実際の飼養管理の要諦 牛 満腹とはどういうことか 牛の満腹とはどういう

1
2
実際の飼養管理の要諦
1.
2.
3.
4.
5.
6.
牛の満腹とはどういうことか
牛の食いかた
牛と水 関係
牛と水の関係
搾乳しているときの行動
牛の起きかたと寝かた
牛の歩きかた
乾乳牛の見かた
分娩後の低カルを防ぐ3つの手法
9. 分娩後のケトーシスを防ぐ2つの戦略
10. 乳房炎を防ぐための日々の注意点
11. 牛の調子はここに出る
12. 育成牛の養いかた
7.
良質な粗飼料を収益に変える前提条件
8.
牛 満腹とはどういうことか
牛の満腹とはどういうことか
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エサが牛の消化器官を通る順番
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3
4
反芻動物の消化器官
人と同じ消化器官
第4胃(しわ胃、ギアラ)
反芻胃
第1胃(ルーメン、こぶ胃、
ミノ)
第2胃(網胃、ハチノス)
小腸(コプチャン、シロ)
第3胃(葉胃、センマイ)
反芻動物だけの消化器官
(食道が発達した消化器官)
盲腸・大腸
(テッチャン、シマチョウ)
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1
5
人間の満腹感と空腹感
牛は炭水化物をブドウ糖として吸収できない
6
食べ始めて
から約20分
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牛は生理的に満腹感を感じない
„
牛はエサを食べても急激に血糖値が上がらない
ので満腹中枢は刺激されない
„
正常な牛が、エサがあるのに食べるのを止めて
寝るのは第1胃(ルーメン)がエサで充満したとき
=物理的な満腹
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7
8
物理的満腹で寝ている状態
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2
9
腹いっぱい食べるとここが開く
ここが開く
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11
乳牛の外貌が写真のようになっていれ
ば、物理的な満腹になっている。そうで
なければ、採食行動を阻害しているな
んらかの要因があることになる それ
んらかの要因があることになる。それ
らの要因を特定し、取り除くことがで
きれば、乳牛の採食量は、再び増加す
るはずである。
10
12
牛は腹いっぱいになったから
寝ているとは限らない
人間ができることは、乳牛がエサを食
べる環境を提供することだけである。
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3
13
牛が寝ている理由はどれだ!
14
1. 物理的な満腹
‰ これ以上食べられないから寝ていよう
れ
食
れな
寝
よう
2. 給与作業への馴致
‰ 飼槽に行っても食えないから寝ていよう=あきらめ
3. ルーメンアシドーシス
‰ おなかの調子が良くない、消化不良だ
4. ケトーシス
良質粗飼料を有効利用できない阻害要因
‰ 身体が思うように動かないから寝ていよう=だるい
牛 食いかた
牛の食いかた
5. 低カル・低マグ
‰ しびれているので立つのがオックウ
6. 蹄病の発生
‰ つま先が痛いので立つのがいやだ
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よい食いかた
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16
よい食いかた
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4
17
エサ押しのタイミング
口が届かないとエサがあっても食べられない
18
この牛舎では…
„
„
„
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隔壁から40±30㎝の範囲
隔壁から40
30㎝の範囲
においてあるエサを食べて
いた
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エサ押しのタイミング
隔壁から70cm以上の部分
隔壁から70
以上 部分
は「牛の口がとどなない」
隔壁から10cm以内の部分
も食い残す
20
タイミングが遅いと…
基本的には一緒の状態
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5
21
エサが少なくなったら…
22
牛は毎日同じ量は食べない
(牧草サイレージの採食量)
粗
粗飼料乾物摂取量(kg)
14
13
12
11
10
9
8
7
6
37
42
47
52
57
62
67
72
分娩後日数
イネ科単播区
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82
87
92
マメ科混播区
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えらび食い
77
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えらび食いの跡
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6
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えらび食いを起こしやすいTMR
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えらび食いの原因…
・
・
・
1. かたい粗飼料を5㎝以上の長さに切断する
2. 濃厚飼料の割合を上げる
濃厚飼料 割合を げる
3. エサを薄く広くのばす
„
哺乳時に子牛をいじめる
この条件のうち、二つ以上が重なると
「えらび食い」をするようになる!!
