算数科の基礎・基本が身に付く複式学習指導法

算数科の基礎・基本が身に付く複式学習指導法
−
教科書・ノ−トを活用した指導を通して
−
*
川 口 正 一
**
安慶田 正 人
本県の小学校の約 24 %にあたる 66 校が,複式のある学校である。ところが,その複式学級を担任する教師の
多くが,複式学習指導の経験が少ないの実状である。複式学級では,一人の教師が2学年の児童にそれぞれの学
習内容を1単位時間内で指導を行わなければならない。教師は,いろいろな工夫をし効果的な指導に努めている
が,指導の困難さを実感しているのが現状だと考える。
本論は,複式学級における算数科の授業で,児童に算数の力(基礎・基本)をつけるようにするため,教科書
やノ−トをどのように活用していけばいいかを研究し,複式学級を担任する教師の参考となる資料になればと考
えている。
1
はじめに
いくことは大変なことである。児童が持っている教
複式学級における算数科の指導は,学年別指導を
科書やノ−トにもっと注目し,その効果的な活用で,
通して行われるのがほとんどである。それは,一人
児童に算数の力(基礎・基本)をつけることができ
の教師が2学年の児童にそれぞれの学習内容を1単
ないかと考えた。
位時間内で指導することである。そこで,教師はい
そこで,複式学級における算数科の授業で,教科
ろいろな工夫をし,効果的な指導に努めている。
書やノ−トをどのように活用していけばいいかを研
例えば,指導過程の「ずらし」と教師の「わた
究し,複式学級を担任する教師の参考となる資料を
り」である。一方の学年は本時の導入を教師ととも
作成していきたいと考え,本テーマを設定した。
に行い,他方の学年はプリント等で前時の復習を行
う。導入が終わると,教師はとなりの学年へわたり, 2
研究内容
その学年の導入を行う。先ほどの学年は,各自で問
算数科の教科書・ノ−トの活用について,先行研
題を解いたり発表の準備をしたりする。このように
究されたものや現在実践されているものを収集し,
して,1時間の学習過程ををずらしていき,教師が
複式学級における授業実践に生かせる指導のあり方
2学年をわたり歩いて指導する方法である。
を研究する。
また,他の指導法に「同単元指導」がある。この
指導法は,系統性を踏まえながら,できるだけ類似
3
算数科の基礎・基本とは
内容にそろえ,授業の導入を2学年同時にできるよ
14年度から実施される学習指導要領の算数科改善
うにしたり,練り合いやまとめを2学年で行い,上
の1つに基礎・基本の確実な定着が挙げられている。
学年が下学年へのアドバイスができるようにしたり, 基礎・基本とは,子どもの生活や学習での様々な活
共通指導場面がよりもてるにしたものである。
動のもとになるものである。例えば,日常生活での
このように,複式学級での算数科の授業を充実さ
活動のもとになるものや学校でのいろいろな学習の
せるために,時間の効率化を図ったり,両学年の関
もとになるもの,算数を続けて学習していくもとに
わりをもたせたりする等工夫に努めている。ところ
なるもの等である。
が,複式学級を担任する教師は,算数科だけではな
算数科の基礎・基本は,子どもたちにどうしても
く他の教科等の教材研究と授業の準備をしなくては
身につけていかなければならない数学的な考え方や
ならない。しかも2学年分である。そんな中,教材
知識・技能になる。その指導すべき事項が,学習指
を開発したり,ワ−クシ−トやプリント等を作って
導要領に示された目標や内容にあたる。教科書は,
その指導要領を踏まえて指導できるように作られて
*教育センター教育経営研修課
いるため,その活用のあり方は大切である。
**大宜味村立大宜味小学校
-1-
4
複式学習指導について
(A年度,B年度)に教材を入れ替えて指導する。
(1) 複式学習指導の基本的な考え方
イ
複式学習指導は,複式学級の利点を生かすという
2個学年分の教材を1年間で指導できるように
精選して,それを2年間同じように繰り返して指導
考え方にたつことが大切である。
する。
複式学級の課題として,次の3つがいわれている。 (3) 算数科の授業における複式学習指導
①
少人数のため大きな集団での社会的経験の場が
算数科は,他教科に比べて系統性・順次性が強く,
