平成25年(ワ)第515号 福島第一原発事故損害賠償請求事件 原 告 遠 外19名 被 告 国,東京電力株式会社 藤 行 雄 第26準備書面 (原賠法と民法上の不法行為規定の適用問題と賠 償額との関係) 2014(平成26)年9月19日 千葉地方裁判所民事第3部合議4係 御中 原告ら訴訟代理人 弁護士 福 武 公 子 弁護士 中 丸 素 明 弁護士 滝 沢 信 外 -1- 第1 原告らの主張 原告らは , 原賠法が民法 上の不法行為規定の適用を排除するもので は な い ことを前提として, 被告東京電力に対し,主位的に 民法709条等の 民 法 上の一般不法行為規定に基づく賠償請求を,予備的に 原賠法3条1項 に よ る賠償請求 を, それぞれ 主張しているところである。 ところで, 原賠法と民法上の不法行為規定の適用いかんにより被告東 京 電 力が負うべき損害賠償額に差が出るか否かについて は,原告らは 以 下 の と おり主張する。 1 原告 らは被告東京電力に 対して請求している 損害は ,いわゆる「原 子 力 損 害」 であり ,この点は原賠法と民法上の不法行為規定の適用如何に よ っ て 異ならない。 しかし, 損害賠償額については, これまで主張してきた通り,被告 東 京 電 力の過失の有無・内容 が損害の評価に影響を及ぼすことは明らかで あ る 。 そ して, 訴状でも触れたように,本件事故が被告東京電力による 「人 災」 と 評価されていること( 甲 イ1・ 国会事故調報告書 参照 )から すれば , 被 告 東京電力の過失の有無・内容についての審理は不可欠と言える。 したがって, 仮に 原賠法が適用された場合にも,被告東京電力の過失 の 有 無・内容を 検討するという前提に立つのであれば,その限りでは 本 件 に つ いて原賠法と民法上の不法行為規定のどちらが適用されても,そこ か ら 導 き出される損害賠償額には 違いがないと 評価することができる。 2 しかしながら, 被告東 京電力 は,本件において一方で民法上の不法 行 為 規 定の適用を排除しつつ,他方 原賠法が適用される場合は,原子力事 業 者 の 過失の有無・内容を考慮する必要がないという 主張を一貫して行って い る。 す なわち,被告東京電 力は,共通準備書面⑶において,「民法7 09 条 に 基 づく請求が許されな いとしても,原賠法に基づいて原子力事業者 の 無 -2- 過 失 責任を追及すること ができるから,何らの不利益はなく,民法7 0 9 条 に 基づく請 求を許容す べき実益自体全く存しない」( 11 頁)と主張 す る 一 方で, 「一般論とし て,精神的損害の慰謝料の額の算定に当たっ て 加 害 者 の故意・過失の有無 ・程度が影響を及ぼし得るとの考え方がある こ と に つ いては否定しない」 としながら,「東日本大震災に起因する本件 事 故 に 関 しては,地震に関す る専門機関を含めて誰もが予想をしていなか っ た 程 度 の地震及びそれに基 づく津波によるものであ ることを踏まえれば 」 , 原 告 らの蒙った精神的損 害について ,およそ被告東京電力自身の過失 の 有 無 ・ 程度を考慮する必要 がないと主張している (13 頁) 。 上 記のような被告東京 電力の主張を前提とする限り,原賠法と民法 上 の 不 法 行為規定の適用いか んにより被告東京電力が負うべき損害賠償額 に 差 が 出 る余地が生ずる。 3 したがって,原告らとし ては, 原賠法と民法上の不法行為規定の適 用 い か んにより被告東京電力が負うべき損害賠償額に違いを生じさせないた め に も,被告東京電力の過失の有無・内容についての審理を求める。 第2 1 被 告東京電力に対する 求釈明 被 告東京電力は,原子 力損害の賠償に関する法律に基づく慰謝料請 求 に お い て,過失の存否及び その程度を含めた加害者の非難性は,一切慰 謝 料 算 定 の考慮要素にならな い旨を主張するのであれば,一般に「慰謝料 の 額 は , 事実審の口頭弁論終 結時までに生じた一切の諸般の事情を斟酌し て , 裁 判 所が裁量によって算 定する。」とされているところ,何故,裁判 所 の 裁 量 が考慮要素の限定と いう形で制約されるのか,説明されたい。 2 被 告東京電力の過失の 有無を審理する必要性はな いとする主張は, 原 子 力 損 害賠償紛争審査会の 指針の実体的,手続的合理性が過失の有無に 関 す る 審 理を 排除 するという 趣旨の主張であるのか,明らかにされたい。 -3- 3 被 告東京電力の上記 1 ,2の主張は,中間指針 等に基づく慰謝料の 金 額 に 不 服のある被害者が, 被告東京電力の過失及びこれによる慰謝料の 増 額 を主張して訴訟を提起することまでもが許されないとする主張であるのか, も し そうであるとすれば ,その根拠も含めて明らかにされたい。 以上 -4-
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