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健全な乳牛の採食行動
給与量を制限されている乳牛の採食行動
28
(フリーバーン+TMR給与、搾乳牛1日1頭当たり乳量 28kg)
(フリーバーン+TMR給与、搾乳牛1日1頭当たり乳量 30kg)
給与量が多く、エサ押しの回数も多い農家の場合
エサ押しの回数が少ない農家の場合
搾乳
搾乳
搾搾乳
搾乳
(広島県農業技術普及センター、「乳牛の採食行動特性調査によるTMR給与のあり方」より抜粋)
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(広島県農業技術普及センター、「乳牛の採食行動特性調査によるTMR給与のあり方」より抜粋)
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7
かため食いをしている乳牛の採食行動
29
(タイストールバーン+TMR給与、搾乳牛1日1頭当たり乳量 23kg)
給与量が少なく、エサ押しの回数も少ない農家の場合
ルーメンアシドーシス
亜急性アシドーシス(SARA)
ルーメンpHが5.0~5.5 まで低下している
状態を指す。臨床症状は一定でなくはっき
りしないことが多いが 摂取量の減少やば
りしないことが多いが、摂取量の減少やば
らつき、ボディコンディションの低下、下
痢、鼻血、突然死、はっきりしない健康問
題による高い淘汰率、跛行、蹄病、ルーメ
ンの炎症、肝膿瘍、および細菌性肺塞栓が
見られる。
→TMR給与でアシドーシスを引き起こしていた
搾乳
搾乳
急性ル メンアシド シス
急性ルーメンアシドーシス
ルーメンpHが突然急激に低下したときや、
ルーメン内の乳酸濃度が上昇した状態を指
す。臨床症状は、食滞、腹部の痛み、頻脈
(心拍数の増加)、呼吸数の増加、下痢、
無気力、よろめき、起立不能、および突然
死である。
(広島県農業技術普及センター、「乳牛の採食行動特性調査によるTMR給与のあり方」より抜粋)
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ルーメンアシドーシスは
複合的に酪農家の生産性を低下する
30
ルーメン発酵とルーメン絨毛組織
32
グラム陰性菌から発生するエ
ンドトキシンの作用によって、
ンドトキシンの作用によって
毛細血管の血流が阻害され、
蹄葉炎を起こしやすくなる
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8
33
穀類の給与とルーメンpH
牛舎でこうなったら注意
ストールで無意味に立ちっぱなしになっている乳牛が増えた
➾蹄(?)
➾亜急性アシドーシス(?)
ルーメン内で生産されたVFAを絨毛組織で吸い上げ
pH値が5.6以上になるまで採食行動を停止する!!
