予算編成と診療報酬改定率の関係は? 2016年度改定では厳しい改定率が予想される 回は、国の予算編成について考えてみましょう。 2016年度予算でも同様で、晩秋から冬にかけて財務 医療費の4分の1は国庫から支出されます。診療 省と厚生労働省が折衝を続けます。12月に税制改正大 報酬改定率は医療費の規模、つまり国の歳出に大きく 綱が固まると、翌年度の国の歳入が見えてきます。す 影響するため、予算編成の中で決定されます。改定率 ると、各省の各施策に、どの程度の財源配分を行える と予算編成とは切っても切れない関係にあるのです。 かが明確になり、その中で医療費をどの程度増やせる 予算編成は、8月末の各省概算要求→12月中旬に税 のか、つまり改定率をどの程度にできるのかが明らか 制改正大綱が固まる→12月下旬に財務省が原案を編成 になってきます。 する→年明けから国会で審議し、年度末までに成立す 医療費の4分の1は国が負担しているので、財政が る、という流れで進むのが通例です。概算要求では、各 厳しい場合には財務省から「医療費は増やせない。マ 省が施策と費用を明示して財務省に提出します。財務 イナス改定とせよ」との指示が出されます。一方、厚 省は要求内容を精査し、各省との調整(折衝)を行っ 労省は「医療の質を上げるにはこれだけのコストがか たうえで、最終的な予算額を決定します。しかし、診 かるので、財源を確保してほしい」と要望し、ぎりぎ 療報酬改定は、概算要求時点では内容が決まっていな りまで調整が行われます。 「医療行政最前線」でも述べ いことがほとんどで、概算要求時点では「年末までの ましたが、2016年度予算では「概算要求時点から単純 予算編成過程において検討する」と記載されるにとど 計算で1,700億円の社会保障費の縮減が必要」と考えら まり、数字は明記されません(事項要求) 。 れ、早くも厳しい改定率になるだろうと予想されます。 医 療 マ ネ ジ メント の ヒント 地域コミュニティの形成事例 6 回、地域との深いつながりについて話をしました なケースでも、双方が現場をわかっているので、病院 が、最後にどのようにコミュニティを形成するの の円滑な対応が可能になったと言います。 か、事例を用いてお伝えします。 次に、ケアミックス病院を中心として訪問診療・訪問 ある急性期病院の例をご紹介します。急性期を担う 看護、老健などの機能がある医療法人の事例です。将 地域の中核病院では、退院後は多くの患者が自宅に戻 来を考えると、地域の健康増進やコミュニティ形成が ります。ただ、地域の訪問看護ステーションの看護師、 より重要になると考えたこの法人では、患者家族や地 ケアマネジャーと連携を図っていても、病棟看護師は 域団体の交流の延長線上で、月額500円程度で病院が 患者の家庭生活を十分に理解できていない場合もあり 主催する健康増進活動に参加できる会員制クラブを立 ます。この状況を打破するため、その病院では、病棟 ち上げました。食事の摂取方法から体の動かし方など 看護師、医師、地域のケアマネ、訪問看護ステーショ を体験型で学ぶ場を提供する中で会員数も年々増加し、 ンなどとご家族が集まり、自宅でケアカンファレンス 地域コミュニティの1つに発展しました。 を行うことにしました。生活の現場を肌で感じながら、 これらはあくまでも参考例ですが、経営上(診療報 今後の生活支援のあるべき姿を話し合うわけです。こ 酬上)の枠組みを超えて、地域とのつながりを積極的 の取り組みは、病棟看護師と地域のケアマネが仕切っ につくったケースになります。地域連携のあり方を見 ています。そうすることで、再度急な入院対応が必要 直す参考にしていただければ幸いです。
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