文章による説明

30. 過去時称と未来時称
英語は過去の人称変化は be 動詞だけ (was と were) ですが、ドイツ語では現在人称変化に準じ
た変化があります。相違点は単数1・3人称には人称語尾がないこと、および現在人称変化では単数2・
3人称に不規則変化がありましたが、過去人称変化には不規則変化がないことです。
1. 動詞の過去形は過去基本形に以下のような語尾をつけます。
不定詞
lernen
arbeiten
essen
過去基本形
lernte
arbeitete
aß
ich lernte
arbeitete
aß
du -(e)st
lerntest arbeitetest
aßest
er lernte
arbeitete
aß
wir -(e)n
lernten
arbeiteten
aßen
ihr -(e)t
lerntet
arbeitetet
aßt
sie -(e)n
lernten
arbeiteten
aßen
wissen
wusste
wusste
wusstest
wusste
wussten
wusstet
wussten
tun
tat
tat
tatest
tat
taten
tatet
taten
過去基本形が –e で終わるものにはかっこ内の e はつけません。また現在人称変化では単数2人称
で語幹が歯音 (s, ss, ß, sch, tz, z, x など) で終わるものには –st ではなく –t のみを
つけましたが、過去人称変化では読みにくい場合には –est をつけるだけで s を省略することはあり
ません。
特に重要な基本3動詞の過去人称変化はかならず覚えなくてはなりません。
不定詞
sein
haben
werden
過去基本形
war
hatte
wurde
ich
war
hatte
wurde
du
warst
hattest
wurdest
er
war
hatte
wurde
wir
waren
hatten
wurden
ihr
wart
hattet
wurdet
sie
waren
hatten
wurden
過去基本形に人称語尾をつける時に気をつけなくてはならない点は、過去基本形における幹母音の
長短です。幹母音の長短は動詞変化表や辞書を調べて、正しく記憶しなくてはなりません。例えば
sitzen の i は短母音ですが、過去基本形では saß [ザース] と長母音なのです。したがって wir
sassen としてはならず、正しくは wir saßen でなくてはなりません。
不定詞
brechen
geben
verlieren
erschrecken
sprechen
過去基本形
brach
gab
verlor
erschrak
sprach
[a:]
[a:]
[o:]
[a:]
[a:]
不定詞
essen
kommen
tragen
sitzen
vergessen
過去基本形
aß
kam
trug
saß
vergaß
[a:]
[a:]
[u:]
[a:]
[a:]
2. 英語では、未来形は助動詞の will あるいは shall と原形動詞を組み合わせて作りますが、助
動詞を使う点はドイツ語も同様です。ただし未来の助動詞は werden だけしかありません。本来この
werden は「 になる」という本動詞なのですが、これと不定詞を組み合わせて「 するようになる」、つ
まり未来時称の意味を持たせています。注意すべき点はドイツ語は助動詞を用いるときは本動詞は文
末におかれる、ということです。
werden の現在人称変化+ 不定詞(文末)
ich werde...kaufen
wir werden....kaufen
du wirst....kaufen
ihr werdet....kaufen
er wird.....kaufen
sie werden....kaufen
ドイツ語の未来形の本来の使い方は純粋に未来あるいは推量をあらわすことに用いられます。
Er wird bis sechs Uhr kommen.
He will come by six o`clock.
しかしドイツ語でも1人称ではしばしば意志を表すこともあります。
Ich werde das Buch kaufen.
I will buy the book.
「私はその本を買うだろう(つもりだ)」
「私はその本を買うつもりだ」
2人称で未来形を用いると、かなり強い命令の意味になることもあります。
Du wirst gleich ins Bett gehen.
You shall go to bed immediately.
「君はすぐにベッドへ入るだろう」
「君はすぐにベッドへ入りなさい」
また3人称では werden はしばしば推量の助動詞としても用いられます。
Er wird krank sein.
He is probably ill.
「彼は病気なのだろう」
「彼はおそらく病気だ」
ドイツ語の未来形は英語と違って、日常用いられることがあまりありません。それはドイツ語では現在
形がそのまま未来の意味も持っているからなのです。この点はドイツ語と日本語はよく似ています。
Ich gehe ins Kino.
I will go to a movie
「私は映画へいく」
「私は映画へいく(つもりだ)」
したがって未来形を用いて表現すると、1人称では意志を、2人称では命令を、3人称では推量をあら
わすことができますが、ふだん日常ではほとんど未来のことは現在形を用いて表現しています。