第62回北海道経済懇談会

33/2015年 新体裁/No.235/本文 下版後PDFを斉藤さんへ/02∼29 経済懇談会
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経済懇談会
(一社)日本経済団体連合会・北海道経済連合会共催
第62回北海道経済懇談会
∼北海道の創生と日本再興の実現∼
平成2
6年1
0月8日!、当会は一般社団法人
日本経済団体連合会(経団連)との共催で、
第6
2回北海道経済懇談会を開催しました。
この経済懇談会は毎年行っているもので、
改革や財政健全化への取り組みなど、経団連
6
2回目の今回は、「北海道の創生と日本再興
から多方面に亘る活動報告が行われました。
第6
2回北海道経済懇談会
出席者(道経連は会長、副会長、常任理事のみ掲載。敬称略)
【
(一社)日本経済団体連合会】
会
長 榊原 定征 東レ㈱ 会長
審議員会
岩沙 弘道 三井不動産㈱ 会長
議
長
副 会 長 小島 順彦 三菱商事㈱ 会長
畔柳 信雄 ㈱三菱東京UFJ銀行 特別顧問
勝俣 宣夫 丸紅㈱ 相談役
大塚 陸毅 東日本旅客鉄道㈱ 相談役
斎藤 勝利 第一生命保険㈱ 会長
奥
正之 ㈱三井住友フィナンシャルグループ 会長
宮原 耕治
荻田
伍
石原 邦夫
篠田 和久
内山田竹志
中西 宏明
木村
康
古賀 信行
事務総長 久保田政一
常務理事 根本 勝則
2
の実現」を基本テーマに、第一部では、規制
日本郵船㈱ 会長
アサヒグループホールディングス㈱ 相談役
東京海上日動火災保険㈱ 相談役
王子ホールディングス㈱ 会長
トヨタ自動車㈱ 会長
㈱日立製作所 会長
JXホールディングス㈱ 会長
野村證券㈱ 会長
【北海道経済連合会】
会
長 大内
全 (一財)
北海道電気保安協会 理事長
副 会 長 小砂 憲一 ㈱アミノアップ化学 代表取締役会長
岩田 圭剛
増田 正二
!島 英也
古田 和吉
田中 義克
石井 純二
堰八 義博
山本 邦彦
小川 澄男
常任理事 平野 良弘
伊藤
聡
進藤富三雄
浅原 健藏
福村 景範
石森
亮
似鳥 昭雄
柴田
関根
青山
萩原
大槻
平尾
田島
菱田
尚
久修
陽一
一利
博
一彌
実生
州男
岩田地崎建設㈱ 代表取締役社長
帯広信用金庫 理事長
サッポロビール㈱ 常務執行役員北海道本社代表
㈱JTB北海道 代表取締役社長
トヨタ自動車北海道㈱ 取締役社長
㈱北洋銀行 取締役頭取
㈱北海道銀行 代表取締役頭取
北海道空港㈱ 取締役副会長
雪印メグミルク㈱ 取締役常務執行役員北海道本部長
伊藤組土建㈱ 代表取締役会長
㈱エコニクス 取締役会長
王子製紙㈱ 執行役員苫小牧工場長
㈱北一硝子 代表取締役社長
㈱ダイナックス 代表取締役社長
苫小牧港開発㈱ 代表取締役社長
㈱ニトリホールディングス 代表取締役社長
㈱日本製鋼所 執行役員室蘭製作所長
㈱日本政策投資銀行 北海道支店長
日本通運㈱ 執行役員北海道ブロック地域総括札幌支店長
萩原建設工業㈱ 代表取締役社長
北海道ガス㈱ 代表取締役社長
北海道中央バス㈱ 代表取締役会長
三井物産㈱ 北海道支社長
三菱商事㈱ 理事北海道支社長
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第2部では、ものづくり産業の振興・観光
業をはじめとする人手不足の問題などを考え
振興の推進・エネルギーの安定供給の確保・
ますと、先行きの経済には、不透明感がある
食クラスター活動や食の輸出促進に向けた取
ものと考えます。
り組みなど、幅広いテーマで意見交換を行い
一方、中長期的には、1
0年前に2
1兆円弱
あった道内総生産が、今では1
8兆円台まで落
ました。
ち込み、域際収支は1.
6兆円の赤字です。更
両団体首脳挨拶
内
全
会長
((一財)北海道電気保安協
会
し、昨年、一年間の減少数は3万人と、都道
府県別で最多となっています。
北海道経済連合会
大
に、人口問題では、北海道は1
6年連続で減少
理事長)
このような厳しい環境の中、当会では、道
民が自ら雇用や所得、そして税収を生み出す
自立的な経済の構築が必要と考え、北海道に
優位性、可能性のある「食」と「観光」を軸
に「食の総合産業化」を進めると共に、「も
北海道経済連合会会長の大内でございます。
のづくり産業」の振興を通じて、地域の活性
第6
2回北海道経済懇談会の開会にあたり、
化を図っていきたいと考えています。
一言、ご挨拶申し上げます。
具体的には、拡大する東アジアの食市場の
榊原会長をはじめとする経団連幹部の皆様
獲得を目指すとともに、現在、国の支援を得
には、ご多用の中、北海道までお越しいただ
て北大構内で建設中の「フード&メディカル
き、厚くお礼申し上げます。また、道経連会
イノベーション国際拠点」や、苫東地域で進
員の皆様には、このように多数、ご出席を賜
められている、イチゴを栽培する「次世代型
り、感謝申し上げます。
施設園芸拠点」の形成を着実に推進してまい
本日は、「北海道の創生と日本再興の実
ります。
現」という基本テーマに沿って、経団連の皆
オール北海道体制で取り組む食クラスター
さまから、有為なご提言・ご所見をいただけ
活動では、大手食品メーカーや生産者・飲食
るものと期待いたしております。
店などの協力を得ながら、新たな商流構築を
さて、我が国の経済は、安倍政権が進める
目指すほか、道産小麦の普及拡大に向け、パ
経済政策により、デフレが解消に向かいつつ
ンの商品開発や麺の新たなメニュー提案など
あり、「景気は緩やかな回復基調が続いてい
を通じて道内外へ取り組みを展開しています。
るもの」と認識しています。そのような中、
観光では、社会資本の充実による振興を推
北海道は観光が好調で、昨年度、1
1
5万人と
進しています。国は日本再興戦略の中で
過去最高となる外国人が訪れましたが、今年
「2
0
3
0年に訪日外国人旅行者数3千万人」の
に入ってもアジアを中心に好調さを維持して
目標を掲げており、北海道はその1割の3百
いるほか、公共工事も高水準で推移するなど
万人を目指す考えで、「おもてなしの心」を
「緩やかに回復している状況」です。
一層、磨き上げていくことが大切となります。
しかし、消費増税前の駆け込み需要の反動
このため、新千歳をはじめとする道内空
減の収束が長引いていること、さらに、建設
港・港湾でのスムーズな入国審査や、寒冷積
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経済懇談会
雪で広大が故に、高速道路網の整備も重要と
なります。
高速道路は、人流に留まらず、物流でも配
送時間の短縮による鮮度保持など、食の高付
(一社)日本経済団体連合会
榊
原
(東レ㈱
定
征
会長
会長)
加価値化を図る上から重要となりますが、札
幌と中核都市の函館・釧路・北見が未だ、結
ばれていません。
経団連会長の榊原でございます。
北海道新幹線は、来年度末、新函館北斗ま
本日は、大内会長をはじめ、北海道経済連
で開業する予定ですが、札幌まで延伸されて
合会の皆様には、ご多忙の中ご出席をいただ
十分な効果が生み出されるものと思われます。
き誠にありがとうございます。
これら社会資本の整備につきましては、国
土強靭化の観点も含め、早期の実現を、国に
働きかけてまいります。
北海道経済懇談会の開催にあたり、一言ご
挨拶申し上げます。
まず始めに、本年1
2月に、道経連が創立4
0
ものづくり産業の振興では、昨年度、製造
周年を迎えられることを心よりお慶び申し上
業に携わる経営者と意見交換を重ね、ものづ
げます。1
9
7
4年の設立以来、自主独立の、い
くりへの魅力と関心を高めていく活動と、企
わば「開拓者魂」を発揮され、地元の農林水
業誘致を柱とする要望を取りまとめ、本年3
産業、行政や大学など、様々な関係者とも密
月、北海道知事に要望いたしましたが、この
接に連携しながら、北海道経済の発展に深く
実現に向け、引き続き、取り組んでまいりま
貢献してこられたことに対して、心より敬意
す。
を表する次第です。
最後に、エネルギー問題です。北海道では、
さて、ご案内の通り、日本経済は、安倍政
冬場に電力需要のピークを迎えますが、泊発
権の一連の政策により、デフレからの脱却と
電所は、未だに運転再開の目途が立っており
経済の好循環が始動しつつあります。ただ、
ません。また、電気料金の再値上げも予定さ
直近の状況を見ますと、夏場の異常気象によ
れ、道内経済への影響を心配しております。
る天候不順もあり、個人消費の落ち込みをは
このため、国には泊発電所の新規制基準へ
じめ、景気指標には変調も見られます。過度
の適合性審査を加速いただき、一日も早い再
に悲観的になる必要はないと思いますが、先
稼働を願っているところです。
行きに注意が必要な状況にあると考えており
私ども道経連では、引続き、北海道経済の
ます。
自立・発展に向け、努力してまいる所存でご
こうした現状を乗り越え、経済の持続的成
ざいます。経団連の皆様方には、今後ともご
長を実現し、日本の再興を果たすためには、
支援のほど宜しくお願い申し上げます。
経済団体が連携して、政府とも協力しながら、
終わりになりますが、本日の懇談会が実り
あるものとなりますよう、祈念いたしまして、
私のご挨拶とさせていただきます。
本日は、宜しくお願いいたします。
重要政策課題に全力を挙げて取り組む必要が
あると考えております。
まず注力すべきは、地域経済の活性化です。
地域経済の活性化を通じて、経済の好循環を
全国に拡大させていくことが不可欠であると
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考えております。そのためには、特色ある地
めには、北海道の経済界の皆様との連携が欠
域資源を活かし、地域の基幹産業を成長産業
かせないと考えております。本日は限られた
へと磨き上げることが重要であり、この点、
時間ではございますが、地域経済の活性化策、
道経連が取り組む「食の総合産業化」などは、
並びに、エネルギー問題などにつきまして、
