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GGI-TCG ニュースレター (2015年9月)
マレーシア現地最新情報及び事業遂行に関連する法規制の概略について
今回は、VISTAとして注目を浴びるマレーシアについて、GGI東京コンサルティンググループ・マレーシアと連
携し、現地最新情報と会社法の概要について弁護士による解説を行います。
1.マレーシアリンギ安が与えるマレーシア経済への影響とGSTについて
(1) マレーシアリンギ安の今後の展望
マレーシアでは、今年大幅なリンギ安が進行しており、17年ぶりの安値水準を更新しています。
Tokyo Consulting Group
今回のリンギ安がここまで進行している原因は主に3つです。
① 原油安に連動したパーム油安
② 現首相の政治献金問題
③ 元の切り下げ
これらが重なり、外国の投資家からリンギが売られ、リンギ安が進行しています。また、現時点でマレーシア
政府は悲観的な立場を公表してはいませんが、マレーシア政府には豊富な外貨準備高があるわけでもなく、
為替介入できる時間と金額にも限界があります。最悪のシナリオは、マレーシアリンギが暴落してしまうことで
す。ある米国調査会社が行った、購買意欲に関して今年4,6月を対象に行われた調査では、若干ではあります
が、経済の先行きに不安を感じ、消費自体が落ちているという結果が出ています。
国内景気減退の空気が出てきており、それにさらなる追い打ちをかけようとしているマレーシアリンギ安。
ASEANの中でも、シンガポールに次ぐ先進国入りを達成可能な水準にまで近づいているマレーシア。ここでの
かじ取り次第では、大きなうねりがこの国に起こる可能性が高いと見ています。どのようなかじ取りを政府が
とっていくのか。動向に注目しておいたほうが良いでしょう。
2. GSTについて
マレーシアでは、今年度から、物品税及びサービス税を廃止して、GSTを導入しました。ここでは、主な登録
要件、登録基準及び支払い頻度についてお伝えします。
<登録要件>
年間売り上げが500,000RM(約1,600万円 1RM=32円として計算)以上の会社全てが登録を義務付けられてい
ます。
<登録基準>
初めて立ち上げられた方や売り上げが上記の要件にいずれ達する見込みのある方は、いつどのタイミング
で登録する必要があるのかを見極めるのは重要なことであるかと思います。
マレーシアでは、主に2つの基準のどちらかを採用して、考えていきます。
① 未来志向型
現時点から将来における一年間の売り上げ見込みが要件に達するかどうかを見極める。
※マレーシアでは、月額法人税見込み制度が取られているため、このような概念が存在していると推測
します。実務では、そこまで重要となる考えではないですが、毎年会計年度が始まる1ヶ月前にこの見積
もりに関する資料や納付額を内国歳入庁に提出しますので、そこで要件を越した売り上げで出す場合は、
登録済かどうかの問い合わせが入るかと思います。
② 過去志向型
現時点でから一年間遡って年間売り上げが要件に達しているかどうかを見極める。
※こちらは、実務で一番しっくりくる考え方だと思います、一年間遡って、年間売り上げが要件に達したか
どうかを見極めます。仮に、当月に超えていると判明した場合は、その翌月末までに登録を完了させなけ
ればなりません。それ以降は、登録延滞ということでペナルティーが科せられます。
<支払頻度>
年間売り上げが5,000,000RM(約1億6,000万円 1RM=32円として計算)以上の企業は、毎月の申告・納税が必
要です。それ以外の企業は、四半期ごとでの申告・納税が必要となります。
2.マレーシアにおける外資規制と会社機関の概略
今回は、マレーシアに対する独資での現地法人設立、M&A等による進出を想定し、外資規制と会社機関の
概略とについて解説致します。
Tokyo Consulting Group
(1) 外資規制の現状
マレーシアでは、1971年ころより、マレー人をはじめとした現地民の経済的地位の向上により、中華系を主と
する移民との経済格差の是正を目的とするブミプトラ政策がとられてきました。
同政策では、企業の資本構成において、現地民のことを指すブミプトラによる資本比率を30%にすることなど
が定められていました。
このようなブミプトラ政策に基づく規制も、ここ数年で撤廃が続いており、金融業、製造業を含むほとんどの業
種で100%外資による出資が認められるようになっています。
ただし、エネルギー産業、防衛等の国家権益に関わる業種については30%までの出資比率規制が課されて
います。
また、2010年5月に「流通取引・サービスへの外国資本参入に関するガイドライン」が発行されており、販売フ
ロア面積が3,000平方メートル未満のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、薬局などの流通取引、サービ
ス業等については、自国産業保護の観点から外資参入が禁止されています。
このような業種の規制が撤廃されなかった背景には、選挙におけるブミプトラからの支持を取り付けるため
の政権の思惑もあるとされており、今後も容易には撤廃されない可能性があります。
上記のとおり依然として規制が残っている産業については、フランチャイズ形態などによる進出を検討するこ
とになります。2015年5月にも外食大手が現地との合弁会社を設立の上、フランチャイジーとして進出を果たし
ています。
(2) 会社機関の概要
マレーシアで事業運営を行う際に一般的に選ばれる株式有限責任会社(Sdn Bhdと呼ばれる)の必要的設置
機関(株主総会、取締役会、会計監査役、会社秘書役)について、特徴的な点を解説します。
まず、株主総会について、構成員となる株主は、自然人の場合であれば2名、法人の場合であれば最低1名
必要となります。総会決議は一定の資格を有する者からの要求がない限りは,投票ではなく株主1人につき1
議決権が認められる挙手制となるため特に注意が必要です。
取締役については、現地居住要件を満たす取締役を最低2名設置する必要があります。多くの日系企業も
定款でマネージング・ディレクターを設置しています。もっとも、あくまでも任意で設置される機関であり、その役
割は会社ごとに異なります。
会社秘書役は、英米法系の国に見られる日本法上には存しない会社機関で、日本でいう行政書士のような
業務を行っています。会社秘書役は最低1名を置く必要があり、株主名簿をはじめとした書類の管理や、会議
体の運営管理、定款変更手続を行います。居住要件が課されており、コンサルティング会社等から有資格者
を紹介してもらうケースが多くみられます。
全ての会社に外部会計監査人の監査を受ける義務が課されており、最低1名の資格を有する会計監査人を
置く必要があります。
―専門家との協業の重要性
マレーシアでは、イスラム教の影響から礼拝時間やラマダン期間への配慮も必要となり、法規制のみならず、
文化面での配慮も重要となります。
Tokyo Consulting Group
常に最新の法制度への対応を意識し、日ごろから専門家との協業を心掛けておくことをお勧めします。
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