みんなの思い出に残る ミニ運動会をしよう

すと、児童は喜び、学級会への期待も高まった。
話合いの柱は、バス停型の短冊に書いて掲示
し、話合いの流れに合わせて学級会バスを動か
していくこととした。学級会バスに注目するこ
とで話合いの進み具合が分かり、今、何を話
し合っているかを意識させるようにした。
議題の出し方については、以前からやりた
いことを折り紙などに書いて持ってくる児童
がいたので、
﹁議題のポストを作ろうよ﹂と
提案した。学級会の日時を知らせ、議題案を
一、二学期は教師が話合いを進め、日直の
児 童 が 司 会︵ 指 名 ︶、 次 の 日 直 が 記 録︵ 教 師
入れるよう促していった。
に連絡したいこと﹂では、コの字型の中央に
ように少しずつ役割を分担した。﹁次の学級
が書いた短冊を張る、バスを動かす︶という
児童が連れてきた生き物の世話をどのように
たいゲームを取り上げてみんなで遊んだり、
本時の議題名
番制の司会グループで行うことにした。
な。
﹂ と い う 児 童 の 声 を 受 け、 三 学 期 か ら 輪
会 は い つ だ ろ う。 司 会 を す る の が 楽 し み だ
出て自分の思いを伝える児童が増え、それを
四 月、 初 め て の 学 級 会 で、﹁ こ の 時 間 は、
みんなで話し合って決めたことが、自分たち
聞こうとする雰囲気もできていった。
東京都文京区立誠之小学校教諭
伊藤玲奈
みんなの思い出に残る
ミニ運動会をしよう
はじめに ∼コの字型でスタート∼
新学期、わたしは学校生活への期待に目を
輝かせている一年生の三十三名の児童と出会
い、学級活動⑴を中心とした学級づくりに取
するか話し合ったりした。その中で、話し合
で で き る 時 間 だ よ。
﹂ と 話 し た。 一 学 期 は 教
人で不安な 様子 の児童もいた。
﹁クラス全員
入学当初、出身幼稚園などの人間関係によ
る友達の輪の中にいる児童も多かったが、一
う、決める、活動する、という活動の流れを
り組もうと考えた。
の名前をみんなが早く覚えて、かかわり合っ
繰り返し伝えていった。
師が見本を示すことにし、子どもたちのやり
コの字型にした。互いの顔がよく見えること
学級会グッズを作ろう
てほしい﹂という思いから、四月より座席を
広 が っ て い っ た。 そ し て、
﹁コの字型の真ん
で話しやすい雰囲気ができ、かかわり合いが
﹁ミニ運動会を元気よくする係を決めよう﹂
本時に至るまでの経過
①学級会
﹁学級会の議題を選ぼう﹂
議題ポストから議題を選定するのは今回が
初めてである。全員が参加する学級会で選定
七月、﹁学級会グッズを作ろう﹂と投げかけ
た。
クラス全員の似顔絵を車のバス型に張り、
○議題ポストに入っていた議題
のが分かるようにした。
することによって、議題としてふさわしいも
が あ る 合 図 だ か ら、 聞 く 姿 勢 を し よ う。﹂ と
﹁一年二組号に乗って話合いを進めよう。
﹂
と話
中にだれかが立ったら、それは話したいこと
3
約束を決めた。朝の会や帰りの会の﹁みんな
2
4
学級活動
(1)
第1学年
1
道徳と特別活動 2003/6 ● 24
● 特別活動実践例
・虫とり大会をしよう
・お絵描き大会をしよう
︵↓学級会でなくてもできる︶
・お笑い大会をしよう
・旗大会をしよう
︵↓賛成意見が出ない︶
・ミニ運動会をしよう
・ドッジボール大会をしよう
︵↓賛成意見が多く、まとまらない︶
﹁ミニ運動会とドッジボール大会を一緒にで
きないかな。
﹂と教師が助言したところ、ドッ
ジボールを運動会のプログラムの中に入れて、
ミニ運動会を行うことに決まった。
○提案理由の確認
議題選定の話合いの中で出てきた提案理由
を取り上げて確認した。
・楽しかった運動会をもう一度やりたいから
といいから。
・運動会で負けた赤組に勝つチャンスがある
うから。
C
元気よくやりたい。
T 賛成意見の多かった﹁みんなの思い出に
残るミニ運動会﹂にしよう。
○ミニ運動会をするために決めることの確認
・プログラム
・チーム
・係
②学級会
﹁ミニ運動会のプログラムを決めよう﹂
○プログラムのアンケートより
警察︵けい︶が泥棒︵どろ︶を