地域産業のモデルとして高く評価されるべき
ご当地の皆様のお考えをお伺いするとともに、
ものと受け止めております。経団連としまし
率直な意見交換をさせていただければ幸いで
ても、こうした活動を後押しする施策を求め
す。本日は、よろしくお願い申し上げます。
てまいります。
同時に、成長の牽引役を担う企業が、グ
ローバル競争の中で果敢に事業を行うための
環境整備も重要となります。
まず、規制・制度改革を大胆に進める必要
があります。規制・制度改革は、民間の創意
工夫の発揮を通じたイノベーションを推進す
るとともに、高コスト構造を是正し、自由で
円滑な事業環境を整備する上で極めて重要で
第1部
活動報告
■規制改革の推進
(一社)日本経済団体連合会
小
島
順
(三菱商事㈱
彦
副会長
会長)
す。
さらに、国際的なイコール・フッティング
を実現する観点から、法人実効税率の引き下
経団連では、民間の創意工夫の発揮による
げも欠かせません。経団連では、まず来年度
イノベーションを推進し、わが国の競争力強
に、実質的な税負担軽減を含むかたちで、法
化を実現していくうえで、規制改革を必要不
人実効税率を2%以上引き下げ、3年を目途
可欠な政策と捉えています。こうした理念の
に2
0%台とし、将来的にはOECD諸国平均、
下、毎年度、経団連全会員にアンケートを実
アジア近隣諸国並みの2
5%へと引き下げるべ
施し、1
5
0から2
0
0程度の具体的な規制改革要
きと考えております。
望を取りまとめ、政府に働きかけを行ってお
また、エネルギーの安定供給と経済性の確
ります。
保も重要な課題です。震災後、原子力発電所
昨年度は、経団連として2
0
2の要望を取り
の停止などにより、産業用の電気料金が約3
まとめ、関係大臣に建議したほか、政府の規
割上昇し、中小企業を含めて多くの企業が苦
制改革会議の各ワーキング・グループにおい
しんでおります。ご当地にも泊発電所がござ
て要望内容の説明を行うなどの取り組みを進
いますが、安全性の確保を大前提に、原発を
めてまいりました。
早期に再稼働させることは、まさに喫緊の課
その結果、全要望の3割程について進展が
題であり、引き続き、政府はじめ関係各方面
見られ、本年6月末に政府が閣議決定した
に働きかけてまいりたいと考えております。
「規制改革実施計画」および
「
『日本再興戦
経団連といたしましては、只今申し上げた
略』改訂2
0
1
4」において、改革に向けた具体
課題を含め、経済再生に向けた諸課題への取
的措置や実施時期が明記されるに至っていま
り組みに全力を傾注してまいります。そのた
す。
5
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分野別に見ますと、観光、農業・食品、環
長の実現に貢献してまいりたいと存じます。
境・エネルギー、金融・保険・証券、雇用・
政府への働きかけの過程では、皆様方に現
労働、外国人材分野で成果が上がっておりま
場でのご苦労やお知恵を伺うこともあろうか
す。
と存じます。引き続きのご協力をよろしくお
例えば、観光につきまして、北海道をはじ
願い申しあげます。
め、わが国の港湾への大型クルーズ船の入港
による経済効果や地域活性化に大きな期待が
寄せられていることと存じます。しかしなが
ら、入港時の入国審査に時間がかかり、外国
人の観光に支障が生じていることから、審査
手続きの見直しを求めましたところ、政府か
ら「クルーズ船寄港誘致競争の優位化を実現
■税制改正に向けて
(一社)日本経済団体連合会
宮
原
耕
(日本郵船㈱
治
副会長
会長)
する観点から検討し、今年度中に結論を得て、
措置を講ずる」という回答を得られました。
安倍政権が規制改革を成長戦略の一丁目一
消費税については、経済状況等を勘案し、
番地と位置付けて、岩盤規制の多い分野にも
2
0
1
5年1
0月における税率1
0%への着実な引き
精力的に取り組んだことによるものと考えら
上げ、及び単一税率の維持を求めております。
れます。
なお、低所得者対策としては当面の間、簡素
本年度につきましては、7月より、1
2
4の
な給付措置を実施すべきと考えております。
企業・団体から寄せられました要望を関係委
次に、「平成2
7年度税制改正に関する提
員会の協力を得て精査しているところであり、
言」ですが、法人実効税率に関しては、6月
今月1
4日にも取りまとめ、政府・与党に建議
に閣議決定されたいわゆる骨太の方針を踏ま
いたしますとともに、政府の規制改革ホット
え、2
0
1
5年度に2%以上引き下げ、3年を目
ラインに提出する予定です。
途に2
0%台とし、将来的には、OECD諸国平
なお、政府の規制改革会議においては、先
均、また競合するアジア諸国並みの2
5%へと
月より第3期の活動を開始し、
「健康・医療」
、
引き下げ、利益を生み出す企業に対する実質
「雇用」
、「農業」、「投資促進等」
、「地域活性
的な税負担軽減を着実に実行することを求め
化」の5つのワーキング・グループを設置し
ております。
て検討を本格化させ、来年6月にも新しい規
他方、法人実効税率引き下げの代替財源候
制改革実施計画を取りまとめる予定としてお
補とされている各項目ですが、単なる帳尻合
ります。特に今期は、多様な働き方と地域活
わせの議論にならないよう、この改革によっ
性化に重点を置くとともに、例えば、雇用・
てわが国企業の国際競争力、日本の立地競争
労働分野など、重要項目の改革の進捗をフォ
力が高められ、わが国経済が着実に成長に向
ローアップしていく方針です。
かうという構図をしっかり描く必要がありま
経団連としては、これらの政府の検討に一
6
す。
つでも多くの経団連要望が取りあげられ、実
例えば、地方法人課税の改革では、税源偏
現するよう働きかけ、民間主導による経済成
在、東京一極集中を是正し、地方創生を具体
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化していくには、地方法人所得課税を国税の
経団連としては、この提言に基づき、年末
法人税に統合し、交付税等で適切に配分する
の税制改正に向け政府・与党への働きかけを
とともに、段階的に税率を引き下げるべきと
行っているところです。
考えております。最近様々な報道がなされて
いる外形標準課税については、賃金がその課
税標準の相当部分を占めていることから、単
なる拡大を行うと、雇用の維持・創出、所得
拡大の方向に逆行するため、安易な拡大はす
べきではありません。
租税特別措置では、例えば、資源エネル
ギーの確保や、海運、災害復興・防災など、
■財政健全化への取り組み
(一社)日本経済団体連合会
石
原
邦
夫
副会長
(東京海上日動火災保険㈱
相談役)
わが国の将来を支えるために必要なもの、国
際的イコールフッティングを実現するために
ご案内の通り、わが国政府の財政は、非常
不可欠なものは、維持・拡充や本則化・恒久
に厳しい状況にあります。今年度の国の一般
化し、役割を終えたものは廃止すべきであり
会計予算は、9
6兆円の歳出に対し、税収等は
ます。特に、研究開発税制は科学技術イノ
5
5兆円にとどまり、残りの4
1兆円は将来世代
ベーション立国たるわが国にとって重要であ
に負担を先送りする国債で賄うという、いび
ることから、期限を迎える税額控除限度額の
つな構造となっております。歳出の中身を見
2
0%から3
0%への引き上げ措置や研究開発費
ましても、社会保障関係費と国債費の割合が
の範囲を含め、現行制度の維持・拡充が必要
高く、「未来への投資」とも言える少子化対
としております。
策、政府研究開発や重要インフラへの投資に
欠損金の繰越控除制度については、国際的
回す余裕がなくなっております。
イコールフッティングの観点から、繰越期間
ストックベースで見ても、家計の純資産と
の延長とともに、当期控除額の上限に関して
一般政府総債務の差が年々縮まっており、大
も、少なくとも現行制度維持を求めておりま
量の国債発行を国内で消化できる余力は低下
す。過度な上限の厳格化は、業績の回復過程
しつつあると言わざるを得ません。
にある企業の足どりを重くする恐れがありま
す。
今のところ、日本銀行による金融緩和策も
あり、国債金利は極めて低い水準に抑えられ
その他、自動車関係諸税では、消費税率
ております。しかしながら、政府の財政健全
1
0%時点で自動車取得税を確実に廃止すると
化努力に疑問符がつき、日本国債に対する信
ともに、あわせて導入される自動車税の環境
認が崩れれば、欧州債務危機でも見られたよ
性能課税について、最低限の負担となる制度
うな金融市場・金融システムの混乱、急激な
設計とすべきと主張してまいります。
財政緊縮が起き、国民経済、生活に甚大な影
エネルギー関係諸税に関しては、地球温暖
響を及ぼしかねません。
化対策税の廃止も含めた抜本的見直しや使途
経団連では、以上のような問題意識から、
拡大への反対、森林吸収源対策等のための新
財政健全化を経済成長と車の両輪であると捉
税創設に反対してまいります。
え、政府に対し、継続的な取り組みを訴えて
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経済懇談会
きました。本年1月の提言『日本経済の発展
急速な少子高齢化による人口減少時代に突入
の道筋を確立する』では、経済成長力を高め
しており、増田寛也元総務大臣が座長を務め
る各種具体策の実行とあわせて、財政健全化
る日本創成会議が「このまま地方の人口減少
にもしっかりと取り組む「6つのエンジン」
が続くと、2
0
4
0年には全国1,
8
0
0市区町村の
の改革を通じて、実質2%、名目3%の経済
半分が消滅する可能性がある」との試算結果
成長と、財政健全化が両立する経済の姿を示
を示すなど、とりわけ首都圏への一極集中の
しました。
影響が大きい地方にとって人口減少とそれに
9月3日に公表した『新内閣に望む』でも、
伴う経済の低迷は深刻な問題となっています。
経済再生を最優先に求めつつ、重要政策課題
こうした中、9月に発足した安倍改造内閣で
