業の注目が集まるところです。
2.フィリピン会社機関の構成―日本の株式会社との差異
今回は、フィリピンにおける株式会社の機関について日本企業の実務も交えて解説いたします。
日本企業が、フィリピンで法人を設立する際には原則として上場を目指す場合を除き非公開株式会社を設立
する例が多くを占めます。ただし、株式会社といっても日本法上の株式会社の機関設計とは下記のような違い
があるため留意が必要です。
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1. 会社機関の概要
フィリピン株式会社においては、機関として、株主総会、取締役(会)、社長、財務役、秘書役の設置が義務
付けられるほか、任意で経営委員会を設置することができます。
フィリピン会社法では、取締役が最低5名必要とされています。また、取締役は株主でもなければならないと
定められているため、必然的に最低5名の株主が必要となります。
日系企業は、人員の確保のため現地コンサルティング会社に取締役や税務役、会社秘書役の名義を借りる
というのが一般的になっています。
2. 取締役(会)、経営委員会
フィリピンでは、取締役会の設置が義務付けられており、取締役会で取締役の中から会社の代表権を有する
社長が選任されることになります。
取締役は、最低5名以上15名までの間で選任しなければならない他、過半数はフィリピン居住者でなければ
なりません。従って、最低3名はフィリピン居住の取締役を確保する必要があります。
取締役を解任するためには、株主総会の特別決議が必要となります。
取締役の報酬について、日本の会社法上制限はありませんが、フィリピンでは会社の前年度税引前利益の
10%が限度とされています。
経営委員会は、3名以上の取締役から構成される任意の設置機関です。日本法でいうところの特別取締役
に類似した制度です。
経営委員会に対して、取締役会の管轄事項のうち一定のものの決議権限を委譲することが可能で、取締役
の数が多い会社における迅速な意思決定が可能となります。
3. 財務役、秘書役
財務役は、会計面などについて責任を負う会社役員です。秘書役は、取締役の解任を目的とする会社の臨
時株主総会の招集、株主総会の委任状の管理等の職務を行う役員です。それぞれ、最低1名選任する必要
がありますが、秘書役についてはフィリピン国籍保持者で、かつフィリピン居住者でなければなりません。
なお、外資比率が40%以下の会社の場合、財務役と社長はフィリピン人でなければならないという運用がさ
れているため注意が必要です。
これらの役員は、そもそも取締役を5名確保することが困難なこともあり、取締役と兼任させる例が多くみら
れます。
―専門家との協業の重要性
以上のように、フィリピンにおいては最低3名の居住者役員の確保等、会社の機関設計上留意すべき点が
少なからずみられます。進出時の機関設計や役員選解任時の人材の確保のためにも、日ごろから専門家と
の協業を心掛けておくことをお勧めします。
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