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亜急性ルーメンアシドーシスの初期
34
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35
亜急性ルーメンアシドーシスの末期
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末期:下痢症になる。牛舎に酸臭が漂う。
この状態になったら 粗飼料のみの給与
この状態になったら、粗飼料のみの給与
に切り替えて様子を見る
初期:未消化センイが増えるので、きめが粗くなる。粘性が低下するので
盛り上がらない。色は薄め。触るとザラザラする。この状態であれば、エサ
押しの回数を増やしたり、給与の組み合わせを工夫すればなんとかなる。
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9
37
生産性を低下させる負の連鎖
かため食い
えらび食い
濃厚飼料過多
ルーメン
アシドーシス
乳房炎の増加
エンドトキシンの
発生・吸収
排卵遅延による
受胎率の低下
血行障害による
趾蹄障害の増加
空胎日数の増加
肝機能低下
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産乳量を上げるための前提条件
牛と水 関係
牛と水の関係
採食量の低下
出荷乳量の低下
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理想的な水
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40
理想的な水質
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理想的とはいえない、ウォーターカップ
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水槽の掃除
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水槽のお掃除の後で・・・
44
乳腺の構造
乳腺胞
乳腺小葉
動脈血
乳腺葉
腺胞上皮細胞
乳小管
支持靭帯
腺胞腔
筋上皮細胞
乳小管
静脈血
乳管
乳 管 槽 (400 ml)
乳 頭 槽 (30-40 ml)
乳頭括約筋
乳頭孔
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45
46
塩の欠乏
„
„
„
„
„
„
最初の兆候は分娩後2週間以内から4週間までに塩を欲しがる
様子が見られる。
分娩2 月後 は 牛舎 世話をする人 手や衣服を舐めたり
分娩2ヶ月後には、牛舎の世話をする人の手や衣服を舐めたり
尿や厩肥から流れ出た液が浸みている土を食べ、牛舎の壁を
舐め、他の牛が放尿している尿を飲むようになる。
この時には食欲はなくなり体重は減り、食べなくなる牛も出てく
る。食欲が低下するに連れて乳の出も減ってくる。
牛はやせ衰えてもの憂げになり、皮膚(特に首周り)はかさかさ
になり、毛はバサバサになる。
最終的には震えが来て後ろ足がもつれ 弱って心臓が異常に
最終的には震えが来て後ろ足がもつれ、弱って心臓が異常に
なり、体温が下がって死ぬ。(突然死)
塩化ナトリウムの要求量は乾物飼料の0.46%位である。
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47
48
搾乳風景
搾乳されながらゆっくり反芻しているのが理想的な姿
搾乳し いるとき 行動
搾乳しているときの行動
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12
49
問題のある搾乳前後の行動
„
„
„
50
搾乳1時間前には漏乳する牛が何頭もいる
搾乳をするため 牛を立た た
搾乳をするために牛を立たせたのに搾乳の順番
搾乳
番
が来る前に寝てしまう牛が多い
搾乳が終わるとエサを食べずにすぐに寝てしま
う牛が多い
牛 起きかたと寝かた
牛の起きかたと寝かた
➾ 何かがおかしい!!
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Hiro IGARASHI Presents
51
牛の起きかた
52
牛の寝かた
倒れるように寝ると
乳房炎が増える
後躯の神経麻痺?
この姿勢で2~3
秒もたつくのは
問題がある
後躯の神経麻痺?
低血糖?
この姿勢で2~3
秒もたつくのは
問題がある
低血糖?
Hiro IGARASHI Presents
Hiro IGARASHI Presents
13
53
牛の寝相
54
Adapted from Sprecher, D.J.; Hostetler, D.E.; Kaneene, J.B. 1997.
Theriogenology 47:1178-1187 and contribution from Cook, N.B.,
University of Wisconsin.
牛 歩きかた
牛の歩きかた
どんな寝相でも基本的にはストール
に対して平行になるのが原則
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55
健全な歩きかた(スコア 1)
静止時の背中の状態 : 平坦
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歩行時の背中の状態 : 平坦
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軽度の被害(スコア 2)
静止時の背中の状態 : 平坦
歩行時の背中の状態 : 湾曲
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14
57
問題のある状態(スコア 3)
静止時の背中の状態 : 湾曲
歩行時の背中の状態 : 湾曲
かなりひどい状態(スコア 4)
静止時の背中の状態 : 湾曲
Hiro IGARASHI Presents
静止時の背中の状態 : 湾曲
歩行時の背中の状態 : 湾曲
歩行時の背中の状態 : 湾曲
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59
末期的な状態(スコア 5)
58
60
ジンプロスコアの解説
スコア1
正常
蹄病がない状態
佇立時も歩行時も背線は平坦である。歩様はゆったりと大股で頭も水平
に移動する。
スコア2
佇立時は背線が平坦であるが、歩行時に背線が前方に湾曲する。歩様
軽度の跛行
はわずかに正常とは違う。繋ぎ飼いでは起立直後に背中を丸める動作を
蹄病の発生開始 する。乳量は2%減
痛くて体重をかけられない
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スコア3
典型的な跛行
中程度の蹄病
佇立時も歩行時も背線が明瞭に湾曲する。一本以上の肢の歩幅が短い。
悪い方の足と反対側がわずかに沈みこむような様子が観察されるだろう。
繋ぎ飼いでも採食パターンが変わり、起立回数の減少、かため食い等が
起こる。乳量は4%減、乳脂率の低下、MUNの上昇?