不足がちになっている。
学年別指導か同単元指導一本案の類似内容指導が適
②
している。
学年別指導における教師の直接的な指導を受け
る時間が少ない。
③
算数科の類似内容指導では,できるだけ同じ領域
2個学年編成のため,学級を構成する児童が毎
の内容を同じ素材,題材で取り上げ,指導の効率を
年変わる。
高めようとすものである。また,領域や単元を揃え
このような課題に対して発想を転換し,次のよう
ることにより,領域を貫く数学的な考え方(基礎・
な考えにたつことが大切である。
基本)を共通目標をおくことができる。その共通目
①
標のもとに,共通指導場面を設定することで,児童
少人数のため児童一人一人の実態を詳しく把握
でき,個に応じた指導を行うことができる。
相互の話し合い,練り合いの場を確保することがで
②
きる。
教師がつかない時間帯に,数多くの自学自習の
経験ができ,自ら学ぶ力を育てることができる。
③
さらに,上学年の児童にとっては復習になったり,
児童は,上学年と下学年という二つの立場を経
下学年の児童はアドバイスをもらったりすることが
験でき,学年を越えて学び合う態度を育てることが
でき,複式学級に一体感が生まれ,学習意欲が高ま
できる。
るなどの効果が期待できる。
(2) 複式学習指導の類型
下学年の目標
複式学級における学習指導では,2個学年の児童
共通目標
上学年の目標
を同時に指導するため,指導内容や指導方法につい
1単位時間における共通指導場面の設定
て組み合わせを考慮したり,工夫する必要がある。
1単位時間の学習活動の構想
主な学習指導の類型として学年別指導と同単元指導
がある。
学年別指導とは,2個学年の児童にそれぞれの別
下学年の課題
< 同領域> 上学年の課題
課 題 解 決
課 題 解 決
の教科,あるいは同じ教科でも異なる内容を指導す
相互の話し合い・練り合い
ることである。この場合,教師はそれぞれの学年の
児童に異なる内容を指導するので,一方の学年に指
下学年の習熟 · 応用
導している間(直接指導)は,もう一方の学年は,
図1
自主的に自分たちの学習を進めていくこと(間接指
平成14年度の算数科第3学年・第4学年の教科書
同単元指導とは,2個学年の児童に同じ単元(題
(学校図書版)を指導の系統性を踏まえて,同単元
材)によって指導することである。同単元指導は,
(同領域)に組み替えたのが表1である。
大きく分けて次の二つの類型に整理できる。
単元配当表を作成するにあたり工夫した点が,以
同単元指導一本案
下の通りである。
上下学年ともに,一部を共通にし,大部分が同系
統または,同じ領域のそれぞれの学年に相当する内
容を指導する。上下学年の指導計画は2年間を通し
3学年の単元は教科書通りにした。
②
4学年の単元は,教科書上・下版への移動はせ
ようにした。
同単元指導二本案
③
上下学年に同じような内容を指導する。この指導
指導時間を,標準時数(150 時間)になるよう
に,一学期 50 時間,二学期 60 時間,三学期 40 時
の進め方には,次の二通りがある。
ア
①
ずに組んで,できるだけ単元の始まりは同時になる
て一つで,2年単位で指導するものである。
②
共通指導場面の設定(例)
(4) 第3・4学年算数科単元配当計画
導)になる。
①
上学年の習熟 · 応用
間で計画した。
2個学年分の内容を2年計画にして,年度ごと
-2-
表1
一
②かけ算
学○計算のしかたを
いろいろ考えよう
③かけ算のひっ算
期○計算ハイキング
④表とグラフ
⑤長さ
○たからものはどこ?
○かけ算をさがそう
○ふくしゅう①
⑥かさ
○どんな文になるかな?
⑦わり算
二 ○かくれているのは何?
○九九さいころ
⑧形
学 ○学校を知ろう
時
4年単元名
1 ○合計が同じカ−ド
15 ①大きな数
○電たくを使って計
算しよう
○なくした物は何?
②円と球
9 ③わり算
1 ○計算のしかたを
いろいろ考えよう
④1けたでわるわり算
7 ○円や球を見つけよう
1
7 ⑤資料の整理
5 ⑥角
1
1
2 ○ふくしゅう①
10 ⑦三角形
1
12 ⑧2けたでわるわり算
1
1 ○とんだ長さ
9 ⑨面積
2 ○筆算のいろいろな
計算
8 ⑪がい数
1 ⑩小数
4
2 ○何が見える?