の一つとして財政の健全化の必要性を訴えて
は地方創生を最重要課題に掲げ、「まち・ひ
おります。
と・しごと創生本部」を立ち上げるとともに、
年末にかけて、来年度予算編成の議論が本
年内にも人口減少社会における長期ビジョン
格化しますが、歳出面では、毎年1兆円の自
と総合戦略を取りまとめることとしておりま
然増が続く社会保障関係費の重点化・効率化
す。
が最大の課題であります。とくに、医療・介
もともと、経団連としては、わが国経済の
護分野に係る支出の伸びは経済成長を上回っ
再生とさらなる成長に向けては、国内の7割
ており、改革は待ったなしでございます。歳
を占める地方経済の活性化が不可欠であると
入面では、経済状況への目配りは必要ではご
の認識のもと、わが国の経済成長と財政改革
ざいますが、2
0
1
5年1
0月の消費税率の1
0%へ
の両立を可能にする国全体の統治機構改革と
の引き上げを予定通り実行し、社会保障のた
して、道州制を推進してまいりました。しか
めの安定財源を確保することが不可欠です。
しながら、平成の大合併以降、合併を特に強
以上、経団連の財政健全化に対する基本的
く懸念する市町村は、道州制は新たな合併に
考え方を申し上げました。皆さまのご理解、
繋がるとして強く反対しており、市町村に対
ご協力のほどよろしくお願い申しあげます。
して同制度の目的をより分かりやすく伝えて
いくことが求められています。さらに、地方
■地方経済活性化に向けた取り組み
(一社)日本経済団体連合会
畔
柳
信
雄
副会長
(㈱三菱東京UFJ銀行
特別顧問)
にとって人口減少は、いまや切迫度をもって
対応すべき問題であり、地方から首都圏など
の大都市圏への人口流出を止めることが急務
となっていることを勘案すると、いま一度、
「地方経済の活性化」という原点に立ち返っ
た上で、地方の雇用創出に繋がる施策の立
案・提言に本腰を入れて取り組む必要がある
といえます。
8
わが国経済は、消費増税や夏場の天候不順
この点、対応策としてコンパクトシティの
の影響から一時的な落ち込みをみせているも
推進などが掲げられておりますが、総務省で
のの、総じて回復基調を持続しております。
は第3
0次地方制度調査会の答申に基づき、人
しかしながら、中長期的に見れば、わが国は
口2
0万人以上などの要件を満たす都市を核に
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dokeiren
広域連携を促す「地方中枢拠点都市構想」を
する取り組みを進めてまいりたいと存じます
進めています。これは、地域の中核となる都
ので、よろしくお願い申し上げます。
市が、通勤・通学圏の周辺市町村とともに1
つの経済圏を形成し、地方経済を牽引してい
くことなどを目指すものです。各地域が独自
の強みを結集してイノベーションを創出する
ことで、地方経済の活性化のみならず、わが
国全体の潜在成長力の向上への貢献が期待さ
れます。
ここ北海道では、この後の意見交換の部で
!島副会長よりご説明があると思いますが、
道経連さんやJAさんが推進役となって、農
第2部
意見交換
■ものづくり産業の振興
北海道経済連合会
田
中
義
克
副会長
(トヨタ自動車北海道㈱
取締役社長)
業の6次産業化により食の高付加価値化を進
める「食クラスター活動」を道内一体で取り
組まれています。地域間、さらには業種間が
私からは「ものづくり産業の振興」につい
て、ご報告いたします。
連携してイノベーションを創出している好事
ご存知とは思いますが、2次産業の総生産
例であり、こうした地域特性を活かした独自
に占めるウエートが全国平均は2
0%であるの
の取り組みこそが地方経済の活性化に繋がる
に対し、北海道は約半分の1
0%程度で、1
といえましょう。
次・3次産業のウエートが大きくなっていま
経団連としては、今月より、道州制や都
す。
市・地域政策、観光など地方の経済・産業に
製造業、ものづくり産業は原材料に付加価
関わる複数の委員会が連携して、有識者等と
値を与える産業であり、多くの雇用を生み出
の意見交換を行う「地域活性化懇談会」を開
すことに大変有効であると考えます。
催していきます。今月2
3日の第1回では、来
北海道経済の発展のためには、この製造業、
賓として先ほどご紹介した増田寛也元総務大
言い換えれば「ものづくり産業」を強化・発
臣をお招きし、「人口減少社会における地域
展することが不可欠と考えます。そこで道経
経済の活性化」について懇談する予定です。
連としましては、昨年の8月に「今後の北海
今後は、政府の動向を注視しつつ、懇談会
道のものづくりを考える会」を立ち上げ、関
で集約した意見等をもとに、地方の市町村連
係者による3回の会合を通して意見交換・討
携等を通じた経済活性化を推進するために必
議を行い、その内容を今年の3月に高橋北海
要な施策を政府に対して提言するなど、地方
道知事に直接提言をしました。
が独自のやり方で成長できるような仕組みづ
そして、今年度は提言したことを具現化す
くりのサポートに注力していく所存でありま
る、成果を出す年度とすべく活動をしていま
す。
す。
北海道経済連合会の皆様とは、これまでも
提言内容は、第一は「ものづくり産業」へ
活動のご協力を頂いておりますが、引き続き
の関心を高め、正しく理解しリスペクトされ
密に情報交換を図りながら、地方活性化に資
るようにすることです。
9
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経済懇談会
残念ながら北海道では、学生・生徒だけで
またこれから期待される「健康」というキー
なく、教師・親などが製造業は、いわゆる3
ワードのバイオ産業、製薬業、化粧品など新
K職場というイメージを持っていたり、又は
しい形の「ものづくり産業の振興」を目指し、
身近に少ないため理解度が低いということが
北海道の冷涼な気候を活かした、1次・2
あります。また、女性の製造業への就業率も
次・3次産業のバランスのとれた地域にすべ
全国平均の1
2.
1%に対し、約7割の8.
4%で
く、道経連では進めています。
あり、愛知県の半分という低い状況です。
その下地として、今年の5月から道内のも
そこで、そういった方を対象にした工場見
のづくり5団体である農業機械工業会、機会
学会を実施し、理解していただくことや、
工業会、電気・電子工業倶楽部、食品産業協
「ものづくりなでしこ応援プロジェクト」を
議会、バイオ工業会の連絡会議を立ち上げ、
スタートさせ、各企業で活躍している女性社
テーマの募集や、ニーズの調査を行っていま
員が自ら仕事の内容、やりがいなどを紹介す
す。
るバスツアー見学を始めています。また、も
のづくり産業を盛り上げる仕掛けとして、東
京都大田区の「下町ボブスレー」のような、
中小企業の象徴的なプロジェクトの実施も目
指しています。
2つ目は、既に集積の進んでいる道央中核
地域でのものづくり産業の強化とさらなる企
業誘致の推進です。
これは広い北海道の中でも、新千歳空港、
現在、政府も「地方創生」と「女性の活
躍」の推進を重要課題に掲げています。
先程申し上げました内容は、これらにも合
致したものであります。
北海道が北海道の特色を活かした、新しい
形の「ものづくり産業の振興」を推進したい
と考えます。
経団連の皆様方におかれましても、ぜひご
支援をよろしくお願いいたします。
苫小牧港・石狩港、高速道路、鉄道が充実し
ており、いわゆる空・海・陸の交通インフラ
経団連側のコメント
を完備している道央地区に重点を置き、集積
を積極的に推進するという提言です。
そのために、インパクトのある施策として、
例えばこの地域で起業、または進出する企業
に対して、法人税・法人事業税とも、進出し
(一社)日本経済団体連合会
古
賀
信
(野村證券㈱
行
副会長
会長)
てから当初3年間は10
0%、以後2年間は
5
0%免税すること、また、輸送コスト低減の
ため助成金制度や体制の構築などを提言しま
した。
先程申し上げましたが、今年度は実現の年
であります。
「ものづくり産業の振興」と言いましても、
1
0
安倍政権の経済政策により、わが国経済は
力強さを取り戻しつつあります。この流れを
一過性のものとせず、北海道をはじめとする
地域経済の活力の再生につなげていくために
は、田中副会長からご指摘がございましたよ
従来ある、自動車産業、電気・電子産業も含
うに、わが国の基幹産業であるものづくり産
めますが、北海道の強みのある「食」関連、
業の強化が不可欠です。
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ご案内のとおり、わが国においては団塊世
それぞれが有機的に結びつくことで、地域な
代の大量退職に伴う熟練技能者の不足や若年
らではのクラスターを形成していくことが考
層の理科離れに加え、本格的な人口減少社会
えられます。こうした取り組みにおいて、道
の到来により、ものづくり産業の担い手を確
経連が強いリーダーシップを発揮いただけま
保することが困難な状況となっています。先
すと幸いです。
ほど、道経連の取り組みをお伺いいたしまし
安倍政権は、このたびの内閣改造にあたり、
たが、若者や女性に対して、ものづくりの魅
地方創生を最重要課題に掲げております。私
力を訴求することの重要性は一層高まってい
が担当しております産業問題委員会におきま
るかと存じます。地道な活動であるからこそ、
しても、ものづくり産業の競争力強化の観点
長期的に見て意義のあるものとなるのではな
から、地域創生に取り組んでまいりたいと存
いかと感じます。
じます。本日の意見交換をはじめ、道経連の
その際、ものをつくりあげることの楽しさ
皆様とも連携をとらせていただきたいと存じ
を実感してもらうことに加え、例えば、3D
ますので、引き続き、私どもの活動にご理解
プリンタのような新たなものづくり技術に触
とご協力をいただけますようお願い申し上げ
れる機会をつくることも重要ではないかと思
ます。