スコア4
ア4
明瞭な跛行
蹄病の進行
背線の湾曲は常に明瞭。歩様が不自然で、頭の上下動が明確になる。
背線
湾曲は常 明瞭 歩様が不自然
頭 上下動が明確 なる
佇立時には悪くない肢に体重をかけている場合がおおくなる。繋ぎ飼いで
は飛節の腫れが生じる場合が多くなるだろう。乳量は9%減
スコア5
厳しい跛行
重度の蹄病
背線の湾曲は明瞭になる。移動を嫌がり、罹病した肢に完全に体重をか
けないようにする(三本脚)。長い歩行時には立ち止まり、立ちつくす。繋ぎ
飼いでは採食量が激減してしまう。乳量は15%減
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15
61
蹄病の種類
(赤字のものが栄養管理と関係すると言われている)
„
‰
‰
‰
„
効果的な蹄浴
ポイント1
手前の蹄浴槽には洗剤を入れる
軟部組織に派生する疾病
‰
62
ポイント2
蹄浴どうしを1.5~2mはなす
趾間皮膚炎(趾間腐爛あるいはま
たぐされと一般的に呼ばれる蹄病)
たぐされと
般的に呼ばれる蹄病)
趾皮膚炎(疣状皮膚炎、趾間乳頭
腫症、有毛イボなど様々な名称が
ある)
趾間過形成(趾間隆起あるいは趾
間結節とも呼ばれる)
趾間フレグモーネ(趾間壊死桿菌
症、フットロット、放牧型腐蹄病と呼
ばれる)
ポイント3
蹄浴剤の濃度と延頭数を守る
蹄角質に派生する疾病
‰
‰
‰
蹄球糜爛(蹄踵腐爛およびスラリー
ヒールとも呼ばれる)
蹄底潰瘍(限局性蹄皮炎とも呼ば
れる)
蹄葉炎
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蹄専用洗剤と蹄浴剤の出どころと使いかた
63
64
蹄専用洗剤
オリオン
カレイ蹄洗浄剤(3.82ℓ)
デラバル
HC40蹄クリーナー
洗剤1ℓ / 水100ℓ
150~200頭
蹄浴薬剤
オリオン
ヘルシーフット
薬剤 1ℓ / 水100ℓ
150頭
オバナヤ
フーフフィット・バス
薬剤 3~5ℓ / 水100ℓ
200頭
ホクレン
生産資材
消石灰 特々選
消石灰 20kg / 水80ℓ
200~300頭
硫酸銅
硫酸銅 5~10kg / 水100ℓ
150頭
乾乳牛 見かた
乾乳牛の見かた
現在の検討課題 : 特々選+ロンテクト?