7 ○ふくしゅう②
2 ・2学期の復習
8 ⑬式と計算
1 ○学校を知ろう
⑫折れ線グラフ
12 ○どんなかん板がで
2
きるかな?
1 ⑭分数
⑨大きな数
期○わり算めいろ
⑩あまりのあるわり 算
○テ−プ作り
⑪時間と時こく
○ふくしゅう②
⑫2けたのかけ算
○長方形パズルに
三
チャレンジ
⑬重さ
学○たんいを見つけよう
○何が出てくるかな?
期
⑭箱の形
5
○そろばん
3
⑮3年のまとめ
8
総 時 数
150
5
(2) 指導内容の基本型を見抜く
第3・4学年算数科単元配当表
3年単元名
○九九作りゲ−ム
①たし算とひき算
時
1
6
1
教科書は内容の展開そのものが変化のある繰り返
しである。この繰り返しの出発点,基になる式,図
表などが基本型にあたる。これを見抜くためには,
次の問題に応用できるかを考えることがポイントで
1
7
6
1
ある。基本型は,そっくりそのままノ−トに写させ
て確実に身につけさせるようにする。
(3) ジャンプの部分を発見する
ジャンプの部分とは,学習内容の展開や問題の配
10
列に飛躍がみられるところや算数が苦手な子が混乱
1
7
7
し,つまずくと予想される部分のことである。そこ
では,助走問題を小刻みに与えていくようにする。
(4) 分解した助走問題を与える
ジャンプしているところは,問題をシンプルに分
2
11
解し,易から難へと変化のある繰り返しで配列して
与えていく。その際には,テンポよく与えることが
13
大切である。
1
10
1
(5) 説明は短く行う
8
10
分け,シンプルな問題になおして提示していくよう
説明の言葉を 15 秒から 30 秒を目安にして話すよ
うにする。説明が必要な問題は,いくつかの要素に
にする。
(6) 確認と詰めを行う
1
2
3
8
2
6
1
教科書通りに教えたつもりでも,児童の理解が不
十分のときがある。詰めとは,「こんなところま
で」という所まで確認作業をすることである。詰め
の徹底には「読ませる」「見せ合う」「指さし」
「教師に見せる」などの方法で確認する。
(7) 教科書チェックを行う
7
教科書の問題ができたかどうか,番号に印をつけ
○折り紙タングラム
⑮ともなって変わる量
⑯4年のまとめ
総 時 数
1
7
8
させて,詰めのチェックを行うことである。できた
問題の番号には/線を,できなかった問題の番号の
横に×マ−クをつけさせる。できなかった問題はや
150
り直しをさせ,単元の終了時までには,全部の問題
教科書の活用について
の番号に/線がつくようにさせる。単元の終了時に
教科書を活用した実践に「向山型算数」がある。
は,全員の教科書とノ−トの点検をする。教科書番
その指導法は,教科書を最大限に活用し,ノ−ト指
号に印がついているか,まちがった問題はやり直し
導を重視した方法である。また,授業展開では,基
をしているかチェックする。
礎・基本の定着を図るための工夫が成されている。
複式の算数科の授業では,一つの学年に関われる
その特徴が以下の(1 )∼( 6)である。
時間(直接指導できる)はかなり短い。複式学級で
(1) 教科書通りに教える
は,短い指導時間で1単位時間分の内容を指導し,
単元はじめの導入の挿し絵から授業化し,教科書
児童に算数科の基礎・基本を確実にを身につけさせ
の展開にそって進めていく。途中の□の中への書き
る工夫が必要になってくる。1単位時間の指導過程
込みはもちろんのこと,教科書を教材として使い込
や教師の「わたり」の工夫などを行い,教科書の活
むようにする。
用を考えなくてはならない。
-3-
6
ノ−トの活用について
ノ−ト作りの手引き
(1) ノ−ト指導をする理由
①
ノ−トは知識や概念のよりどころで,学習の定
①
着を図る舞台といえる。学習したこと(基礎・基本)
濃い鉛筆(HB · B)を使う。
丸つけは,赤鉛筆を使う。
を確実なものにするには,ノ−トは不可欠である。
②
日付け,ページ,問題番号を必ず書く。
②
③
ミニ定規を使う。(計算・表・グラフを
ノ−トに課題や学習内容,まとめなどを残すこ
とができる。また,疑問点やつまずき要因を発見す
書くときなどに使う)
ることができ,その解消に素早く対応できる。
④
大事な文には,カラ−ペンなどで強調する。
③
⑤
計算問題でまちがったときは消さないで書き
自主課題への挑戦をさせたり,学習したことを
振り返させることができ,学ぶ喜びを体験させるこ
直す。(まちがいを残すことは大事である)
とができる。
⑥
ノートはゆったりと書く。
④
⑦
授業で分かったことや思ったことなど,感想
書くことによって学習時間の確保ができる。
(2) ノ−トのもつ機能
を書く。
①
書くことによって,考えを深めることができる。
②
書くことによって,手で覚えることができる。
③
ノ−トは一人ひとりの学習史であり,学習に取
*
ノ−トは,「学習のあしあと」であり,
「勉強のまとめ」でもある。
分かりやすいノ−ト作りをめざそう!