います。こうした体験は、従来のものづくり
現場のイメージを一新させるだけでなく、も
のづくりの新たな可能性を感じさせることに
もつながるかと存じます。
田中副会長からは、地域産業の競争力強化
(一社)日本経済団体連合会
斎
藤
勝
(第一生命保険㈱
利
副会長
会長)
に向けた改革方策についてもお話をいただき
ました。
域外からの投資を誘致するためには、魅力
的な事業環境の整備を通じて、グローバルな
立地獲得競争に打ち勝つ覚悟が求められます。
私からは、女性の活躍に関連して発言させ
ていただきます。
経団連では、女性の活躍は、グローバル化
国際的なイコール・フッティングを確保する
の進展と急速な少子高齢化の下で、日本の経
ことはもちろんのこと、ご指摘がございまし
済社会が持続的に成長を続けるための重要な
たような大胆なインセンティブの導入を図る
成長戦略であり、同時に、企業が厳しい競争
ことも必要になろうかと存じます。
を勝ち抜くための重要な経営戦略であると考
こうした取り組みと同時に、企業自らが地
えております。市場環境、経営環境の急激な
域の活力の原動力として、域内の資源を最大
変化に対応するためには、組織のダイバーシ
限活用しながら、地域の内発的な発展に貢献
ティを高めることにより、企業競争力を強化
していくことも重要ではないかと思われます。
する必要があります。
地域経済の中核を担う企業を軸に、取引先は
また、女性の活躍推進は、男女に関わらな
言うに及ばず、金融機関や研究機関、教育機
い働き方や意識の改革を伴うものであり、そ
関、自治体等との間で、地域の発展の方向性
のためには、経営トップによる明確なコミッ
や、地域の強み・課題を共有するとともに、
トメントとリーダーシップが不可欠でありま
1
1
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経済懇談会
す。経団連では、現在、会員企業の「女性の
役員・管理職登用に関する自主行動計画」を
経団連のウェブサイト上で公開する取り組み
を進めており、この取り組みを通じて、経済
団体としてのリーダーシップを発揮してまい
りたいと存じます。
先ほど、田中様よりご発言いただきました
■社会資本整備に向けた今後のあり方
北海道経済連合会
岩
田
圭
剛
(岩田地崎建設㈱
副会長
代表取
締役社長)
「ものづくり産業の振興」につきましては、
日本経済を牽引する製造業、とりわけものづ
私からは、「社会資本整備に向けた今後の
くりの現場における女性活躍の大きな課題と
あり方」につきまして、お伺いいたします。
して、理工系女性人材の不足が挙げられます。
社会資本については、高度経済成長期以降
経団連が本年4月に公表した「女性活躍ア
に整備され、それらのストックが急速に老朽
クション・プラン」では、小・中学校、高等
化していること、及び、財政的な制約を踏ま
学校といった教育段階で子どもたちに科学技
えて、全国的には大都市圏を中心に新規整備
術への関心を高めることや、親・教師に対し
よりも老朽化対策等を重視していこうという
て理工系の仕事に対しての正しい理解をもっ
気運が高まっています。
てもらうことが重要であるとの考えから、政
しかし、北海道においては、経済の自立に
府に対し、理工系女性人材の育成について、
向けた産業振興を図るという観点に加えて、
産学官連携も含めた対応を呼びかけていると
人口減少が進む中で地域社会を維持する観点
ころでございます。
や、バックアップ拠点として国土強靭化に貢
こういった中で、道経連で行っている、工
献するという観点からも、社会資本の新規整
場見学会や「ものづくりなでしこ応援プロ
備は引き続き重要な課題と考えております。
ジェクト」といった、女性のものづくりに対
そこで当会では、このような観点から必要
するイメージアップに向けた積極的な取り組
な社会資本整備の可能な限りの早期整備を働
みは、経済団体による強いリーダーシップで
きかけているところです。
あり、非常にたのもしく、全国にも先駆けた
有益な取り組みと感じているところでござい
ます。
特に大きなテーマが北海道と本州や海外を
結ぶ社会資本インフラの整備です。
具体的には、日本列島を縦断する鉄道ネッ
経団連といたしましても、引き続き、女性
トワークの大動脈を完成させる北海道新幹線
活躍の実現に向けた企業の自主的な行動を促
の札幌までの早期延伸、発着枠拡大や安定就
すとともに、理工系女性人材の育成をはじめ
航に必要な新千歳空港のILS双方向化・デア
とした企業努力だけでは解決できない社会全
イシングエプロン整備、一大酪農地帯である
体の課題については、政府や教育界とも連携
東北海道を背後圏とする釧路港・国際物流
して取り組んでまいりたいと存じます。
ターミナルの着実な整備です。
また、道内の拠点を結ぶ骨格となる高規格
幹線道路の整備促進も一次産品の配送時間短
縮による鮮度保持や地域社会を維持する観点
1
2
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から推進しているところです。
られる社会資本は、ご当地の産業構造や人口
むろん、既存社会資本の老朽化対策も重要
構成、自然条件等によって異なり、修繕すべ
な課題と考えています。積雪寒冷地の北海道
きインフラの劣化の程度も、その利用頻度や
は過酷な気象条件に晒され、インフラの劣化
気象条件によって差が生じることが、問題の
は早いともいわれるからです。
解決を一層難しくしていると存じます。
現在、国は地方自治体に対し老朽化対策の
ただし、例示いただいた、わが国全体とし
策定を求めているところですが、その内容を
ても、産業の競争力強化に役立つことが期待
みますと財政状況や将来の人口減少を踏まえ、
される交通インフラや、地域コミュニティの
公共施設統廃合等を進める方向での検討を求
形成に貢献する社会資本については、国の
めているようです。また、人口減少問題への
「選択と集中」の基準にも沿っていると考え
対応として、今年7月に公表された国土のグ
られることから、着実に進めていくことが求
ランドデザイン2
0
5
0では、コンパクト+ネッ
められると存じます。
トワークの地域づくりが示されておりますが、
こうした中、今般、「地方創生」が政権の
広域分散型社会を形成し、かつ一次産業のウ
ひとつの目玉施策として掲げられ、従来の取
エートが大きい北海道においては、有効に機
り組みの延長線上にはない次元の異なる大胆
能させることが難しいのではないか、との印
な政策を講じることとされたのは、皆さん既
象を持っております。
にお聞き及びのことと存じます。
そこで、人口減少時代に地域活性化や、地
この地方創生に向けて、社会資本整備のあ
域社会の維持とのバランスを取りつつ、如何
り方も今一度見直すことも重要であると考え
に社会資本整備や老朽化対策を進めるべきか
ます。例えば、コンパクト化とネットワーク
について、経団連の見解やアドバイスなどを
化を組み合わせた街づくりや、産業競争力強
お聞かせください。
化に向けて様々な交通手段を効率よく組み合
わせたネットワークの形成など、単なる社会
経団連側のコメント
(一社)日本経済団体連合会
審議員会
岩 沙 弘 道 議長
(三井不動産㈱ 会長)
資本整備の枠を超えて、関連する政策と社会
資本整備を効果的効率的に組み合わせていく
ことが一段と求められると存じます。
その際、より重視されるべきは、地元企業
の方々、とりわけ業暦が長く、地域の中核的
な役割を担っている皆さんのような企業が
リーダーシップを発揮し、地域が目指す発展
の方向性や強み、地域が抱える課題やその解
厳しい財政事情の下で、地域経済の活性化
決策などを、取引先企業や金融機関、行政、
と社会システムを維持しつつ、必要な社会資
教育機関を巻き込んで共有していくことでは
本を整備し、その上で老朽化対策を講じてい
ないかと存じます。
くことの難しさは、程度の差はあるものの、
地域に共通した課題であると存じます。
しかも、岩田副会長のご指摘の通り、求め
このような連携が有効に機能すれば、皆さ
んにとっても、自社の事業計画も立てやすく
なりますでしょうし、地域経済として目指す
1
3
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経済懇談会
べき将来像もより現実味を帯びてくるものと
の課題を抱えているのが現状です。
例えば、航空機材の小型化や観光バス不足
存じます。
こうした取り組みを経団連としても積極的
に後押ししてまいりたいと存じますので、引
き続き、経団連活動につきまして、ご理解・
ご協力のほど、お願い申し上げます。
などから道央圏以外では観光客が大きく減少
しているエリアも少なくありません。
また、外国人観光客数の増加も、消費単価
が低いため残念ながら利益に繋がっておりま
せんし、1∼3月の入込客数は7∼9月の半
■観光振興の推進
田
和
(㈱JTB北海道
吉
ンとの格差是正もそれほど進んでおりません。
札幌市においてすら世界的な高級ブランドの
北海道経済連合会
古
分以下であるなどオンシーズンとオフシーズ
副会長
代表取締
役社長)
ホテルは立地しておりませんし、M&Aを除
けば宿泊施設の新規増強投資は行われていな
いのが現状です。さらに、観光振興は重要と
いわれながらも投入される北海道予算が6億
円と少額に留まっている、といった課題もあ
私からは「観光振興の推進」につきまして
お伺いいたします。
国は、2
0
2
0年に現状の倍にあたる2千万人
北海道の足元における観光入込客数をみま
の外国人観光客を誘致するとの目標を掲げて
すと、昨年度は4.
2%増の5,
3
1
0万人で、これ
おりますが、北海道の現状を踏まえますと、
までのピークであった1
9
9
9年度5,
1
4
9万人を
単に観光客数を追うだけでは、必ずしも地域
初めて上回りました。これは、景気回復によ
の活性化に繋がらないのではないかとの懸念
る国内観光客数の増加に加え、外国人観光客
も持っております。北海道においては、これ
が初めて1
0
0万人を超え、前年度比4
5.