・誠之体操
・鬼ごっこ
・ケイドロ
・転がしドッジボール ・ドッジボール
・かけっこ
・リレー
・玉入れ
※ケイドロ
捕まえる鬼ごっこ。
○話合いの実際
T
アンケートの結果です。どうですか。
C
多い。全部は無理だと思うよ。
C 鬼ごっことケイドロは似たようなものだ
から、どっちかにすればいい。
T
ほかに似ているものはないかな。
C
転がしドッジボールとドッジボール。
C
かけっことリレーも似ているよ。
T
順番に決めていこう。鬼ごっことケイド
ロのどちらがいいか、意見のある人はいま
すか。
C
ケイドロがいいです。
T
どうしてか、理由がありますか。
C
ドロ全員が捕まるのを待っていたら、時
間がなくなるんじゃない。
C 鬼ごっこはすぐ終わるから、鬼ごっこが
いいです。
C ケイドロは疲れるから、鬼ごっこがいい
です。
C ケイドロでも、時間を決めてやれば、疲
れなくていいと思います。
C
それならケイドロでいいです。
C
鬼ごっこはただ逃げるだけだけど、ケイ
ドロは役割があっておもしろいから、ケイ
ドロがいいです。
イドロに決めましょう。
T ケイドロをやりたい意見が多いようだけ
ど、反対の人はいますか。いなければ、ケ
C
いいです。
このような話合いを経て、プログラムが次
のように決まった。
1.誠之体操
2.ケイドロ
3.玉入れ
4.かけっこ
5.ドッジボール
○チームについて
議題の提案 理由に、﹁学校行事 の運動会で
負けた赤組に勝つチャンスがあるといいか
ら﹂とあるので、運動会の赤白のチームで行
うことに決まった。
本時
学級会
﹁ミニ運動会を元気よくする係を決めよう﹂
○﹁ミニ運動会を○○する係﹂
﹁ミニ運動会を○○す
議題名を決める際、
25 ● 道徳と特別活動 2003/6
・運動会を思い出して、みんなでできると思
○ミニ運動会のイメージを出し合う
T
みんなは、どんなミニ運動会にしたいと
思っているの。
C
正々堂々としたい。
C
みんなが楽しめるようにしたい。
C
すごく楽しく、仲良くやりたい。
C
みんなの思い出に残るようにしたい。
5
↓は話合いの経過
想像していくうちに、ミニ運動会のイメージ
係の仕事内容を考え、具体的な実践の場面を
・準備係
援をした。
・賞状係 手作りの賞状を作り、両チームの
代表に渡した。
玉入れやケイドロ
の審判をした。
・審判係
準備したものが壊
れたとき、直した。
・修理係
した。
ル箱を持ってきたり
玉入れに使う玉を
運 ん だ り、 ダ ン ボ ー
り上げる﹂
﹁楽しくする﹂などの言葉を期待
・救急係からの連絡
ます。﹂
﹁みんなの思い出に残るミニ運動会を始め
・司会係が手作りマイクで第一声
○各係の活動の様子
学級集会﹁みんなの思い出に
残るミニ運動会をしよう﹂
それから、決まった係ごとに始業前の時間
や休み時間などを使って、準備を進めた。
が確かなものになっていった。
る係を決めよう﹂
と投げかけた。
○○には、﹁盛
したが、ミニ運動会のイメージと重なり、
﹁元
気よくする﹂となった。
○係のアンケート
していた姿が印象強く残っている。アンケー
初めての運動会を九月に経験したばかりの
児童の目には、各委員会の高学年児童が活躍
トには、委員会の係と重なるものがあった。
・司会係
・審判係
・ルール説明係
・体操係
・放送係
・救急係
・応援係 ・修理係
・スタート係
・賞状係
・注意係
・ゴール係
ら、わたしたちに知らせてください。﹂
﹁けがをしたり、具合が悪くなったりした
・スタート係
ス タ ー ト ピ ス ト ル を 用 意 し、
かけっこの合図をした。
教師が声をかけることもなくプログラム四
までスムースに進行したが、プログラム五の
か児童が迷っている様子だったので、教師が
活動を中止させた。児童は残念な様子だった
が、﹁今度は時計をよく見てやろう﹂
﹁一つの
プログラムの時間を守ってやればよかった﹂
の発言があり、次回の集会では工夫しようと
﹁プログラムが多すぎたかもしれない﹂など
▲司会係
○話合いの結果
﹁上履きが脱げないようにしましょう。応
・注意係からの連絡
・ ゴ ー ル 係 か け っ こ の ゴ ー ル に 立 ち、 紙
テープを持った。
