大型取引により 市場は再び活況に - Cushman & Wakefield

INVESTMENT MARKET UPDATE
大型取引により
市場は再び活況に
Japan Q3 2015

2015 年第 3 四半期の商業不動産取引額(住宅、ホテルを除く)は、前期の 6,172 億円
から 27%増の 7,842 億円であった(図 2)。また、今期は前年同期比でも 22%の増加と
なった。前年同期比での増加は今年に入って初めてのことである(図 1)。

年初から 9 ヶ月間の取引額は、金融危機以降の最高額を記録した 2014 年の同時期の
額をやや下回る水準である。このことから、日本の不動産投資市場が好調であることは
明白であり、2015 年は年間を通じても、2014 年の取引額に近い高い水準になることが
予想される。

今期は大型取引があり、総取引額を押し上げた。最大取引は PAG による GE 所有の
約 1,000 億円の超大型ポートフォリオの取得であった。ポートフォリオは国内の主にオ
フィスビルを対象としており、商業施設も含まれている。もう一つの大型取引として、ア
ゼルバイジャンの政府系投資ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)による優良リテール
物件の取得も挙げられる。

今後については、当面、日本の不動産投資市場は好調に推移するであろう。取引額が
今後大きく伸びることはないと思われるが、投資家の投資意欲は依然高く、利回りには
下押し圧力が掛けられていることから、価格上昇の余地も依然残されている。しかし、
利回りは既に非常に低い水準にあり、売り手と買い手の投資目線の折り合いは難しくな
っている。
29/10/2015
Contents
取引額
2
セクター種別
2
投資家種別
2
資金の出所
3
主要取引
3
見通し
3
Author
図1
Kayoko Hirao
Head of Japan Research
+81 (0)3 5512 8213
[email protected]
不動産取引額 (単位:10 億円)
4,500
4,000
3,500
3,000
Contacts
Dominic Brown
Head of Asia Pacific Research
+61 (0)2 8243 9999
[email protected]
2,500
2,000
1,500
1,000
500
Q1
Q2
Q3
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
0
Q4
Source: Cushman & Wakefield Research
cushmanwakefield.com
INVESTMENT MARKET UPDATE
1
Japan Q3 2015
2015
YTD Q3 average
セクター別取引額 (単位:10 億円)
Office
Retail
Industrial
Healthcare
Q3 2015
Q2 2015
Q1 2015
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
Q4 2014
Mixed Use
Other/Unknown
Source: Cushman & Wakefield Research
図4
セクター別取引割合
100%
80%
投資家種別
60%
REIT による取引の割合は減少、しかし依然動向は活発
40%
REIT による取引額(取得)は、前期に比べて減少したが、2015 年
第 3 四半期も、REIT は依然最大の買い手であった。REIT が取引
額全体に占める割合も前期の 56%から、今期は 35%へと減少し
た(図 5)。第 3 四半期の REIT の割合の減少は、非上場不動産ヴ
ィークルといった他の買い手が取引額を伸ばしたことが、主に起因
している。
20%
Office
Retail
Industrial
Healthcare
Q3 2015
Q2 2015
Q2 2014
0%
Q1 2015
2014 年の 2 つのヘルスケア資産を対象とした J-REIT の上場に見
られたように、ヘルスケア資産投資が拡大してきた。2015 年第 3 四
半期には、ヘルスケア施設投資特化型のジャパン・シニアリビング
投資法人が東証上場を果たした。ヘルスケア資産特化型の JREIT としては、3 件目である。ヘルスケア資産は比較的ロットサイ
ズが他の商業不動産に比べて小さく、結果として総取引額はそれ
ほど高くはならない。しかしながら、ヘルスケア資産投資の増加は、
投資家が利益を最大化するために、投資の多様化を図っているこ
とが読み取れる。
Q4
図3
Q4 2014
今期は、オフィスを主とする大型のポートフォリオ取引があったこと
から、オフィスを対象とした投資額は、前期比で 64%上昇した(図
3)。全体に占めるオフィス取引の割合も、前期の 45%から、今期は
58%にまで増加し、最も多く取引されたセクターの地位を維持した
(図 4)。
Q3
Source: Cushman & Wakefield Research
Q3 2014
オフィス投資の割合がさらに増加
Q2
Q3 2014
セクター種別
Q1
Q2 2014
世界中で継続している金融緩和と低金利は、投資家により良い投
資機会の模索を促している。米国連邦準備制度理事会が金利据え
置きを 9 月に決定したことから、こうした環境は短期的には続くこと
が予想される。日本の不動産市場においては、相変わらず投資対
象物件の不足が問題となっており、投資資金が溢れているにもか
かわらず、魅力的な投資物件の調達は難しく、他国のゲートウェイ
シティや主要市場に比べ、流動性が依然低い状態にある。
2014
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
2013
2015 年第 3 四半期の投資市場は、前期に比べ取引額も増加し、
勢いを取り戻した。今期の商業不動産取引額(住宅、ホテルを除く)
は、前期の 6,172 億円から 27%増加の 7,842 億円となった(図 2)。
今期の取引額は 1 年前の 2014 年第 3 四半期と比較しても、22%
の増加であった。年初から 9 ヶ月間の取引額は、金融危機以降の
最高額を記録した 2014 年の同時期の額をやや下回る水準である。
このことから、日本の不動産投資市場が好調であることは明白であ
り、2015 年は年間を通じても、2014 年に近い、高い水準になること
が予想される。今期の取引額を押し上げたのは、1,000 億円の超
大型ポートフォリオ取引、またアゼルバイジャンのソブリン・ウェル
ス・ファンドによる優良リテール物件の取得であった。
2012
不動産取引額(単位:10 億円)および第 1-3 四半期過去 10 年平均
2011
図2
取引額は再び増加
2010
取引額
Mixed Use
Other/Unknown