9%の
までの発想を転換し、富裕層誘致など質を重
大幅増となったことが寄与したものです。国
視する方向での取り組みが求められる局面に
は、成長戦略の一環として「2
0
2
0年に2千万
来ているのではないか、と考えております。
人」の外国人観光客を目標として掲げたとこ
そこで、国や地域は、観光振興に向けてど
ろですが、北海道ではその1
0%の2百万人、
のような取り組みに力を入れるべきかについ
さらには3百万人の誘致を目指すべきとの話
て、経団連の見解をお聞かせ下さい。
も出てきております。
また、2
0
1
5年度末予定の北海道新幹線の新
函館北斗開業も明るい話題です。新函館北斗
∼東京間が4時間強、仙台間が約2時間半、
新青森間が約1時間で結ばれ、東北や北関東、
首都圏などと観光・交流が拡大することが期
待されているところです。
しかしながら、北海道の観光をめぐる状況
は、決してバラ色ということではなく、多く
1
4
ります。
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経団連側のコメント
(一社)日本経済団体連合会
大
塚
陸
毅
副会長
(東日本旅客鉄道㈱
相談
役)
よう、十分なCIQの体制整備について求めま
した。
これらは6月に政府が決定した「観光立国
実現に向けたアクション・プログラム2
0
1
4」
に反映されました。今後は策定されたアク
ション・プログラムが、各地の実態に即した
形で確実かつ迅速に実行されているかをしっ
かり注視し、受入環境の整備を後押ししてい
古田副会長からご指摘があったとおり、ま
きたいと考えております。
た9月2
9日の安倍総理所信表明演説において
また、団体旅行から個人旅行へと観光客の
「地方創生」の第一項目として「観光立国」
ニーズが移っている中、海外からのインセン
が取り上げられ、「それぞれの地域が、豊か
ティブツアーなど、MICEも含めた新たな団
な自然、文化や歴史など、特色ある観光資源
体旅行のニーズを取るか、個人客に特化する
を活用できるよう、応援してまいります。」
か、など戦略と行動が必要と考えます。8月
と力強く述べられたことでもわかるとおり、
に韓国・ソウルで開催された「日韓観光交流
観光は国の成長戦略の大きな柱として位置付
拡大シンポジウム」に参加して参りましたが、
けられています。本年6月に改訂された日本
韓国からは修学旅行や企業のインセンティブ
再興戦略では、2
0
2
0年の訪日外国人観光客2
ツアー等を双方向で活発化させていきたいと
千万人の目標に加えて、2
0
3
0年には3千万人
いう意見が出ておりました。例えば、韓国な
を目指すとも明記されました。
ど海外の国々と双方のニーズについての情報
それだけの数のお客様を受け入れるには、
交換を行うなどの協力体制を作ることで新た
現在、特定の地域に集中している観光客を日
な需要を掘り起こすこともできるかもしれま
本各地の観光地へと分散させていくことが必
せん。
要で、そのためにはご指摘のありましたハー
そして何より重要なのは、観光の現場の担
ド・ソフト両面での受入環境の整備と魅力あ
い手である観光関連産業の生産性向上と地域
る観光地域づくりの一層の強化と発信が不可
の競争力の強化です。宿泊施設については、
欠となります。
思い切って客室を減らす代わりに個人客の
このため経団連では、本年6月に「高いレ
ニーズに沿って施設や食事などのサービスを
ベルの観光立国実現に向けた提言」を取りま
一新し客単価を上げたり、大型旅館であって
とめ、政府に建議、私も菅官房長官を直接訪
もバックヤードの自動化・効率化、従業員の
問し、引き続き各省庁が連携した政府の取り
多能工化等を進めたりすることで、成功して
組みをお願いしてまいりました。この提言の
いる事例も聞いております。
中でも、地方空港の活用とCIQ(税関・出入
近年、訪日ピーク時のバス不足などが話題
国管理・検疫)体制の充実について述べてお
になっていますが、宿泊・移動手段・空港要
り、多様な政策手段を活用して航空会社によ
員とも、国内と訪日のピークをうまく調整す
る新規路線の開設・就航を促すとともに、日
ることで事業と雇用の平準化が図れるのでは
本を訪れた旅行者に不満を与えることがない
ないかと考えます。国内と訪日のピークは異
1
5
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経済懇談会
なっていることもあり、もっと官民で議論す
経済の活性化と、より安心・安全・豊かな生
る余地があるのではないでしょうか。
活の実現に繋がるということと、そのために
また、地域独自の食材など地域のコンテン
整備・推進すべきインフラとして、測位衛星、
ツを徹底的に活用することで他地域との差別
リモートセンシング衛星、通信・放送衛星と
化を図りつつ、他の地域との連携を強化する
いった衛星と、ロケットやロケット打ち上げ
必要があります。海外でも知名度の高い北海
施設など宇宙輸送システムが示されました。
道ブランドや北海道新幹線の新函館北斗開業
宇宙開発技術の水準は、国力の象徴ともい
の機会を捉えて、是非、強力に推進していた
われますが、宇宙開発分野での日本のポジ
だければ幸いです。
ションは、米国、欧州、ロシアに次いで世界
私どもも地域間連携の場作りなど、できる
限りの協力をいたしたいと存じます。
4位です。
そもそも日本の宇宙関係予算は、米国の1
0
最後になりますが、観光は、旅行業や宿泊
分の1以下、欧州の半分といわれており、ま
業にとどまらず、農林水産業も含む地域経済
た5位の中国は大規模なロケット発射場を建
の幅広い分野に大きな波及効果をもたらす大
設中で宇宙開発を大きく加速していますので、
変有望な成長産業です。経団連では、北海道
日本と上位グループとの差は更に広がり、逆
はじめ地域の皆様とともに、引き続き国の成
に下位との差は徐々に縮まっている状況とい
長と地域活性化に資する観光立国を推進した
えます。
いと存じますので、どうぞよろしくお願い申
北海道は、国土の2
2%を占め、四方を海に
囲まれているなど、ロケットの射場としての
し上げます。
優位性を持っています。加えて、今後の頻繁
■宇宙産業への期待と取り組み
田
正
(帯広信用金庫
二
衛星などの低軌道衛星は、地球を南北方向に
周回する極軌道で飛行するため、南方向への
北海道経済連合会
増
な打ち上げが予想される測位衛星や情報収集
副会長
理事長)
打ち上げで有利な北海道は、打ち上げコスト
を大きく低減することが可能となります。
そのことに着目して、十勝の大樹町では約
3
0年前からロケットの射場の誘致活動を行っ
ています。将来のスペースポート(宇宙港)
私からは、「宇宙産業への期待と取り組
としての利用も視野にいれた構想で、町が整
み」ということで、北海道で取り組んでいる
備した「多目的航空公園」では、JAXAが施
ロケット打ち上げ施設の誘致活動について、
設を建設し実験場としてさまざまな試験を実
アドバイスをいただきたいと思います。
施しているほか、全国の大学や企業も無人飛
昨年1月、宇宙基本計画が国から発表され
行機の飛行試験を実施するなど、本格的な射
ました。安全保障や防災、産業振興等の面か
場の誘致に向けて着実な実績もあがっていま
ら人工衛星に対するニーズは、今後ますます
す。
増加し、高い利便性と低いコストで衛星を打
ち上げることで新技術や新サービスが生まれ、
1
6
宇宙輸送システムを整備推進することは、
国の指針に沿ったものであり、また、現在の
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種子島と内之浦のロケット打ち上げ施設を補
経団連としては、新計画において、こうし
完し、日本の宇宙開発に厚みを加えるもので
た安全保障分野も含めた宇宙利用のニーズに
もあると考え、当会もこの活動を支援してい
基づいて、今後必要となる測位、観測、通信
ます。
などの衛星やロケットの具体的な機数と、開
この射場誘致の取り組みが、さらに実り多
いものとなるためのアドバイスをお聞かせい
ただきたいと思います。
発や打ち上げのための予算を明記した中長期
の工程表を策定すべきと考えております。
中長期的なビジョンを明確にし、それに応
じて、ご指摘のありました射場をはじめとす
経団連側のコメント
(一社)日本経済団体連合会
宮
原
耕
(日本郵船㈱
治
副会長
会長)
る地上のインフラの整備のあり方が検討され
ることになると存じます。
ここ北海道におかれましては、これまで長
年にわたってロケットの射場の誘致に取り組
んでおられますが、引き続き、広大な土地や
極軌道への打ち上げといった優位性を活かし
た政策提言を続けていただきたいと考えてお
ります。
わが国の安全保障環境が厳しさを増す中で、
衛星を利用した海洋の監視など、宇宙と海洋
の連携の重要性が増しております。私は政府
の総合海洋政策本部の有識者会議である参与
会議の座長を務めておりまして、政府の宇宙
政策委員会の葛西委員長などの幹部と意見交
換を行っております。
最近の宇宙政策をめぐる動きとしては、本
■エネルギーの安定供給の確保に向け
て
北海道経済連合会
石
井
純
(㈱北洋銀行
二
副会長
取締役頭取)
年8月に公表された政府の宇宙政策委員会基
本政策部会の「中間取りまとめ」および自民
党宇宙・海洋開発特別委員会の提言で、安全
保障分野における宇宙開発利用を重視する方
私からは「エネルギーの安定供給の確保に
向けて」お伺いいたします。
向性が打ち出されました。特に、日米同盟の
北海道における電力供給は、発電電力量の
強化に資するものとして、海洋監視や宇宙状
4割を占めていた基幹電源である泊原子力発
況監視の機能を充実させていく必要性が指摘
電所の全機停止以降、老朽化した火力発電設
されており、具体的なプログラムの検討が進
備の高稼働などにより支えられておりますこ
められると見込まれます。
とから、発電所の計画外停止により供給力不
9月1
2日には、安倍総理から、年末を目途
足を招くリスクが高まっております。実際、
に、新しい宇宙基本計画を策定する指示が出
昨年度の冬期におきましては、現状、道内最
され、宇宙政策委員会において目下、検討が
大規模であります定格出力7
0万kWの石炭火
進められております。
力発電設備が、昨年1
2月1
7日から本年1月1
3
1
7
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経済懇談会
日まで、約1か月にわたりまして計画外停止
子力発電所の運転再開の見通しは立っており
しておりました。
ません。
そのような状況の中、本年1月1
0日には、
そこで、低廉かつ安定的な電力の供給確保
寒波の影響で電力需要の増加が予想され、2
に向けた地方経連の活動として、どのような
番目に大きい定格出力60万kWの石炭火力発
方策が有効か、経団連の見解をお聞かせくだ
電設備や、北本連系線の計画外停止が発生し
さい。
た場合には、供給予備率3%を下回り、電力
需給ひっ迫となる恐れがありました。この時
経団連側のコメント
には、報道を通じて、より一層の節電対応が
呼びかけられ、何とか事なきを得ることがで
きましたが、このように、北海道におきまし
ては、不安定な電力供給が長期間にわたり継
続しております。
(一社)日本経済団体連合会
中
西
宏
(㈱日立製作所
明
副会長
会長)
これに加えまして、北海道電力は本年7月、
規制部門で平均17.
0
3%、自由化部門で平均
2
2.
