阪南論集創刊 50 巻記念論文集発刊に寄せて

阪南論集創刊50 巻記念論文集発刊に寄せて
阪南論集創刊 50 巻記念論文集発刊に寄せて
今春,阪南大学は創立 50 周年を迎えました。大学にとって 50 年というのは,決して長い歴史
とは言えないかもしれません。けれども半世紀の間に,本学は商学部のみの単科大学から,社会
科学・人文科学系の 5 学部と大学院 1 研究科を擁する総合大学として堅実かつ着実に発展してき
ました。同時に,わが阪南論集も創刊第 50 巻を刊行するに至りました。これも偏に阪南大学学会
員の皆様のご研鑽と関係者各位のご協力の賜物と深く感謝申し上げます。
当初本誌は阪南大学論集と称していましたが,1970 年(第 2 巻)より現行のとおり阪南論集と
改称され,1979 年(第 15 巻)から,人文科学編と社会科学編に分冊されました。さらに 1991 年
(第 29 巻)以降,刊行母体が阪南大学から阪南大学学会へと改められました。14 年前(第 37 号)
から査読制度(レフェリー制)が導入され,現在に至っております。
少し大学と論集の関係について触れてみたいと思います。本来大学は高等教育機関として位置
づけられ,しばしば最高学府とも呼ばれます。そこでは研究が主体で,学問領域により研究方法
に若干の相違はあっても,大学教員は自らの研究課題について徹底的に調査・研究し,その研究
成果を所属する学会の機関誌や,大学が発行する論集または紀要に寄稿ないし投稿を行います。
本学では,阪南論集がまさにそれに該当します。そして,論集は学問研究の府たる大学にとって
中核的な存在であるべきものです。
一方で大学は教育機関ですから,大学教員にとって教育は不可欠の職責です。しかも近年,ま
すます教育に費やす教員の労力は激増しています。現在,大学進学率が 50%を上回り,大学全入
時代と言われる時代を迎えております。同時に少子化傾向が進み,入学者確保を巡る大学間競争
はいよいよ激しくなっております。こういった現状の中で,教員は基礎学力の乏しい学生のため
にリメディアル教育を施し,学生生活や就職問題についてきめ細かい指導や助言を行い,受け入
れた学生たちが一人前の社会人として成長するよう見守らねばなりません。畢竟,教員の職務は
教育に偏り,研究に費やす時間が減少する傾向にあります。その結果,論集への寄稿も滞りがち
になってしまいます。
まして本学は教育の特徴として実学教育を標榜し,学生たちが社会人基礎力を養い,社会的適
応能力を高め,企業や地域社会のニーズに応える能力を身に付けさせることに努めております。
それとの関わりにおいて,教育にかける本学教員の負担は,昔日のそれに数倍すると言っても過
言ではないでしょう。しかしながら,だからと言って研究を疎かにすることは許されません。大
学において研究と教育は表裏一体のものであり,研究成果を分かりやすく学生たちに教授するこ
とこそ,文字通り「教授」の使命であるからです。
本学の実学教育は,決して研究と背反するものではなく,「研究−講義(理論)−ゼミ活動(実
践)
」が表裏一体となって展開されているところに特徴があります。理論と実践が程よくバランス
を取りながら,社会に適応する能力と問題解決能力を持った学生を育てていくことが本学の教育
の目指すところである限り,教員は研究を疎かにするわけにいきません。
冒頭で述べたとおり,阪南論集にレフェリー制度が導入されてから,14 年の歳月が経過します。
研究の資質を高めるため,寄稿もしくは投稿された論文を厳密に査読し,論集に掲載される論文
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の質的保障を確保することによって,論集の価値は高まり,ひいてはその大学の価値やブランド
力も一段と高まります。誌面をすぐれた論文で充たすことは,大学の良心であり,魂であると心得,
今後とも全学会員の皆様が一層の研鑽に努められますよう,心から期待するとともに,阪南論集
のますますの発展を祈念しています。
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阪南大学学長 辰巳 浅嗣
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