Hiro IGARASHI Presents
Hiro IGARASHI Presents
16
65
乾乳にすることによる利益
乾乳期間を経ると…
乾乳期間を経ると
z 2産目の乳量が初産より増加する
z 3産目の乳量が2産目より増加する
z 4産目以降は3産目の乳量が維持される
Swanson(1965)
乾乳にするリスク
„乳房炎の新規感染
„周産期病の発生
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67
乳房内感染による乳房炎新規感染の頻度
(Green et al. In Practice 2002)
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66
68
乾乳軟膏の挿し方
Hiro IGARASHI Presents
17
乾乳期におけるケラチンプラグの形成不全の割合
(Green et al. Journal of Dairy Science 2002)
„
乾乳牛の飼養環境が悪化しているときの
対応策(ケラチンプラグの代用)
70
乾乳時の乳房炎対策
‰
‰
‰
„
69
急速乾乳
乾乳直前の乳量をできるだけ
15kg/日以下にする
乾乳牛を乾燥した環境で管理し、
かつ、感染しやすい期間にはディッ
ピング等の処理をする
分娩前後の乳房炎対策
‰
‰
乳房浮腫を防ぐ:Na+、K
K+の過剰摂
取による低カル状態
漏乳を防ぐ:原因菌の増加とともに
遊離脂肪酸の過度の動員による脂
肪肝、ケトーシスの可能性が増大
する
Hiro IGARASHI Presents
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乳熱・原発性ケトーシスとその他トラブルの発生率
Hiro IGARASHI Presents
71
72
周産期病の原因
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18
73
乾乳にする意味
74
ここまで食べていれば満足
乳房炎
周産期病
産乳量増加
による利益
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ストレスの少ない乾乳牛の飼いかた
Hiro IGARASHI Presents
75
„
„
„
„
„
„
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76
乾乳牛の見かたのまとめ
肋が張っていること
下腹が落ちていないこと
腹が落ち
な
右腰が落ち込んでいないこと
肥った乾乳牛は繁殖が悪かった証拠
空胎が短い乳牛は肥れない
痩せた乾乳牛は病気
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19
77
78
乳熱(低Ca血症)
乾乳牛のリスク管理、その1
分娩後 低カルを防ぐ3
分娩後の低カルを防ぐ3つの手法
手法
Hiro IGARASHI Presents
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乳熱(低Ca)を防ぐための乾乳管理の
基本的な考え方
乳熱の発生を減らすためには乾乳後期にCa供給量を
「減らす」か「過剰にする」かのどちらかに徹底する
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79
80
乾乳期を2群に分ける場合
Caを抜くやり方(PTH, Vit D3)
安藤道雄の推奨値
DCADを「-5 to -10meq」にするやり方
Dr.Jesse Goff の推奨値
乾乳前期
乾乳後期
DIM
2.0%BW
1.6%BW
NEl
1.57-1.61Mcal/kg
1.57
1.61Mcal/kg
乾乳後期
TDN
60%
68-70%
TDN
69-70%
CP
12%
14%
CP
14-16
Ca
>0.4%
≒0.35%
穀類
3.6-5.4kg/d
P
≒0.30%
<0.5%
Ca
1-1.2%
Ca/P
1.8-2.0%
0.7-0.9%
P
0.4-0.5%
米国がDCADにこだわるのは、粗飼料がアル
ファルファ主体であるため、乾乳期にカリ(K)の
過剰摂取となる。そのため乾乳後期に酸性飼
料を与えることで血液を弱酸性にし、分娩後に
骨からCa動員をはかるやりかた。
Mg
0.40%
K
<0.7% (≒1.5-1.8%)
Na
<0.1%
S
0.3-0.4%
Cl
>0.7%
DCAD(meq)
= [(%Na/0.023+%K/0.039)–(%Cl/0.0355+%S/0.016)]/100g
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20
81
乾乳期を1群で管理するやり方
82
Drackley の推奨値
NEl
1.30-1.32Mcal/kg
TDN
58-64%
58
64%
CP
12-15%
MP
>1,000g/d
デンプン
12-16%
F-NDF
0.7-0.8%BW
Mg
>0.4%
Ca
≒0.9%
P
0.27-0.40%
K
<0.7% (≒1.5-1.8%)
Vit.E
>1,500IU
乾乳牛のリスク管理、その2
3種類のケトーシスの対処と
3種類
ケト シス 対処と
分娩後のケトーシスを防ぐ2つの戦略
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83
牛群レベルのケトーシスの予兆
84
泌乳曲線の変化
50.0
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45.0
40.0
35.0
日
乳 30.0
量
25.0
㎏
( )
1. 予定日より1週間ほど早く分娩するようになった
(特に初産が)
(特に初産が)。
2. 夜間分娩が増えた。
3. 後産が半分落ちて半分残るような気がする。
4. 分娩直後の潜在性乳房炎新規感染が増えた。
5 泌乳ピークが低く、かつ、持続しない。
5.