り組む態度がノ−トに現れる。
④
ノ−トはわかる(解けた)喜びの集積所である。
よって,次時の学習や家庭学習への動機づけとして
有効である。
⑤
図2
ノ−ト作りの手引き
(5) 定期的なノ−トの点検
ノ−トは定期的に点検を行い,教師の指導通りの
自分の手で書いたノ−トが,復習時の最良の参
使い方をしているか確認する必要がある。授業中の
考書になる。
ノ−トの点検は,その時間に関わる内容に関するこ
⑥
学習が不十分な子やつまずきの箇所を見つける
とで精一杯である。単元終了時等で,「ノ−ト作り
ことができるし,ノ−トを通して個別指導を行うこ
の手引き」や教師の指導通りの使い方(書き方)を
とができる。
しているか確認することが大切である。ノ−トの検
⑦
定基準を設けて,点数化して評価を行う。
児童のいろいろな考えや工夫を見つけ,全体に
広げることができる。
◇ノ−トの検定基準
⑧
①
②
③
④
⑤
⑥
指定したノ−トを使っているか。
表紙に教科名・氏名・何冊目かを書いてあるか。
日付・ペ−ジ・単元名・問題番号が書いてあるか。
横・上下の余白があるか。
線を引くときはミニ定規を使っているか。
指定した鉛筆でくっきりと大きな文字・数字が書
けているか。
⑦ 丸付けや訂正などは,赤鉛筆でていねいに書い
ているか。
⑧ 間違いは消しゴムを使わずに×をつけて書き直
しているか。
⑨ 補助計算を堂々と書いているか。
⑩ イラストや図・表がていねいに書いてあるか。
ノ−トを見ることで,教師自身の指導の評価に
なる。
(3) ノ−ト指導で留意する点
①
授業内容のまとめを,いつどのようにとらせる
か,あらかじめ考えておく。
②
1時間の授業の流れが分かるような板書をめざ
す。
③
手作り学習ノ−トのメリットを理解させる。
④
ノ−トはこまめに点検する。
⑤
つまずいている子や遅れている子には,やり方
を写させるなどして,必ずノ−トに書かせるように
*
上記の 10 個の基準について,それぞれ◎○△を
判定し,合計点を出して評定する。
する。
◎ よくできている
10 点
○ だいたいできている 5 点
△ もう少し
2点
(4) ノ−ト作りの手引き
ノート指導は初めが肝心である。授業に入る前に
次のような「ノ−ト作りの手引き」を配布し,基本
100 点∼ 90 点
89 点∼ 60 点
59 点以下
的な形式をそろえるようにする。そのとき,教師が
実際にノートの使い方を示して,全員に理解させる
図3
ことが大切である。
-4-
AA
A
B
ノ−トの検定基準表
第3・4学年算数科複式学習指導案
1 単元名
3年 「 大 き な 数 」
1 単元名
4年 「 が い 数 」
2 本時の指導(第2/8時)
2 本時の指導(第2/8時)
( 1) ねらい
( 1) ねらい
千万の位までの数の読み方や表し方がわかる。
四捨五入の意味が分かり,それを用いて概数を
( 2) 授業仮説
求めることができる。
① 共通指導場面を設定することで,学級に一体感が生まれ,学習意欲が高まるであろう。
② ノート活用と並行させて細かいステップで進めていけば,学習の定着を図ることができるであろう。
( 3) 展開
指導上の留意点
主な学習活動
位
主な学習活動
指導上の留意点
(3年)
置
(4年)
前時の復習をす
1 3年生の問題をい
る。
っしょに行う。
○フラッシュカ−ドを使いテン ( 1)2桁,3桁,4桁
( 1)フラッシュカ−ド ○前時の一万の位までの概数
ポよく出す。(2桁から4桁
の数を読む。
の数を読む。
の表し方をを確認する。
まで)
( 2)一万の位まで,位
○フラッシュカ−ドの数字が
○前時にまとめたものを提示し
を読む。
何万に近いか判断させ,概
確認する。
( 3)一万の位までの数 3 ( 2)約何万の概数に直
数で言わせてみる。
を読む。
分 す。
1
○教科書 17 ペ−ジの問題4を 2 位 取 り 板 で 一 万
指さすように指示し,全員声