所懸命がんばり
○経験を次に生かそう
ましょう。﹂
ドッジボールを始める前に活動終了時刻に
いようにしましょう。勝っても負けても一
あったが、﹁誠之
る、と 説 明 が
・ルール説明係
体操の音楽や玉
なった。活動をやめるのか、続けてもいいの
体操を全部でき
入れの競技中に
手作りの旗で応
・応援係
音楽を流した。
て、係からなく
間はかかったが、
このような話
合いが続き、時
なった。
という意見が出
得点の説明。
・放送係
援係の持っている旗の棒が、目に当たらな
▼スタート係
る人はいない﹂
操の手本を見せ
係の仕事について質問があり、提案者が説
明をした。例えば、体操係は、運動会で体育
6
委員会の児童がしたように、みんなの前で体
▼本時の計画
道徳と特別活動 2003/6 ● 26
● 特別活動実践例
察
1年生から,望ましい集団づくりを目指して
入学当初における第1学年の学級活動は,
めあてを全員で確認し合うことによって,
教師の積極的な指導で進められるが,徐々に
児童の活動意欲を促し,自発的,自治的な活
動の芽を見つけつつ,大切に育てていきたい。
◆望ましい集団づくりのための要件 学級において,望ましい集団が成立するた
めには,次の要件を備える必要がある。
①目標についての共通理解と共同の課題を
もっていること
②集団の成員に心理的な結合があること
③役割の分化が見られ,役割について共通
の理解をもっていること
④各成員に所属感があること
⑤各成員の個人的要求が充足されること
伊藤先生は,望ましい集団づくりを目指し,
学級会グッズの学級パスを作ることで②や④
を意識付けようとしたり,学級会の司会を輪
番にして,③の理解を進めたり意欲的に実践
されていることが分かる。
本事例では,以下のことに注目したい。
「楽しい内容」
「チームわけ」
「みんなでやり
遂げるための係分担」と話し合わなければな
らない項目(柱)を見つけ出している。
◆集会を成功させるための役割分担
「ミニ運動会を元気よくする係を決めよう」
は,1つの集会を実践するために全員で役割
を分担し,協力し合って成し遂げることの大
切さに気付かせている。具体的な実践の場を
想起させながら係の仕事内容を考えることに
より,ミニ運動会のイメージを全員に共通理
解させる結果にもつながった。
◆失敗を次の活動に生かせる
本事例では,計画した集会の内容が予定の
時間内に終わらなかった。伊藤先生は,ちゅ
うちょせず集会を打ち切らせた。このことこ
そ大切な指導である。集会を振り返らせ,な
ぜ計画どおり実践できなかったかを考えさせ,
次回どのようなことに留意したらよいかを気
付かせることができる。
“なすことによって
◆提案理由の確認を重視
議題を提案するにあたり,何のために話し
合いたいのか,めあてを明確にしている。
27 ● 道徳と特別活動 2003/6
学ぶ”集団活動が生きる場面である。
(本誌編集委員会)
確認した。
まとめ
児童が楽しい学校生活を送るためには、自
分の居場所があり、自分のよさが認められる
ような友達とのかかわり合いがあることが大
切であると感じている。学級でのさまざまな
アイディアを出したり、工夫して係の仕事を
取組みの中でも特に学級会において、活動の
したりして、個々が自分らしさを発揮し、互
いに認め合う様子を見取ることができた。
また、話合いの活動で、自分の意見に固執
して譲らな かった児童が、﹁みんながいいな
らいいよ﹂などと協調できるようになり、よ
りよいかかわり合いができるようになった。
初めての 一年担任であり、児童 の自主的、
自治的な活動とは、どこまでを任せるものな
のか悩みながらの取組みだった。一年の終わ
りに﹁一年二組のいいところ﹂を児童に聞く
と﹁自分たちで計画する集会があるから、楽
しい﹂
﹁おもしろい係がたくさんある﹂と学
級 活 動 を 挙 げ る 児 童 が 多 く、 何 よ り 励 み に
計画・実践できることは喜びであり、学校生
なった。低学年であっても、自分たちの力で
活への自信につながる、と改めて感じた一年
だった。このような力を育てる学級活動の時
間を大切にし、今後もよりよい集団づくりを
目指していきたい。
考
7