6
1%の電気料金再値上げを申請いたしま
した。昨年9月の値上げと累計いたしますと、
現するにあたり、強く心配されるのが、エネ
規制部門で約2
6%、自由化部門では約3
6%と、
ルギー問題であり、石井副会長のご指摘は全
非常に大幅なものとなります。
く同感です。
このような現状に対し、多くの企業から、
ご質問いただいた、低廉かつ安定的な電力
不安定な電力需給状況と電気料金値上げによ
の供給確保に向けた活動につきまして申し上
る経営への影響や、経済の停滞を懸念する声
げます。われわれは経済の現場を担う企業の
があげられております。特に、電気料金値上
集団ですので、まずは、政府・地方自治体な
げの影響は極めて大きく、企業の存廃といっ
どの政策関係者、国民に対し、電力問題が、
た深刻な状況も懸念されます。また、生産拠
事業活動や雇用に与えている影響を、地道に、
点の道外移転が現実的なものとなる他、企業
粘り強く訴えていくことかと存じます。
誘致にも大きな支障を与えかねず、北海道経
こうした観点から、経団連では、5月に、
済へ深刻な打撃を与えかねない状況でござい
会員企業を対象にアンケートを実施いたしま
ます。
した。本アンケート結果では、製造業の約9
このような状況を鑑みれば、北海道におけ
割が、「現在のような電力料金をめぐる状況
る当面の対応といたしましては、泊原子力発
が続けば、収益の減少を余儀なくされる」と
電所の一日も早い運転再開が必要不可欠であ
回答しています。また、約4割が「国内設備
ります。
投資が減少する」とし、その一部は「海外に
このため、当会としては、北海道商工会議
1
8
本日の基本テーマである「日本再興」を実
流出せざるを得ない」との結果が出ています。
所連合会・北海道経済同友会との道内経済3
こうしたアンケート結果を、様々な機会を通
団体共同にて、国などへ要望を行うなどの活
じて、政府与党やマスコミに伝えているとこ
動を行ってきておりますが、依然として泊原
ろです。
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また、電力問題に対する危機感について、
経済界が一枚岩となって発信していくことも
重要だと考えております。さきほど、道経連
さんからご紹介のあった他の経済団体との連
携は、まさにこうした取り組みだと考えてお
ります。経団連でも、5月に、日本商工会議
所、経済同友会と共同で緊急提言を取りまと
■循環型社会形成への取り組み
北海道経済連合会
伊
藤
(㈱エコニクス
聡
常任理事
取締役会
長)
めております。
本提言では、低廉かつ安定的な電力供給を
確保するため、安全性の確保を大前提に、原
発の再稼働プロセスを最大限加速するよう主
私からは、「循環型社会形成への取り組
み」につきまして、お伺いいたします。
北海道では、農林水産業や食品製造業が盛
張いたしました。あわせて、再稼働について、
んであり、なかでも農業は、耕地面積が全国
地元自治体の理解を得られるよう、政府や原
の約1/4を占め、小麦の収穫量や乳牛・肉
子力規制委員会による丁寧な説明を求めてお
用牛飼育頭数などでは全国1位となっており、
ります。
多量の農業系のバイオマス資源が生産されて
また本提言では、電力料金の上昇に拍車を
おります。
かけている固定価格買取制度や地球温暖化対
また、林業では、全国の森林面積の約1/
策税の抜本的な見直しも求めました。固定価
5を占め、水産業では、漁獲高が全国1位と
格買取制度につきましては、賦課金総額は、
なっているほか、食品製造業の出荷額も全国
本年度で6,
5
0
0億円に達しています。現行制
1位を誇っており、これらの産業から発生す
度のままでは、急速に国民負担が増大するこ
るバイオマス資源も道内には豊富に賦存して
とになり、負担軽減に向けた見直しが必要で
おります。
す。
北海道における循環型社会形成の推進、環
本提言の内容につきましては、6月に、榊
境産業の発展・振興には、この北海道の持つ
原会長が安倍総理に直接建議されたほか、政
優位性である、全国トップクラスの豊富に賦
府与党の幹部に働きかけを行いました。先月、
存している家畜排せつ物、食品加工残さなど
小渕経済産業大臣にもお伝え申し上げたとこ
の廃棄物系バイオマス資源や、稲わら、麦か
ろです。
ん、林地残材などの未利用バイオマスを有効
道経連の皆様とは、今後あらゆる機会を通
じて協力しながら取り組んでいきたいと存じ
ますので、よろしくお願いいたします。
に利用していくことが重要であると考えてお
ります。
そのためには、地域の実情に応じたバイオ
マス資源の地産地消型の利活用を図っていく
とともに、これらのバイオマス資源を活用し
た付加価値の高い製品づくりなど、新しい
「グリーンビジネス」を構築し、バイオマス
資源の利活用を持続可能な収益性のある事業
として創造、継続していくことが必要である
1
9
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た取り組みであり、非常に興味深いものであ
と考えます。
当会では、バイオマス資源の有効利用の推
ります。私ども経団連も、先進事例や成功事
進も含め、北海道の経済社会を資源循環型・
例などをぜひ、参考にさせていただきたいと
環境調和型先進地とするため、環境保全に資
思います。
する技術の開発普及と企業の自主的な環境対
循環型社会形成を一層推進するためには、
策を支援することを理念として、平成1
1年に、
企業・政府・地方公共団体・国民の各主体が、
当会が中心となり、道内の環境関連企業で構
それぞれ適切な役割分担に基づき、互いに連
成する「エコロジア北海道2
1推進協議会」を
携を図りながら、自らの役割を果たすことが
設立し、リサイクル先進施設への視察会、セ
重要だと考えております。
ミナー、勉強会などの開催や、会員企業の取
経団連は1
9
9
7年に3
5業種の参加を得て、環
り組み支援や製品の展示会への出展、試験研
境自主行動計画を策定し、それ以降、3R、
究に対する助成事業などを行い、会員企業の
すなわち、リデュース・リユース・リサイク
資源循環に向けた取り組みの支援を行ってい
ルを具体的に進めてきた結果、各業界の努力
るところです。
もあり、産業廃棄物の最終処分量は、9
0年度
また、関係団体と協力して、地域の潜在力
を活かした環境産業のモデルプランを創出す
に比べ、1
0分の1に減少しました。
しかし、現在の技術水準・法制度のもとで、
るための試験研究も進めているところです。
これ以上、この3Rを進めていくことは限界
そこで、今後の北海道における循環型社会
に近い状況にあります。経団連は、循環型社
形成の推進を図る上で参考とさせていただく
会形成を推進するため、企業の技術開発支援
ため、経団連における循環型社会形成の推進
や、本来再生利用できるものを廃棄物として
に向けた取り組みや方針、また、北海道の優
扱うような規制の撤廃など、政府に対してあ
位性を活かした廃棄物・副産物の再生利用、
らゆる機会を捉えて、法制度の見直しや運用
そしてグリーンビジネスの構築を図る上での
改善などを働きかけております。
アドバイスなどについてお聞かせください。
こうした働きかけは、豊富なバイオマス資
源の利活用を通じて、新しいグリーンビジネ
経団連側のコメント
(一社)日本経済団体連合会
木
村
康
副会長
(JXホールディングス㈱
会長)
スの構築に取り組んでおられる道経連の皆様
にとってもプラスになるものと考えます。
例えば、資源を有効利用する観点から、バ
イオマス資源を発電事業のエネルギー源とし
て活用することは重要ですが、廃棄物から成
るバイオマス燃料を使用する場合、廃棄物処
理法により、収集運搬や施設の設置に許可が
必要とされることから、十分に活用できない
ただいま、伊藤常任理事からご紹介がござ
といった課題がございます。経団連は、この
いました「エコロジア北海道2
1推進協議会」
ような点についても、規制を見直すよう政府
の活動は、北海道の地域特性を熟知した企業
に働きかけております。
や個人の皆様方による循環型社会形成に向け
2
0
経団連といたしましては、北海道のグリー
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ンビジネスが他の地域の模範となるよう期待
の付加価値を高め従業員の処遇改善を図るこ
するとともに、バイオマス資源の有効利用を
と」
「 IT化、機械化を更に促進すること」
「高
含めた、循環型社会の形成に向けた環境整備
齢者や女性の更なる活用を図ること」など努
に取り組んでまいりたいと存じます。
力を続けることは当然でありますが、一方で、
少子・高齢化に伴う生産年齢人口の絶対数が
■労働集約的産業の現状と課題
本
邦
(北海道空港㈱
が現状であります。
こうした状況を何もせず放置すれば、福祉
北海道経済連合会
山
減少する中では、企業努力にも限界があるの
彦
副会長
取締役副
会長)
介護業や清掃業、警備業といった、まさに社
会基盤を支えるサービス業が成り立たなくな
ります。そのため、私は、日本の労働集約的
産業を支える人材の確保は、喫緊の課題であ
ると認識しておりますが、人材確保の観点か
私からは、「我が国における労働集約的産
らみたわが国の「労働集約的産業の現状と課
業の現状と課題」について、経団連の認識を
題」について、経団連の認識をお聞かせ願い
お聞かせ願いたいと存じます。
たいと存じます。
本道経済は全国に比べ、農林水産業の割合
よろしくお願い申し上げます。
が高く、製造業の割合が低いといった特徴が
ございます。製造業で比較いたしますと国は
経団連側のコメント
1
8%であるのに対し、本道は9%に過ぎませ
ん。
その道内製造業には、約1
7万人が従事して
おりますが、その内の約半数の8万人が食料
品製造業に従事しております。
現在、本道の食料品製造業につきましては、
(一社)日本経済団体連合会
篠
田
和
久
副会長
(王子ホールディングス㈱
会長)
4年前に発足いたしました食クラスター連携
協議体を中心に付加価値を高める取り組みを
少子・高齢化が進むなか、景気回復も背景
強化しておりますが、原材料の下処理など、
として、既に人手不足が顕在化している業種
どうしても多くの人手を必要とする労働集約
や職種が出てきています。わが国が持続的な
的な産業でもあります。
経済成長を実現していくためには、イノベー
この労働集約的産業には、他にも福祉介護
ションを促進するとともに、労働力需給のミ
業、清掃業、警備業など多種多様なものがご
スマッチを解消していくことが必要であると
ざいますが、例えば機械組立工や看護師と
考えております。
いった他産業に比べ、共通して賃金が低く、
山本副会長がご指摘されたとおり、人材不
そのためか、勤務年数も短く人手不足が深刻
足問題を解決していくために、処遇改善を
化しております。
図っていくことは重要です。その際、賃金に
そこで各企業といたしましては「サービス
限らず、従業員の能力開発や、将来を見据え
2
1
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たキャリア形成を支援していく機会を積極的
働きかけてまいります。
に設けるなど、トータルとしての労働条件の
改善を図っていくことも、企業の魅力を高め
ることにつながると考えられます。
雇用管理の改善や職場定着、従業員のキャ
リアアップなどに関しては、政府の各種助成
金などがございます。それらを最大限に活用
しながら、自社の取り組みについて積極的に
発信して認知度を高めることも大切なのでは
■食クラスター活動の取り組み
北海道経済連合会
也
副会長
(サッポロビール㈱
常務
!