泌乳ピークが低く かつ 持続しない
6. パーチング姿勢と斜めに寝る個体が増えた。
7. 初回発情が50日以降になった。
20.0
15.0
10.0
5.0
1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47
分娩後(週)
Hiro IGARASHI Presents
21
85
ケトーシスのタイプ別の特徴
項目
タイプⅠ
タイプⅡ
タイプⅢ
自然発生的な
アンダーフィーディング
過肥牛:脂肪肝
高水分サイレージ
血中 BHBA
非常に高い
高い
非常に高い、または、高い
血中 NEFA
高い
高い
標準、または、高い
血中 グルコース
低い
低い(初期は高い)
さまざま
血中 インスリン
低い
低い(初期は高い)
さまざま
原因
ボディコンディション
おそらく痩躯
過肥(または、体脂肪を失って
いるかもしれない)
さまざま
初期には肝臓の中性脂肪、
その後ケトン体
さまざま
NEFA の動態
ケトン体
肝臓 糖新生
高い
低い
さまざま
肝臓 病理
なし
脂肪肝
さまざま
分娩後 3~6週目
分娩後1~2週目
さまざま
最も危険な時期
回復
非常に良好
困難
良好
診断
分娩後の BHBA
分娩前のNEFA
サイレージVFA分析
対策
分娩後の管理と栄養
分娩前の管理と栄養
タイプⅠケトーシスへの対処
„
„
„
„
濃厚飼料の増給によって分娩後のエネルギー不足を解
消することで対処する
給与作業の改善によって、かため食い・選び食いを防ぎ、
ルーメンアシドーシスを防ぐことがポイント
搾乳牛1群管理の設定乳量が低い場合に頻繁に発生し
ている
分離給与では、乾乳後期に給与している濃厚飼料の不
足によって多く発生する
サイレージの破棄、または、希
釈、あるいは、分割給与
Hiro IGARASHI Presents
„
„
Hiro IGARASHI Presents
87
タイプⅡケトーシスへの対処
„
86
乾乳後期の糖蜜飼料(スイートタイム、トランスミックス)
の給与が効果的
乾乳後期へのバイパスコリン(トランスミックス)の給与
が効果的
ストロー類を補足することで、移行期のエネルギーコン
トロールをすることが有効とされるが、ストロー類をTM
Rに混合する場合は「短く(≒2.5cm)、かつ、鋭利に切
断」することが必須。(選び食いを防ぐため)
88
タイプⅢケトーシスへの対処
„
„
„
„
„
酪酸の摂取量が50~100gで潜在的なケトーシスを引き起こす可
能性がある
泌乳初期に酪酸の摂取量が200g以上あると深刻なケトーシスを
引き起こす可能性がある
泌乳初期に酪酸の摂取量が450~900gあると間違いなく深刻な
ケトーシスを引き起こす
分娩前後の給与を「避け」育成牛、泌乳後期、乾乳前期へ給与
分娩前後で酪酸の摂取量が50g以下になるようにする
酪酸発酵していないサイレージか乾草で「薄める」
酪酸割合が現物中0.5%であれば現物10kgまでの給与
注:糖蜜飼料か大麦を併給した場合には酪酸摂取量100~200gまでは耐えられると
思う
‰
‰
Hiro IGARASHI Presents
Hiro IGARASHI Presents
22
移行期(乾乳後期+産褥期)にエネルギーをコントロールして泌
乳初期における負のエネルギーバランスを軽減する手法
(N. A. Janovick and J. K. Drackley, 2010)
89
分娩後にタンパクコントロールをして泌乳初期における負のエ
ネルギーバランスを軽減する手法
(R. A. Law,et all, 2009)
90
分娩直前の乾物摂取量の低下を防ぎ、
分娩後の乾物摂取量を早く立ち上げる
ことができることで産褥期のケト シス
ことができることで産褥期のケトーシス
を予防し、かつ、繁殖を改善できる可能
性が高い
産褥期の産乳量は高エネルギー
飼料を与えた場合より低い
➾フラット・ラクテーション
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分娩後のケトーシスを防ぐ2つの給与戦略
„
92
乾乳後期~産褥期ではタンパクを充足させるがエネルギー濃度を制限し、