の位を用いた数を
をそろえて問題を読ませる。
正しく読んだり書
いたりする。
○①∼④の解答を教科書の表に (1)17 ペ−ジの問題4
書かせる。
をやる。
○空位のある数字の書き方を, ( 2)空位のある漢数字
桁数の小さいものから行う。
を数字に直す問題
○ノ−トに書かせていく。
をやる。
2
生 徒 数 を 概 数 で ○数直線に表したときの位置
表す方法を千の位
から,どんな概数にすれば
に着目して考え
よいかを考えさせる。
る。
○数直線がなくても,概数に
◇ 中学校 39562 人,
できないかを考えさせる。
高等学校 33695 人
○ 31 ページの「がい数の表し
を,概数で表す方
方」を読んで確かめることを
法を考えよう。
指示しておく。
10
分
○つまずいたら,教科書やノー (3)17 ペ−ジの練習問
トを見て解かせる。
題をやる。
①大きな数を読む。
○早く終わった児童に,答えを
黒板に書かせる。
②漢数字を数字で書
く。
③別々に示された各
位の数を,合わせ
て数字で書く。
○国語辞典を使わせる。
( 4)「万」の意味を調
べる。
12
3 四 捨 五 入 の 仕 方 ○ノ−トさせながら,少しず
を知る。
つステップをふんで指導す
る。
4 四 捨 五 入 の 方 法 ○指導した通りに概数を求め
で概数を求める。
ているか確認する。(全員
( 1)一万の位までの概
のノ−トをチェックする)
数を求める。
○ある位までの概数を求める
( 2)千の位までの概数
には,そのすぐ下の位を四
を求める。
捨五入することが分かって
( 3)百の位までの概数
いるか,四捨五入は適切に
を求める。
できているか点検する。
分
○一万が 10 こで十万
3 十万の位,百万
十万が 10 こで百万
の位,千万の位の
百万が 10 こで千万を,
意味を知る。
具体物と板書を工夫し理解さ
せる。
○ノ−トに 23490000 を書か
4 位取り板を用い,
せ,各位の数字を確認しなが
23490000 の 読 み 方
ら,読み方を考えさせる。
や構成について考
○一万と千の位の間に線を引い
える。
てくぎって読むとわかりやす 5 千 万 の 位 ま で の
いことに気づかせる。
数を読んだり,書
いたりする。
○となりの子とペアを組ませ 6 数 字 カ − ド を 並
る。
べて,大きな数を
○8枚のカ−ドで,いろいろな
作り,読み合う。
桁の数字を作るようにさせ
る。
4
四捨五入してあ
る位までの概数を
求める。
(1)教科書 31 ペ−ジの ○自分で解答させる。
問題3をやる。
○間違ったところは消さず
(2)教科書 31 ペ−ジの
に,訂正させる。
練習問題をやる。
○教科書に正答・誤答のチェ
ックを入れさせる。
15 ( 3) 計 算 ス キ ル を す
分 る。
5
5
分
-5-
3 年 生 が カ − ド ○3年生の大きな数の読み
で作った数字を概
を,4年生に解答させ,
数で表す。
互いの交流を図る。
7
指導の工夫
(3) ノ−トを効果的に活用した指導
(1) 共通指導場面の設定
①
四捨五入の方法で概数を求めるところは,難しい
フラッシュカ−ドを使った,3・4年生同時の
内容であり定着させるにも工夫が必要である。説明
授業の導入
をすればするほど混乱してしまう。そこで,発問と
3年生の学習である「大きな数」を,簡単な数字
指示をノート活用と並行させて,細かいステップで
から少しずつ難しい数字を提示していく。この場合, 進めていくようする。
4年生の学習である「概数」の位にも着目させるこ
(問題) 37562 を,一万の位までのがい数にしよう。
とができる。両学年の学習で重要となる位取りを,
① 一万の位を丸で囲み,下に小さく「まで」と書きます。
3 7 5 6 2
両学年同時に行うことができる。また,3年生が前
まで
時に学習した一万の位までの数字を,4年生が読ん
② そのすぐ下の位の数は?