島
英
執行役員北海道本社代表)
ないでしょうか。経団連としては、関連する
施策の効果を検証しながら、効果の高い施策
私からは、当会で取り組んでいる「食のク
の拡充や、必要な見直しを政府に求めてまい
ラスター活動」について簡単にご説明させて
ります。
いただき、皆様からアドバイス等を頂戴した
また、IT技術の活用による業務効率化や、
ロボット技術の活用などにより、労働力人口
当会では、北海道の素晴らしく美味しく、
の減少の影響を極力抑えていくことも重要で
質の高い食材、これを我々道民が認めて消費
す。とりわけロボットについては、医療や介
する、潜在しているものを発見し、付加価値
護、農業分野などにおいて、単純労働を代替
を付けて国内外のマーケットへ打って出る、
したり、重労働をサポートするなど、人手不
さらには、モノづくり・観光など2次・3次
足を解消する切り札になると期待されており
の周辺産業と連携して、クラスター状に北海
ます。経団連としましては、研究開発の促進
道経済の嵩上げを目指していく、そのような
や普及に向けた環境整備と、規制緩和を政府
取り組みを進めております。これが「食の総
に求めてまいります。
合産業化」であり、中心となる「食クラス
なお、外国人労働者の活用に関しまして、
ター活動」の本質であります。
単純労働につきましては、今後の深い議論が
活動の推進母体として、食関連の製造や
必要であると認識しています。他方、経団連
卸・小売、農協など、2,
1
0
0もの企業・団体
はこれまで、外国人技能実習制度における対
が参画して「食クラスター連携協議体」とい
象職種の拡大や技能実習期間の延長、再技能
うものを作っています。これに、北海道など
実習の制度化などを政府に求めてまいりまし
関係機関の支援・協力を得て、「オール北海
た。
道」体制で、生産から加工・流通・販売まで、
こうした中、政府は『「日本再興戦略」改
訂2
0
1
4』において、管理監督体制の抜本的強
化を図りつつ、対象職種の拡大や、技能実習
期間を最大3年間から5年間へ延長するなど、
技能実習制度を見直すとしております。
経団連としましては、見直しが制度の適正
な利用拡大に資するものとなるよう、政府に
2
2
く、よろしくお願いします。
食に関わる一連の活動を支援しているもので
す。
最近の取り組み事例を、2点ほどご紹介し
ます。
1つは、大手食品メーカーと農協等との連
携です。
昨年来、当会が仲立ちして、味の素、カゴ
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メなどの大手食品メーカーと道内の農協が連
いて、アドバイスを頂戴できればありがたく、
携し、クロスマーケティングや商品開発に取
よろしくお願いします。
り組んでまいりました。昨年のこの場で「ハ
スカップミックスジュース」をご賞味いただ
経団連側のコメント
きましたが、その一例です。今年に入ってか
らは、規格外野菜の高付加価値化をテーマに、
さらに連携を深めているところです。
もう1つは、北海道産小麦の普及拡大です。
当会では、基本食材である小麦の国内自給
率が1割にとどまる現状を踏まえ、国内随一
(一社)日本経済団体連合会
荻
田
伍
副会長
(アサヒグループホール
ディングス㈱
相談役)
の生産地である北海道から全国へ向けて、消
費拡大、生産振興の流れを起こしていくこと
が重要であると考えております。
!島副会長より、食の総合産業化に向けた
取り組み、その中心となる「食クラスター」
昨年6月には、当会が事務局を担い、北海
活動状況についてご説明をいただき、ありが
道や地元製粉業界とともに「北海道産小麦消
とうございました。農業の成長産業化、競争
費拡大モデル実行協議会」を設立、また農水
力強化は、政府が掲げる成長戦略の重要な柱
省の「日本の食を広げるプロジェクト事業」
の1つとして位置づけられており、地域活性
に応募し、採択されました。
化に資する重要産業であります。日本最大の
この枠組みの下、ローソン、日糧製パン等
食料供給地域である北海道には、その推進役
と組んで、北海道内のみならず首都圏での販
として大いに期待されており、道経連さんを
売を見据えたパンの開発プロジェクトを進め
はじめとするオール北海道体制の下、力強く
るなど、特徴的な取り組みを進めているとこ
取り組まれていることに大変心強く感じた次
ろです。
第です。
今後は、これまでの活動で築いてきた食関
経団連といたしましても、かねてよりわが
連のネットワークをベースに、北海道の弱点
国農業の競争力強化と成長産業化に精力的に
とされる製造業を底上げする観点から、食品
取り組んできております。なかでも、農産
加工業の育成や、生産地立地の工場誘致など
物・加工品の高付加価値化に向けて、生産か
も視野に、目の前だけでなく、1
0年先・1
5年
ら加工、販売、消費にいたるバリューチェー
先の北海道を見据えた取り組みとして、ス
ンの構築といった、いわゆる6次産業化の推
テップアップさせてまいりたいと考えており
進が不可欠であります。そこで、農商工の連
ます。
携を一段と進めていけるよう、昨年7月には、
グローバルに経営を展開されている皆様が
「農林漁業等の活性化に向けた取り組みに関
お集まりのこの機会に、当会の「食の総合産
する事例集」の改訂版をとりまとめるなど、
業化」を目指した取り組みのあり方について、
取り組みを強化してまいりました。
例えば、農水産物の高付加価値化や販路拡大、
こうした中、道経連さんにおきましては、
これをベースとした食品加工業の育成などを
農商工の連携の重要性をいち早くご認識され
一層効果的に展開していくための方策等につ
て、食クラスター活動として協議会を設け、
2
3
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ビジネスマッチングをはじめ積極的な展開を
されてこられております。今後、さらなる発
展に向けて、大手メーカーとクラスター参画
企業との橋渡しをより一層進めていくことが
期待されます。そのためにも、地元の企業の
積極的な参画を促すとともに、個社が有する
技術、ノウハウや販路といった経営資源を生
■農業団体との連携方策
北海道経済連合会
堰
八
義
(㈱北海道銀行
博
副会長
代表取締
役頭取)
かしながら、より付加価値が高まる形での連
携を推進することが重要であると存じます。
私からは、現在、経団連で取り組まれてい
大手メーカーとの連携ということであれば、
る「農業団体との連携方策」の進捗状況等に
先ほどご紹介いたしました事例集も、個々の
ついてご教示をいただきたく、お願いします。
担当者の連絡先を掲載しておりますので、ご
わが国の農業は、国民へ良質な食料を安定
連絡を取られるなど、積極的にご活用いただ
して供給するという極めて重要な役割を担う
ければと存じます。
とともに、地域においては、経済や社会の活
また、今後は北海道経済全体のより一層の
活性化につなげられるよう、食の総合産業化
性化に大きな影響を与える基幹産業でありま
す。
と観光や飲食業などのサービス業といった異
こうした背景を受け、安倍政権が掲げる成
業種・周辺産業との連携を強化していくこと
長戦略においても、農業の成長産業化が重要
が重要であると存じます。
テーマの1つに位置付けられているところで
なかでも、食と観光は非常に相性がよいと
す。
思います。農産品の販売のみならず、農業体
一方、国際的に食料需給がタイト化すると
験の提供、農家での食材や料理の提供といっ
懸念される中、わが国の農業は、従事者の高
た具合に、農業を観光資源として活用するこ
齢化や減少、食生活の変化など急激な環境変
とで、北海道への観光客・集客数の増大、飲
化によって、極めて厳しい状況に直面してお
食業など関連産業の活性化、農産物・加工品
ります。
の認知度向上と域外への流通・販路の拡大と
「魅力ある農業、強い農業」を作っていく
いった好循環の形成につながり、北海道経済
ことが、まさにわが国にとって喫緊の課題で
全体に大きく波及していくものと考えられま
あるわけですが、全国の農業産出額の約1
2%、
す。経団連の大塚副会長からもご指摘があっ
約1兆円を産出している北海道の農業として
たと思いますが、将来的には、外国人旅行客
は、他の地域に先駆け、課題解決に向けた取
のさらなる獲得にもつながるものと存じます。
り組みを加速させていく必要があると認識し
経団連といたしましては、農業界との連携を
ております。
深め、農業の成長産業化、競争力強化に努め
こうした中、経団連におかれましては、昨
て参りたいと存じますので、道経連におかれ
年1
1月、JAグループと共同で「経済界と農
ましても、マーケットインの視点からの施策
業界の連携強化ワーキンググループ」を立ち
を強力に展開されることを期待いたします。
上げ、農業の価値創出に向けた検討を開始さ
れました。
2
4
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また、今年5月には、その成果を取りまと
を強化していくことにあると存じます。
めて「活力ある農業・地域づくりに向けた連
弊社の事例となり恐縮ですが、トヨタ自動
携強化プラン」を発表されました。このプラ
車におきましても、昨年2月、豊田市に農業
ンでは、経済界と農業界がさらなる連携強化
生産法人「サンライズファーム豊田」を設立
を進めていくための共通認識を明らかにした
し、環境制御技術を活用した高品質・高収量
上で重点戦略が示され、現在は、「生産」
「物
のトマト栽培を実施しています。また、IT
流・加工」
「国産農畜産物需要拡大」という3
管理ツールと現場改善活動を組み合わせて生
つの分野において分科会を設置し、経済界と
産性向上に取り組んでおります。
農業界の連携による具体的なビジネスの創出
を目指していると伺っております。
既に、個社での取り組みは開始しておりま
すが、農業の潜在力を十分に発揮し、その可
当会といたしましては、これまでに例のな
能性を更に広げていく上でも、個別企業ベー
い画期的な取り組みに敬意を表するとともに、
スによる「点と点」での取り組みから、経済
当会の「食クラスター活動」にも関連の深い
界と農業界という「面」での取り組みへと広
重点戦略テーマも掲げられていることから、
げていくことが求められていると存じます。
大変興味深く、また大いに期待して取り組み
経団連では、こうした観点から、かねてよ
を注視しているところです。
り日本農業法人協会など農業団体との連携・
現時点での取り組みの進捗状況と課題、最
協力の枠組みを構築してきましたが、本年5
終的な到達目標等についてご教示くださるよ
月、ご指摘のございま し た と お り 、 JA グ
う、よろしくお願いいたします。
ループと共同で「連携強化プラン」を公表い
たしました。
経団連側のコメント
(一社)日本経済団体連合会
内山田
竹
(トヨタ自動車㈱
志
副会長
会長)
このプランの3つの方向性、①技術力を主
体とした取り組みの展開、②バリューチェー
ンの構築、③農業が持つ産業政策と地域政策
の側面への配慮に基づき、「生産」
「 物流・加
工」
「国産農畜産物需要拡大」の3つのテーマ
に関して、JAと経団連とで提携プロジェク
トの創出に取り組むことといたしました。