泌乳の立ち上がりを抑え、分娩直後の乾物摂取量を増大することで移行期
における負のエネルギーバランスを縮小する
‰
‰
„
91
麦稈類の混合が有効とされる
アルファルファ乾草を乾乳牛に給与することでカリ(K)の過剰摂取となるため、比較的
カリ(K)含量の低いとうもろこしサイレージで薄める必要がある。その結果、乾乳期にエ
ネルギー過剰になってしまうことが背景にある
分娩後12週間(84日間)高エネルギー+低タンパクにすることで泌乳前期の
泌乳量を抑制し泌乳前期における負のエネルギーバランスを軽減する
(University of Reading’s Centre for Dairy Research)
‰
‰
‰
‰
泌乳ピークは「高エネルギー+高タンパク飼料」を与えた場合より1.5㎏/頭/日程度低い
13週目以降ににタンパクレベルを引き上げることで産乳量を回復することができる
空胎期間は「高エネルギー+高タンパク飼料」を与えた場合より平均32日間短縮した
(133日➾101日)
このアプローチは粗飼料がペレニアルライグラスサイレージ、あるいは放牧であり、乾
乳期に濃厚飼料をほとんど与えていないことが背景にある
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乳房炎を防ぐため 日々 注意点
乳房炎を防ぐための日々の注意点
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23
93
乳頭・スコアリング・システム
乳頭刺激後、ユニット装着まで短過ぎ(60秒未満)ても長過ぎ
(180秒以上)でも乳頭口の過角化を助長する
94
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95
乳房炎と初回受胎率(David Wolfenson, Hebrew大学,イスラエル)
96
2000年から2005年の235,000回の初回人工授精の結果
非感染群 :AI前後ともSCC < 150,000
治癒群
:AI前SCC > 150,000
AI後SCC < 150,000
,
新規感染群 AI前SCC < 150,000
AI後SCC > 150,000
慢性群
:AI前後ともSCC > 150,000
43.0%
プレディッピング
乳頭先端のもみ洗い
前搾り(5回)
40.4%
分娩後の子宮疾患を伴う場
合は4.1%さらに低下する
36.3%
36.5%
34.8%
32.4%
30.7%
乳頭の清拭(1頭1布)
乳頭刺激後
60~120秒で
ユニットを装着
ポストディッピング
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24
乳房炎と繁殖の関係(David Wolfenson)
97
98
(急性臨床型乳房炎作成モデルによる結果)
„
„
„
グラム陰性菌(大腸菌など)によって産生されたエンドトキシ
ンにより血漿エストラジオール(卵巣から分泌される卵胞ホ
ンにより血漿エストラジオ
ル(卵巣から分泌される卵胞ホ
ルモン)濃度の低下を招きLHサージ(排卵直前に黄体ホル
モンが大量に分泌されること)の低下と遅れ、排卵の遅れを
引き起こす。これによって受胎率の低下をまねく
グラム陽性菌(Streptococcus uberis)に感染してもその毒
素により、発情発現が抑制され、ホルモン濃度が変化し同
様の結果を引き起こす
非感染群と乳房炎感染群の70%は発情から30時間で
排卵したが、乳房炎感染群の30%は排卵まで70時間を
要するか、無排卵であった
牛 調子はここに出る?
牛の調子はここに出る?
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後乳房に赤味がさし、前乳房の毛足が短く、乳
房表面に血管が走る
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99
100
顔に血管が浮き出て見える
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25
101
首筋に血管が透けて見える
ただだいま絶好調!