Source: Cushman & Wakefield Research
cushmanwakefield.com
INVESTMENT MARKET UPDATE
2
Japan Q3 2015
資金の出所
もう一つの大型取引は、前述の SOFAZ による優良リテール物件の
取得である。アゼルバイジャンの SOFAZ は、銀座 1 丁目の中央通
り沿いに昨年完成したばかりの商業施設「キラリト ギンザ」(延床面
積:16,582 ㎡)を、当該物件を開発したエリオット・アドバイザーズと
オリックスから取得した。価格は 523 億円である。SOFAZ にとって
は初の日本における不動産投資であり、三菱 UFJ 信託銀行もマイ
ナー出資を行った。
20%
Other/Unknown
Corporate
Private Property Vehicle
REIT share (%)
Q3 2015
Q2 2015
Q1 2015
Q4 2014
Q3 2014
0%
Public Sector/Government
Institution
REIT
Source: Cushman & Wakefield Research
図6
資金別取引割合(国内・海外)
100%
80%
60%
40%
20%
0%
Domestic
Q1-Q3
2015
今期は単体で 1,000 億円を越える取引はなかったものの、PAG に
よる GE からの総額約 1,000 億円のポートフォリオ取引が報じられ
た。対象資産は国内の 26 物件からなり、「紀尾井町ケルトンビル」
をはじめとする主にオフィスビルの他、商業施設も含まれている。
GE は本業に特化すべく、金融・不動産事業の撤退を全世界で進め
ており、日本においても昨年来、資産売却を実施している。
40%
2014
1,000 億円の超大型ポートフォリオ取引
60%
2013
主要取引
80%
2012
日本の不動産市場は特に東京において賃料の上昇が今後見込ま
れ、また円安傾向がオフショア投資家にとっては有利であることか
ら、日本の不動産市場は多くの海外投資家にとって魅力的な市場
となっている。SOFAZ の今回の投資に見られるように、特にコア資
産の投資家にとって、優良エリアにおける優良資産への投資は、中
長期的なリターン拡大の可能性をもたらすものと考えられている。
100%
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
2011
今期は新規参入の海外投資家が、日本における初の不動産投資
を行った。世界の主要なソブリン・ウェルス・ファンドの一つである、
アゼルバイジャンの国家石油基金(SOFAZ)である。ソブリン・ウェ
ルス・ファンドは近年日本での投資を活発化させており、シンガポー
ルの GIC、中国の CIC はそれぞれ 2014 年、2015 年に 1,000 億
円を超える大型物件を東京で取得した。また、直近では、ノルウェ
ーのノルウェー政府年金基金(運用はノルウェー中央銀行)が近い
将来日本への投資を行うことを発表した。投資対象は東京都心の
優良オフィスである。
投資家別取引額(単位:10 億円)
Q2 2014
2014 年以降、海外投資家による日本への投資額は徐々に増加し
ており、ここ数四半期では大型のクロスボーダー取引が散見された
(図 6)。2015 年第 1-3 四半期間でのクロスボーダー取引の全体
に占める割合は 15%である。
図5
2010
政府系投資ファンド等、海外投資家の投資意欲が増加
Foreign
Source: Cushman & Wakefield Research
見通し
市場は今後も堅調
日本の不動産投資市場は当面は好調に推移するものと思われる。
金融危機前に売買されたトロフィーアセットを含む物件の再販はほ
ぼ一巡しつつあり、今後、超大型取引は減少すると思われ、取引額
が大きく伸びることは考え難い。一方で、取引額の変動に関わらず、
高い投資意欲は継続しており、利回りには引き続き下押し圧力が
掛けられていることから、価格上昇の余地も依然残されている。し
かし、利回りは既に非常に低い水準にあり、売り手と買い手の投資
目線の折り合いは難しくなっている。利回りは短期的には低い水準
に留まることが予想される。
そうした中、一部の投資家は市場の上昇局面での保有資産売却を
目論み、売却のタイミングを模索している。買い手側との目線が合
えば、流動性が高まり、取引額の増加につながるであろう。いずれ
にせよ、日本の不動産投資市場は、国内外の投資家にとって、引
き続き魅力的な市場である。
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3
Japan Q3 2015
表1
主要取引
物件名
所在
買主
売主
セクター
価格(億円)
GE Capital 保有の 26 物件
国内
PAG
GE Capital
オフィス
リテール
1,000
キラリト ギンザ
東京都中央区
アゼルバイジャン国家石油
基金、三菱 UFJ 信託銀行
エリオット・アドバイザーズ・
アジア、オリックス
リテール
523
心斎橋アーバンビル
大阪市
関西アーバン銀行
京阪神ビルディング
オフィス
244
キューブ川崎
川崎市
MCUBS MidCity 投資法人
(REIT)
野村不動産の SPC
オフィス
200
AER (約 55%)
仙台市
ジャパンリアルエステイト
投資法人 (REIT)
PAG インベストメントマネジメ
ントの SPC
オフィス
リテール
186
大宮センタービル
さいたま市
日本リート投資法人 (REIT)
合同会社ニコラスキャピタル 5
オフィス
153
G スクエア渋谷道玄坂
東京都渋谷区
MCUBS MidCity 投資法人
(REIT)
三菱商事の SPC
オフィス
122
Source: Cushman & Wakefield Research
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4
Research
Research
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Head of Capital Markets Research
+44 (0)20 3296 2328
[email protected]
Dominic Brown
Head of Asia Pacific Research
+61 (0)2 8243 9999
[email protected]
Japan
Japan
Todd Olson
Managing Director
+81 (0)3 3596 7050
[email protected]
Kayoko Hirao
Head of Research
+81 (0)3 5512 8213
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