深川ゆかりの作曲家

● 深川ゆかりの作曲家
▼「あなたと二人で来た丘は…」戦後を代表する流行歌の一つ『港が見える丘』。思い出のある丘へ来て、今は離れ
てしまった恋人を思うこの歌は、ビクター社が敗戦後に製作した最初の流行歌であり、同社の戦後初のヒット曲となっ
た。ライバル企業コロムビア社が戦災を免れ、早くも敗戦の年の10月に発売した『リンゴの唄』に遅れること1年半にし
ての再出発だった。▼昭和初期のレコード歌謡草創期からコロムビアと並んで業界の2大勢力となっていたビクターで
あったが、昭和20年3月10日と4月4日の東京大空襲で築地の吹込みスタジオと横浜新子安のプレス工場を焼失し
たため、競合のコロムビアのスタジオと工場を借りての復活だった。▼22年4月にこの歌のレコードが発売されると、10
万枚以上が売れる大当たりとなった。歌手は平野愛子。21年にビクターが新人歌手を募集したとき、2000人近くとも3
000人近くとも言われる応募者の中から選ばれた7人のうちの1人であった。ちなみに、この歌のレコードの裏面は『泪
の乾杯』(竹山逸郎歌)という作品である。こちらは恋に破れた男が酒場で飲みながら嘆く内容で、古賀メロディーの
『酒は涙か溜息か』(昭和6年)を意識して作られたものだった。表面の『港が見える丘』の評判を追う形で人気を得て
ゆき、ヒット曲となった。▼これらの歌を作詞・作曲したのが東辰三である。その出生地は手元の資料では判然としな
いが、神戸高等商業学校を卒業後、外国の貿易会社に勤めた。その後、深川木場の実家で木工場の経営者となり、
自らも作業に当たっていた。東辰三はペンネームであり、名にある「辰」は深川を意味する言葉「辰巳」に由来するとい
う。家業の経営の傍ら、声楽家徳山璉(たまき)に声楽を学び、男声合唱団・東京リダー・ターフェル・フェラインを組
織して自らはバスパートを受け持った。この合唱団の団員は、それぞれ本職を持っていたが、共通するのは全員が江
戸っ子であることであり、その理由は地方出身者では発音が違ってしまうからということであった。合唱団は日中戦争
勃発後間もない12年9月、神宮外苑青年会館で催された「献納軍歌発表会」で東が作詞・作曲した『つわものの歌』
を発表した。これがきっかけで東はビクターにスカウトされた。▼軍歌『つわものの歌』は同年に東京リダー・ターフェ
ル・フェラインの歌でレコードが発売され、翌年には楽壇でつとに名声を得ていたテノール藤原義江の盤も発売された。
その歌詞の内容は、「…敵兵を撃って懲らさにゃ二度とまた御国の土は踏まないぞ」など現代から見ると理解しがたい
内容である。翌13年に発売された爆撃機の搭乗員を歌った『荒鷲の歌』(東詞・曲、東京リダー・ターフェル・フェライ
ン歌)は、大当たりとなった。こちらも「見たか銀翼この勇姿…来るなら来てみろ赤蜻蛉(あかとんぼ)…」「…重い爆弾
抱えこみ南京位は一トまたぎ…」「敵機はあらまし潰したがあるなら出て来いお代り来い…」と人間らしい感情は何も表
現されていない。同じ年には、日中戦争での日本の陸軍を歌った「前進」(東作詩・作曲、藤原義江歌)を発表した。
東の作品の全貌は不明だが、その後は、他の作詞家の詞に曲を付けるという一般的な作曲家と同じ形態の仕事が多
くなったようである。資料で確認できる作品には軍国歌謡が多い。戦中の最後の作品は、10代の志願者からなる陸軍
特別幹部候補生を歌った『兄は征(ゆ)く』(清水かつら詞、東曲、灰田勝彦・大野一子歌、陸軍省推薦、読売新聞社
選定並献納、19年2月)である。▼そして戦後の第1作が前述の『港が見える丘』。さらに同じ傾向を持つ『君待てども』
(東詞・曲、平野歌、23年1月)は、甘く柔らかい雰囲気ながら文語体を基調にした格調高い歌である。どちらも洗練さ
れたメロディーと、恋人を思う気持ちを慎ましやかに表現した詞が人々に愛された。▼その後も作曲と自作曲への作
詞を続けたが、25年9月27日、ビクター社のピアノ練習室で急な脳出血に襲われて倒れ、51年の生涯を閉じた。資
料で確認できる最後の作品は『純情酒場』(東詞・曲、竹山逸郎歌、26年)である。▼作曲家東辰三の名は、『港が見
える丘』『君待てども』の2曲によって、それらの歌唱者となった平野愛子の名とともに歿後半世紀を超えた現在も広く
知られている。(SH記) *参考文献:「続なつかしの歌声」三枝孝栄・永来重明著(日本音楽出版)、「日本流行歌史
体系歌詞総録」(ダイセル化学工業株式会社)ほか
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