具体的には、7月より分科会をスタートし、
道経連の堰八副会長、また経団連の荻田副
JA側、経団連側が有する技術やノウハウ、
会長よりご説明がございましたとおり、農業
また関心テーマや課題などについてマッチン
の成長産業化、競争力強化が喫緊の課題とな
グが図られるよう、まずはプレゼンテーショ
るなか、農産物の輸出促進や6次産業化など
ンやアンケート調査などを実施し、双方の関
により、国内外の需要拡大と高付加価値化を
心事等の把握に努めているところです。JA
図っていくことが重要となっております。
側の主な関心事としては、ITを活用した作
その際、鍵となるのが、道経連さんで取り
業の効率化・標準化、規格外野菜の商品化、
組まれている食クラスター活動のように、農
物流モデルの構築などが挙げられており、
業と観光やサービス業などの異業種との連携
徐々にではありますが、個別企業とJAとの
2
5
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経済懇談会
間で、議論へと前進させようとする動きもあ
績は見込めない状況にございます。
輸出実績を着実に上げて、大きな成果を生
ると伺っております。
当会としても新しい取り組みであり、また
み出していくためには、まずは多数の道内中
スタート直後ということもあって、まだ双方
堅中小企業が輸出に取り組む必要があります
のマッチング、パートナー探しの段階にある
が、輸出に際しては、輸出国・地域のビジネ
のが実情でございます。年度内を1つのター
ス情報や語学・貿易実務面のノウハウ等がな
ゲットにすえながら、具体的なプロジェクト
く、企業単独での取り組みは限界があり、支
の創出に結びつけられるよう、経団連として
援が必要と考えます。
も機会・場の提供をはじめ、各企業の取り組
国等の支援方策は充実しておりますが、道
みを後押ししてまいりたいと存じます。道経
内中堅中小企業が必要としている支援を実施
連の皆様におかれましても、食クラスター活
しなければ、輸出実績の拡大は困難でありま
動での実績を踏まえ、分科会への活動につき、
すことから、北海道では企業を個別に支援す
引き続きご参画、ご支援くださいますようお
るコーディネーターを配置し、輸出国・地域
願い申し上げます。
のビジネス情報の収集、卸・小売事業者との
商流ネットワークの構築、商談の直接支援な
ど商流・物流の構築を進めているところです。
■食の輸出促進への取り組み
具体的な輸出実績としましては、王子グ
ループと連携したタイへのミネラルウォー
北海道経済連合会
小
川
澄
男
副会長
(雪印メグミルク㈱
取締
ター、農業団体と連携したインドネシアへの
米、水産卸会社と連携したシンガポールへの
水産品等がありますが、本格的な輸出は今年
役常務執行役員北海道本部
度からで、金額はまだ小さい状況です。
長)
国は、「オールジャパン」での輸出促進体
私からは「食の輸出促進への取り組み」に
いく考えですが、中堅中小企業に対する地域
ついてお伺いいたします。
改訂
独自の取り組みへの支援の充実も必要と考え
2
0
1
4』の中で、中堅中小企業の革新により地
ております。これにつきまして、経団連の見
域活性化を目指すこと、また、同じく食の輸
解をお聞かせいただきたいと思います。
国においては、先の『日本再興戦略
出促進により世界を惹きつける地域資源で稼
ぐ地域社会の実現を掲げ、アベノミクスの効
果を地方に波及させようとしております。
平成2
3年1
2月、北海道の食産業の成長産業
化を目指す「北海道フード・コンプレックス
国際戦略総合特区」の指定を受け、地域資源
を活用し道内中堅中小企業とともに輸出拡大
を推進しておりますが、企業単独での事業活
動には限界があり、短期的には大きな輸出実
2
6
制による農林水産物・食品の輸出を促進して
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経団連側のコメント
(一社)日本経済団体連合会
勝
俣
(丸紅㈱
宣
夫
副会長
相談役)
組みも必須です。民間としても、安全安心な
農産品の生産、流通管理、ブランド構築など
に創意工夫で取り組んでいく必要があります。
官民をあげて、こうした問題を克服していく
ことが、JPECの主な役割でもあります。
日本最大の食料供給地域である北海道では、
「フード・コンプレックス国際戦略総合特
区」の指定を受け、生産から販売までの強固
農業従事者の高齢化や後継者不足など、将
なバリューチェーンを形成するとともに、
来に向けて農業の持続的な存続が危ぶまれる
コーディネータの配置、卸・小売業者との
状況にある中、農業改革を迅速に進め、競争
ネットワークの構築などの支援が実施されて
力のある産業にする必要があります。小川副
きております。また、道経連におきましても、
会長のご指摘の通り、その成長産業化を実現
食クラスター連携協議会における販売促進や、
するためには、食の輸出促進が一つの鍵とな
ビジネスマッチングを進めておられます。
ります。
北海道の農水産品は競争力が高く、輸出品
特に、政府の成長戦略が掲げた「農林水産
として大きなポテンシャルがありますので、
物および食品の輸出額を、現在の約5,
5
0
0億
今後も北海道が先駆的な取り組みを推進し、
円から、2
0
2
0年までに1兆円にする」との安
他の地域のモデルとなることで、日本全体の
倍政権の成長戦略を達成するには、政府、産
食の輸出拡大の牽引役となっていただきたい
業界、農業界等が認識を共有しながら、国を
と考えており、JETRO、JPEC、民間企業と
挙げて食料の輸出に取り組むことが肝要です。
も連携し、協議会などの活動を通じて、海外
その一例として、本年、農林水産省の補助
での商談会の開催や、海外流通事業者への橋
を受け、ジャパン・メイド・プロダクツ輸出
渡しなどの活動を展開していかれることを大
振興協議会(JPEC)が立ち上がりました。
いに期待しております。
この協議会には、商社、銀行、航空会社、地
経団連といたしましても、引き続き尽力し
方自治体などの関係者のみならず、全国から
ていく所存ですので、今後とも連携を取らせ
中堅中小の生産者も参加しており、オール
ていただければ幸いです。
ジャパン体制で、日本の農水産物の輸出を拡
大するための取り組みが進められています。
現状、輸出を促して海外市場に展開するた
めには、まだ解決すべき問題も少なくありま
せん。例えば、国レベルで海外市場ごとの需
要動向の把握、市場ごとの有望な品目とその
戦略の策定・見直しに取り組む必要がありま
す。また、輸出先国との関税制度や検疫体制
の調整、貿易手続きの簡素化、日本食ブラン
ドの海外への発信など、政府の直接的な取り
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経済懇談会
■食品の機能性表示のあり方
砂
憲
一
ヘルシーDoは、全国的に訴求力の高い北
海道ブランドを活かし、中堅中小企業の視点
北海道経済連合会
小
ところです。
副会長
(㈱アミノアップ化学
代表取締役会長)
に立ち、企業の自主責任では無く、北海道が
認定をすることによる信頼性を持った制度で
あり、制度の活用を通じ食の研究が活性化す
ることで、結果として国民の健康寿命の延伸
に繋がるものと考えておりますが、経団連の
私の方から「食品の機能性表示のあり方」
につきまして、お伺いいたします。国におき
評価及び今後のヘルシーDo発展に向けたア
ドバイス等をお願いいたします。
ましては、昨年6月閣議決定した『日本再興
戦略』、及び『規制改革実施計画』に基づき、
経団連側のコメント
加工食品及び農林水産物について、企業の責
任で科学的根拠をもとに機能性を表示するこ
とを検討しております。機能性表示の内容に
つきましては、一定の緩和がありましたもの
の、科学的根拠として求められる基準はまだ
不透明で、中堅中小企業に使いやすいものと
(一社)日本経済団体連合会
奥
正
之
副会長
(㈱三井住友フィナンシャ
ルグループ
会長)
なっておりません。
北海道では、独自の食品の機能性表示制度
今年6月に新設された国民生活委員会の委
「北海道食品機能性表示制度」、略称でヘル
員長に就任し、食品の表示制度についても担
シーDoと言いますが、これを全国で初めて
当しておりますので、私からコメントさせて
創設し、平成2
5年4月から運用がスタートい
いただきます。
たしました。現在の特保と比較しましても、
先程、小砂副会長からお話のありましたよ
申請後、認定までの審査期間は短く、費用も
うに、北海道では、昨年から独自の表示制度
約1/2
0と安価であることから、中堅中小企
「ヘルシーDo」制度の運用をスタートされ、
業にも使いやすい制度となっております。
既に2
6品目が認定されたと伺っております。
ヘルシーDoでは『「健康でいられる体づく
高齢者が増加し、消費者の健康志向が高
りに関する科学的な研究」が行われたことを
まっていることにマッチした取り組みである
北海道が認定したものです。』と表示し、道
ほか、北海道は高いブランド力を持っている
内製造で、製造事業者が自ら販売することを
だけに、「北海道認定」と表示することで、
要件としております。
商品の訴求力、さらには輸出力が一層強まる
表示については現在、効果効能表示ができ
2
8
ものと思われます。
ませんが、認定商品に論文情報のwebリンク
北海道では、2
0
1
1年にフード・コンプレッ
を記載できるよう規制緩和を継続要望し、か
クス国際戦略総合特区の指定を受けるなど、
つ北海道庁において道内農水産物の活用ニー
食品産業の研究開発・輸出拠点の形成を目指
ズが高い道外企業の参入解禁も検討している
されておられます。「ヘルシーDo」制度が目
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的実現に向け、大きく貢献することを期待し
ております。
加えて、違法な表示が見つかった場合に課
徴金を課す制度の導入に向けた検討を行うこ
もっとも、表示の問題については、昨年の
とが盛り込まれ、その具体的な制度設計は、
秋に相次いで発覚したレストランの不当表示
秋以降、国会において検討が行われる予定と
のような問題の発生にも注意を払う必要があ
されています。
ります。一連の事件では、表示と実際に使わ
商品の表示はブランドをアピールする有力
れている食材が異なることが問題となりまし
な手段でありますが、消費者の誤認を招くよ
た。その後、食への信頼を確保するため、先
うな不正な行為が行われた場合には、当該企
の通常国会で「景品表示法」が改正されまし
業の信頼が崩れるばかりか、業界や産業界に
た。
対する消費者の不信感が強まる恐れがありま
景品表示法は、商品・サービスの品質につ
いて、実際のものよりも著しく優れていると
す。
消費者の信頼を得ることが何よりも重要で
一般消費者に誤認される表示を禁止しており、
あるという原点を踏まえつつ、「ヘルシー
今回の改正では、行政の監視指導体制の強化、
Do」制度の更なる発展に向けて、取り組み
事業者の表示に関する管理体制の明確化など
を進められることを期待いたします。
が講じられています。
2
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