③ 7を四角で囲みます。
④
3 7 5 6 2
で見せたりすこともでき,学級に一体感が生まれ学
習意欲も高まるものと考える。
まで
37 → 268 → 5972 → 6700 →
1 7 6 3 5
学級の実態を見てカ−ドの
万 千 百 十 一
枚数を決める。
図4 フラッシュカ−ドで提示する数字(例)
②
「7です」
⑤ 四捨五入についての指導(省略)
⑥ 切り上げなので,7を消してその上の位に1を書きま
す。
それ以下は0になります。
1 0 0 0 0
3 7 5 6 2
→ 40000
3年生の大きな数作りに4年生も参加
4年生は,カ−ドで作った大きな数(千万の位ま
まで
で)を,3年生が読むことができるかをみたり,共
⑦ 30000と10000でいくらになりますか?
「40000」
にやりながら教えたりすることができる。また,3
図6
年生が作った大きな数を,4年生が概数で表すこと
で,自分の復習になるし,3年生には今の学習内容
8
が,今後の学習に大変重要であることを実感させる
ノートを活用した概数の指導
終わりに
今年度の研究は,複式学級の算数科指導における
ことができる。
教科書とノート活用のあり方,3・4年生の教科書
(2) ジャンプ問題を,易から難へと変化のある繰り
単元の組み替えと共通指導場面の設定の仕方,指導
返しで指導
案の作成までであった。複式の算数の授業ではどう
3年生の,空位のある漢数字を数字に直すところ
は,算数が苦手な子が混乱しつまずくところである。
そこで,教科書の問題をすぐやるのではなくて,簡
しても教師のわたりが生じ,直接指導する時間が限
られているため,指導内容を効率よく指導していく
ことが大切である。複式のよさ(上学年が下学年へ
単な問題からステップをふんで指導する。ノ−トさ
アドバイスできる共通指導場面の設定等)を生かし,
せる際には,位をきちんとそろえさせることも大切
教科書・ノートの効果的な活用を行えば,効率よく
である。
指導できると考える。そして,児童にとって分かり
指示:十を数字でノ−トに書きなさい。
発問:一の位はどうして0と書くんですか?
児童:一の位には数がないので0と書きます。
(全員声を出して言うようにさせる)
指示:百を数字でノ−トに書きなさい。
発問:100 と書きましたね。一の位と十の位は
どうして0と書くんですか?
児童:一の位と十の位には数がないので0と書
きます。(全員声を出す)
以下,次のように進めていき,ノ−トさせる。
二百六
→
206
三百五十
→
350
四千七十
→
4070
一万六百二十 → 10620
五万三十一
→ 50031
三万九百
→ 30900
図5 空位のある数字の指導手順
やすく,基礎・基本が身につく授業になると考える。
次年度は,授業実践を通してその有効性を検証し
ていきたい。
参考文献
北海道立教育研究所・北海道教育大学 2001
「複式学級における学習指導の在り方」 北海道リハビリー
文部省 1999 「小学校学習指導要領解説算数編」東洋館出版
全国へき連盟 1989 「へき地教育双書Ⅲ」
教室ツーウェイ7月号別冊№ 193
1999
子どもをどう変えたか」
木村重夫 2001
「向山型算数は
明治図書 p 32 ー 35
「うっとりするノート」をめざす TOSS
算数ノート検定
-6-
サンアイ
インターネットホームページ TOSS ランド
-7-