初回分娩月齢 二三ヶ月
平均空胎日数 一〇一日
平均産乳量 三三~三六㎏
TMR(設定乳量三十八㎏)
給与のみ
搾乳牛にはTMRセンターから供給される
育成牛 養いかた
育成牛の養いかた
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淘汰率
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103
牛群頭数維持のために必要な育成牛頭数
(更新率)
102
分娩月齢、体重と初産牛の産乳量
104
初産分娩月齢
22
24
26
28
30
32
34
36
66
牛群頭数維持に必要な育成牛頭数
20
40
44
48
51
55
59
62
22
44
48
52
56
61
65
69
73
24
48
53
57
62
66
70
75
79
26
52
57
62
67
72
76
81
86
28
56
62
67
72
77
82
87
92
30
61
66
72
77
83
88
94
99
32
65
70
76
82
88
94
100
106
34
69
75
81
87
94
100
106
112
36
73
79
86
92
99
106
112
118
牛を殺すとエサ代が増える最大の理由!!
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26
105
月齢ごとのインデックス
月齢
体重 (kg)
体高 (cm)
106
平均増体重
体重/体高比 (kg/cm)
1
59
~
61
80.5
~
84.3
0.73
~
0.75
2
80
~
86
85.1
~
89.4
0.95
~
0.96
3
103
~
111
89.4
~
94.2
1.14
~
1.18
4
125
~
136
93 7
93.7
~
98 6
98.6
1 32
1.32
~
1 38
1.38
5
147
~
161
97.5
~
102.6
1.50
~
1.57
6
169
~
185
101.1
~
106.7
1.66
~
1.73
7
191
~
210
104.4
~
110.0
1.82
~
1.91
8
213
~
235
107.4
~
113.0
1.98
~
2.07
9
235
~
259
110.2
~
116.1
2.13
~
2.23
10
257
~
284
111.8
~
118.6
2.30
~
2.39
11
279
~
309
115.3
~
120.9
2.41
~
2.55
12
301
~
334
117.6
~
123.2
2.55
~
2.71
13
323
~
359
119.6
~
125.2
2.70
~
2.88
14
345
~
384
121.4
~
127.0
2.84
~
16
389
~
434
124.5
~
130.0
3.13
~
3.34
18
434
~
483
127.5
~
132.3
3.39
~
3.64
20
478
~
533
129.5
~
134.6
3.68
~
3.96
22
522
~
582
131.3
~
139.7
3.96
~
4.16
24
566
~
632
132.6
~
143.5
4.27
~
4.41
性成熟が起こる
最も重要な時期
3.02
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107
粗飼料の摂取量と濃厚飼料の給与量
108
消化器官の容積比
(DG 0.74 を得るための)
粗飼料給与量 (kg)
体重
250300
300350
350400
400500
500650
乾草
10
1.0
20
2.0
30
3.0
40
4.0
50
5.0
60
6.0
70
7.0
80
8.0
ラップ
1.7
3.5
5.2
7.0
8.7
10.4
12.2
13.9
TDN サイレージ
2.9
5.8
8.7
11.6
14.5
17.4
20.3
23.2
3.10
3.6
3.0
2.3
1.6
1.0
0.3
-0.3
-1.0
3.31
3.9
3.3
2.6
1.9
1.3
0.6
-0.1
-0.7
配合飼料
3 94
3.94
(TDN72%)
48
4.8
41
4.1
35
3.5
28
2.8
21
2.1
15
1.5
08
0.8
02
0.2
4.31
5.3
4.7
4.0
3.3
2.7
2.0
1.3
0.7
5.03
6.3
5.7
5.0
4.3
3.7
3.0
2.3
1.7
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哺乳時にスターター(食べやすい固形物)を食べさせることがルーメンを大きくする
➾9~11ヶ月齢で粗飼料をよく食べることができる
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27
109
初乳の給与量とタイミング
110
THANKS for COMMING!!
Let’s Start Discussion.
子牛に下痢をさせないコツ
1. 初乳をできるだけ早く飲ませる
3. 柔らかい乾草を置いておく
2. 定時、定温で哺乳する
4. 清潔な水を自由に飲ませる
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28