企業の農業参入の実際

企業の農業参入の実際
こんにちは、行政書士の吉村と申します。私からは、TPP等ここ数年何かと話題に取り
上げられる農業について、企業の新規就農の視点からお話させていただきます。
農業者の高齢化等に伴う耕作放棄地の増大に歯止めをかけるべく、平成21年に農地法
の大改正が行われました。
平成26年12月農林水産省経営局調べによると、この改正により農業へ参入する法人
数は下記で示す通り、改正後飛躍的に増加しています。※
改正前の6年間
法人数
(株式会社数)
1年当たりの
参入法人数
改正後の6年間
436
1712
(250)
(1060)
65
342
増加数
増加率
1276
393%
(810)
(424%)
278
530%
※改正前 6 年(平成 15 年 4 月~21 年 12 月)
、改正後 6 年間(平成 21 年 12 月~26 年 12 月)
次に、改正後に参入を果たした法人について、業種別に見ていきます
食品関連産業
418
その他卸売・小売業
農業畜産業
317
NPO法人
建設業
192
学校、医療、社会福祉法人
65
製造業
81
その他(サービス業等)
369
合計
85
185
1712
このように、改正後、飛躍的に農業へ参入する企業が増加し、またあらゆる業種や法人形
態からの参入があることがわかります。
Q.それでは、農業に参入していくためには、どのような要件が必要なのでしょうか?
A.農業へ参入するための要件(リース形式)
1.農地を借り受ける際、解除条件付きの使用貸借、賃貸借契約の締結があること
2.地域において適切な役割分担を担うこと
3.役員のうち 1 人以上が、農業に常時従事すること
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従来、農業を営むためには、農家であることが必須であったのですが、「リース形式」す
なわち農地を借り受けて農業に参入する場合は、既存の事業が建設業等どのような事業で
あっても要件を満たす限り、農業への参入が可能となりました。
Q.ところで、巷で良く耳にする「農業生産法人」とは、どのような法人をいうのでしょ
うか?
A.これは、上記のようなリース形式、すなわち農地を借りて参入する企業をいうのでは
なく、農地の所有権を取得して農業経営を営む法人のことを指します。
そして農業生産法人になるためには、以下の要件を満たす必要があります。
1.譲渡制限規定のある株式会社、合同会社、農事組合法人であること
2.主たる事業が農業であること(売上高の過半)
3.議決権(出資等)の4分の3以上は、農業関係者で占めること
(食品関連企業については、2分の1未満までは出資が可能です。
)
4.役員の過半数が農業の常時従事者であること
農業に参入する企業が増えているのも事実であり、実際、新規就農支援センターには、農
業を始めたいという相談が、毎年かなりの数あるようですが、農業技術の習得、田舎での生
活スタイルへの適応、地域の農業業者との付き合いなど、他の産業にはない、農業経営特有
の難しさがあるため、相談時点で断念するケースも多いと聞きます。
また農地の貸し手と借り手、売り手と買い手の思惑や諸条件が折り合わないことも多く、
参入を果たせたとしても参入後数年間は、ほとんどの事業体が赤字経営を余儀なくされて
いる状況です。
企業イメージの向上や雇用の促進といった、企業が農業へ参入することで得られるメリ
ットは少なくないと考えられますが、実際の参入にあたっては、事前にリスク等を洗い出し、
綿密な計画を立てる必要性が、他の事業を行う時以上に大きいと思います。
吉村行政書士事務所
行政書士 吉村貴志
神戸市中央区栄町通6丁目1番地18-702
TEL 078-381-9185 FAX 078-381-9186
E-mail:[email protected]
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